阿座上 志郎 院長の独自取材記事
あざがみクリニック
(横浜市青葉区/たまプラーザ駅)
最終更新日:2025/09/08

1999年の開業以来、子どもたちの健康を見守り続けてきた「あざがみクリニック」。2018年に小児だけでなく大人も気兼ねなく来院してもらえるようにと、もともとの院名にあった「小児」の文字を取り除いたと教えてくれたのは、包み込むような温かい笑顔と、人との縁を大切にする誠実な人柄が魅力の阿座上(あざがみ)志郎院長。月に1日、内科専門の外来も設けており、総合内科と呼吸器内科を専門とする医師が高血圧症・糖尿病・喘息など大人の慢性疾患の相談にも対応している。家族でかかれるファミリークリニックだ。自然光の降り注ぐ明るい院内は、スタッフの笑顔とアットホームな雰囲気であふれている。常に新しい医療情報を獲得しながら時代に合ったサービスを追究してきたという同院の歩みや専門的な外来について、阿座上院長に話を聞いた。
(取材日2025年6月17日)
子どもも大人もかかれるファミリークリニック
まずはクリニックの歩みと特徴を教えてください。

横須賀共済病院で新生児やNICUを担当していた頃、後輩から「青葉区にクリニックビルを建てて小児科をメインに据えてやろうという話があるのですが、先生、いかがですか?」と、この場所を紹介されました。それからはトントン拍子で話が進み、1999年に「あざがみ小児クリニック」を開院。地域に根差した小児クリニックとしてやってきました。小児科で診るのは15歳くらいまでが基本なのですが、開院から時間がたつにつれ、中高校生になった患者さんから、たまに風邪をひいた時などに診てもらえないかと相談を受けるようになり、その程度だったら当院で対応できると考え、2018年に院名から「小児」の文字をなくしました。それ以来、保護者の方をはじめ、大人の患者さんが格段に増えましたね。小児科がメインではありますが、ファミリークリニックとしてご家族皆さんのお悩みに対応しています。
幅広い年代の方が来院されているのですね。
お子さんが風邪をひいた時、同じ家に住むご家族も同様に具合が悪いことも多く、そんな時に「家族みんなで診てもらえると助かるよね」というお声をいただいています。そのように以前からお子さんとそのご家族の診療をしてきたのですが、最近ではお子さんの症状の有無に関わらず、大人の方から健康上の悩みを伺うことが増えまして、今は第3土曜に内科専門の外来を設けています。その他、思春期前後のお子さんの心身的なご相談を受けることも増えてきました。
内科ではどのような相談が多いですか?

以前は風邪など日常的な不調が多かったのですが、内科専門の外来を設けてからは高血圧症・糖尿病・喘息など慢性疾患のご相談が増えています。内科を担当しているのは私の息子で、専門は総合内科と呼吸器内科です。横浜市の特定健診にも対応しています。内科専門の外来は第3土曜のみとなりますが、空き枠があれば、15歳以上の発熱などの感染症診療やアレルギー診察も予約可能です。これまで以上に、大人の方にとっても相談しやすいクリニックになったかと思います。
小児科は子どもに関する心配事のゲートキーパー
診療の際に心がけていることをお聞かせください。

かかりつけ医は、医療の最初の窓口です。適切な診断をすることはもちろん、患者さんにとって最善の選択ができるよう、患者さんがどんなことを不安に感じ、何を求めて当院に来られたのか、しっかりお話を聞くよう心がけています。何度も発熱で来られるお子さんでも、「何かいつもと違う」という感覚はとても大切です。また、これくらいならクリニックで対応できるなという状態でも、親御さんがかなり不安に感じているようなら、早目に大きな病院を紹介することもあります。私は、小児科はお子さんに関するすべての心配事のゲートキーパーだと思っています。決して上から目線ではなく、保護者と同じ目線で気持ちに寄り添い、話に耳を傾け、必要な治療や窓口につなげていく。ともにお子さんの成長を見守り、命を守るためのゲートキーパーです。
夜尿症や低身長の外来にも対応しているそうですね。
夜尿症はお子さんの精神面も大きく関わっているため、きめ細かなフォローが重要です。当院ではスタッフも相当時間をかけて夜尿症について学んできました。「早くなんとかしてほしい」と焦る親御さんの気持ちもわかりますが、治療の一歩にはお子さん自身に「なんとかしたい」「治したい」という自覚が芽生えることが必要です。当院では、お子さんの自尊心や心の成長を見守りながら、より良い結果につながるようサポートしています。6歳を過ぎて夜尿でお悩みの方は、気軽にご相談ください。また毎週金曜に大学病院で外来を担当している先生に来ていただき、低身長専門の外来診療も行っています。
これまでの中で、印象に残っているエピソードはありますか?

十年近く前、私が病気で入院している間、診療を代診の先生にお願いした時期がありました。その時、お子さんが一生懸命作ってくれた作品や、患者さんからの励ましのお手紙などをたくさん頂いたんです。「ああ、自分は皆さんのお役に立てているのかな、地域で必要とされているのかな」と胸が熱くなりました。また、遠方に引っ越された方からお礼の手紙が届いたりすると、地域のかかりつけ医として患者さんの人生の一部に関われたのかなと本当にありがたく思います。
人との縁を大切に、今後も地域医療に貢献したい
先生は感染症の専門家でもあると伺いました。

小児科の医師は基本的に誰でも感染症の専門家といえますが、特に日本感染症学会感染症専門医の立場から、新型コロナウイルス流行時には先進の医療情報にも留意し、エビデンスやガイドラインに基づく診断や治療、感染症対策を心がけました。また当時はさまざまな情報が飛び交っていましたので、患者さんが少しでも安心できるような医療情報をメールで配信し続けたりもしましたね。メールでの情報配信は今も続けており、休診や診療時間の変更などの他、流行している感染症や予防接種に関する情報も配信しています。
ウェブ予約やウェブ問診も取り入れているのだとか。
初診の方も含めてウェブ予約が可能で、ウェブ問診は電子カルテのメーカーさんと開発中のものを試験的に運用しています。その他にもキャッシュレス決済など、少しずつデジタル化を進めているところです。また海外に赴任されたり、思うように受診できない遠方の患者さんもいますので、メールでのご相談も受け付けています。
今後はどのようなことに力を入れていきたいとお考えですか?

横浜総合病院など地域の病院との連携を強化していきたいです。小児科も内科も専門的に診られる体制となりましたが、症状や病気によっては当院で診るより大きな病院で診てもらったほうがいいケースもあります。スムーズな医療連携につなげるため、当院では迅速さ・精度の高さにこだわって選んだ検査装置を導入。重篤な病気が隠れていないか、病院に送るタイミングを見逃さないよう、常に適切な診断を心がけています。この点にさらに力を入れ、皆さんの医療の入り口としての役目を果たしていきたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
縁あってこの地で開業して25年余り。おかげさまで多くのご家族との出会いに恵まれました。最近は子どもの頃に来院した方が大人になり、お子さんを連れて来てくれることが増えてきたのですが、地域に根差したかかりつけ医として小児科冥利に尽きる思いです。ご縁を大切に、これからも地域のために頑張ろうと思います。