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「花粉症」基礎知識

(公開日2015年11月26日)

今や日本人の約2割がかかっているといわれる花粉症。花粉症の症状を軽減させるには、まず花粉症について正しく理解をすることが大切です。日本医科大学の大久保教授にお話を聞き、知っておきたい基礎知識をまとめました。

目次

1.そもそも花粉症はなぜ起こる?

花粉症は、さまざまな植物の花粉が引き起こすアレルギー反応の一つです。本来は無害なはずの花粉が、なぜ人体に異常をもたらすのか? そのメカニズムには体を守るための免疫機能が逆に体に害を及ぼすという現象があるのです。

花粉アレルギーが起こるしくみ

花粉図01 人間には体内に侵入してくる異物から身を守る免疫機能が備わっています。花粉症の場合、本来は無害なはずの植物の花粉を体が異物と誤認。このとき過剰に免疫機能が働いて体内に「抗体」ができ、くしゃみや鼻づまり、目のかゆみなどの防衛反応を引き起こします。これがいわゆるアレルギー反応で、原因物質のアレルゲンにあたるのは花粉です。
よく花粉症の発症の様子はコップからあふれ出す水に例えられますが、まさにこのイメージにぴったり。体に蓄積された抗体が個人の許容値を超えると、アレルギー症状となってあふれ出すからです。
また花粉症は遺伝的な要素が大きく、生まれつきアレルギー体質の人は花粉症になりやすいといわれます。その上、食生活の乱れや睡眠不足、運動不足、ストレスなどが重なると免疫バランスが崩れ、よりアレルギー反応を起こしやすい体になってしまいます。

花粉症を起こす植物の種類

日本で最も多いのはスギ花粉症。花粉症患者の約7割に上るといわれています。スギに反応する人はヒノキ科の植物に反応することが多いため、症状が長引く傾向にあります。
次に多いのがイネ科植物による花粉症。カモガヤ、スズメノテッポウなどが該当しますが、お米の稲は花粉を遠くまで飛ばさないため、あまり影響はありません。また、ブタクサやヨモギといったキク科の植物も花粉症を引き起こします。スギやヒノキのピークが冬から春にかけてなのに対し、こちらは秋が花粉シーズンとなります。
北海道のような寒冷地ではシラカバによる花粉症も。海外にも欧州はイネ科、米国はブタクサ、北欧はシラカバが原因の花粉症があり、日本のスギと合わせて世界の「4大花粉症」と呼ばれています。

花粉図02

2.まだかかっていない人も!これから花粉症にならないために

花粉症は、今はそうでなくても将来的に発症する可能性が誰にでもあります。発症のリスクを少しでも減らすには、日頃の食生活や住環境がとても大切。花粉症になりにくい体を作る食品や花粉を寄せ付けない掃除や洗濯の方法を知って、日々の暮らしの中で万全な対策を心がけましょう。

キーワードは「ポリフェノール」と「乳酸菌」!

花粉図03

花粉症の予防や症状の緩和には、免疫機能を高める食生活が良いとされています。免疫が正常に機能すれば、花粉を異物と捉えることもなく、花粉症になりにくいからです。
免疫機能をアップさせるポイントは細胞の酸化(老化)を防ぐこと。主にビタミンやミネラルを多く含む野菜、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸を多く含む魚は抗酸化作用が高いので、積極的に取ることをおすすめします。
抗酸化作用で最近注目されているのが、「ポリフェノール」。赤ワインに含まれるプロアントシアニジンや緑茶に含まれるカテキンなどが代表的ですが、たまねぎに含まれるケルセチンもポリフェノールの一種です。
また、腸内環境を整える食品も花粉症予防には効果的。「乳酸菌」が含まれたヨーグルトやチーズのほか、みそ、納豆、漬物などの発酵食品に加え、食物繊維が豊富な食材も腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を良好に保ちます。

住環境はとても大切。日々のケアや工夫のポイント

花粉図04

花粉は家の中にも確実に入り込んでいます。窓を開けたり洗濯物や布団を外に干したりしたときはもちろんのこと、自分や家族が外から持ち込んでいるのです。
特に寒い季節はウールなど毛足の長いコートに花粉が付きやすく、それを着たまま部屋に入ってしまうと室内に花粉が……。花粉の侵入を防ぐには、まず玄関にコートをかけられるスペースを作り、玄関に入る前にコートの花粉を払い落として、脱いだ後はそのまま玄関にかけておきましょう。また、帰宅後はなるべくすぐにシャワーや入浴を済ませ、体や髪に付いた花粉を洗い流すのが理想的です。
部屋の換気をしたいときは窓を全開にせず少しだけ開けて、網戸やレースのカーテンで花粉の侵入を防ぎます。換気のタイミングは、比較的花粉の飛散量が少ない早朝がおすすめなので、掃除も朝のうちに済ませてしまいましょう。
洗濯は部屋干しが基本。外に干した場合は室内に取り込むときに、しっかりと花粉を払い落としてください。柔軟剤を使うと静電気の発生を抑えられ、花粉が付きにくくなるというのも覚えておくといいでしょう。

3.どんな治療が効果的?花粉症の治療方法

花粉症はもともと根本的な治療が難しい病気。従来は薬剤による対症治療が主流でしたが、今は薬剤を使わない新たな治療法が登場し、中には根治が見込める方法もあります。効果の持続期間や保険適用の有無、治療におけるメリットとデメリットなども含め、注目の最新治療をご紹介します。

薬剤を用いない治療法

抗ヒスタミン薬などの飲み薬や点鼻・点眼薬を使わずに、高い効果を上げる注目の治療法は4つ!

レーザー治療

下鼻甲介と呼ばれる鼻粘膜の表面をレーザー光線で焼き、凝固させる手術療法です。焼かれた粘膜は乾いて花粉が付きにくくなり、腫れることもありません。手術は外来でも受けることが可能。出血や痛みがあまりなく、健康保険も適用されます。ただし鼻粘膜は再生するので、治療効果は1シーズンだけの対症療法。基本的に誰でも受けられますが、薬を飲めない妊婦や薬による眠気を避けたい受験生におすすめの治療法といえるでしょう。鼻づまりが強い人に向いています。

ソムノプラスティ

レーザー治療が鼻粘膜の表面を焼くのに対し、鼻粘膜の下に高周波電流を流して細胞を凝固・壊死させる治療法です。まずニードルと呼ばれる極細の針を鼻粘膜下に挿入、これが電極となって高周波が発生し、周辺の組織を凝固させます。凝固した組織は一時的に腫れますが、3~8週間程度で引き、その頃には鼻づまりが解消されるという仕組みです。
ただし、この方法も対症療法で持続期間は1シーズン限り。健康保険が適用されます。

舌下免疫療法

口の中に花粉エキスを落とし体内に吸収させ、体を徐々に花粉に慣らしていく治療法です。アレルゲン免疫療法と異なるのは体内に直接アレルゲンを入れるのではなく、免疫機能が豊富な舌の周辺から取り入れる点です。副作用が極めて少なく、自宅でも行えるので、花粉症を手軽に根本から治せる方法として注目されています。治療期間は2年以上かかり、健康保険は平成26年春以降適用される予定。なお妊婦や12歳未満の小児・乳幼児などは治療の適用外です。

アレルゲン免疫療法

花粉図05

アレルギーの原因(アレルゲン)である花粉のエキスを少量ずつ体内に入れていき、体を徐々に花粉に慣らしていくことで過剰な免疫反応をなくす、唯一の根治療法。減感作療法とも呼ばれています。
治療の手順は、まず濃度の低い花粉エキスを皮下注射し、これを週1~2回のペースで3カ月ほど続けた後、少しずつ濃度を上げて1~1カ月半に1回のペースで治療をしていきます。このとき気をつけなければならないのが副作用。なにしろ花粉症のもとを直接体内に入れるのですから、注入する花粉エキスの量や濃度次第では、アナフィラキシーショックと呼ばれる強い拒絶反応を起こす可能性もあります。そのためアレルゲン免疫療法は専門的な知識と経験のある医師のもとで受けなければなりません。
正しい方法で治療を行えば約8割の患者に劇的な効果があるともいわれています。治療期間は2~3年と長期にわたりますが、つらい花粉症を根本から治せるニーズは高まっています。健康保険の適用あり。

4.ここに気をつけたい!子どもの花粉症

花粉症は大人だけでなく、子どもも発症する病気。特に近年はその割合が増えており、対処に困っているご家族の方も少なくないようです。鼻や目のつらい症状は子どもの成長の妨げになることもありますから、正しい予防や治療を知り、子どもたちを花粉症から守りましょう。

見逃さないで! 子どもが花粉症にかかったサイン

花粉図06

子どもの花粉症は見極めが難しいといわれています。スギ花粉のシーズンは風邪やインフルエンザがはやる時期と重なりますし、小さな子どもは自分の症状をうまく伝えられないからです。そのためご家族の方が花粉症のサインを見逃さず、早い段階で処置するよう注意しなくてはなりません。
最もわかりやすいのは鼻水、鼻づまり、目のかゆみ。鼻をすすったり、目をこすったり、あるいは口をもぐもぐさせるようなしぐさも花粉症のサインの恐れがあります。ちなみに子どもの鼻の穴は大人に比べ小さいため花粉が鼻に入り込みにくいのですが、かゆみやくしゃみの症状が大人より強いのが特徴です。
花粉症のつらい症状は睡眠不足や集中力の低下を招き、勉強や運動に支障をきたすこともあります。子どもの健やかな成長のためにも、的確な花粉症対策は親の大切な役目といえるでしょう。

小児治療は「短期+長期」で向き合う

花粉症の治療はこれまで薬剤による対症療法が中心でしたが、アレルゲン免疫療法などの根治療法が行われるようになったおかげで、根本的な改善が可能になりました。ただし免疫療法は長期にわたるため、乳幼児のうちにアレルギー検査をして、花粉症にかかるリスクを把握しておくと良いでしょう。それをもとに発症をコントロールできれば、一生、花粉症特有のつらい症状を抱えずに済みますし、将来、受験や職業選択の際に妨げになりません。
その一方で、いくら予防を心がけても花粉症にならない保証はありませんから、発症してしまった場合はタイミングを見て、レーザー治療などの対症療法で症状を抑えることが必要です。つまり花粉症治療は小児のうちから長期プランと短期プランを組み合わせて行うのが理想なのです。
しかし、長期にわたる計画的な花粉症治療が行われているのは、限られた医療機関のみ。一般的には薬剤を使って一時的に症状を緩和させる短期的な治療にとどまっているのが現状です。



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