医師会とは、災害医療や夜間・休日診療、予防接種、学校医の活動、行政に向けた医療政策の提言、医療機関同士の連携支援など多方面から地域医療を支える存在だ。しかし、そのほとんどは裏方的な役割であり、医師会の取り組みだと認識して医療サービスを受けている人は少ないかもしれない。「皆さんの目には見えにくい場面でも、医療を『社会の当たり前』として守るための活動に日々取り組んでいます」と神奈川県医師会の鈴木紳一郎会長は語る。中でも同会が重視するのは、正しく信頼できる医療情報の発信だという。毎年開催される県民公開講座は、医学的な立場からの講演と著名人などの体験談を交えた講演を組み合わせ、楽しく学べる場として親しまれている。
一方で、少子高齢化が進み、医療従事者の不足が懸念される今、持続可能な医療供給体制を構築することも同会の大切な使命の一つだと鈴木会長は話す。日本医師会、郡市医師会、行政や地域の関係団体と連携し、誰もが安心して医療を受けられる社会を維持できるよう制度面の働きかけを続けるほか、医療人材育成やキャリア支援にも力を注ぐ。
「都市部と地方部の医療問題を抱える神奈川県は、日本の縮図といっても過言ではありません。私たちが示す解決策は、全国のモデルケースになるでしょう。落ち着きと情熱を兼ね備えた県医師会をつくり、独居高齢者の支援に向けた在宅医療の強化、子育て支援といった郡市医師会の取り組みをバックアップしていきます」