阿部 健一郎 副院長の独自取材記事
阿部歯科医院
(木田郡三木町/農学部前駅)
最終更新日:2025/04/04

琴電長尾線・農学部前駅から徒歩約3分。香川大学農学部の正門前に、れんが造り風の外観が印象的な「阿部歯科医院」がある。2026年に80周年を迎える同院では、2代目となる阿部直樹院長と、息子の阿部健一郎副院長が診療。豊富な経験を持つ直樹院長と、日本歯周病学会歯周病専門医である健一郎副院長が力を合わせ、三木町エリアの歯科医療を支えている。今回のインタビュー取材では、患者の人生に長く寄り添い、口腔内の健康を見守り続けることを大切にする健一郎副院長に、同院の歴史や診療に対する想いなどを詳しく聞いた。
(取材日2021年9月3日/情報更新日2025年3月25日)
祖父から孫へと歴史を紡ぐ、地域の頼れる歯科医院
三木町で長く続く、歴史のある歯科医院だそうですね。

おかげさまで、2021年に75周年を迎えました。当院は私の祖父で、初代院長の阿部正が1946年に開業して以来ずっと、この三木町池戸で診療を続けてきました。1978年には父が2代目院長に就任し、2014年からは私も副院長として診療に加わっています。祖父の代から通ってくださっている患者さんも多く、私が診療をしていると、「先生のおじいさんにはお世話になったんだよ」と教えてくださる方もいるんですよ。代替わりのタイミングで移転をするクリニックも多いですが、このように長く同じ場所で診療を続けることで、患者さんと関わり続けることができて良かったなと思います。
2014年に院内の改装をしたそうですが、こだわった部分はありますか?
当院の患者さんは高齢の方が多いので、まずはフローリングの床を滑りにくいじゅうたんへと張り替えました。トイレや診療室は車いすのままでも入りやすくしましたし、院内の雰囲気も、改装をして随分明るくなったのではないでしょうか。診療ユニットは適度なパーティションで仕切ることで、周りを気にせずに治療を受けていただけるようになりました。患者さんと落ち着いて相談ができるよう、カウンセリングルームについては完全個室となっています。また改装のタイミングでデジタルエックス線を設置し、その後、レーザー機器も導入しました。改装する際には、診療ユニットの数を増やすことも一度は考えたのですが、やはり患者さん一人ひとりに対してきちんとあいさつをして、「お顔が見える診療」をしていくためには、今の規模感が適していると思いました。
副院長に就任されてからずっと、院長であるお父さまと一緒に診療されていますね。

親子ですので、一緒に働いていると遠慮なく意見がぶつかることもありますが、診療方針でぶつかるということはありません。当院の診療や歯科医師会での活動などを通して、長年にわたって三木町の歯科医療に貢献してきた父のことは尊敬していますし、感謝もしています。ただ、その思いをきちんと言葉で伝えるのはなかなか難しいですね(笑)。一緒に仕事をしている間はそれぞれの患者さんの診療で忙しく、父が患者さんと接している背中を見る機会も少ないのですが、父が長年診てきた患者さんを私が診療した時には、父が丁寧な診療を重ねてきた結果が口腔内に現れていると感じましたね。
子どもから高齢者まで、長く丁寧に寄り添っていく
先生の診療ポリシーをお聞かせください。

私がポリシーとして掲げているのは、「Keep28」です。80歳になっても20本以上の歯を保とうとする、「8020運動」というものもありますが、これは本数の話であって、残っている歯がすべて口の奥に集まっていたとしても、20本残っていることになるわけです。バランス良く歯を残すことを考えると、やはり28本以上残せるような治療をしていくことが重要だと思います。そのためにも、患者さんには普段から「歯科医院は『痛いから行く場所』ではなくて、痛くなくても、健康を維持するために行く場所ですよ」と繰り返しお伝えしています。もちろん虫歯の治療もしますが、できる限り再治療をしなくて済むように、良い状態を維持していくことが大切です。歯科医院は0歳の頃から高齢になるまで、年齢が上がっても通い続ける場所ですので、長いお付き合いを大切にしながら、診療を続けていきたいと思っています。
先生が、特に力を入れていることはありますか?
現在、特に力を入れているのは妊婦さんへの指導ですね。赤ちゃんが生まれる前から、お子さんの歯のケアについて説明を重ねていくことで、歯の健康に対する意識が変わってくると考えています。抱っこの仕方が歯並びに影響すること、また離乳食の食べさせ方などについても歯科医師の立場からアドバイスさせていただき、少しでもお子さんの口腔に興味を持ってもらえるよう心がけています。
お子さんの歯の健康を守るため、院外でも積極的に活動されているそうですね。

院長が近隣の小学校と幼稚園で歯科検診を担当しているので、私もその手伝いをしています。以前は小学校の参観会で保護者向けの講演を行ったり、食育の一環として、2年生の子どもたちと一緒に給食を食べながら、食べ方が歯並びに影響することを伝えたりしていました。5年生の歯磨き大会には一緒に参加するなど、どの学年にも毎年顔を出して携わってきましたので、それをきっかけに当院に通ってくださるようになった方もいますよ。
医科歯科の連携を実現し、全身の健康を見守りたい
患者層についてはいかがですか?

以前働いていた京都や大阪のクリニックと比べると、高齢の患者さんが多いですね。私は日本歯周病学会歯周病専門医の資格を持っているのですが、この近隣ではまだ歯周病専門医の数が少ないため、ホームページなどを見て遠方から来院する患者さんもいらっしゃいます。当院に通ってくださっている高齢の患者さんの中には、糖尿病を有する方も多いのですが、これは糖尿病と歯周病に関係があるからだと考えています。糖尿病があると歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病は悪化しやすいため、糖尿病の患者さんの場合は、医科と歯科とが連携をしていくことが大切だと思います。当院では主治医の先生に手紙を書くなどして、情報交換をしながら糖尿病の患者さんの診療を行っていますし、患者さんに対しても、口腔内の状況が全身にも影響を及ぼすことをしっかりとお伝えしています。
どのような時に、歯科医師としてのやりがいを感じますか?
当院に来られるお子さんたちの中には、「歯医者さんが好き」だと言って、遊びに行くような感覚で来てくれるお子さんもいるんです。歯科医院を怖がることなく、好きとまで言ってもらえると、歯科医師としてはとてもうれしく思います。過去には、これまで診療に携わってきたお子さんが成長する中で歯科に興味を持ち、歯科衛生士の道へと進んだこともありました。そうやって患者さんの人生に何かしらの形で携われていることは、私にとっても大きなやりがいへとつながっています。
最後に、今後の展望を教えてください。

将来的には、小児科の先生との連携もしていきたいと思っています。新型コロナウイルス感染症の流行以来、マスクをつけることが習慣化していますが、マスクをすると息がしにくくなってしまうため、結果的に口呼吸のお子さんが増えてしまっているんです。そうすると口の周りの筋肉が衰えるだけでなく、口の中が乾いてしまったり、低年齢のお子さんの場合はアデノイドや歯茎が腫れやすくなったり、喘息などのアレルギーが出やすくなったりしてしまいます。こうした問題は、鼻呼吸のトレーニングをすることで対応できますので、歯科と小児科とがうまく連携をして、子どもたちの口腔と全身の健康を見守っていけたらと考えています。