口の中のケガは軽く考えないこと
外傷歯は一刻も早い治療が重要
タナセ歯科医院
(名古屋市名東区/星ヶ丘駅)
最終更新日:2024/06/14


- 保険診療
外傷歯(がいしょうし)は聞きなれない言葉であるが、簡単に言うと事故や転倒などの外的な力によって起こる歯や口の周りに関するケガのこと。歯が抜ける、欠ける、割れる、めり込むなど、さまざまな症状が当てはまる。口腔内のケガに関する専門知識を有する「タナセ歯科医院」の棚瀬教雄院長は、外傷歯はいかに早急に治療を受けるかが重要だと話す。あまり血が出なかったり痛みが少なかったりする場合はそのままにしてしまいがちだが、歯が変色したり治りの早さにも影響が出るので早期治療は必須なのだという。自分の歯で噛むことを大切に考える棚瀬院長に、ケガをした際の具体的な治療方法や自分でできる応急処置などについて詳しく聞いた。
(取材日2024年5月15日)
目次
外傷は不意に起こってしまうもの。外傷を負ったときは、慌てずとにかく早く受診することが重要
- Q「外傷歯」とはどのような状態のことですか?
-
A
▲外傷歯について研鑽を積んできた棚瀬院長
転んだり何かにぶつかったりして歯が欠ける、歯が抜ける、といった状態のことです。歯を支えている骨が折れる歯槽骨骨折や唇や歯茎が切れることも含みます。虫歯と歯周病以外で痛みが出てくるようなもののほとんどすべてが外傷歯ですね。お子さんの場合、例えば保育園や小学校に行っている間に転んでちょっと歯がぐらつくくらいなら、あまり痛くなかったり忘れちゃったりもしますので、親も気づけないことがあっていつの間にか外傷歯になっていることもあります。お子さんは体の比率的に頭から転びやすいので顔をぶつけてしまうことが多く、また大人でも買い物袋を持っていて手が出せないこともあり、そういったケースでよくケガは起こりますね。
- Qどのようなタイミングで受診するのがよいのでしょうか。
-
A
▲同院では、急患受付に対応し緊急の外来も設けている
とにかくケガが起きた直後、できるだけ早く診させていただきたいですね。ケガが発生してから歯科医師が処置するまでのタイムラグがいかに短いかが結果に影響してきます。できれば30分以内が望ましいといわれています。口の中に関しては、ちょっとぶつかっただけ、ちょっと唇が切れただけ、ちょっと歯がぐらつく、くらいでも受診が必要と思ってください。治療の遅れによってずれたところで歯が固定されてしまうと、歯並びが悪くなったり、神経が死んでしまって色が変わったり、根っこの先が病気になることもあります。乳歯なら生え替わるから大丈夫と思うかもしれませんが、乳歯の神経が死んでしまうと、大人の歯に影響が出る場合もありますよ。
- Q外傷で歯が変色するというのは具体的にどういった状態ですか?
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A
▲治療を行わないと、歯の保存が難しくなることもあるという
痛みはあまり出ていないのに徐々に色が変わってくる、という状態ですね。最初は問題なくても神経は少しずつ死んでいくので、気づいた時には茶色っぽく変色しています。もし歯自体が赤くなる場合は歯が折れていますね。歯にひび割れが入って、中から血が出てきているような状態です。歯の中には神経と血管が入っていて、血管が切れると栄養供給が止まりますので神経が死んでいきます。歯をただ打っただけでは、多くの場合そんなに問題はないのですが、ケガをした時に歯が抜けたり歯脱臼でグラグラ揺れたりするといった場合は神経が死んでしまう可能性があるので、即刻治療する必要があります。
- Qそれぞれの症状の治療方法をお聞かせください。
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A
▲神経が出ている場合は、根管治療を行うこともあるという
抜けてしまった場合は抜けた歯を即座にグッと埋め直します。再植といって、元に戻すことが一番ですね。グラグラしている場合はワイヤーで横の歯と固定してくっつけます。それから歯が折れてしまった場合は神経が出ている折れ方と神経が出ていない折れ方があり、神経が出ている場合は、神経を守るための処置をしてから補綴治療を行います。神経が出ていなければ、歯の形を元に戻すため割れた歯を接着するという方法もあります。折れたり割れたりした歯も保存して持ってきてくださいね。歯茎をケガしてめくれてしまった場合は糸で縫って傷口を塞ぐことが重要ですし、例えば砂などが入っていればきれいに掃除して消毒しなければならないですね。
- Qいざというときに自分で行える応急処置があれば教えてください。
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A
▲できる限り早急にクリニックに相談することが望ましい
歯がグラグラしている時は絶対に触らないことです。歯が落ちて砂や土がついた場合は表面を水で流しますが、歯の根っこを触るのは厳禁ですね。根っこの周りを覆っている歯根膜(しこんまく)を触ると膜が死んでしまいますから。歯科医院に着くまでの間は自分の舌の下に入れて自分の体液で保存しましょう。ただ、コロコロ転がしてはいけません。子どもの場合は飲んでしまう危険性があるので歯の保存液に入れるのがいいと思います。今は小学校の保健室にだいたい置いてあるようですよ。なければ最悪牛乳に入れますが、水だけはやめてください。流血している場合はギューッと抑えて圧迫止血します。また、冷やしすぎは治りが悪くなるので注意です。