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井上 純 院長の独自取材記事

いのうえクリニック

(川崎市宮前区/宮崎台駅)

最終更新日:2020/04/01

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田園都市線・宮崎台駅から徒歩8分。病院勤務の傍ら産院を立ち上げる仕事にも携わってきたという井上純院長が、経験を生かして2002年に開業した「いのうえクリニック」は、広々とした待合室が印象的な産婦人科のクリニックだ。井上院長は「私たちは、妊婦さんのおもてなしはしていません」と言うが、院内は妊婦さんを思う気持ちとホスピタリティに満ちている。各所に置かれたカエルグッズは、「幸福や子孫繁栄の象徴でもある」として先代が集めていたものを引き継いだそう。同時に、「子どもの誕生に携わる、こんな素晴らしい職業はない。今、生まれたこの子は、どんな人間にだってなれる」という父の思いも引き継いだという井上院長に、クリニックのこと、母・父になるということについて、たっぷり話を聞いた。
(取材日2017年5月25日)

主役は母親自身。医師や助産師は全力でサポート

クリニックでは、「お母さんが主役」という思いでサポートに当たられているそうですね。

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今は、妊婦さんに快適なサービスを提供するクリニックが多いですね。その点、当クリニックでは「過剰なおもてなし」はしていません。産科はサービス業ではないと思っているからです。私の言葉は厳しく聞こえるかもしれませんが、私や助産師の仕事は妊婦さんを全力でサポートすることであり、産むのは妊婦さん自身なのです。しかし、私たちがどれだけ妊娠中の体重管理や食事指導を具体的に行っても、妊婦さん自身の意識が変わらなければ安全なお産にはなりません。妊婦さんには、「いかに自分が快適に過ごすか」ではなく、「いかに安全に赤ちゃんを迎えるか」という意識を大切にしていただきたいですね。妊娠したら赤ちゃんを産むために生活を見直し、安全に赤ちゃんを迎える準備を始めましょう。

「おもてなしはしない」とおっしゃりながらも、院内の設備はホスピタリティにあふれています。

もちろん、リラックスしてよいお産をしていただくために、考えつく限りの設備は整えています。お子さん連れで来院される方のためにプレイルームを設け、外来のトイレはおむつ替え用のベッドやベビーキープを備えた広めの設計にしました。診察室にもベビーカーごと入っていただけます。分娩台も広めの設計で、シート部分が柔らかい素材でできているので、四つんばいでの分娩にも対応できるんですよ。4D超音波装置を備えており、立体的な画像で赤ちゃんを見ることもできます。

お母さんと赤ちゃんのことを思う気持ちが伝わります。

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意地悪で言っているわけでなく、良いお産と良い育児をと願っているだけです。ただ、それを厳しいと思われる方も中にはいらっしゃいます。口うるさいおじさんなんだろうなあと自分でも思いますが(笑)、少しでも私の言葉が心に残ってくれればいいですね。私は妊婦さんに1日1万歩は歩いてほしいと言っていますが、これもスムーズなお産には体力が必要不可欠だからです。皆さん、「今日は2駅歩きました」とか、うれしそうに報告してくださいますよ。出産を控えてネガティブになることがあっても、「毎日頑張って体力をつけてきた」というプライドがあれば、きっと乗り越えることができるでしょう。

赤ちゃんは無限の可能性を持った「未来」

「自然分娩・母子同室・母乳哺育」という方針を掲げていらっしゃいます。

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緊急時には帝王切開などを行いますが、基本的には自然な流れを妨げない分娩をと考えています。出産後は母子同室で、十分な広さの部屋でゆっくり過ごしていただきます。赤ちゃんと同じ空間にいることで、母乳の出も良くなるようですね。それでも不安がある方には、母乳相談や母乳マッサージにも対応しています。また、当クリニックでは、お母さんと赤ちゃんのことを第一に考えて、面会時間を制限しています。いろいろな人がひっきりなしに面会に来ると、お母さんも疲れてしまうし、赤ちゃんには刺激が多過ぎて、夜眠れなくなってしまうんです。周囲の方も赤ちゃんが生まれてうれしいと思うのですが、赤ちゃんとお母さんにとっては悪循環ですよね。出産という大仕事を終えた後ですから、お母さんと赤ちゃんには少しのんびり過ごしてほしいと思います。なお、カンガルーケアはお母さんの希望があり、われわれが安全だと判断した場合にのみ行っています。

お母さんと赤ちゃんにとって何が大切か、しっかり考えることが重要ですね。

「将来」と「未来」という言葉がありますが、まっさらで、何にでもなれる可能性を秘めた赤ちゃんが持っているのは「未来」です。夢があるからこその「未来」ですね。大人になると、「将来」のことは考えても、「未来」のことはあまり考えなくなるのではないでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんがどんな素晴らしい人になるのかを楽しみに、大切に迎えてあげましょう。妊娠がわかったときに「いつもどおりの生活でいいですよね」とおっしゃる妊婦さんがいますが、妊娠したらいつもと同じ日なんて一日もありません。尊い命を授かったことに感謝し、どんな親になりたいかをよく考えて過ごしてほしいと思います。覚悟をもって体力をつけて、赤ちゃんを迎える準備をしてください。妊娠は、人が大きく変われるチャンスでもあります。

どんな点にやりがいと課題を感じていらっしゃいますか。

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産科の医師は、一人前になるには10年以上かかる上、不眠不休が続くこともある過酷な仕事です。そのため、若い医師で産科を志望する人は少なく、今後の日本のお産のあり方には不安を感じますね。特に男性のなり手が少ないので、出産や育児を終えた女性医師が現場に戻れる仕組みを国や自治体、医療業界、マスコミも含めて考えていかなければなりません。私も、年を取ればいつまでも同じようには働けなくなるでしょう。それでも今は、常に赤ちゃんの誕生に備え、クリニックから1時間以上離れた場所には出かけない生活をしています。それでも嫌だと思ったことは一度もありません。それどころか、命が誕生する瞬間に立ち会えるなんて、これほど幸せなことはないと思っています。出かけるといえば、愛犬の散歩くらいですね(笑)。

出産後も不安なことは何でも相談できるスタッフ

母親学級も開催されていると伺いました。

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はい。母親学級以外にもお茶会や親子学級を開いて、同時期に赤ちゃんが生まれたお母さん同士でお話したり、「お母さん」の先輩でもある助産師に相談する場を設けたりと、出産後のサポートにも力を入れています。核家族が当たり前になり、身近に悩みを相談できる相手がいないという人が増えました。一人で不安やストレスを溜め込んだ結果、赤ちゃんの未来を摘み取ったりしないように、当クリニックをガス抜きの場として活用していただきたいのです。また、出産と子育てのプロであり、先輩である助産師への相談の場としても利用していただきたいと思います。

スタッフさんを心から信頼されているのですね。

当クリニックがあるのは、助産師をはじめとするスタッフのおかげです。良い産科医には良い助産師が欠かせませんし、良い助産師には良い産科医が欠かせません。スタッフは宝であり、家族のようなものですね。各スタッフの自主性や個性を尊重しつつ、すべてのスタッフが同じように対応できるよう全体のレベルアップを図っています。仕事に役立つ講習会やセミナーにはどんどん出席してもらうようにしているんですよ。また、気をつけるべきことや注意すべきことは全員で共有し、一人の妊婦さんを複数のスタッフで見守るようにしています。出産時に見知った顔のスタッフがいれば、お母さんも安心できますよね。

読者へのメッセージをお願いいたします。

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ここ数年、ご主人だけでなく上のお子さんも出産に立ち会うことができる「子どもの立ち合い出産」を行っています。赤ちゃんが誕生する瞬間を共有するとお父さんも子どもも意識が変わりますよ。特にお父さんの教育になりますね(笑)。私は、二人目以降の育児は頑張りすぎないで、とお母さんに伝えています。その分、もっとお父さんに頑張ってほしい。どんなに忙しくても、子どもと関わる時間を大切にしてほしいと思うんです。子どもが小学校に上がるまでの時期は、その後の親子関係の基盤になるとても重要な期間です。お母さんと子どものためにも、そして自分のためにも、しっかりお子さんと向き合ってほしいですね。私のお勧めは父子旅行です。ぜひ、お母さんを1日でも、半日でも、独身に戻してあげてください。

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