畠山 善行 院長の独自取材記事
PIO畠山歯科
(大阪市中央区/長堀橋駅)
最終更新日:2021/10/12
心斎橋の商店街から堺筋方面へ続く、にぎやかな繁華街を進むと小学校が見えてくる。その隣にある「PIO畠山歯科」は、先代からは60年以上、畠山善行院長が1992年に島之内から移転開業してからも約30年、この地域で歯科診療を続けている。畠山院長は大阪歯科大学卒業後、歯周病を専門とし米国の大学院に進学。以来ずっと歯周病治療、インプラント治療を専門とし、複雑な難症例の手術も同院内で対応。他歯科医院からの紹介も多く、治療後も通い続ける患者が少なくないのだとか。「将来的に口腔内全体が健康になるように」、その場しのぎの治療はしない方針を貫く畠山院長に、歯周病を専門としたきっかけやアメリカでの経験、今後のことなどじっくりと話を聞いた。
(取材日2019年7月22日)
父の代から60年続く歯科、歯周病を学びに米国留学も
院長はこの場所で育ったそうですね。小さい頃から歯科医師をめざしていたのでしょうか?
ここは歯科医師だった父親が1953年に開業した場所なんです。当時は2階が歯科医院で、1階に私を含め家族で住んでいました。両親から特に望まれたわけではなく、小さい頃から歯科医師になるもんだと漠然と思っていました。ここが住居だったので、働く父の姿など身近に見ていて、やりがいのある職業だとずっと感じていましたし、私自身、絵を描いたり、物を作るのが好きだったこともあります。歯科医師は、自分にとっては天職だったと感じています。私が大阪歯科大学を卒業後、大学で勤務をし、米国留学を経て帰国。10年くらい父とともに診療にあたっていました。その後、私はここから近い島之内で1992年に歯科医院を開業し、再びこの地に戻ってきて、診療を再開しました。
大学卒業後、歯周病科に進みました。何かきっかけがあったのですか?
大学での診療初日、待合室に独特なにおいが漂っていたんです。それは、マスクをつけたままの、ある患者さんの口臭でした。原因は歯周病。歯周病が進行していて、抜歯も必要な状態でした。僕はその方の担当になり、治療やブラッシング指導を続けていったんです。この、最初に担当した患者さんとの出会いが、歯周病を専門とするきっかけにもなりました。
歯周病学にのめりこまれたのはなぜですか。
父からは最初は口腔外科への進路を勧められていましたし、個人的には補綴学への興味が強かったんですね。補綴を学ぶ前に基礎をしっかりするために歯周病科へ進んだので、もともと長く在局するつもりはありませんでした。しかし、たとえどれだけ優れた補綴物を作っても、どんな歯でも土台がしっかりしていないと維持できないし、口腔内のバランスが崩れてしまう。まずは歯周病を治療する、防ぐことが必要だと考えているうちに、歯周病学に長く携わるようになりました。
その後、歯周病を学びに米国へ留学されています。
大学勤務2年目の時に、米国で歯周病の権威といわれる先生の講演を聞く機会があり、海外の治療はこんなにも違うのかと、もっと勉強したいとたいへん感銘を受け、渡米しました。米国では、日本以上に論文、文献を大量に読んで理解しないといけません。1つの英語論文を翻訳するだけでも大変なのに、1テーマにつき10〜20篇あり、さらに理解し議論しないといけない。米国では、研修制度がある日本と違い、卒業後はすぐに歯科医院に勤務し、治療を行います。そのための基礎を学生に学ばせる行程がとても優れていて、臨床だけではだめ、研究もきちんとできないといけないんですね。大学院で実質3年学びましたが、あんなに勉強したことは後にも先にもありません(笑)。
歯周病治療では歯を残すか抜くかの見極めも重要
歯周病の原因について教えていただけますか?
歯周病は、お口の中で、歯垢(プラーク)など菌が増加して引き起こされます。実は歯が生えた時から菌は存在しているんです。その菌をまず減らしていくことが重要です。歯磨きを一生懸命すればいいと思っている方も少なくないのですが、それだけでは、歯の外側の菌しか除去できず、歯間や歯茎の内部など細部にある菌は取り除けないんです。徹底して除去しないと歯周病の改善は難しい。そこで専門的な治療が必要となってきます。
歯周病に気づくきっかけは?
歯茎から膿が出る、ぐらつくことに気づいた段階でかなり歯周病は進行しています。歯茎からの炎症・出血、口臭、歯茎がやせる、知覚過敏などがきっかけで気づくこともあります。また、歯を大事にしなければと歯磨きに励まれることで、強く磨きすぎて歯茎を傷つけ、それが原因となって歯周病が進むこともあるんです。歯を「磨いている」ことと「磨けている」ことは違います。歯磨きは正しく行うこと、これはとても大切です。
歯周病の治療で難しいことは、どういうところですか?
ぐらぐらの歯でも抜かないのが良い歯科医師とは限りません。むしろ患者さんが嫌がるからといって抜かずに様子を見るということを繰り返すことは、歯を支えている大切な支持骨を失い、健康な隣り合った歯の歯周病を進行させてしまうことにもなりかねません。残せる歯か、抜く必要がある歯か、その診断がたいへん重要であり、難しいところだと思っています。当院では、「お口の中を総合的に診て判断すること」を最重要視しています。歯を抜かずに基本治療と定期的なメンテナンスを行うケースや、保存不可能な歯を抜き骨造成やインプラント治療を行うケースなどさまざまです。歯周病治療は長期に及ぶ場合も多く、精密な検査と治療法の立案、そして何より患者さんと歯科医師の信頼関係が必要不可欠ですので、丁寧にご説明しながら治療を進めていきます。
患者の思いをくんで、その人にとって一番良い治療を
やはり歯周病の患者さんが多く来られるのでしょうか。
歯周病を専門としていたので、開業当初から難症例の患者さんを紹介されるケースが多かったんですね。また、父が担当していた患者さんを引き継いでいますし、治療後も一般歯科治療や予防・メンテナンスで長年通い続けてくださる方も少なくありません。僕が大学勤務時代に担当していた患者さんで、開業後もずっと通い続けてくださっていた方がいました。数年前に、ご高齢のため通院が厳しくなり、近所の歯科を紹介したのですが、それだけ信頼して通っていただけたことはたいへんうれしく思います。
診療にあたり、大切にしていることは何ですか?
患者さんのために、その方にとって一番良い治療を行うことです。この一番良い治療とは一般に高額で時間のかかる治療と思われがちですが、必ずしもそうではなく、必要最小限の治療がベストな場合もあるのです。患者さんが何を望むのか、期間や費用はどうか、求めるものは患者さんによってさまざまです。そんな患者さんの意図をくみつつも、中途半端な治療ではなく、理想的な治療を提案させていただく場合もあります。患者さんに迎合するのではなく、正しい治療を行っていきたいと常に心がけています。歯を治すことで、お口の中全体が健康になり、全身の健康につながる、気分が前向きになる。それを実感していただけるとうれしいですね。
歯の健康のために、患者さんに心がけていただきたいことはありますか。
良い治療をしようと思うと、1回の治療時間が長くなるんです。歯周病治療の場合、特に長く、1回に2時間ほどかけることもあります。そうなると1日に3人程度しか予約を入れられない状態で、患者さんにもご予定の調整などご無理をお願いすることもあります。しかし、その中でも、予約時間に来られない、無断キャンセルをする方がいらっしゃるんです。近年、歯科医院の予約キャンセルが問題化しています。これは当院だけでなく、歯科医院全体の問題で、経営にも関わってくるんですね。皆さんご多忙で事情があることは重々承知しています。ただ、患者さんご自身も、歯の治療の重要さを認識していただきたい。これは一人の歯科医師としての願いでもあります。ご協力いただければ幸いです。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯周病治療/フラップ手術:12万円~、歯周組織再生療法:15万円~、インプラント治療/1歯:40万円~、マイクロスコープを用いた治療:3万円~、GBR法:10万円~
※ケースによって金額は異なります。詳細はクリニックまでお問い合わせください。