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- 病院とクリニックの特徴、違いを知って使い分けよう
「病院」と「クリニック」はともに医療機関ですが、その役割は違います。また「病院」同士の間にも役割の違いがあります。自分や家族が病気・けがをしたとき、適切な医療機関を選べるように、それぞれの使い分けのポイントをしっかり押さえておきましょう。
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- 地域の中の医療
住み慣れた地域で、いつまでも健康に過ごすための仕組み「地域包括ケアシステム」。その中で医療機関は、仕事と治療の両立や経済的負担なども踏まえた、「患者に寄り添った医療」の提供を役割としています。
多職種で密に連携し「自分らしい生活」を支える
近年、医療機関は病院やクリニック同士だけでなく、多職種間での連携にも力を入れています。
例えば、自治体や介護関連施設、生活支援サービスを提供するNPO法人。これらと協力して、病気・けがの治療や予防、介護などに地域ぐるみで取り組んでいます。この仕組みは「地域包括ケアシステム」と呼ばれていて、その役割は、住み慣れた町で「健康に自分らしく暮らせる」ように支えていくことです。
患者の療養生活を支える上では医療機関だけで対応できないこともあり、さまざまな機関の助けを借りる必要があるのです。
仕事や経済的負担にも配慮して患者に寄り添う医療を提供
そんな地域包括ケアシステムにおける医療の役割は、「患者に寄り添った医療サービスを提供すること」です。例えば生活習慣病の治療や慢性疾患のリハビリは長期間におよびますが、その間ずっと治療やリハビリに専念することは患者にとってたいへんな負担です。
そのため医療機関は、患者の仕事と治療の両立や経済的な負担などにも配慮した医療を行えなければなりません。そこで、病院やクリニックは定期的な研修などにより、関係機関と互いに「顔の見える連携」を構築。スムーズな連携に向けて信頼関係を深めています。
治療や入院、それに伴うケアの提供だけが医療機関の役割ではありません。患者が治療に取り組みながらも、仕事や充実した日常生活を諦めることなく、自分らしい生活を送れるような医療を提供すること。それこそが地域における医療機関の役割です。
医療と「地域包括ケアシステム」
高齢化が顕著な今、医療だけでは患者の健康は支えきれません。地域の介護や生活支援、介護予防にかかわる施設と医療機関が協力体制を敷き、暮らしと一体化する「地域包括ケアシステム」の必要性が高まっています。
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- 病院とクリニックの使い分け
病院とクリニックは、病床(入院患者用のベッド)の数や取り組んでいる医療の内容など、いろいろな面で違いがあります。そのため、病気・けがの種類や程度に応じて、どこにかかるべきなのかが変わります。
診療科や病床の数によって病院とクリニックは区別される
医療機関は一般的に「病院」と「クリニック」(診療所、医院)の2つに分けられます。この2つの違いを知ることで、よりスムーズに適切な医療を受けられるようになります。
まず病院は、複数の診療科と20以上の病床を持つ医療機関のことを指します。さらに、先進的な医療に取り組む国立病院、大学病院、企業立病院といった大規模病院や、地域医療を支える中核病院、地域密着型病院などの種類に分けられます。
一方クリニックには、病床数が1~19の有床診療所と、病床を持たない無床診療所のほか、いわゆる「歯医者」の歯科診療所があります。
身近な疾患はクリニックで重症疾患は病院での診療が基本
突如発症し短い経過で重症化する可能性がある急性期疾患の診療は、主に病院が行います。またMRIやCTなどを使った精密な検査も、病院の役割の一つです。
一方クリニックでは、軽い病気・けがや慢性期疾患の診療が中心。慢性期疾患とは、症状は落ち着いていても引き続き治療が必要な病気・けがのことです。
役割が分かれているのは、誰もが適切な機関で適切な治療を受けられるようにするため。例えば、風邪などの一般疾患で多くの人が病院にかかると、命に関わるような急性期疾患の患者がすぐに治療を受けられません。急性期疾患で病院にかかり治療を受けても、症状が落ち着いたらクリニックでの治療に移ります。これによって、病院は新しい患者を受け入れられるようになります。
スムーズな受診のために
スムーズな受診のために、病院とクリニックの違いを押さえ、病状などに応じて適切な医療機関を選択するように心がけましょう。
- まずはクリニックを受診
- まずはかかりつけのクリニックを受診。必要であれば、クリニックのドクターから適切な病院に紹介状が出されます。
- 病院で専門的な検査や
高度な治療を受ける
経過観察・リハビリ
病状などによっては、クリニックではなく中規模病院に転院する可能性も
もともと通っていたクリニックに転院できれば、ほかの不調が起きても不安がありません。
症状に合わせて新たなクリニックが紹介されることも。通いやすさも考慮されます。
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- 医療機関のQ&A
「病院」と「クリニック」は、病気などによって使い分けることが大切。とはいえ、「普段と違う医療機関にかかるのが不安……」など、疑問や心配もあるでしょう。医療連携に詳しい酒井先生に、気になる疑問をお聞きしました。
日本赤十字社医療センター
- 酒井 敬介
- 先生 胃・食道外科部長
東京大学卒業。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。両学会において医師を指導する立場でもある。身体障害者福祉法第15条指定医(小腸機能障害、ぼうこう又は直腸機能障害)。臨床研修指導医。
- Q
- 病院とクリニックはなぜ使い分ける必要があるのでしょうか?
- open
A
- クリニックは軽い疾患の、病院は重い疾患の診療が中心
適切な医療機関で適切な治療を - 病院とクリニックは同一視されがちですが、実は2つは担う役割自体が異なります。どちらも医療機関ではありますが、病院は大きな病気やけがを、クリニックは軽い症状の病気やけがを診療するのが主な役割です。なお、クリニックが発行する紹介状(診療情報提供書)を持たずに病院を受診すると、医療費以外に「選定療養費」が発生する場合があります。これは病院とクリニックを正しく使い分けることを推進して病院の待ち時間を減らすために、国が導入した制度です。
- Q
- 紹介状の内容が知りたいです
病気や薬のことがちゃんと伝わっているのか心配で……。 - open
A
- 症状や検査結果、服用薬など患者・病気について詳しく記載
内容を医師に尋ねることも可能 - よく耳にする「紹介状」ですが、正式には「診療情報提供書」といいます。封がされており患者さんは中身が見えないので、心配に思うこともありますよね。これには患者さんの住所、氏名などの個人情報、あとは病名、症状、検査結果、画像所見、投薬内容など、現時点でわかっていることがしっかりと書かれています。内容が気になる方は、病院の先生に「どんなことが書いてあるのですか?」と尋ねてみるといいでしょう。あくまで私の例ですが、実際に多くの患者さんから内容についてご質問をいただいています。昔と違って、最近は病名などの告知も一般的になりましたし、患者さんと一緒に見ることが信頼関係を築くことにもつながりますから、教えてくれる先生もたくさんいらっしゃいますよ。最初から「一緒に見ましょうね」と、オープンにする医師も増えてきていますね。
- Q
- 退院後に通うクリニックや治療費のことが不安です
病院で相談はできますか? - open
A
- 病院の専用窓口で専任の職員が相談に応じる
相談のみの来院にも対応 - もちろんです。病院には「医療連携室」といった相談窓口(名称は病院により異なります)があり、医療ソーシャルワーカーや療養支援看護師といった人たちが、医療費負担や、退院後に通う医療機関、いわゆる「逆紹介」先のクリニック探しなどの相談に応じています。ただ逆紹介に関しては、患者さんとクリニックには相性などもありますから、もともと通っていたクリニックに再度通うことも考えられます。やはり普段からかかりつけの先生をつくっておくといいですね。
- Q
- 病院に紹介状を持っていくのと持たないで受診するのとでは
何か違いはありますか? - open
A
- 紹介状がないと検査の所要時間や選定療養費などの負担が発生
紹介状があればどちらも不要 - 検査や治療の内容に大きな違いはありません。ただ、紹介状をお持ちの場合は病気名や検査結果、治療の経過などを病院の医師が把握できますが、紹介状なしの場合は、どういった病気でいらっしゃったのかがわかりません。そのため、一から診察や検査を行いますので、その分だけ時間が必要になります。しかし診療での違いとしてはそれくらいで、診療内容が大きく変わるといったことはありませんので、ご安心ください。とはいえ、紹介状を持参しないで病院にかかる場合、医療費とは別に選定療養費がかかる可能性がありますので、金銭的な負担は増えてしまいます。その負担を減らし、スムーズな受診をするためにも、体調不良を感じたらまずはかかりつけのクリニックにかかることをお勧めします。
- Q
- 病院は標榜科目が多くて受診すべき科がわかりません
見極めのポイントは? - open
A
- 患者自身で判断するのは困難
まずはかかりつけ医をつくり困ったら医師にすぐ相談を - 患者さんがご自身で受診すべき診療科を判断するのは、確かに難しいですね。身近な病気であれば、過去の経験からどこにかかるかわかることもあると思いますが、なじみのない病気や症状ではそうもいかないでしょう。インターネットで調べて探すのも一つの方法ですが、専門知識がないとその判断は難しいです。ですので、やはり専門家である医師の指示を仰ぐのが一番ですね。そのためにも、日頃から信頼できるかかりつけ医をつくっておけば、気軽に相談できますし、診断してもらえます。病院にかかる際にも、適切な科へ紹介してもらえるので安心です。また、急に体調を崩してしまったときなどでも、すぐに対応してもらえるので、かかりつけ医の存在は大きいでしょう。
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- 病院の使い分け
高度な医療の提供を役割とする病院や、クリニックで慢性期治療に取り組む患者をサポートする病院など、病院の機能はさまざま。適切な医療機関を選ぶために、病院同士の違いを知っておきましょう。
高度医療や地域に根付いた医療 病院によって異なる役割
代表的な病院の種類には、まず「特定機能病院」と「地域医療支援病院」があります。
特定機能病院は、通常の病院では治療が困難な病気・けがに対する医療を提供する病院です。また医療の提供だけでなく、より先進的な医療技術の研究・開発も国によって義務づけられているなど、高度な医療に特化した病院といえるでしょう。
地域医療支援病院は、名前のとおり地域医療を支えるための病院です。主な役割は、クリニックから紹介された患者の診療や、クリニックへ戻った患者の容態急変に対する救急医療の提供など。また、病院の医療機器や病床(開放型病床)を地域のクリニックの医師が共同で利用できるようにしているのも大きな特徴です。
それ以外にも、専門性の高い治療が行えるかどうかなどでそれぞれ区別されています。
得意な治療分野などを押さえて自分に合った病院の受診を
こうした病院の役割は、その役割を全うできると厚生労働省や都道府県が認めた場合に指定されます。そのため、がんであれば「がん診療連携拠点病院」、急を要する大きな病気・けがであれば「救命救急センター」、出産前後の緊急事態には「周産母子医療センター」といったように、その役割を担っている病院を選ぶのが良いといえるでしょう。
このように、病院もそれぞれ違った役割を持っています。そのため、各医療機関は地域の人々の健康をさまざまな角度から支えられるように、互いに連携して診療にあたっています。
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- 病院機能一覧
病院は機能によって役割が違います。その病院にどんな機能があるかは、病院のホームページなどで確認することができます。また診療分野だけでなく、病院の取り組みによっても機能は異なり、複数の機能をもつ病院もあります。
特定機能病院
内科、外科、小児科など定められた10以上の診療科を持ち、治療が困難な病気・けがに対する高度な医療を提供する。また、研究・開発も義務づけられており、そのために必要な集中治療室や研究室なども備えている。
地域医療支援病院
地域のニーズに即した医療を提供する病院。地域のクリニックからの紹介で入院した患者をかかりつけ医が訪れて、病院の医師と共同で治療できる開放型病床や、慢性期の患者の容態急変に備えた救急医療を提供する。
がん診療連携拠点病院
地域におけるがん医療の水準向上や連携強化、患者に対する相談支援・情報提供などにも取り組む。都道府県がん診療連携拠点病院と、二次医療圏に置かれる地域がん診療連携拠点病院がある。
救命救急センター
一次・二次救急で対応できない重篤患者の治療にあたることを役割とする。救命救急専用の病床や診察室、集中治療室を持つ。中でも、四肢切断など特に重篤な疾患の患者を受け入れる病院を高度救命救急センターと呼ぶ。
周産期母子医療センター
周産期における母体や胎児の救急対応を役割とする病院。NICU(新生児集中治療室)などを備えている総合周産期母子医療センターと、比較的高度な周産期医療を提供する地域周産期母子医療センターがある。24時間対応。
回復期リハビリテーション病棟
急性期治療を終えた患者の心身の回復に努める病院内の施設。専門のセラピストによる食事や着替えなどの日常生活動作(ADL)の訓練を中心に、それまでどおりの生活を自分の力で送れるようになることをめざす。
地域包括ケア病棟
急性期を脱した患者(ポストアキュート)を受け入れて日常生活への復帰支援を行うほか、自宅や施設で療養中の人が病気・けがで緊急入院する際(サブアキュート)に受け入れる病院内の施設。
在宅療養後方支援病院
在宅で療養している患者の緊急時の入院を支援する病院。原則24時間、入院対応を受け付けており、患者は前もって緊急時に当該病院への入院を希望する旨を届け出る。
救急指定病院
救急医療対応を都道府県から認定された病院。救急医療の知識・技術を有する医師が常駐し、エックス線装置や輸血・輸液用機器、救急医療専用の病床などを備える。救急車で緊急搬送された患者の治療や入院対応にあたる。
DPC対象病院
注射や投薬、エックス線検査など一部の診療行為の料金を、入院中何回実施しても包括とするDPC制度を導入している病院。この仕組みによって収益目的の過剰な医療提供が減り、患者にも必要な医療費がわかりやすい。
その他にも
臨床研修指定病院/結核指定医療機関/労災保険指定医療機関/救急告示病院/肝疾患診療連携拠点病院/DMAT指定病院/指定自立支援医療機関/労災指定病院/指定小児慢性特定疾病医療機関/特定疾患取扱病院 などさまざまな機能があります