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- 生活習慣病の基礎知識。年齢に関わらず予防やチェックが必要
(公開日2017年10月31日)
「生活習慣病」は文字どおり「生活習慣」が原因で引き起こされる症状や疾患。つまり、若い頃からの生活習慣が積み重なって起こります。まずは、どんな人がかかりやすく、どんなことに気をつけるべきか、正しく理解して積極的に予防に取り組みましょう。
まだ若いから大丈夫! なんて思っていませんか?
「生活習慣病」と聞くと、どうしても「メタボ」や「肥満」が原因というイメージが強いためか、中年太りの男性が発症しやすいものと思っている人が多いようです。確かに、症状が進み、重篤な疾患につながるのは40代以降の人が多いのですが、近年では食生活の欧米化や生活習慣の乱れに伴い、20代、30代の人でも、いつの間にか病状が進行していた、というケースが増えています。もちろんそれは男性に限ったことではありません。そして、定期健診を受けている人でも、その結果を予防や対策に役立てないのは非常にもったいないことです。
定期健診は毎年受診していたKさん。「正常値の範囲だから」と、いつも検査結果は詳しく見ずに捨てていたが、実は年々、異常値へと近づきつつあった。そしてある日、めまいの症状が出て病院に行ったところ脳梗塞のリスクがあると診断が。
まだ20代だからと、会社の健康診断さえも時々スルーしていたNさん。3年ぶりに受診してみると、血圧が異常に上昇しており、再検査の結果「高血圧症」という診断に。まだ28歳でありながら、降圧薬を服用しなければならなくなった。
こんな人は要注意!
まずはリスクを知ろう
さまざまな生活習慣が体に及ぼす影響について、私たちは日々あまり深刻には捉えていません。でも、塵も積もれば……という言葉のとおり、毎日の「悪習慣」が積み重なることで、体に大きなリスクを背負わせてしまうのです。下記のチェックリストを参考に、自分の現在の生活を見直してみましょう。当てはまる項目が多いほど、生活習慣病を患うリスクが高いということです。
- 喫煙者である
- 夕食が21 時以降になることが多い
- 週に3日以上お酒を飲む
- 食べるのが早い
- 仕事などでストレスを感じることが多い
- 定期的な運動習慣(週1回程度)がない
- 両親や近親者に生活習慣病の人がいる
- 睡眠時間が少なく寝不足を感じている
- 食事は濃い味付けが好き
- 定期健診を1年以上受診していない
日々の生活習慣を見直し
リスクを少しでも減らしていくことが重要
健診や人間ドックの結果は過去の数値と合わせて読み取る
会社に所属していれば年に1度の健康診断を受診するほか、各自治体で受けられる健診などもあることから、定期的な検査を受けている人は多いはずです。しかし、その検査結果を「あまり悪い数値ではないから」とか「今は症状がないから大丈夫」と、軽い気持ちで受け取ってしまっている人が多いのもまた事実。本来ならば、「昨年や一昨年と比べてどう変化しているか」を見ながら、血圧や血糖値、中性脂肪などの数値が上昇傾向にないか確認し、早めの対策を講じるべきなのです。そのためには、どんな生活習慣が悪い影響を及ぼしているのか、医師のアドバイスをぜひ参考にしてください。
生活習慣病と呼ばれるものは、高血圧症、動脈硬化、糖尿病などから、脳梗塞や心筋梗塞などの血管障害といった、すぐに生命の危機に直結する病気に至るまで、軽視できないものばかりです。そのどれもが、大きな自覚症状はないまま進行していくため、定期的な健診で出された数値は実はたいへん重要な目安となります。自分の体が今どんな状態で、将来どんなリスクがありそうか、年齢や性別に関係なく、年に1度はしっかり向き合う機会を設けましょう。
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この先生にお聞きしました
公益財団法人
朝日生命成人病研究所附属医院
院長 岩本安彦先生東京大学医学部卒業後、同大学医学部、糖尿病研究室に所属。現・日本成人病(生活習慣病)学会理事。1997年から2011年まで東京女子医科大学糖尿病センター長を務め、2015年より朝日生命成人病研究所附属医院の院長に就任。同医院は、「体系的な糖尿病療養指導体制の確立と先駆的な試みの実践」が業績として認められ、「平成28年度(第9回)糖尿病療養指導鈴木万平賞」を受賞した。
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なぜ、40代以降で発症する例が多い?
- 40代は社会的な責任も増え、いわゆる働き盛りと呼ばれる年代。深夜に及ぶ残業、仕事でのストレス、接待での飲酒、睡眠不足など、さまざまな要因が一気に重なる年代でもあります。こうした悪循環が生活習慣病へとつながります。
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痩せている人でも生活習慣病にかかる?
- 痩せている人でも内臓脂肪がついてしまっている、いわゆる「隠れメタボ」といわれる人は多いのです。内臓脂肪の蓄積こそがメタボリックシンドローム、つまりは生活習慣病の危険因子。見た目が細いからといって油断はできません。
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生活習慣病に「遺伝」は関係する?
- 特に糖尿病などは遺伝が大いに関係します。近親者に動脈硬化や糖尿病を患っている人がいれば、それもリスクの一つ。そうした場合には、若年期から定期検診を忘れずに受診し、医師にもそのことを告げて、アドバイスを受けましょう。
高血圧、脂質異常症、そして脳や心臓の疾患、がんなどの命の危険がすぐに迫ってくるような重篤な病に至るまで、「生活習慣病」にはさまざまな疾患があります。そんな病気にならないためにどのような対策が必要か、日々の暮らしの中での予防法を考えてみましょう。
「生活習慣」が引き起こす疾患・病気の例
重篤な病気の入口となる症状
直接的に死に至る可能性の高い重篤な病気
- 歯周病
- 歯肉や歯槽に炎症が起き長期間続く。歯周病が進むと血糖値が高くなる傾向にあり、糖尿病は歯周病の危険因子であり、歯周病は糖尿病の合併症でもあるため、双方は密接な関係にある
- 高血圧症
- 血管に汚れがつき血流が悪くなると、心臓が末端まで血液を運ぼうと圧力を高める。その結果、高血圧を引き起こす。動脈硬化から脳疾患や心疾患を招くリスクが高まる
- 脂質異常症
- 高脂血症ともいう。動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品や飲酒を好む人は注意が必要。こちらも、動脈硬化を引き起こす原因の一つとなる
- 糖尿病
- 膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足し、血糖値が高くなる病気。一度患うと一生完治はしないといわれ、血管障害など危険な病気へつながる可能性も高い
- 骨粗しょう症
- 女性ホルモン、エストロゲンの減少が主な原因といわれるが、日々の食生活や運動の影響を大いに受けるため、生活習慣病のひとつといえる。糖尿病との関連性もある
- 痛風
- 血中の尿酸値が上がりすぎて起こる。腎機能に注意が必要なほか、血管障害を合併する危険性もある。飲酒、過食、ストレスなどが大きな原因となる
- 脳疾患
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脳梗塞
肥満、高血圧、脂質異常症などにより動脈硬化が進んだ結果、脳の血管が詰まったり、血栓ができたりして、引き起こされる脳出血
高血圧により血管に大きな負担がかかって破れてしまうことから起こる。突然倒れて昏睡状態になることが多いのも特徴とされている
- 心臓疾患
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心筋梗塞
脳梗塞と同様、動脈硬化が進み血管が詰まって起こる病気。やはり高血圧、脂質異常症などがリスクとなる。ストレスや疲労が引き金となることもある虚血性心疾患
冠動脈という心筋に血液を送る血管が細くなり、心筋の血液が不足することにより、胸の奥が締め付けられるような発作が起こる。動脈硬化やストレスが原因となる
- がん
- 喫煙習慣が多大なリスクとなる肺がんや、食生活の欧米化により増加傾向にある乳がんや大腸がんなど、がんの多くは生活習慣病であるといえる
生活習慣病をどう予防するか
生活習慣病にならないためには、飲酒や喫煙、ストレスなどに注意することはもちろんですが、食生活などは、育った環境に大きく左右されるものでもあります。先天的に高血圧や糖尿病を発症しやすい遺伝子を持つ方もいらっしゃいますが、例えば「早食い」の習慣や「濃い味付け」「偏食」などは、親から子へと受け継がれてしまう後天的な「遺伝」ともいえます。そう考えると、現在育児中の方は、ご自身だけでなく、お子さんの食生活や食環境にも将来大きな影響を残すということを自覚されるべきでしょう。
糖尿病は一度発症すれば生涯付き合っていかねばならないものです。また脳梗塞や心筋梗塞など、発症が即、死亡リスクへとつながる病気は、高血圧、肥満など、「大したことはない」と思われる症状が入口となります。生活習慣の改善で確実にそのリスクは減るものなので、できるだけ若いうちから予防の意識を持つことが大切です。
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〜管理栄養士・臨床検査技師からのアドバイス〜
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バランスの良い食事
- 好きな物ばかり食べない、深夜にたくさん食べない、過度な飲酒は控える、3食きちんと食べることが大事。また、炭水化物をまったく摂らないダイエットも流行っているが、主食はしっかり食べるべき。動物性脂肪の多い食事が続きがちな人は要注意。
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十分な睡眠
- 残業や接待などで帰宅時間が遅い人は、睡眠時間が短くなりがち。飲酒後は十分な睡眠時間を取ったつもりでも、睡眠の質は悪くなるためうまく疲労回復ができない。また、ストレスを抱え込まないことも、良い睡眠のためには非常に重要。
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適度な運動
- 運動により筋肉細胞にブドウ糖を取り込むことで血糖値が下がりやすくなる。糖尿病予防、肥満予防にもつながり、動脈硬化の発症リスクや、心疾患などの死亡リスクも低下する。ウォーキングなど簡単な運動でもよいので習慣として続けていくことが大事。
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定期的な健診
- 30〜40代はもちろん、20代のうちから年に1度の健診は必ず受診しておきたい。自分の体が昨年からどう変化したのかを読み取ることで将来の発症リスクを先読みでき、早めに効果的な対策をとることができる。医師のアドバイスにも積極的に耳を傾けよう。