ドクターズファイル特集
夫婦で始める初めての妊活

(公開日2015年11月26日)

皆さんは「妊活」という言葉を聞いたことはありますか? 「妊活」とは、そろそろ赤ちゃんが欲しいなあと考えることから始まり、妊娠に向けて夫婦で話し合うこと、知識を取り入れ行動を起こすこと、そして医療による不妊治療まで、赤ちゃんのいる生活をめざして行動をすること全般を表した言葉です。

「妊活」の中でも、昨今の晩婚化に伴い出産年齢の高齢化からニーズが高まっているのが不妊治療です。親しみやすい「妊活」という表現や有名人の治療体験を耳にする機会が増えたことで、これまでこっそりと行われていた不妊治療のイメージも変わり、どんどんオープンに語られるようになってきました。さらに、積極的に「妊活」に参加する男性も増え、同じ悩みを持つ人がたくさんいるという安心感が、夫婦2人で不妊の原因を調べて解決しようという意欲につながっているようです。でも実際には、「妊活」って何から始めればいいのかわからないという人や、不安や疑問ばかりの人も多いはず。そこで、そんなビギナー夫婦のために、ここでは「妊活」の基本の流れを大公開します。

妊娠への道のりは人それぞれです。何人子どもが欲しいのかなど夫婦でライフプランを練り妊娠への思いを共有することや、健康的な生活を送り妊娠しやすい環境を整えることも立派な「妊活」です。妊娠するための体のメカニズムを知り、タイミングを合わせていくなどまずは自分たちでできることを始める人もいれば、早い段階で人工授精や体外受精などの不妊治療に移行する人もいます。まずは、大まかな流れを理解するところから「妊活」を始めてみませんか?きっとあなたに合った妊活スタイルが見つかるはずです。

CONTENTS

片桐由起子准教授

監修
東邦大学医療センター 大森病院
産婦人科片桐由起子准教授東邦大学医学部医学科卒業。同大学院医学研究科修了。東邦大学医学部助手を経て2001年より米国に留学。2009年東邦大学医学部女性医師支援室長就任。2010年より現職。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会認定専門医ほか。

片桐先生から妊活を始めるご夫婦へ!

年齢と密接な関係の不妊。正しい状態で適切な医療を受けることが妊娠への近道

当院の患者さんも圧倒的に結婚年齢が遅い人が多く、体外受精以上の治療をしている人の半数以上が40歳代です。もしも40歳代で不妊治療をしている人が15年前に妊娠を考えていたら、受診の必要がなかった可能性は十分に考えられます。不妊治療を進めるにあたって、まず大切なのは夫婦そろって不妊原因をはっきりさせること。検査の結果によっては最初から顕微授精をしなければ授からない場合もあります。原因を明らかにし、ふさわしい医療を適切な状態で受けることが妊娠への近道ですね。最近は不妊治療がさまざまな形で取り上げられるようになり、前向きに治療を続ける夫婦も増えてきました。妊娠された後に産科への紹介状を書く際、以前は不妊治療をしていたことを隠す方が多かったのですが、今は「授かった経緯をできるだけ具体的に伝えてください」という方ばかり。それだけ不妊治療が受け入れられ身近になってきているのだと感じています。

先輩夫婦に聞く、私たちの“妊活”体験談

夫婦の数だけ妊活がある!不安でいっぱいのビギナーさんのために、3組の先輩夫婦に妊活を始めたきっかけやエピソードを伺いました。

すぐできると思っていたので、焦る気持ちとの戦いでした

1人目を出産後、1年くらいで2人目が欲しいと感じ妊活を始めたのですが、自分たちでタイミングを計ってもなかなか妊娠できなくて……。そんな時、婦人科検診の結果をきっかけに不妊治療をスタート。一通りの検査をして薬を飲みながらタイミング法を開始しました。上の子が小さい中、毎月通院するのが大変で、ストレスを感じることもありましたが、何よりも息子に兄弟をつくってあげたくて。同じく妊活をしている友人に相談できたのもすごく励みになりました。

山田さん夫婦の場合
「妊活」という言葉もなく、密かに2人で頑張りました!

結婚後すぐに子どもが欲しくて妊活をスタート。自分たちでタイミングを計り30歳の時に妊娠するも流産してしまいました。それをきっかけに夫婦で検査をした結果、自然妊娠できる可能性が他の人よりやや低いことがわかり、不妊治療を始めました。当時はまだ「妊活」という言葉も一般的でなく、不妊治療について自ら話す人もほとんどいなくて、誰にも相談できず落ち込むことも。そんな時は夫婦で話し合い乗り越えてきました。そして長女の子育て中に、なんと2人目は自然に妊娠! 本当に子どもは授かり物だと感じています。

佐藤さん夫婦の場合
夫婦の絆を深めてくれた妊活。貴重な時間を共有できました

34歳くらいまで仕事を中心とした生活をしていました。その後、妊活を意識し始めてしばらくしても妊娠しなかったため婦人科へ。仕事の合間を縫って検査を受けましたが、夫婦ともに問題は見つからず……。でも年齢のこともあり、そのまま不妊治療をスタートしました。当時、友人には子持ちの夫婦が多く打ち明けにくかったり、周囲の言動に傷つくような出来事も。そんなとき一番支えてくれたのは夫でした。少し時間はかかったけれど、妊活期間は夫婦の考え方を改めて話し合うことができ、愛情を深めてくれる貴重な時間だったと思います。

岡田さん夫婦の場合

まずはここから“妊活”を始めよう!

「妊活っていったい何をすればいいの?」「避妊をやめればいいだけだよね?」なんて不安や疑問がいっぱいで、最初の一歩が踏み出せない夫婦も多いのではないでしょうか。でも大丈夫。「赤ちゃんが欲しい!」と思って婦人科を受診する前に、まずは大まかな不妊治療の流れと基本的な内容を理解しておきましょう。実際に不妊治療を始めたらどこまで治療を継続するのか、時間や費用の問題など、妊娠、出産に対する夫婦それぞれの考え方をまとめておくことがハッピーな妊活をスタートさせるポイントです。

夫婦の考え・体のことを知る
体の状態を把握することだけではなく、妊娠について夫婦で話し合う時間も重要

まずは定期的な婦人科検診の受診と、できれば毎日決まった時間に基礎体温を計ることから始めましょう。基礎体温からは生理周期、正常に排卵が行われているか、排卵後のホルモンが足りているかなど妊娠に重要な要素がわかります。最近はスマートフォンのアプリやデジタル体温計に測定値を記録できる便利な機能もありますが、体温の流れを示す波形が1週間ごとに表示される場合が多く全体の流れがとらえにくいので、2周期分だけでも紙の基礎体温表に記録し、波形がひと目でわかるようにしておくといいでしょう。
加えて基礎体温以上に重要なのが、夫婦で不妊治療についての方針を話し合っておくことです。原因を調べ自然な妊娠に向けて治療を開始するのか、それとも自費診療での治療まで視野に入れるのか、妊娠して子どもを授かるということについて夫婦の思いを確認しておくことが大切です。

Check Point
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初診・基本検査

夫婦で心の準備が整ったら、いよいよドクターと二人三脚の妊活をスタート。不妊の原因を知ることは、夫婦に合った妊活の方法を決める重要なポイントです

不妊治療をスムーズに進めるために、その原因がどこにあるのかを丁寧に調べていきます。なお、問診票には正確に記入を。男性はおたふくかぜ、女性は風疹などの病歴を事前に確認しておきましょう。リラックスして最初の一歩を踏み出して!

体の状態を把握することだけではなく、妊娠について夫婦で話し合う時間も重要

初診時には、いつ頃から妊娠を希望して過ごしているのか、避妊期間があればその期間、避妊せずに子どもが欲しいと思ってからどれくらい経つか、性交渉の回数などを問診します。その後、婦人科の診察、既往症の有無、子宮や卵巣に病気はないか、あわせてホルモン検査から不妊の原因を探っていきます。通常すべての検査が終わるまで2回から3回の通院が必要になります。基礎体温表があればそれをもとに次回の検査日を決めることができるので持参するのを忘れずに。
通院して1~2周期目は検査と平行しながら妊娠しやすい時期をドクターから教わります。この通院初期段階で、夫婦ともに詳細を検査する場合もあれば、女性側の一部を調べてタイミング法を始め、治療のステップアップに合わせて検査内容を深めていく方法も。ドクターと今後の方針を決めていきましょう。

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タイミング法

排卵の準備ができているかをチェックして卵子と精子の出会いをお手伝いする方法。できれば自然に妊娠したいという夫婦にお勧めです

検査で大きな異常が見つからなかった場合に、卵子の発育を見ながら、排卵する時期に合わせて性交渉をすることで自然妊娠へと導きます。妊娠できる期間は排卵日の前後数日ととても短い期間です。より妊娠の確率を高めるために、排卵日を特定することで卵子と精子がきちんと出会えるようにドクターにサポートしてもらいます。

基礎体温から排卵日を正確に把握し、性交渉することで妊娠の確立を高める

基礎体温表から排卵のパターンを確認して、排卵日が近づいたときに受診します。超音波で卵巣の状態を調べ、卵胞という卵子を包んでいる袋の直径を計ることや子宮内膜の厚さや子宮の入り口の粘膜を見て、性交渉のタイミングを見極めていきます。月に一度の受診が目安ですが、1回の診察で排卵日が予測できなかった場合や数日先に排卵日が予想される場合には、再度受診する必要があります。また、ホルモンバランスの乱れや排卵のリズムが不規則な場合には排卵誘発剤など薬の服用を並行することも。タイミング法で妊娠すれば単純に性交渉のタイミングがずれていただけということになりますが、そうでない場合にこの治療を6周期ほど(女性の年齢が高ければ3、4周期)続けても妊娠に至らないときは、ほかの原因が考えられるので、次のステップへ進むことを検討しても良いでしょう。

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人工授精(AIH)

元気な精子を子宮に届けて卵子と精子が出会うまでの距離をギュッと縮める方法

運動性の高い精液を集めて妊娠しやすい時期に子宮に注入し受精をサポートする人工授精。毎月行っても問題はなく、麻酔の必要もないので女性の身体への負担が少ないといわれています。

より確実に卵子と精子の出会いを手助けし、体への負担も軽く自然妊娠に近いかたちです

通常は膣の中で射精された精子が子宮の入り口の頸管を通って卵管までたどり着きますが、その距離を大幅に縮めることで精子と卵子が出会える確率を高める方法です。男性がマスターベーションで採取した精子の中から動きの良い物だけを取り出し、排卵日の頃にカテーテルで子宮に注入します。精液を原液のまま注入する方法もありますが、最近は雑菌などを取り除くために洗浄し、濃縮してから注入するのが一般的です。排卵に問題がある場合は排卵誘発剤を併せて使用します。この治療はタイミング法で妊娠に至らなかった方、精子の数や運動率が少し劣る方、性交渉後に子宮の入り口の粘膜を顕微鏡で観察するフーナーテストで精子の動きが悪くなってしまい妊娠しにくい頸管因子のあるご夫婦に有効です。6回ほどトライする人が多く、次のステップへ進む目安になります。

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体外受精

体の外へ取り出した卵子と精子が出会い受精したことを確認してから子宮に戻す方法

体外に取り出した卵子と精子の受精を体外で行い、受精卵が育ったのを確認してから子宮に戻す方法。精子に問題がある場合には卵子1個に精子1匹を顕微鏡下で受精させる顕微鏡受精を行います。

妊娠率がぐっと高まる高度不妊治療の一つ。まずは内容や方法を正しく理解することから

体外受精がこれまでの治療と大きく違うのは、特別な場合を除いて排卵誘発剤を必ず使用することです。卵巣では1回の周期に原則1個の卵子が育ちますが、卵巣を刺激することで1回に複数の卵子を排卵させ採卵します。排卵誘発の方法には注射、飲み薬、点鼻薬と複数ありますが、卵巣の機能や卵巣予備能の状態によって選択できる物が変わってきます。よって体への負担や得られる効果などを考慮しなくてはなりません。また生理後から採卵日までに各検査のため最低でも4、5回は通院することになるので、スケジュール調整は綿密に。採卵は超音波を見ながら膣から細い針を入れていくため体への負担も大きく不安もあると思いますが、受精卵になっていること、細胞分裂したのを見届けてから子宮に戻すので、ほかの治療法に比べて周期あたりの妊娠率は高いといわれています。

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Q&A
1人目は人工授精で妊娠し出産しました。2人目もやはり自然妊娠は難しいですか?
1人目が人工授精であれば次回の妊娠も人工授精を必要とする可能性はあります。人工受精に至った原因がまだ残っているかもしれませんし、また1人目の時より加齢していることは確実ですから、2人目を希望する場合は早めにクリニックへ相談したほうがいいでしょう。
不妊治療をやめたら妊娠したと聞きました。そんなことってあるのですか?
明らかな原因がないご夫婦であれば、通院や治療のストレスや義務感から開放されることがプラスに働き妊娠に至ることもあるようです。ただ、原因がはっきりしている場合は治療をお休みしたから妊娠するとは考えにくく、遠回りになることも。
妊娠しやすい体質を作るサプリメントや体操、どこまで効果があるのか気になります。
それぞれどのような医学的根拠があるかによって変わってきますが、例えば卵巣機能を考えれば子宮や卵巣に流れる血流を良くするためのストレッチや運動は効果的だと考えられます。過信しすぎず、参考程度に試してみるのであれば問題ないでしょう。
検査で子宮筋腫や卵巣膿腫が発覚した場合、それが不妊の原因? 治療を優先させるべき?
病気は原因の一つかもしれませんが決定的な原因とは限りません。妊娠と治療のどちらを優先させるかは個々の背景により変わってくるので、医師に妊娠をしたいかどうか希望を伝えた上で、治療についても相談しベストな方法を探しましょう。
アラフォーになり妊娠について焦りが。不妊治療は何歳まで続けられますか?
37歳以降は急いだほうがいいかもしれません。卵巣機能を評価する方法として、実際の年齢に加えて卵胞から分泌される抗ミュラー管ホルモンを調べる血液検査があります(自費診療/5000~1万円程度)。こういった検査データもステップアップの参考に。
不妊治療によって妊娠した場合、赤ちゃんの健康状態へのリスクはありますか?
赤ちゃんの健康へのリスクを心配される方もいらっしゃいますが、比べるご夫婦の平均年齢などの背景が均一ではありません。年齢が高いことでリスクが増えるのは、治療していてもしていなくても同じ。必ずしも不妊治療がリスクを生み出しているわけではありません。

片桐先生からのメッセージ

妊娠は夫婦、そして女性にとって大きなライフイベントの一つです。まずは夫婦2人でしっかり話し合うことが大切。そして、妊活を意識して婦人科を受診される際は、不妊治療を標榜している医療機関を選び、不妊の原因を早い段階から明らかにすることが妊娠への近道です。また、いよいよ不妊治療と思って婦人科を受診すると、過度な期待もしてしまうと思います。普段から婦人科検診を受け、気になることがあれば、具体的に早めにかかりつけの先生に相談しましょう。


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