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井上 純 院長の独自取材記事

いのうえクリニック

(川崎市宮前区/宮崎台駅)

最終更新日:2023/09/11

井上純院長 いのうえクリニック main

2002年の開院以来、多くの分娩を手がけてきた「いのうえクリニック」。妊婦を想う気持ちとホスピタリティーあふれる同院は妊娠、出産をはじめ月経にまつわる悩みや更年期障害など、広い分野で地域の女性の健康を支えてきた。そんな同院では、2023年11月から婦人科診療に特化した診療を実施する。「子宮筋腫や更年期障害が気になる方も多いと思います。今後は婦人科の領域で支えていきたい」と井上純院長。また、月経に関するトラブルを我慢してやり過ごす風潮を変えるべく、低用量ピルの適切な服用や子宮頸がんワクチン接種、子宮がん検診の普及など若い世代に向けての啓発にも力を入れている。婦人科の医師として適切な情報を提供していきたいと話す井上院長に、新生「いのうえクリニック」での取り組みについて聞いた。

(取材日2023年4月27日)

月経困難症や子宮内膜症には低用量ピルを

月経困難症など婦人科疾患を中心とした診療をされると聞きました。

井上純院長 いのうえクリニック1

明治の時代の女性は14〜15歳で初経を迎え子どもを6〜7人産んでいました。授乳する期間も長く、一生で経験する月経の回数は50回くらいだったのに対し、現代の女性は、初経は早いですが出産年齢が高く少子化であることから、一生のうちに400回以上月経があるといわれています。月経の数が多いことは子宮内膜症のリスクとなります。子宮内膜症は、月経痛が強いなどの症状以外に不妊症の原因となることが問題です。婦人科の医師としては、鎮痛剤を使用しなくてはいけないほどの月経痛があるのであれば、その時点で介入し、鎮痛剤で紛らわすのではなく、子宮内膜症を前提とした低用量ピルなどによるホルモン療法で子宮や卵巣を良い状態に保っていければと考えています。

月経痛は我慢するものと思っている人も多いのではないでしょうか。

昔から「月経は自然のものだから、薬は服用しないほうがいい」といった指導や教育がされてきましたが、それは産婦人科の医師としては非常に残念なことです。中高生の中には、月経の前後を含めて月の半分も体調が優れないにもかかわらず、我慢して学校に通っている子もいます。そこで、お勧めしたいのが低用量ピルです。低用量ピルは保険適用で、世代が進みどんどん使い勝手が良くなってきています。基本的には初経が始まったら服用は可能ですので、本人の希望や意見を確認した上で産婦人科の医師にご相談ください。月経の痛みや煩わしさに邪魔されることなく試験や部活動に打ち込みたいという時、低容量ピルを適切に服用することも一つの方法です。

低用量ピルを使って月経のコントロールを図るということでしょうか。

井上純院長 いのうえクリニック2

妊娠を希望する人にとって月経が定期的に来ることは大切ですが、中高生や妊娠を希望していない女性は月経に伴うトラブルを回避するために、低用量ピルで月経の周期のコントロールを図る方法があります。また、月経困難症、月経過多、子宮内膜症など治療目的で処方される場合は保険適用となり、避妊用や月経周期の変更に用いる場合は自費診療となります。

子宮頸がんを予防すべく、ワクチン接種率向上に努める

自分で生理のコントロールを図れる時代なのですね。

井上純院長 いのうえクリニック3

初経から閉経まで、女性が生理のトラブルで嫌な思いをしたことは1度や2度ではないと思います。生理に随伴するトラブルを当たり前のように受け入れてきたかもしれませんが、それはもう一昔前のことです。薬を使うことは負けではありません。低用量ピルの副作用として血栓症を心配されますが、ピルを服用しているよりも妊娠している状態のほうが血栓症になりやすいため、過度に不安に思う必要はないでしょう。若い世代が低用量ピルによって月経のトラブルから解放されると同時に、婦人科への敷居が下がれば、子宮頸がんワクチンや妊娠などについての情報を伝えることもできます。今後も当院を受診してくれた人には適切な情報をお伝えし草の根的に広めていきたいと思います。

子宮頸がんワクチン接種の普及にも力を入れているそうですね。

子宮頸がんの好発年齢は30代で、ちょうど子どもを産みたいあるいは子育て中の世代に多く発症することからマザーキラーと呼ばれています。子宮頸がんは性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで起こりますが、HPVはそのほとんどが自然治癒します。しかし、自然治癒しない場合は前がん病変である子宮頸部異形成を経て子宮頸がんに進行する恐れがあります。数あるがんの中で予防のためのワクチンがあるのは子宮頸がんだけです。対象者に対する接種率および子宮頸がん検診の受診率を向上させることで、子宮頸がんの患者さんを減らしていけるように努めていきたいです。

ワクチンによってがんの発症予防が期待できるのですね。

井上純院長 いのうえクリニック4

子宮頸がんワクチンを導入している先進国では子宮頸がんは減少しつつあり、特にワクチン接種率と検診率の高いオーストラリアでは将来的には子宮頸がんは撲滅するだろうと推測されています。日本では、2022年に積極的勧奨が再開され、現在、小学6年生から高校1年生に該当する12歳〜16歳に対する定期接種が行われています。このワクチンは女性のものと思われがちですが、男性が感染しなければ女性にも感染しないため、欧米では10歳くらいの男女に接種しています。いつ妊娠するのか、いつ産むのかを決めるのは女性です。その権利を大切にするためにも、若い頃から産婦人科の医師を巻き込んでさまざまな知識を身につけた上で、予防できる病気は予防してほしいと思います。

誤った医療情報に対して適切な情報提供を丁寧に伝える

更年期障害についてはどのような診療を行うのですか?

井上純院長 いのうえクリニック5

更年期障害ではホルモン充填療法を行っていきます。ホルモン充填療法の副作用でよく話題になる乳がんですが、更年期障害は一生続くものではないため、ある一定の期間であれば問題ないとされています。そうであれば、いらいらや気持ちが沈む、のぼせやほてりなどから解放されるほうがいいでしょう。薬は、飲み薬、シール、ジェルなどの種類があり、サプリメントを用いることもあります。月経は50歳くらいまではあるのが理想的で、40代で生理が止まると、産婦人科医は病気と捉えますが、実際に40代で止まっても病院に行かない人が多いのが現状です。45歳以下で無月経になると急激に骨密度が下がり、骨折しやすくなります。そこから骨密度を増やすのは大変なので、骨粗しょう症の予防のためにもホルモン充填療法をうまく利用することをお勧めします。更年期を上手に乗り越え、元気なおばあちゃんになりましょう。

経口妊娠中絶薬が承認されましたね。

経口妊娠中絶薬は妊娠9週まで使用することができます。2種類の薬があり、最初の1錠を飲んでから36〜48時間後に2錠目を服用し中絶を完了させますが、かなり強い生理痛のような痛みを伴い、出血量が数倍になるなどの理由で、入院施設のある病院でのみ取り扱うことになっています。日本の産婦人科では中絶手術を長く行ってきた歴史がありますが、出産と同じように安全に配慮した人工妊娠中絶ができることはとても大切なことで、選択肢が増えるのは悪いことではありません。間違った情報に惑わされないよう丁寧に説明することが今の時代には必要だと感じています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

井上純院長 いのうえクリニック6

子宮がん検診を受けましょう。受診率は少し増えてはいますがそれでも欧米に比べるとまだまだ低いです。内診台に抵抗がある人がいますが、内診台は診察や手術の際のトラブルが回避しやすいようになっており最終的には患者さんにメリットがある構造になっていますので、ご理解いただければと思います。お嬢さんのいるお母さんたちは、ぜひお子さんの月経に親身になって向き合ってください。「私は困ることがなかったから」と流してしまわずに、学校で困ったことはないか話を聞いて、何かあれば、気軽に婦人科を受診してほしいと思います。性交渉の経験のない女性には絶対に内診はしませんので安心してください。それが婦人科との付き合いの第一歩となればと思います。

自由診療費用の目安

自由診療とは

避妊のための低用量ピル/1万4000円程度
月経周期変更のための低用量ピル/8000円程度

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