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(公開日2021年2月26日)

花粉症は「春先だけ我慢をすればいい病気」という印象が根強いですが、一年中、そして誰しもがかかり得るアレルギー疾患です。鼻や目のつらい症状から生活に支障を来すことも多いため、適切な対処法を知っておきたいところ。そこで、発症の仕組みから治療方法、子どもの花粉症まで、花粉症の基礎知識を、日本医科大学大学院・大久保公裕先生に解説してもらいました。

花粉症の原因と発症の仕組み

花粉症は、さまざまな植物の花粉が引き起こすアレルギー反応の一つ。本来は無害なはずの花粉が人体に異常をもたらすそのメカニズムには、体を守るための免疫機能が大きく関わっています。

花粉アレルギーが起こる仕組み

人間には体内に侵入してくる異物から身を守る免疫機能が備わっています。花粉症の場合、免疫機能が植物の花粉を異物(アレルゲン)と誤認し、過剰に働いて体内に「抗体」を作ります。この抗体は花粉に接触するたび体に蓄積され、その人にとっての許容値を超えた時、くしゃみや鼻詰まり、目のかゆみなどのアレルギー反応を起こすのです。
また、遺伝的な要素も大きく、生まれつきアレルギー体質の人は花粉症になりやすいといわれます。その上、食生活の乱れや睡眠不足、運動不足、ストレスなどが重なると免疫バランスが崩れ、花粉症がひどくなることがあるため注意が必要です。

花粉症を起こす植物の種類

日本で最も多いのはスギ花粉症。花粉症患者の約7割に上るといわれています。スギに反応する人はヒノキ科の植物に反応することが多いため、症状が長引く傾向にあります。
次に多いのがイネ科植物による花粉症。カモガヤ、スズメノテッポウなどが該当しますが、お米の稲は花粉を遠くまで飛ばさないため、あまり影響はありません。また、ブタクサやヨモギといったキク科の植物も花粉症を引き起こします。北海道のような寒冷地ではシラカバによる花粉症も。
スギやヒノキが冬から春にかけてピークを迎えるのに対し、キク科植物は秋が花粉飛散シーズンとなります。
つまり、一年を通して花粉症になる可能性があるのです。
なお、海外では欧州にイネ科、米国にブタクサ、北欧にはシラカバが原因の花粉症があり、日本のスギと合わせて「世界の4大花粉症」と呼ばれています。

花粉症の症状と
新型コロナウイルス感染症の違い

花粉症(アレルギー性鼻炎)と新型コロナウイルス感染症の症状は、鼻水やくしゃみ、鼻詰まり(鼻閉)、味覚の変化など似ているものがあります。そのため、「この症状は花粉症? それとも……」と不安になりますよね。しかし同じ鼻水でも、花粉症の鼻水は透明でサラサラとしていることが多く、感染症の鼻水は粘り気があります。また、発熱や嗅覚障害がコロナでは鼻閉がなくても生じるのに対し、花粉症ではほとんどの場合、鼻閉を伴うなど、細かな点が異なります。しかし、自己判断は危険。「もしかして……」と思ったら、かかりつけ医のほか、厚生労働省や各自治体の指定する相談窓口へ相談を。花粉アレルギーがすでにある人は、薬などの治療で症状を抑えておき、変化に気づけるようにしておきましょう。

花粉症の予防

今は花粉症と無縁でも、大量の花粉を吸いこんだり、目に入ったりすることで抗体が作られ、花粉症を発症するリスクは高まります。そうならないためには、できる限り花粉に触れないことが一番。同時に、生活習慣を見直して、花粉症に負けない体づくりをしておくこともお勧めします。

花粉を遠ざける外出前後の新習慣!

花粉の飛散が多い時期は、眼鏡やマスクを着けて花粉が目や鼻につくのを防ぎます。そして家に帰ったら玄関に入る前に行いたいのが、洋服や髪の毛についた花粉を落とすこと。特にウールなど毛足の長いコートは花粉がつきやすいため、部屋に持ち込まないことがベストです。玄関にコート掛けを置くことができれば、そこに掛けておくと良いでしょう。また、帰宅後はなるべくすぐにシャワーや入浴を済ませ、体や髪についた花粉を洗い流すのが理想的です。
掃除は比較的花粉の飛散量が少ない朝のうちに済ませるのがお勧め。床は掃除機をかける前にぬれたふきんで拭き上げると、花粉を舞い上げずに吸い取ることができます。部屋の空気を入れ替えるときは、窓を全開にせず少しだけ開けて、網戸やレースカーテンで花粉の侵入を防ぎます。換気もできれば早朝に行いましょう。
洗濯物は部屋干しが基本です。外に干した場合は、室内に取り込むときにしっかりと花粉を払い落としてください。外干し後の布団は表面を掃除機で吸い取ると、ダニの死骸対策にもなりますね。洗濯の際に柔軟剤を使うと、静電気による花粉の付着が軽減できるのもポイントです。

規則正しい生活で免疫力UP

日頃からバランスの良い食事、良質な睡眠を習慣にしていると、免疫機能が正常に保たれ、ひいては花粉症の予防や症状の緩和につながるといわれています。一方、飲酒、喫煙、風邪は鼻の粘膜にダメージを与える一因に。正しい生活習慣を心がけることも花粉症対策になります。

花粉症の治療方法

花粉症はもともと完治させることが難しい病気。従来は薬剤によって症状を一時的に抑える対症療法が主流でした。しかし、アレルギーの原因物質に体を慣らすアレルゲン免疫療法などの普及によって、花粉症を根本的に改善させられる可能性が広がりました。

薬剤を用いない治療法

アレルギー反応を抑える飲み薬や点鼻・点眼薬を使わない治療法は4つ!

レーザー治療

鼻粘膜の表面をレーザー光線で焼き、腫れている粘膜を凝固させる手術療法です。焼かれた粘膜は乾いて花粉がつきにくくなるほか、鼻通りも良くなるため、鼻詰まりが強い人に向いています。表面麻酔をするので治療に伴う痛みはほとんどなく、治療時間は15分程度。健康保険も適用されます。ただし鼻粘膜は再生するので、1シーズンごとに治療を受け直す必要があります。基本的に誰でも受けられますが、妊娠・授乳中で薬を飲めない人、眠気を避けたいドライバーや受験生に適しているといえるでしょう。

高周波電気凝固法

レーザー治療が鼻粘膜の表面を焼くのに対し、鼻粘膜の下に高周波電流を流して細胞を凝固・壊死させる治療法です。まずニードルと呼ばれる極細の針を鼻粘膜下に挿入。これが電極となって高周波が発生し、周辺の組織を凝固させます。凝固した組織は一時的に腫れますが、3~8週間程度で引き、その頃には鼻詰まりが解消されるという仕組みです。ただし、この方法も対症療法で持続期間は1シーズン限り。健康保険が適用されます。

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

スギ花粉症もしくはダニアレルギーに対する保険適用の治療法。アレルギーの原因である花粉のエキスを舌の裏に数滴たらし、体内に吸収させ、体を徐々に花粉に慣らして過剰な免疫反応をなくしていきます。毎日投与が必要であり、なおかつ3~5年は続ける必要がありますが、正しく治療が行われた場合、長期にわたってアレルギー症状を抑えることが期待できます。2018年には、5歳以上の小児も舌下免疫療法を受けられるようになりました。

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皮下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

舌下免疫療法と同じく、アレルゲンを少量ずつ投与して体に慣らしていきます。注射で花粉症の原因物質を直接体内に入れるため、じんましん、喘息発作などの副反応により一層注意をしながら、注入する花粉エキスの量や濃度を調整していきます。カモガヤ、ブタクサなど幅広いアレルゲンに対応するのが特徴。この治療法も健康保険が適用されます。

子どもの花粉症

近年、花粉症の低年齢化が指摘されています。しかし、スギ花粉のシーズンは風邪やインフルエンザの流行と重なるほか、小さな子どもは自分の症状をうまく伝えられないため、発見が遅れがち。そこで、子どもの花粉症のサインと、花粉症と診断された際の治療法についてご紹介します。

もしかしたら? 子どもの花粉症を疑うポイント

子どもは目や鼻の粘膜が腫れやすいため、花粉症になると鼻詰まりやかゆみを起こしやすいのが特徴。鼻をぴくぴくさせる、目をこする、鼻が苦しくて口を開けていたり、もぐもぐしたりするしぐさが見られたら、花粉症のサインかもしれません。屋外でより頻繁に見られる場合はその可能性が高くなりますので、注意深く観察してください。
症状が続くと睡眠不足や集中力の低下を招き、勉強や運動に支障を来すことも。「花粉症かな?」と思ったら、小児科や耳鼻咽喉科の医師に相談しましょう。

花粉症が発症したら、外ではマスク着用を

花粉を防ぐためのマスクですが、活発な子どもも多くいます。外出する前はちゃんと着けられていたのに、ちょっと目を離したら「顎マスク」になっていた……ということも。花粉をできるだけ体に入れないために、正しい着用のポイントを押さえておきましょう。

家族のサポートで子どもを花粉から守る

5歳以上の子どもであればアレルゲン免疫療法によって根治をめざせますが、治療期間が長期にわたるため、やはりそもそもの発症を抑えたいところ。花粉の飛散が多い日は眼鏡やマスクで対策をし、帰宅後はうがい、手洗いとともに洗顔、鼻をかむなど、体についた花粉を落とす習慣をつけさせてあげてください。
一方で、いくら予防を心がけても花粉症になってしまうことはあります。その場合は専門の医師とともに、年齢や症状の度合いに合った適切な治療を検討します。点眼薬を使う場合、子どもがまだ自分でさせなければ、さしてあげるなどフォローを。
成人・小児ともに花粉症の予防・治療は、免疫機能の仕組みを理解した上で取り組むことが重要です。花粉症を疑う症状が現れた場合や、アレルゲン免疫療法などの専門的な治療を希望する場合は、必ず専門の医師に相談しましょう!

こどもへの点眼方法

頭の下に枕を入れて仰向けに寝かせ、下瞼を指で下げて目薬をさします。目をつぶってしまっても、そのまま目を開けさせれば、自然と目薬は目の中に入っていきます。

監修/大久保 公裕先生

1988年日本医科大学大学院耳鼻咽喉科修了。1989~1991年、アメリカ国立衛生研究所留学。主な研究テーマは「舌下免疫療法、アレルギー性鼻炎の新しい治療法」など。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会理事、日本耳鼻咽喉科学会評議員を務めるアレルギー性鼻炎研究家の草分け的存在。

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