大窪 康修 院長の独自取材記事
おおくぼ歯科医院
(高槻市/高槻駅)
最終更新日:2025/05/14

JR京都線の高槻駅西口から西へ徒歩約6分の場所にある「おおくぼ歯科医院」。青い看板が目印の同院は1996年に開院し、2006年に現地に移転開院。院長を務める大窪康修先生は大学卒業後、一般歯科医院の勤務医や分院長として研鑽を積みながら、障害者の歯科診療にも幅広く携わってきた。労働衛生コンサルタント資格を保有するユニークな経歴の持ち主でもある。貫禄のある風貌に圧倒されそうになるが、話し始めると温かな人柄と優しさがにじみ出る。「焦るな、怒るな、いばるな、腐るな、負けるな」の頭文字を取り、その精神を表すという、同院のロゴマーク「あおいくま」のイメージそのものだ。「怖い先生だという噂は本当ですよ(笑)」と朗らかに笑う大窪院長に、診療やスタッフへの思いを詳しく聞いた。
(取材日2024年12月27日)
今までもこれからも地域住民の口の健康を見守り続ける
開院までの経緯を教えてください。

北海道医療大学歯学部を卒業後、1年間大阪府の歯科医院に勤務し、その後は秋田県で歯科医院の分院長を務めていました。契約期間の終了時に、高槻市内で移転される先生がいるから、そこで開院しないかという話を頂いて、1996年に上田辺町で開院したのが始まりです。10年後の2006年に移転し、現在に至ります。移転後しばらくしてから、駅前の道路の拡張工事が行われたので、広々として来院しやすくなったのではないかなと思います。
どのような患者さんがいらっしゃいますか?
現在は、大半が地域の年配の方で、上品な方が多いなという印象です。中には移転する前から25年以上通ってくださっている患者さんもいらっしゃいます。夕方以降は、学校の歯科検診で何らかの指摘を受けた子どももよく来ていますね。歯科・小児歯科・歯科口腔外科に対応していますが、突然の歯の痛みや他院で作られた入れ歯の不具合で受診されるケースが多いのが特徴です。当院では歯の健康を守るために定期検診を重視しているので、治療が一段落したら、3ヵ月後の検診の予約を取っていただくようにしています。後からメールやはがきを送るとなると、患者さんはスケジュール調整が面倒になってしまいますし、スタッフの仕事も増えてしまうのでご協力をお願いしています。
障害者の歯科診療にも携わっていらっしゃると伺いました。

秋田県で分院長を務めていた時に、近所の精神病院でアルコール中毒や統合失調症の患者さんの歯科診療の経験を積みました。現在は高槻市立口腔保健センターの障害者診療専門のチームに入っていて、他の先生方と意見交換をしながら、精神疾患や身体・知的障害のある方の歯科診療を行っています。当院にも車いす専用の診療台を設置していますし、リクライニング機能のある車いすなら、そのまま診療できるスペースも設けています。
保険診療をベースに、丁寧な診療をわかりやすく進める
治療方針について教えてください。

「保険診療をベースにした丁寧な治療」です。日本の国民皆保険制度は非常に優れた制度だと考えており、できる限り保険診療内での治療を提案しています。その上で、目に見えないところも手を抜かず、丁寧に治療することを大切にしています。例えば、根管治療で歯の根っこをどのように治療したのかは、患者さんには見えません。治療にはとても時間がかかるのに、保険点数は低い。けれども、そこで手を抜くと、何年か後になってトラブルが起こる可能性があります。だからこそ、見えないところも丁寧に治療します。入れ歯を作る場合も、後からゆがみやずれが起こりにくいように、当院では必ず2回型採りを行っているくらいです。
患者さんに接するときは、どのようなことを心がけておられますか?
少しでもリラックスしてもらえるように、親しみやすい対応を心がけています。診療の際にひざ掛けを掛けている場合でも、足先を見ると、力が入って緊張しているなというのがわかるんですよ。力を抜いてもらいたくて、「楽にしてくださいね」と声をかけることもあります。普段と違う様子があったら「今日はどうしたの?」と声をかけたりもします。歯科医師は口の中だけを診ていればいいというものではないんです。また、患者さんに説明する際に専門用語は使いません。わかりづらかったり、誤解が生じたりしないよう、簡単な言葉で話すように心がけています。治療計画については、カバーをかけたエックス線フィルムに直接、図や治療順序を書いて説明しています。最終的にこういう状態にするために、今はこの治療が必要で、次はここを治療するという流れをわかりやすく説明します。
スタッフさんに対してはどのようなことを求めておられますか?

仕事は「正確に早く美しく」が大事だと考えているので、スタッフに対してはときに厳しいことも言いますよ。適当にゆっくりやっていたら、型採りに使う材料も固まってしまいますからね。スタッフが一つ一つの業務を正確に早く美しくできるというベースがあってこそ、患者さんに対して丁寧で質の高い治療を提供できると考えています。一方で、スタッフとは何でも話せる関係が大事だと思っているので、仕事を離れたところでもコミュニケーションを取るようにしています。新型コロナウイルス感染症流行前はみんなで焼肉を食べに行ったり、旅行に行ったり、僕の実家で芋掘りを楽しんだこともあります。
専門的な知識を生かして質の高い医療の提供をめざす
「労働衛生コンサルタント」の資格をお持ちだそうですね。

労働衛生コンサルタントは国家資格で、労働者の安全衛生水準の向上のために、事業所の診断や指導を行うものです。単に知識がある人になるよりも、国家資格を持つ人になったほうが良いなと考えて、2度目のチャレンジで2020年に取得しました。労働衛生コンサルタントの知識は、普段の診療にも役立っています。
どのようなところで役立っていますか?
院内での事故を防ぐために、患者さんがスリッパを脱ぐ位置やワゴンの位置などは、パッと見てわかるようにカラー表示をしています。また、労働災害の分野では、一つの重大な事故の背景には29の微細な事故があり、300のヒヤリハットがあるという「ハインリッヒの法則」があります。ヒヤリハットだから、軽微な事故だからと放っておくと、重大な事故につながる恐れがあるということですね。ですから、スタッフには何でも報告してくれるようにと話をしています。例えば、受付では、患者さんが診療中には言わないことを患者さんがポロッと話すことがあるんですよ。「今日の治療は痛かった」とか「口を開けると顎が痛いんだよ」とかですね。それをスタッフにちゃんと報告してもらい、カルテに書いておくことで、次回の診療に生かせます。
歯科特殊健康診断にも対応しておられるそうですね。

業務で塩酸や硫酸などの酸を使う事業所の方などが年に2回受ける歯科検診のことです。こうした職場では揮発した酸がお口の中に入り、その影響で歯が溶けていく恐れがあるためです。通常の歯科検診とはまったく異なり、虫歯や歯周病のチェックではなく、あくまで酸による歯や歯茎、歯を支える骨に対する影響を診ます。影響が見られた場合も、それが本当に仕事によるものなのか、例えば日曜大工が趣味でよくペンキを使うなどプライベートに関係しているのか、はっきり鑑別しなければなりません。場合によっては、事業所の実際の作業現場の環境を確かめさせていただくこともあります。この他、企業の健康経営の一環として、企業歯科検診や歯科特殊検診にも力を入れています。
最後に患者さんへのメッセージをお願いします。
僕は怖い先生だって言われていますが(笑)、患者さんには優しく接しますので安心してください。また、当院は来院しやすい環境を整えており、車いすの方や、小さいお子さん連れやベビーカーでお越しの方も診療室の中まで一緒に入っていただけますので、気軽にいらしていただきたいですね。歯科特殊健診や企業歯科検診も、ぜひご相談ください。当院でもご年配の患者さんが多くなり、健康管理がいっそう重要となってきました。年齢を重ねた方には、当院では起床してすぐに口の中をゆすぐ、または、ペーストを使わずに歯磨きをすること、そして週に1回程度の舌の掃除をお勧めしています。いずれも肺炎や感染症の予防に役立つので、ぜひ習慣にしてください。