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男性不妊にも注目!夫婦で取り組む不妊治療

(公開日2017年12月19日/情報更新日2021年1月18日)

不妊原因の半数は男性不妊、早期治療で自然妊娠も可能に

日本産科婦人科学会がまとめた最新データによると、日本で体外受精によって生まれた赤ちゃんは約5万1000人。その数は年々増え、今や約20人に1人の赤ちゃんが体外受精で生まれています。
不妊の原因はさまざまですが、卵巣や卵子、卵管、精子のいずれかに何らかの異常があると、妊娠しにくくなることがわかっています。不妊症というと女性側だけに原因があると思われがちですが、半分は男性側の問題なのです。
男性不妊治療には、精索静脈瘤や無精子症など原因に応じて、薬物療法や手術など多くの方法があり、女性側に問題がなければ、治療後自然妊娠が可能なケースも。男性不妊の種類や症状を知り、夫婦で一緒に治療に取り組むことで、不妊治療をより効果的に進められます。

医療法人財団 順和会
山王病院
堤 治 名誉病院長

女性側の
不妊原因と検査例

排卵の問題(排卵障害)

●卵胞の発育・排卵の有無を超音波検
 査で確認
●内分泌検査を行い、血中ホルモンを
 測定など

卵管の問題

●子宮卵管造影検査で、卵管の通過性や
 骨盤内の癒着の有無を確認

子宮内膜症などの女性疾患

●内視鏡検査により、子宮筋腫や子宮内
 膜症がないか確認

男性側の
不妊原因と検査例

精子の状態に関する問題

●精子濃度や運動率、速度などをフー
 ナーテスト(性交後検査)や精子運動
 解析装置(CASA)で測定

精子を作る機能の問題

●精巣サイズ・超音波検査やホルモン値
 検査で無精子症などを確認

精索静脈瘤

●静脈瘤があると、精巣静脈の逆流で
 陰のうが腫れ上がるため、それを視
 診・触診と超音波検査をして確認

岩本晃明先生

全国でも数少ない男性不妊専門の泌尿器科医師。山王病院では男性不妊の外来を担当。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

藤原敏博先生

元 山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門長。不妊治療を受けるカップルの精神的サポートにも注力。

男性不妊を調べるにはどのような検査が必要ですか?

まずは精液検査を行い、精液量や精子濃度、精子の運動率、奇形率などをチェックします。自宅でできる検査もありますし、診察や超音波検査によって精索静脈瘤などの疾患が見つかることもあります。精液の状態は日によって変動が大きいため、複数回、最低でも2回以上検査を受けることが重要です。無精子症の場合はホルモン検査で「閉塞性」「非閉塞性」のどちらなのか確認し、適切な不妊治療を開始します。

どんな治療法がありますか?

手術だけでなく、症状に応じてさまざまな治療法があります。例えばホルモン分泌の異常で精子が作られない非閉塞性無精子症では、定期的な注射によるホルモンの補充で精子を作ります。早ければ3ヵ月、平均7~8ヵ月で効果が見られ、条件が整えば自然妊娠も可能です。ホルモンに異常がない非閉塞性無精子症では、MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)で精巣から精子を取り出し、顕微授精を行います。

男性側の手術が必要なのはどのようなケースですか?

男性不妊の大きな要因といわれるのが精索静脈瘤です。精巣から心臓に戻る血液が逆流し、精巣や精索部の周りの静脈にこぶができる症状のことで、手術によって精子の数や運動率が改善する方が6〜7割います。また、精子の通り道に問題がある閉塞性無精子症の場合は、精路再建手術を行います。手術によって造精機能障害が改善することで、必ずとはいえませんが、自然妊娠も期待できます。

不妊治療と仕事を両立させたいのですが。

土日・休日でも不妊治療を受けられる医療機関への通院が便利です。男性は女性に比べ検査の種類や項目が少なく、月経がないので比較的検査が受けやすいでしょう。また精液検査にストレスを感じる方も多いですが、採精は自宅でも可能です。不妊の原因を知り、不妊治療を効率的に進めるためにも、ご夫婦での受診をお勧めします。

排卵日を狙ってもなかなか妊娠できません……。

近年、勃起不全(ED)の方が増えており、妻がスマートフォンのアプリや排卵検査薬で排卵日を予測し、「この日に」とプレッシャーを与えすぎることで、焦るあまり射精障害に陥る方もいます。排卵日予測はあくまで予測ですから、推定排卵日前、数日間にわたり特定の日にこだわることなく、タイミングを取ることが大切です。夫婦一緒に医療機関を受診し、男性側の悩みもくんだ助言を受けましょう。

医療法人財団 順和会 山王病院
港区赤坂8-10-16
不妊セミナーを受けよう!

「不妊治療を考えているけど、どうやってスタートしたらいいの?」と悩む人は多いだろう。
山王病院では、不妊治療を検討する患者を対象に、年に2回「不妊セミナー」を開催。医師に加え、専門の看護師や胚培養のエキスパートが、不妊治療の現状から最新情報まで、わかりやすく説明する。夫婦での参加も可能なので、まずはセミナーに足を運んでみては?

イラスト:カトウミナエ