ケースに応じて他の矯正法も併用
マウスピース型装置を使った矯正
いくま歯科医院
(京都市伏見区/伏見桃山駅)
最終更新日:2023/06/29
- 自由診療
透明で目立ちにくいマウスピース型装置を用いた矯正の普及で、矯正中の“不便”や“恥ずかしい”は大きく軽減された。手軽さに惹かれて矯正を検討する人が増えているが、その一方で、実際にどのようなメリットやデメリットがあるのか、どんな歯列の矯正に対応できるのか、疑問を持っている人も多いのではないだろうか。そこで、マウスピース型装置を用いた矯正を手がける「いくま歯科医院」の伊熊直記院長に、この矯正法の特徴や注意すべきポイント、矯正に対する同院の考え方について尋ねた。矯正に興味がある人、マウスピース型装置を用いた矯正を検討している人は、「マウスピース型装置を使った矯正は決して万能ではない」という伊熊先生の意見を参考にすると良いだろう。
(取材日2021年11月15日/情報更新日2023年6月26日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qマウスピース型装置による矯正の特徴やメリットは何でしょう。
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A
大きなメリットは装置が目立たないことです。歯科医師や歯科衛生士が見ればわかりますが、一般の人が見ても矯正をしているとはわかりにくいでしょう。また、従来の矯正装置は複雑な形をしていて外すことができず、食事やお手入れの際は不便を感じる人も多かったと思いますが、この矯正では食事や歯磨きの際には自分で取り外せるので、おいしく食事ができ、歯磨きがしやすいことも利点です。矯正中の痛みもワイヤー矯正より少ないと思います。ただし、自在に外せるというメリットが逆にデメリットにもなるのがこの矯正の特徴です。たびたび装置を外して装着時間が規定より短くなると計画どおりに矯正が進まないケースもあります。
- Q先生が矯正を行う際に重視されているポイントを教えてください。
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A
歯並びが乱れるのには原因があります。例えば、舌癖(ぜつへき)と呼ばれる舌を出す癖、寝相、頬づえ、顎の発達不全などです。こうした原因を改善しない限り、歯列をきれいに整えたとしてもまた後戻りしてしまうので当院では事前に原因を見極め、その人のお口の状態によって口腔筋のトレーニングを行ったり、舌の動きを制限する器具や床矯正といって顎の骨を広げるための拡大装置を使用したりします。顎の骨を広げることで、口呼吸から鼻呼吸への移行を促す呼吸の質の向上などが期待できます。私はワイヤー矯正の経験もあり、口腔内の状態と全身の健康の関わりにも注目しており、こうした原因を除去するため床矯正にも積極的に取り組んでいます。
- Qさまざまな矯正法に対応しているのですね。
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A
当院では、マウスピース型装置による矯正法と従来のワイヤーによる矯正法、それぞれの長所を生かした矯正を実践しており、ケースによっては両者を併用することもあります。マウスピース型装置は、歯を動かす距離が少ない場合や過去に受けた矯正の後戻りに対して行う矯正には有用ですが、抜歯を行って歯を大きく動かす場合や、歯を引き上げる動き、歯を回転させる動きを苦手とします。また、定められた装着ルールを守る必要があり、つけ外しが面倒と感じる方や、夜飲酒してそのまま寝てしまう習慣がある方には、マウスピース型装置はお勧めできません。このため、カウンセリングの際にその患者さんの性格や生活習慣を聞き出すようにしています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1カウンセリング
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矯正についての希望や歯列に影響を与えると考えられる生活習慣などについてヒアリングが行われる。同院では歯列が乱れる原因を取り除くことを重視しているので、場合によっては矯正の前に原因を改善、除去するための治療やケアが行われることもある。また、さまざまな矯正法に対応しているので、複数の矯正法を併用するケースも可能。マウスピース型装置が不向きと判断した場合は、従来の矯正法を勧められることもある。
- 2シミュレーションの作成
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歯の移動が少ない矯正の場合は、歯並びをスキャンしてデジタルシステムを用いた矯正後の3Dのシミュレーションを作成。一方、抜歯を伴うなど難しいケースの場合は、マウスピース型装置による矯正以外の矯正法が必要になることも多いので、口腔内写真のほかエックス線検査、一部の症例ではCT撮影が行われることもある。こうしたケースでは、画像の資料をもとにアナログで矯正後の歯並びを設計することも少なくないという。
- 3矯正計画の説明
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完成した3Dシミュレーションをモニターで確認しながら、矯正の進め方について詳しい説明を受ける。矯正によって歯並びがどう変化するのか、3Dで確認できるのでとてもわかりやすい。説明では、採用する矯正法のメリットやデメリット、注意点についてもわかりやすく解説してもらえる。普段の生活にも関わってくる内容も多く、しっかりと理解して臨みたい。計画に同意すれば矯正がスタートする。
- 4定期的な通院
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矯正が始まると、最初の数回は2週間ごとをめどに通院する必要がある。患者が装置の取り扱いに慣れていない初期には、特に注意すべきポイントが多いからだ。その後は、3ヵ月に1度を目安に通院して、矯正の進み具合などについてチェックを受ける。事前の計画どおりに矯正を進めるためには、あらかじめ定められた装置の装着時間を守り、歯科医師の指示に従って順次マウスピース型装置を交換していくことが大切だ。
- 5矯正終了後
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マウスピース型装置による矯正が終了したら、次は後戻りを防ぐためにリテーナーと呼ばれる装置を装着する。装着期間の目安は2年。規定では最初の1年は24時間、2年目は夜間のみ装着すると定められている。経年による歯茎の変化などに伴い歯並びも変わるので、同院では夜間装着の継続を勧めている。歯に対する意識が向上し、セラミックによる補綴治療やホワイトニングなど、審美面に配慮した治療やケアを希望する人も多いそう。
自由診療費用の目安
自由診療とはマウスピース型装置を用いた矯正/76万7800円~、ワイヤー矯正/88万円~、ホワイトニング/1万1000円~、セラミックを用いた補綴治療/5万4780円~ ※矯正についてはそれぞれ床矯正を含む金額
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。