清家 康介 院長の独自取材記事
王子の森歯科医院
(八幡浜市/八幡浜駅)
最終更新日:2023/05/29

愛媛県八幡浜市の五反田地区に位置する「王子の森歯科医院」は、これまで約40年もの間、地域住民の口内の健康を守り続けてきた。2021年3月に建物全体をリニューアルし、現院長の清家康介先生に代替わりしてからも「地域のホームデンティストでありたい」という同院のコンセプトが変わることはない。虫歯治療をはじめ、高齢患者の入れ歯治療、インプラント治療、そして小児歯科まで診療分野は多岐に渡り、地域に住む多くの患者の悩みに寄り添う診療を行っている。今回は長年変わることのない同院の診療方針や院長自身の治療においてのこだわりなど、地域の歯科医療を担う同院の取り組みについて、さまざまな角度からじっくり話を聞いた。
(取材日2023年1月18日)
親子2代で八幡浜の人々の口の健康に携わり続ける
まずはこれまでの医院の歴史について教えてください。

当院は今から40年ほど前、私の父の代にこの八幡浜の地に開院しています。実はもともと私の家系は代々すぐ近くにある神社を稼業にしていまして、私も歯科医師兼神主の免許を持っているんです。長年所縁のある土地だったので、おそらく父も地元での開院を選んだのでしょうね。おかげさまで長年足を運んでくださる地域の方も多いです。今から約10年前、開院から約30年が過ぎた頃より私と父の2人体制での診療になりました。その後2021年3月に建物自体をリニューアルし、そのタイミングで私が父の後を継いで院長に就任したかたちとなります。
新しく医院をリニューアルした経緯についてもお伺いできますでしょうか。
父からの代替わりもきっかけとしてはあったのですが、建物が建築から30年以上たってかなり老朽化していた点も理由の一つですね。数十年にわたって大勢の患者さんを診療していたこともあり、バックヤードの棚からもカルテがあふれるくらいの量になってしまっていまして。それを期にスタッフがより業務をしやすいような環境を整えたり、高齢の患者さんに向けてのバリアフリー設備を整えることを考える中で、建物すべてをこの機会に一新したほうが良さそうだという結論に至りました。
重ねて先生ご自身の経歴や、歯科医師をめざしたきっかけについてもお聞かせください。

歯科医師をめざしたきっかけは、やはり小さい頃から見ていた歯科医師である父の影響が大きいですね。医学部への進学はかなわなかったのですが、両親ともに九州に縁があったこともあり、福岡歯科大学へと進みました。卒業後はそのまま博多で3年間勤務した後、大学時代の縁でお声がけを頂いたことがきっかけで愛媛へ戻り、松山のかとう歯科で3年間勤めさせていただきました。その後は1年間お休みを頂いて松山で神職の修行などをして過ごし、八幡浜へと戻ってきたのです。それが今から約10年前、私が35歳の時になりますね。
高齢者から小児まで対応。求められる多彩な診療技術
先生のご専門や院として主軸を置く治療について教えてください。

大学時代にメインで学んだ分野としては補綴や入れ歯に関する内容です。当時すでに開業していた父の歯科医院をゆくゆくは継ぐことも考えていましたし、地域柄、高齢の患者さんが多いこともわかっていたので、将来を見据えて専攻を選びましたね。とはいえ訪れるのは当然ご高齢の方だけでなく、地域に暮らすお子さん連れのご家族や単身者まで幅広い世代の層になります。ですので虫歯治療から入れ歯の治療、小児歯科から往診まで、当院では幅広い分野の歯科診療に対応させていただいています。
医院で掲げる診療方針や方向性についてもお聞かせください。
当院では地域に住む人々の「ホームデンティスト」であることに主軸を置き、まずご飯を食べられるようにする、噛めるようにすることを治療の基本コンセプトとしています。その上で多彩な治療に対応すると同時に、複雑な抜歯やインプラントの手術などが必要な症例の場合は、市立八幡浜総合病院に来られる愛媛大学医学部附属病院の歯科口腔外科の先生へ協力を仰ぐこともあります。地域一帯で患者さんの悩みを解決できるように、状況に応じて当院だけで対処せず、大規模な病院との連携も積極的に取るようにしていますね。
治療の中で特に力を入れているのはどのような点でしょうか。

特に注力しているのは、入れ歯と根管治療の2つでしょうか。まず入れ歯に関してはもととなる試適用義歯を直接患者さんに噛んでもらい型採りをして、より精緻で外れにくいものを作る咬座印象という手法を用いています。ただし、どれだけいい入れ歯やかぶせ物を施しても、歯の根元の治療が甘ければそれらは本来の役割を十二分に発揮できません。そうすると再度調整の必要が生じたり治療が長引いたりと、患者さんにも負担をかけることになります。ですので、根管治療に関してはなるべく丁寧に行うようにしていますね。先々の余計な手間や負担を減らすには、結果としてそれが一番の近道になりますから。
人口減少の中でも地域医療の重要性を啓発し続けたい
患者さんに対しての接し方や診療時に意識していることなどはありますか。

私自身、患者さんの痛そうな顔を見るのがあまり好きでないことに加え、昔父から受けた治療がかなり痛かったという記憶も相まって、反面教師ではないんですが、極力痛みに配慮した治療を心がけていますね。重ねて小児の患者さんに対しては、スタッフも含め院内一丸で接しています。いきなり男性の歯科医師が登場するよりは、まず女性スタッフとのコミュニケーションを挟んだほうが安心しやすいでしょうから。基本的に小児の治療では、初回診療では治療をほとんど行いません。エックス線撮影や症状の把握、その上で保護者の方への説明や治療計画の擦り合わせ、治療の練習で時間を終えることが大半です。どのような患者層にも、治療や通院時の負担をできる限り減らすことを考えるようにしています。
今後の展望や地域医療についての見解をお聞かせください。
やはりこれからも長く地域の方々の口内の健康を支えたいという気持ちはありますし、うれしいことに下の息子は私の後を継ぎたいと言ってくれています。ですが一番の懸念はやはり、愛媛のみならず地方各所で問題となっている地域の人口減少ですね。特に八幡浜市は県内でも人口減少率が高い自治体の一つでもあります。ですので息子が後を継ぐ頃には、この地域で歯科医院を続けることに関してすでにやや厳しいビジョンが見えるようにも感じているのです。とはいえ、地域医療が立ち行かなくなると人口減少にもますます拍車がかかるので、できる範囲でその悪循環を食い止める手立てについても考えていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院に来られる患者さんにはよくお伝えしているんですが、歯も体と同じように年を取ります。硬い食べ物は確かにおいしいのですが、無理に食べようとすると痛みや違和感のもとにもなりますのでほどほどにと、ご高齢の方を中心によく指導していますね。また私たちは食事の後に、当然のように食べた後の食器を洗いますよね。食後の歯磨きもそれと同じです、ということもよくお伝えしています。日頃の食事や歯磨きなどの習慣も、自身の状態を鑑みた行動がお口のトラブルの防止にもつながります。ぜひ日常のふとした時に、それらの話を思い出してもらえればと思いますね。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/1本33万円~