篠原茉莉院長の独自取材記事

しのはら歯科医院

(枚方市／枚方市駅)

最終更新日：2025/11/26

枚方市駅から徒歩約7分の場所にある「しのはら歯科医院」。1996年開業の地域に根差したクリニックで、親子3代で通う患者も珍しくない。篠原茉莉院長のモットーは、患者の話をしっかりと聞き、「家族にしてあげたい治療」を提供すること。できる限り歯を長く保てるよう、削る、神経を取るといった治療を最小限に抑え、再治療を少なくするための診療を提供する。大阪大学歯学部で補綴を専門に研究し、マウスピースの製作も得意分野の一つという院長。睡眠時無呼吸症候群の治療に用いるマウスピースの作製にも注力しているとか。「どうしてこうなるのか、なぜ悪くなるのか」を探求することが大好き、と語る篠原院長に診療ポリシーや歯科医療にかける思いを聞いた。

（取材日2025年4月23日）

患者の思いをしっかり聞き取る診療を
悪くなる原因を明らかにするため、全身を診る
患者にとってより良い治療を追求する

患者の思いをしっかり聞き取る診療を

患者さんと接する際にどんなことに気をつけていますか？

大阪大学歯学部附属病院で勤務していた時、患者さんの悩みや思いをすべて吐き出していただかないと、こちらの話を聞いて治療を受け入れてもらえないことを実感しました。当院では、しっかり時間を取って患者さんのお話を伺うことから始めます。また、治療の際はできる限り出血させないように注意します。傷口から菌が侵入して体中に巡ってしまうこともあるので、細心の注意を払います。コップの水や削る際に出る水などはすべて殺菌した水を使用し、出血した場合でも雑菌が入らないように、口内が常にきれいな状態で治療を進めるように努めています。

先生の診療に対するモットーとは？

「自分がされたくないことはしない」です。患者さんを自分の家族だと思い、家族にしてあげたい診療を心がけています。家族を思いやるように丁寧に説明し、納得してもらってからご自身で治療方法を選択してもらいます。治療の際はなるべく再治療しなくていいように、健康な歯を長く持たせることをめざします。さらに、患者さん一人ひとりに合わせたメンテナンスで小さな変化にも気づいて、さまざまなアドバイスをします。

こちらのクリニックならではの取り組みはありますか？

高齢の方や全身疾患のある患者さんの場合、初めに血中酸素濃度と血圧を測ります。持病がある方は、血圧の変動、服用薬を確認するようにしています。また、患者さんの動作を観察して、唇を噛む、足を組むといった小さな癖は、歯だけでなく全身との関わりがあることについてもお伝えしています。噛み合わせの不具合が聴力に現れることもあるため、歯の治療だけでなく、全身のトータルサポーターとして患者さんに寄り添いたいと考えています。医科のクリニックとも連絡を取りながら、気をつけることなどを常に共有・連携して治療を進めています。生まれた時から最期の瞬間まで、その方の人生に寄り添っていきたいと思っています。介護が必要になる時期をなるべく短くし、健康でその人らしい人生を全うしていただきたいですね。

歯科との関連が深いとされる糖尿病についても学んでいらっしゃるとか。

はい。歯周病と糖尿病の関係については最近、よくいわれていますし、当院にも糖尿病の患者さんが来院されます。何か役に立てば、と思いまして糖尿病に精通した先生の講演を聞きに行き、以来、力を入れて勉強しました。昔から歯科以外にも、全身の疾患に興味があり、そこから派生して症状にアプローチするために漢方薬も処方しています。これからも自分の好奇心のアンテナは、張り巡らせておきたいと思っています。

悪くなる原因を明らかにするため、全身を診る

お子さんの歯の健康について気がかりなことがあると伺いました。

3年ほど前から、近隣の保育園へも歯科健診に行くようになりまして、すごく顎が狭くて、乳歯の歯並びの悪い子どもたちが多いことに驚きました。大人の歯がガタガタの子は矯正などで治療してきましたが、乳歯ですら、ちゃんと並んでいない幼児がいる。これでは1.5〜2倍大きい永久歯が並ぶわけはない、と危機感を持ちました。顎が狭いと普段から呼吸がしにくく、脳へ送る酸素も不足しがちになるため、夜の眠りも自然と浅くなってしまい、結果として子どもの成長にも影響を及ぼしかねません。また、いびきや歯ぎしり、おねしょの治らない子も増えていると聞きます。歯科では顎の成長や口腔筋機能の発達に着目した咬合育成という方法もありますので、お子さんのお口のことで気になっている親御さんはかかりつけの歯科医院にまずは診断を仰いでみてはいかがでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療にも取り組んでおられますね。

はい。就寝時にマウスピースを使用していただいく治療を行っています。睡眠時無呼吸症候群の治療では、CPAP（シーパップ）が一般的ですので、併用しながら継続していただくことで改善を図ります。新型コロナウイルス感染症の流行以降、食いしばりやいびき、歯ぎしりが非常に増えていることも心配です。歯に力が加わることで歯がすり減り、ひびが入りぐらつき、また顎の痛みを訴える方も増えています。これらはすべて力が問題なのです。むし歯菌や歯周病菌以外に、力によってもお口の中は壊れていきます。そういう力の伝わりを抑えるためには、口の中の筋肉を重力に負けないように、トレーニングすることが大切です。

歯周病には内科的治療でアプローチしておられるそうですね。

ある程度ひどくなった歯周病に対しては、歯ぐきを大きく切って中を大掃除して縫うという、外科的な治療しかありませんでした。けれど外科的治療には、痛みも怖さも伴います。以前、外科治療を受けて「もうあんな痛い治療はしたくない」とおっしゃる患者さんがいて、どうにかならないものか、いろいろと調べて見つけた治療法が内科的な治療法です。まずお口の中にどのぐらいの細菌がいるのかを、顕微鏡を使って検査します。歯周病の重症化リスクや重度になる傾向が見られた場合には、新型コロナウイルスが流行したことで知られるようになった、PCR検査をお勧めしています。そうして総合的に判断した結果に基づいて、抗菌のお薬を処方し、お薬が作用している間に口腔内全体を大掃除する、というような治療です。菌叢は3ヵ月たつと戻るといわれています。歯周病も生活習慣病の一つなので、1回の治療だけでなく、メンテナンスを続けることは必要ですね。

患者にとってより良い治療を追求する

ホワイトニングにも力を入れていると伺いました。

15年ほど前から取り組んでおり、新しい機械を導入したことで、患者さんの負担が少なくてメリットが多い施術を提供しています。ホワイトニングに特有の「しみる」症状や食事制限がほぼなく、施術直後からカレーやコーヒーを口にしてもらえるのが、当院のホワイトニングの特徴です。さらに、歯に対するダメージもほとんどありません。薬剤などの価格が見直され、経済的な負担もかなり軽減されていますので、患者さんにとってメリットは大きいと思います。

ホワイトニングの流れを教えてください。

まず測色器という機械で患者さんの歯の色を計測します。数値化することで歯の色を客観的に把握でき、「現状がこの色で、この色をめざします」と説明できます。さらに笑顔の写真を撮影します。笑った時にどこまで歯が見えるのか確認して、どの歯までホワイトニングを行うのか決めるのです。施術は3回で、施術後は通常の歯科治療と同じように、3〜6ヵ月に1回通院していただいてクリーニングを行い、測色器で歯の色をチェックします。必要な場合は再度ホワイトニングをしたり、次のホワイトニングの時期を決めたりします。

今後どのような診療を続けていこうとお考えですか？

変えないで続けていきたいところは、当院の「患者さまのために取り組む」という想いです。その想いをスタッフ全員で言葉にし、カードにまとめた「クレドカード」と向き合いながら、治療時に用いる薬剤は体への負担を配慮するなど、これからもより良い治療を提供するために何ができるのかを、全員で考えて取り組んでいきたいと思います。さらに新しい視点で診療できるようにとの思いから、今年から歯科医師の息子が非常勤で診療に参加しております。患者さんの健康寿命をのばすために、西洋医学だけでなく東洋医学の観点からも好奇心を持ち、全身の健康を視野に入れて幅広く診療して行きたいと考えています。