岩崎 敏明 院長、岩崎 弘子 さんの独自取材記事
ヒロ歯科医院
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日:2024/11/15
宮前平駅から徒歩15分、閑静な住宅街にある「ヒロ歯科医院」。1992年の開業以来、長年にわたり地域に根差して診療を続ける同院は、2021年9月に建物全体を改装した。外観も内装もきれいで、まるでカフェのようなぬくもりのある雰囲気。院長を務める岩崎敏明先生は、地域のかかりつけ歯科医師として子どもから高齢者まで幅広い世代の歯科診療に対応。一人ひとりの患者とのコミュニケーションを重視し、生活背景も踏まえた適切な診療を提供するよう努めている。また、感染対策や安全対策に関してもきちんと講習を受けて対応しているという。「地域の方々の健康を見守ることが、当院の願い」と優しく語る岩崎院長と、歯科衛生士として院長の診療をサポートする妻の岩崎弘子さんに、院内のこだわりや診療方針、今後の展望など幅広く聞いた。
(取材日2022年6月9日/情報更新日2024年5月22日)
誰もが気軽に立ち寄れるクリニックをめざして
改装にあたってはどんな点にこだわられましたか?
【敏明院長】「普通の家のように見えて、実は歯科医院だった」というような、歯科医院らしくない雰囲気づくりを意識しました。ここは閑静な住宅街なので、その町並みに溶け込むような造りにしたかったというのもあります。「きれいになった」というお声も多く、患者さんの評判も上々です。
【弘子さん】通り沿いに掲示板を設置したことです。来院される方だけでなく、通りすがりの方にもお口の健康に関する情報を知っていただきたいと思ったのです。掲示板には、元気が出るようなフレーズを記した絵手紙も掲示しています。お仕事を終えて帰ってこられる地域の方々がそれを見て、「明日も頑張ろう」と思ってくださったらうれしいです。
待合室にキッチンや大きなテーブルも備えていますね。
【敏明院長】診療時間外に食育指導を行うこともめざしているからです。待合室を居心地良く感じてくださるのか、予約時間より早めに来院されてテーブルで本を読む患者さんや宿題をするお子さんもいますね。
【弘子さん】私は、地域にお住まいの一人暮らしのご高齢の方が集まってお食事やお話をする集いにも参加させていただいています。この地域には認知症カフェも多くあるのですが、ボランティアの方々の多くもご高齢なのが現状。それでご高齢の方はもちろん、子育て中のお母さんや子どもたちも含めて、地域の方々が気軽に立ち寄れる場所をつくりたいと思ったんです。ゆくゆくは、このスペースを使って介護食のワークショップも開催できたらいいですね。
このエリアで開業した経緯や患者層についてお聞かせください。
【敏明院長】この場所にもともとあった歯科医院を引き継ぐ形で1992年に開業しました。私は歯学部を卒業後、前身の歯科医院に入職したのですが、先代の院長がお亡くなりになられたため、急きょ引き継ぐことに。それ以来地域に根差して診療を続けてきました。この地域でも高齢化が進んでいるため、比較的ご高齢の患者さんが多かったのですが、昨年改装してからは、若い方やお子さんの患者さんも増えてきました。昨今在宅勤務が増えてきたこともあり、土日にしか来院できなかった方が平日にいらっしゃることもあります。ご高齢の患者さんの場合、痛みの症状が出てから来院される方も多いのが現状なので、気さくに世間話をするなど予防のために定期的に通いやすい雰囲気づくりに努めています。
地域に密着した歯科医院として、人々の健康を見守る
クリニックの診療方針を教えていただけますか?
【敏明院長】地域の方々の健康を見守ることが当院の願いなので、食育指導や高齢者支援にも取り組みたいと考えているのです。診療においては、単に治療して終わりというのではなく、お口の健康を継続的にサポートしたいと思っています。それをご理解いただくためにも、お悩み相談や世間話を交えつつ、お一人お一人と時間をかけてコミュニケーションを図ることを大切にしています。例えば、虫歯になるのは、歯磨きの仕方が良くないだけでなく、食事などの生活習慣に問題があることも。最近だと、ストレス社会の影響か、若いママさんの食いしばりや噛みしばりが増えているように思います。お口の中を見ただけでは不調の原因がわからないこともあるため、生活背景についてもお聞きすることは欠かせません。患者さんとの信頼関係を深め、ご状況に合わせて親身にサポートしていきたいと思っています。
最初からそのような診療スタイルだったのですか?
【敏明院長】地域のかかりつけ歯科として人と人とのつながりを大切にしてきましたが、一人ひとりに十分な時間が取れない時期もありました。診療を続けるうちに、「これではいけない」と考えるようになり、高齢者支援を行う妻から地域の現状について聞いたことも、診療スタイルに大きく影響しました。
【弘子さん】虫歯を治して終わりではなく、その先も長くお支えするために、患者さんの生活背景をよく知ることは大切だと思うのです。私たち夫婦は、さまざまな国から来た留学生の支援にも携わってきたのですが、彼らを支えるにあたり、生活背景を知ることはとても大切。留学生の子たちとの関わりも、主人の診療スタイルに大きく影響したように感じますね。
弘子さんは訪問歯科の経験も積まれているようですね。
【弘子さん】義母を看取った後、「訪問診療を学びたい」と思い、訪問歯科専門のクリニックに5年ほど勤務しました。ご自宅や施設に伺ってケアを行ううちに、お口の状態が悪くなる前に早めにサポートすることの大切さを痛感。また、一従業員としてできることに限界を感じたため、ここに戻って主人とともに働くことに決めました。当院でも通院が難しい患者さんのために訪問診療を行っており、訪問時には、治療だけでなく患者さんとの世間話を大切にしながら、お一人お一人が最期までお口の健康を保てるようサポートしたいです。
食育についてもお聞かせください。
【弘子さん】もともと食育は大切だと考えていて、自分の子どもに手作りの料理を食べさせることはもちろん、食事メニューを一緒に考えたり、地域のカルチャースクールで調味料の作り方を教えたりしたこともあります。食に興味が湧けば、お口の中への関心も高まると思うのです。食に興味を持つ子どもが増えることが私の願い。来院されるお母さんたちに食生活についてのアドバイスを行うこともありますね。
一住民として、楽しく暮らせる地域づくりに貢献したい
院長先生はなぜ歯科医師を志したのですか?
【敏明院長】もともと歯科医師の家系ではなく、私が小学生の頃に親戚が歯科医師の先生と結婚し、私自身歯の生え方が悪かったこともあり、その先生に歯並びを調整してもらったんです。治療を受けた時に、「ワイヤーを曲げてこんなことをするだけで歯を矯正できるんだ」と子ども心に感動し、それがきっかけで歯科医師を志すようになりました。
今後の展望についてお聞かせください。
【敏明院長】今後もお一人お一人の患者さんを誠心誠意サポートしていきたいですね。また、当院の診療スタイルについて皆さんにご理解いただけるようにも努めていきたいと思っています。今後は待合室を使って食育指導を行いたいですし、講演や検診など歯科医師会での活動にも積極的に携わりたいですね。
【弘子さん】超高齢化社会を迎えている中で、近隣の助け合える関係性が重要だと感じており、人と人がつながる場となれるよう地域交流にも貢献したいと思っています。地域の方に会ったら、「今日は暑いですね」とお声をかけるよう心がけていますね。皆さんが気軽に立ち寄れるクリニックが理想です。
最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
【弘子さん】当院では、特にお子さんの診療に時間をかけるよう心がけています。幼い頃の記憶は長く残るので、歯科治療でトラウマを抱えてほしくないのです。お子さんと一緒に来られない親御さんには、お口の中の写真を通話アプリで送るようにしています。また、中学校検診に力を入れており、親御さんのご都合でなかなか歯科医院に受診できないお子さんに向けては、どうしたら歯の予防ができるかなどもお伝えしています。「会いに行きたくなる歯医者さん」になれればうれしいですね。
【敏明院長】2~3ヵ月に1回の頻度でメンテナンスに通ってくださる患者さんも多くいます。治療して終わりではなく、口腔内の健康状態を維持していくことが大切なので、定期的に受診していただければと思います。人と人とのつながりが希薄になった今だからこそ、人とつながることは大切。歯科医師というより、一住民として皆さまと関わっていきたいですね。