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兼元 妙子 院長の独自取材記事

タエ小児歯科クリニック

(習志野市/津田沼駅)

最終更新日:2022/10/06

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック main

津田沼駅から徒歩10分、秦の杜の大通りに面して立つ「タエ小児歯科クリニック」。船橋市で30年以上にわたって診療してきた兼元妙子院長が、2019年に作り上げた「楽しく学べる小児歯科医院」だ。2階に上がり待合室に入ると、右手奥に巨大な2つのキノコのオブジェが並んでいるのがまず目に入る。キノコの中は実はトイレと歯磨きレッスン室。さらに目を床に向ければ、次々と画像が変化するプロジェクションマッピングが映し出され、まるでテーマパークのような印象だ。これらの演出はすべて兼元院長の子どもたちへの深い愛情から生まれ出たもの。日本小児歯科学会小児歯科専門医、千葉県小児歯科医会会長の兼元院長に、小児歯科に対する思いについて話してもらった。

(取材日2022年6月29日)

“食育、知育、体育、徳育”を楽しみながら学べる場に

ここは院長のいろいろな思いが詰まっている空間ですね。

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック1

その通りです。こちらには、長く小児歯科医療に携わってきた私の思いのすべてが詰まっています。子どもたちがここで楽しい時間を過ごす中で、食べることや歯磨きの大切さなどを自然と身につけてほしいですね。大人が上から目線で、歯磨きはこうしましょうと言っても子どもたちには伝わりません。今、教育現場では、アクティブラーニングが注目されていて、子どもたち自身が自分で考えて行動し、学んでいくことが求められています。実は、あの大きなキノコのオブジェの中は、歯磨きレッスン室になっています。子どもたちは好奇心旺盛ですから、キノコの中はどうなっているのかなと興味津々です。それで、中に入ったところで、「じゃあここで歯磨きの練習してみようか」などと自然と誘導することもできます。その横の棚には顕微鏡もあり、「お口の中をのぞこう」と口腔内細菌が動く様子を見せます。自然と「口から始まる健康」を学んでもらいたいと考えています。

クリニック内がまるでテーマパークのようで、大人でもワクワクします。

コンセプトは森の中のクリニックです。ここが子どもたちの食育、知育、体育、徳育などの場になればと思っています。子どもはみんな好奇心いっぱい。例えば、診察室の壁に描かれている動物は原寸大になっています。象ってこんなに大きいんだ、リスは小さくてかわいいなと動物に興味を抱くかもしれません。待合室の床には、知育と食育をテーマにしたプロジェクションマッピングが広がっています。桜の花を足で踏むとふぁーっと花びらが散ったり、恐竜の骨格標本の上を足でなぞれば、その体表が現れて恐竜の姿に変わったり。食事の取り方や噛み方、歯磨きの方法も遊びながら学べます。各地域の伝統行事や建造物など、私たちが暮らす日本について学べるプログラムも取り入れています。プロジェクションマッピングは、目で見て全身で楽しめる教育ツール。これからも内容を進化させていく予定です。

ところで先生は、なぜ小児歯科医師をめざされたのでしょう?

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック2

昔から子どもが大好きだったからです。高校生の頃は小児科の医師を志していました。高3の受験の時に歯が痛くなって歯科医院に行ったのですが、予約制ですぐに治療を受けられなかったことがありました。それで「今、痛い」という苦しみをすぐにとってあげられる小児歯科の医師になりたいと思いました。恩師の鶴見大学の大森郁郎教授からは、知識や技術など多くのことを学びましたが、中でも「Child is not a little man」という言葉が今でも心に残っています。子どもは大人を小さくしたものでなく、子どもには子どもの個性があるということと同じく、乳歯は永久歯を小さくしたものではありません。乳歯には乳歯の役割があります。どうせ抜ける歯だから……ではありません。大森先生は、残念ながら亡くなられましたが、私について「子どもの感性をよくわかっている君は、小児歯科以外はやるな」とお話されていたことも思い出されます。

離乳食期の食べ方で口腔機能に影響も

口腔機能発達不全の改善にも力を入れていると伺いました。

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック3

お子さんの口腔機能発達不全に悩む親御さんは多く、当院でも、話し方や食事の取り方、呼吸や姿勢など、口腔機能に関するご相談が3割近くを占めています。風船ガムがうまくふくらませないといった子どももいるほどです。当院では口腔機能発達不全の予防・改善のために、食育に関する冊子を作成して、子どもやお母さん方を指導しています。口腔機能発達不全は実は離乳食期の食べ方に起因していて、子どもの歯や口腔機能の発達に合わせた形や大きさ、硬さの離乳食を与える必要があります。その時その時が大切ですが、初めての食事”唇食べ期”と前歯が生えてくる“舌食べ期”は、正しい舌の位置や動かし方を身につける時期です。また、”手づかみ期”に自分の一口サイズを覚えます。口腔機能改善は、両手をほほやこめかみに当てて、奥歯を噛み締めてその筋肉の動きを確認するトレーニングなど、さまざまな手法を行っています。

親御さんへの指導も重要ですね。

トレーニングはご家族にも一緒に受けてもらっています。また、親御さんにお話するときは、一つ一つの指導内容説明ならびに、しっかり理解できているかどうか、納得されているかどうか表情を見ながら確認します。もしも理解していないようでしたら、より丁寧にわかりやすくお話しするようにしています。保護者、特に母親に理解していただくことが重要です。診療のときは、家庭環境や生活スタイルなど子どもたちのバックグラウンドも注意して見るようにしていて、子どもの口は「生活が見える」と申します。

子どもたちと接する中で何を心がけていますか。

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック4

まず笑顔でいること。笑顔は人のため、人を楽しい気分にしますので、とても大切です。そして子どもと同じ目線に立つことです。子どもたちが「上から押しつけられている」という感覚をもたないよう、子どもと話すときは、まずは姿勢から、子どもと同じ高さの目線に合わせます。また、自分が子どもだった頃を思い出して、精神的に同じレベルに合わせることも大切です。子どもと同じように楽しいことを発見し、その楽しさを一緒に共有するのです。大人はやるべきことが10個あれば10個できてはじめて完璧と認識しますが、子どもはそうではなく、1個できたらその都度褒めて励ましてあげることも重要です。励ますという漢字は、「万の力」と書く通り、子どもたちにとって一番の栄養になると思います。

かつての患者が成長して小児歯科医師や歯科衛生士に

これまでで心に残ったでき事はありますか?

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック5

小さい頃に虫歯でここに来ていた子どもが、成長して歯科衛生士になり当院に入職して活躍しています。それも1人ではないんですよ。今年で3人目です。他にも「タエちゃん先生みたいになりたい」と言っていた子どもが歯科医師や検査技師になったという話も。とてもうれしいことですね。今通っている子どもの中にも「タエ小児歯科クリニックで働きたい」と将来の夢を語ってくれる子どもが2人もいます。10年後がとても楽しみです。

素敵なエピソードですね。先生やスタッフ全員で診療面で心がけていることはありますか。

子どもである患者さんはもちろん、親御さんの気持ちにも寄り添った対応を心がけています。子育てはとても大変なこと。親御さんは情報を探しながら悩んで迷って、不安な気持ちで当院にたどり着くのです。親御さんが安心できるよう、問い合わせの電話の段階から気を配っています。治療では子どもと同じ目線に立ち「頑張った」という達成感を感じてもらえるよう工夫しています。当院のスタッフは年齢もポジションもさまざまですが 「患者さんを第一に考える」という思いは同じ。それがスタッフ全員の絆を強め、良い医療につながるのだと信じています。乳歯から永久歯に生え変わると、患者さんは当院から一般歯科のクリニックに移ります。親御さんから「こちらに通って良かった」という言葉をいただけると、当院が大きな役目を担っているのだと改めて感じますね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

兼元妙子院長 タエ小児歯科クリニック6

将来のお口のケアは子どもから。子どもの頃に口腔機能がきちんと発達していれば、食べ方・話し方・呼吸の整った状態で成長していけるでしょう。また近年問題になっている「オーラルフレイル」。これは高齢者の口腔機能の低下を指しますが、その予防は小児歯科の段階から始まっています。当院に通っていた子どもたちは、成長して働き世代になっても、皆さん健康な歯を保たれています。「8020」ならぬ「8028」。28本すべての歯を健康に保ち、素敵に年を重ねていきたいですね。

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