東京都23区内で最も大きい面積を持つ大田区では、広域にわたり適切な医療を提供するべく、3つの医師会が密に連携を図る。「一つ一つの医師会はコンパクトですが、だからこそ、柔軟に動けるのが強みですね」と笑顔を見せるのは、そのうちの一つ、田園調布医師会の内山浩志会長だ。
その連携をさらに強めるきっかけとなったのが、コロナ禍だったと会長は振り返る。3医師会が中心となって立ち上げた委員会では行政や地域の病院も加わり、感染症対策に尽力。結果的に顔の見える関係づくりが一気に進み、よりスムーズな病診連携が可能になったという。こうした機動力の高さは、他の施策にも生かされている。
現在、同会が注力する5歳児健診のモデル事業もその一つ。この健診は、発達障害などの特性を早期に発見し、適切な支援につなげるのが目的だ。3歳以降、健診の空白期間が発生するという課題に応えるべくスタートした。
「予防医療は医師会が果たすべき大きな役割です。われわれが就学前の早い段階で介入することで、子どもたちの成長をサポートできたらと思っています」と内山会長は力を込める。
自身も小児科の医師として、長年地域の子育て世代を支えてきただけに、行政や教育関係者とも協力しながら、令和8年度の実施をめざしたい考えだ。
「お子さんはもちろん、誰もが年を重ねても健やかに暮らせるよう、多職種連携を図りながら、地域の課題解決にこれからも取り組んでいきます」と語る言葉には、「ピンチをチャンスに」変えてきたからこその力強さがにじんでいた。