井出泰介先生の独自取材記事

井出歯科医院

(今治市／今治駅)

最終更新日：2021/10/12

「井出歯科医院」は大正時代に開業し、もうすぐ創業100年を迎える歯科医院だ。4代目の井出泰介先生は、大学病院に勤めていたが、2020年2月から同院で父である井出康三とともに診療にあたっている。大学では根管治療を専門に携わっていたが、現在は虫歯や歯周病の治療やクリーニングなど一般的な診療を中心に、幅広い年代のさまざまな患者を診ている。同院には先代から受け継ぐ高齢の患者もおり、訪問歯科診療にも対応している。患者のためになることを常に考え、真剣に患者と向き合い、アドバイスを送る井出先生に、同院の特徴やこれからの展望について話を聞いた。

（取材日2020年7月4日）

地域に寄り添う大正時代開業の歯科医院
いつまでも自身の歯で食べるために大切な歯磨き
歯の健康を考えることで、家族の健康を守る

地域に寄り添う大正時代開業の歯科医院

古くから歯科医院として開業されているようですね。

曽祖父が歯科医院を開業したのは、大正時代のことです。もうすぐ創業100年になり、私で4代目となります。自宅が2階にあり、子どもの頃はよく診療室に遊びに行き、父や祖父の働く姿を見ていました。その頃から、自然と自分も歯科医師になるのだろうなという思いはありました。はっきりと歯科医師をめざそうと思ったのは、高校生の時です。なじみもあり、将来の職業として興味があったので、祖父や父に相談をし、大学に進学して、本格的に勉強することを決めました。

現在はどのような体制で診療されているのですか？

父と2人で診療しています。祖父の時代から通ってくださっている患者さんは、父が診ています。患者さんも、2世代・3世代で来院されています。そして、私は、初診の患者さんを診たり、歯のクリーニングをしたりしています。20代、30代の若い方は歯石を取るなどのクリーニングに来る人が多いです。特に歯が痛むことがなくても、予防のために「虫歯がないかチェックしてほしい」と、定期検診に来てくださる人もいます。40代以上は「昔、治した歯が痛み出したので診てほしい」という方が多いです。検査をしてみると、歯周病だったということもあります。そして、高齢者は「入れ歯が合わなくなってきたので直してほしい」というご相談が多くなります。

どのようなことを大切に診療していますか？

モットーは、患者さんの希望をかなえるということです。「歯が痛いから、とにかく治してほしい」という方が来られたら、まずは痛みの原因を探り、解決方法を考えます。そして、専門用語はなるべく使わずに、わかりやすく説明をして、患者さんにも納得していただいた上で治療をします。もう一つ大切にしているのは、患者さんとのコミュニケーションです。特に、初診の患者さんは、よくわからない歯科医師に突然口の中を触られるのは怖いと思いますので、あいさつや世間話などをしてコミュニケーションをとってから、診察を始めています。また、患者さんの話をよく聞き、痛みや心配に寄り添うことも忘れないようにしています。

いつまでも自身の歯で食べるために大切な歯磨き

得意な治療はどのようなものですか？

大学では、根管治療を学びました。歯がなくなると、次第に骨もなくなり、口内環境が悪くなっていってしまいます。噛み合わせの問題も出てきます。そこで、なるべく歯を残したいと考えています。ご自身の歯で噛んで食べるということが大切で、気持ちの面でもその影響は大きいと思います。入れ歯にしなければならないのに、年齢的な抵抗もあり、「まだ入れ歯にはしたくない」とおっしゃる方もいます。インプラントは、費用の問題も出てきます。患者さんのさまざまな希望を聞き、相談しながら治療を進めています。また、現在は、専門的な治療ができる大学病院とは環境が異なるので、現在の環境でできることを考えています。当院で初めて診た患者さんは、過去に歯を抜いたところが痛み出して来院された方でした。治療が終わった時に、「先生に治療してもらえて良かったです」と言ってもらえたのはうれしかったです。

歯磨きの指導もされているのですね。

当院では、患者さんに歯ブラシを持参してもらい、手を添えて指導をしています。「正しい磨き方は、こういう感覚なんだ」と、患者さんにも気づきがあるようです。同時に、歯ブラシのチェックもします。基本的には、硬さや大きさは好みで選んで構わないのですが、思うように磨けていない場合は、アドバイスをします。よく見かけるのは、大きな歯ブラシを使っていて、奥のほうが磨けていないという方。その場合は、小さなものに変えるようお勧めします。また、口の中をチェックすると、歯が削れている方もいます。これは、力を入れすぎなので、磨く時の力加減を指導します。患者さんに歯磨きの知識を持ってもらうことも歯の健康を守る上で、大切だと感じています。

歯磨きの知識は、家族の歯の健康を守る上でも役立ちそうです。

歯磨きの方法を知っていれば、ご家族の歯磨きを手伝ってあげられます。高齢者の場合は、誤嚥性肺炎を防ぐことにもつながります。誤嚥性肺炎は、唾液が間違って肺に入ってしまうことから生じる肺炎です。インプラントの場合は、メンテナンスが重要なので、ご家族がそれを理解しているといいですね。また、糖尿病と歯周病の関連性が高いことも知られています。口の中を完全にきれいにするということはできません。口の中は、どうしても菌が繁殖するものです。しかし、しっかりとお手入れをすることが、ご家族の健康を守ることに役立ちます。

歯周病の治療にも力を入れているそうですね。

現在、成人の60％以上は歯周病にかかるともいわれています。当院でも、歯が痛いと来た患者さんに歯周病が見つかることがあります。そのような場合は、歯ではなく歯茎の治療をすることになります。「歯が痛いのに、なぜ歯茎の治療？」と疑問に思う方が多くいらっしゃいますが、「歯茎が下がって、細菌が歯のほうに行き、歯が痛くなる原因になっているんです。だから、まずは歯茎の治療をしましょう」と、説明をしています。そして歯周病の予防のためにも、やはり毎日の歯磨きや、定期的な検査は大切です。

歯の健康を考えることで、家族の健康を守る

訪問歯科診療や妊婦健診、小児歯科なども行っているのですか？

現在も訪問歯科診療は行っていますが、今後はさらにニーズが高まるのではないかと思っています。長い間、通ってくださっている患者さんが年齢を重ね、通院することが難しくなることもありますので、私たちが訪問して、メンテナンスをしたいと考えています。また、当院では、妊婦歯科健診にも対応しています。小児歯科は、院長が大学で携わっていたことがあり、現在私は、その診療の様子を見て、学んでいます。審美歯科にも対応しています。ホワイトニングを希望される方や、これまでつけていた銀歯を外して、白いかぶせ物に変えたいと希望される方がいらっしゃいますね。

今後取り組んでいきたいことはありますか？

これからは、予防がさらに大事になっていくと思います。そのため、診療の後に、予防についてお話をしていきたいと考えています。また、院内にも情報を掲示して、待ち時間に見てもらえたらと期待しています。例えば、虫歯を予防するために日頃気にしてもらいたいことや、虫歯の原因をお伝えしたいです。「すぐに歯磨きができない場合は、口の中の糖分を水やお茶で流してください。キシリトールのガムを噛むのも良いです」というような内容です。食べ物や甘い飲み物が口の中に残っている時間が長いほど、虫歯になりやすくなるといわれます。砂糖が菌の栄養になり、繁殖しやすくなるのです。唾液には、口の中の環境を整える役割があるのですが、頻繁に飲食をしていると、唾液が働く前に、次の食べ物が入ってきてしまいます。このような予防に関する内容を患者さんにお伝えしていきたいと思います。

読者にメッセージをお願いします。

歯に関することで、お悩みがあれば、ぜひ相談にいらしてください。「子どもの歯が生えてくるのが遅い」「歯の生え方がおかしい」など、気になることがあれば、歯科医師としてアドバイスできることがあります。またご家族の介護中は、介護をされている方の健康も大切です。時間が取れるときに、歯の検査やクリーニングをしにいらしてください。歯の健康を守ることもできますし、お口の中をきれいにすると、気持ちもリフレッシュできます。9時から19時まで、診療時間を設けていますので、都合の良い時間にいらしてください。仕事帰りにも来やすい時間になっています。思い立ったときに来ていただければ、全力で対応いたします。