
こちらの記事の監修医師
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生
がいじつりずむすいみん・かくせいしょうがい概日リズム睡眠・覚醒障害
最終更新日:2024/11/29
概要
人間の体には「体内時計」と呼ばれる、1日24時間の周期で生理機能や行動を調整する機能が備わっています。このような生理現象を「概日リズム」といいます。体内時計が調整しているものには、体温や血圧、内分泌ホルモン、免疫などがありますが、中でも朝起きて夜眠るという睡眠と覚醒のリズムに大きく関わっています。概日リズム睡眠・覚醒障害は、体内時計の周期を外界の24時間周期に適切に同調させることができないために生じる睡眠・覚醒の障害のことです。その結果、社会的に求められているタイミングで寝起きができなくなり、眠気や体の不調に悩まされ、生活に支障を生じてしまいます。
原因
体内時計の周期は24時間より少し長く、もともと、地球の自転周期24時間とは数分~1時間程度のずれがあるのですが、太陽光、食事、運動などの刺激に反応することで、それを自然に修正しています。しかし、何らかの理由で24時間周期に同調させることができなくなると、概日リズム睡眠・覚醒障害が生じると考えられています。海外旅行や夜勤など人為的・社会的な理由で体内時計を無理して環境に同調させようとした際に生じるのが時差障害(時差ぼけ)や交代勤務障害です。そのような人為的または社会的な理由がないにもかかわらず、体内のリズム調整機能に問題が生じて外界の環境周期に同調できなくなる場合を内因性概日リズム睡眠・覚醒障害と呼びます。内因性概日リズム睡眠・覚醒障害は症状のパターンにより、睡眠・覚醒相後退障害、睡眠・覚醒相前進障害、非24時間睡眠・覚醒障害、不規則型睡眠・覚醒障害などに分類されます。
症状
交代勤務障害は、夜勤と日勤など常に勤務スケジュールが変化する人に起きる睡眠障害で、夜間不眠、日中の眠気、作業能率の低下、倦怠感、食欲不振などが主な症状です。時差ぼけも同じですが数日で自然に改善されることがほとんどです。睡眠・覚醒相後退障害は極端な遅寝・遅起きが特徴で、無理して起きると眠気や強い倦怠感などが生じます。一方、極端な早寝・早起きを特徴とするのが、睡眠・覚醒相前進障害で、高齢者に多く見られます。不規則睡眠・覚醒リズム障害は昼夜を問わず睡眠と覚醒が不規則に交互します。4時間以上続けて寝られない、日中に強い眠気があるなどの症状が見られ、中枢神経疾患に合併しやすい病気です。非24時間睡眠・覚醒リズム障害は、毎日1~2時間ずつ、入眠と覚醒の時刻が遅れていくことが特徴です。
検査・診断
まず、医師が問診により、睡眠・覚醒パターン、随伴症状について詳しくヒアリングします。概日リズム睡眠・覚醒障害だけに限らず、睡眠障害が疑われる場合は患者に睡眠日誌によって、毎日床に入った時刻や睡眠時間、覚醒・離床時刻、睡眠の安定、日中の居眠りなどについて詳しく記録してもらいます。また、場合によっては活動量計という小型のセンサーを身に着けてもらい、一日の体動量変動を調べる場合もあります。これらによって、睡眠と覚醒のパターンを分析し、睡眠障害の判断や、概日リズム睡眠・覚醒障害であればどのパターンに当てはまるかなどを判断します。
治療
概日リズム睡眠・覚醒障害の治療は、行動・生活習慣の修正を促す指導、薬物治療、高照度光療法などがあり、障害のパターンによってこれらの治療を組み合わせて実施します。まず生活指導では、毎日決まった時刻に就寝・起床すること、寝室をできるだけ暗くし、起きている時間帯にできるだけ明るい光(日光または人工光)を浴びることが基本です。睡眠・覚醒相後退障害では光を午前中に、睡眠・覚醒相前進障害では夕方に浴び、夜勤では帰路にサングラスを掛け、就寝時はアイマスクを使用するといった工夫を行うこともあります。睡眠・覚醒リズムを一気に修正しようとしても難しいので、少しずつずらして望ましい周期に同調させていきます。薬物治療では睡眠・覚醒サイクルを調整するメラトニン受容体作動薬を投与する場合もあります。場合によって睡眠薬が補助的・一次的に使用されることも。高照度光療法は、毎日決まった時間に人工的な高照度の光を浴びる治療で、睡眠・覚醒相後退症障害や非24時間睡眠・覚醒リズム障害の治療は朝の高照度光療法と、夜のメラトニン受容体作動薬投与を組み合わせて行う場合が多いです。
予防/治療後の注意
概日リズム睡眠・覚醒障害の予防には、毎日ほぼ決まった時間に就寝し、起床する規則正しい生活を送ることが有用です。日中に仕事や学校がある普通の生活パターンを送っている人であれば、朝日を十分に浴びること、夜遅くまでスマホやパソコンなどの高照度光を発する機器の使用を控えることが重要です。病気のタイプによって使用する薬や使い方、治療法が異なりますので、日常生活に支障を来すようなら、まずは医療機関を受診して正しい診断に基づく適切な治療・指導を受けましょう。

こちらの記事の監修医師
睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生
1999年筑波大学医学専門学群卒業後、東京医科歯科大学精神神経科へ入局。2003年同大学大学院修了。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の成人精神保健研究部室長、滋賀医科大学精神医学講座准教授、同大学附属病院精神科科長などを歴任し、精神・睡眠障害分野での研鑽を積む。2019年1月より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会評議員。厚生労働省による睡眠指針や向精神薬使用ガイドラインの策定メンバーを務めた経験も。
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