ドクターズファイル特集
一生涯、自分らしいた生き方を実現するために在宅医療をより身近に考えよう!

(公開日2017年11月10日)

もしも自分や家族が、病気やケガの後遺症、重い病気、老衰、認知症などの理由で、誰かの助けなしには生活できなくなったら……。想像するだけでも不安になりますよね。しかし今は医療技術が進歩し、社会制度が整備されつつあり、在宅医療を含むいろいろな選択肢が存在しています。その選択肢をあらかじめ知っておくことは、自分だったらどういう生き方を望むか、家族にはどんなケアをしてあげられるかを考えるきっかけになるはず。そしてそれは、最後まで自分らしい人生を送るための一つの道筋となります。

目次

みんな、本当のところどうなの?

医療が必要だけれど、通院は難しい。自分がそのような状況になったとき、「できる限り慣れ親しんだ自宅で過ごしたい」と考えるでしょうか? それとも病院や施設に入ることを希望しますか? 例えば終末期に対しては、皆さんこんなふうに考えているようです。

一般国民における「人生の最終段階を過ごしたい場所」についてのまとめ

調査結果を見ると、病気の程度や健康状態、家族構成、経済状況など、それぞれが置かれている立場によって希望が変わるということがわかります。例えば、重い心臓病を患って日常生活上の介助が必要になった場合、一般の方々が生活の場として選ぶのは、医療機関、介護施設、自宅のいずれも同じくらいの割合。

一方、末期のがんだけれど比較的状態が安定している場合は、およそ7割もの方が在宅を希望しています。逆に状態が思わしくない場合は、医療機関や介護施設で暮らしたいという方が9割近くに上ります。そこにあるのは、「家族に負担をかけたくない」という思い。介助・介護に携わる家族への負担が、在宅医療を選択する際のハードルになっているようです。

家族は在宅医療とどう関わっていくか

大切なのは、無理のないケア

身近な人が病気によって在宅療養が必要となったら、できる限り自分たち家族で支えてあげたいと思うかもしれません。しかし仕事や子育てと介助・介護との両立は、体力的にも精神的にも負担がかかるもの。そのせいで家族関係がぎくしゃくしたり、自分自身が体を壊したりしては、せっかく一緒に過ごしている時間が台無しになってしまいます。

そこで大切なのが、「無理なく継続できるケアの方法」を考えること。生活拠点を自宅に置くか、施設(有料老人ホーム、グループホーム、重症心身障害児施設など)へ入所するか、専門スタッフのサポートを利用するかなど、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーと相談をしながら、可能であれば患者さん本人とも話し合い、お互いにとってベストな方向へと導くのが理想です。

在宅医療の対象となるのは?

病気やケガが理由で一人では通院が難しい人であれば、基本的にどんな疾患・状態でも在宅医療を受けられます。例えば一人暮らしの方でも、医療・介護・福祉の制度をうまく活用して、在宅でのケアを実現しています。ただし、ある程度病状が落ち着いていること、自宅や施設に療養環境が整っていること、近隣に対応できる医療機関があることが、在宅医療を受けるための必須条件。利用にあたってはまずかかりつけ医への相談が必要です。なお、在宅医療は高齢者向けの医療サービスとして取り上げられることが多いですが、小児や若年層を含むすべての年代に提供されます。

例えばこんなとき

具体的にどんな医療サービスが受けられるの?

病気の治療だけでなく、体の清潔ケアや床ずれ予防、排泄の介助といった看護師による療養生活のサポート、さらには寝たきり予防のリハビリテーション、誤嚥性肺炎のリスクを下げるための口腔ケア、栄養状態の管理・指導など、病気を未然に防ぐためのサービスもあります。近年はがんに伴う肉体的・精神的な苦痛を和らげる緩和ケアも、入院時から継続して在宅で受けられるようになっています。また日々の介助・介護を担う家族には、生活上の悩みやストレスがつきもの。在宅医療を担う医療スタッフは、そうした相談にも乗ってくれます。

なお、在宅医療には「訪問診療」と「往診」とありますが、異なるのは訪問のタイミングだけで、どちらも受けられるサービスは変わりません。「訪問診療」は事前スケジュールに沿って医師が定期的に訪問、「往診」はそれ以外のときに緊急的に訪問して診療を行います。

「自分たちが主役!」と思うことが、ストレス軽減のポイント

いざ在宅医療サービスを受けてみると、家族にとっても慣れないことだらけで疑問や不安が出てくることでしょう。例えば、診療の日に立ち会えないと、「しっかり診てもらえているのかしら」「治療を嫌がったらどう対応してくれているのだろう」と、モヤモヤしてしまうこともあるようです。

では、こうしたストレスを抱えないためにはどうすればいいのでしょうか? 答えは、とにかく自分たちの不満や不安、疑問、「こうしたい」という要望を、在宅医療スタッフに思い切って伝えること。これに限ります。なぜなら、在宅医療の主役は患者さんであり、ご家族だから。医師や看護師、薬剤師、歯科医師、リハビリテーション専門職、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、訪問ヘルパーなど、在宅医療にはあらゆる職種の人が関わりますが、みんなその道のプロとして患者さんやご家族をサポートするのが役割です。スタッフと積極的にコミュニケーションを取り、自らが主体となってより良いケアを一緒に考えていけるといいですね。

将来を見据えて、今からできること

今は通院が困難な状態になっても、ほとんどの人が医療的ケアを受ける選択肢として、入院か、在宅医療かを選ぶことができます。しかし高齢化がますます進み、国民の5人に1人が75歳以上になるといわれる2025年には、特別な理由がない限り、医療機関で長期的ケアを受けることは難しくなります。つまり、在宅医療サービスを利用することが前提の時代が来るのです。

あまりピンと来ない方が多いかもしれませんが、自分もいずれは在宅医療を受けることになる、という意識を持つことが大切。あなたの住む地域の在宅医療体制は、十分に整っているでしょうか? 在宅医療サービスを提供している医療機関、訪問看護ステーション、介護施設、短期入所生活介護(ショートステイ)、緊急時の受け入れを行う病院はありますか? 今からリサーチを始めても、決して遅くはありません。

また、これから家を買う方は、バリアフリーはもちろん、介護ベッドが入るような部屋を確保するなど、将来的に在宅医療を受けることを想定した上で、住環境を考えることをおすすめします。

監修
水道橋東口クリニック院長 辻 彼南雄 先生

1984年北海道大学医学部卒業後、群馬大学医学部附属病院(神経内科)、東京逓信病院(内科)、東京大学医学部附属病院(老年病科)での勤務を経て、在宅医療の草分け的存在である佐藤智先生に師事。佐藤先生の下、白十字診療所、佐藤クリニックを経て、1998年より水道橋東口クリニック(佐藤クリニックから名称変更)に勤務。2002年同クリニック所長(現院長)に就任。東京大学医学部老年病学教室で非常勤講師を務める。一般社団法人ライフケアシステム代表理事、日本老年医学会代議員、日本在宅医学会監事、日本在宅ケア学会副理事長。




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