こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生
もやもやびょう(うぃりすどうみゃくりんへいそくしょう)もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
最終更新日:2022/01/05
概要
心臓から脳に向かう4本の動脈は、頭蓋骨内で交通動脈と呼ばれる血管で結ばれ、ウィリス動脈輪と呼ばれるロータリーのような構造になっている。この動脈輪の一部である左右の内頸動脈の終末部分が、徐々にふさがっていく進行性の病気がもやもや病だ。血管が閉塞することで不足した血液を補うために、側副血管(または側副血行路)と呼ばれる細い血管が新たに作られる。脳血管撮影検査を行うと、この血管がもやもやした煙のように見えることから、もやもや病と名づけられた。症状の出現には、脳の血流不足による「虚血型」と、側副血管からの出血による「出血型」がある。日本で発見された病気で、男女比では約1対2の割合で女性のほうがかかりやすい。年齢では5〜10歳と40歳前後の2つのピークがある。厚生労働省による指定難病のひとつだ。
原因
現在のところはっきりした原因は解明されていないが、家族内発症が10〜12%程度みられることから、遺伝との関連性が疑われ、長年にわたって研究が続けられてきた。その結果、2011年に「RNF213」というそれまで知られていなかった遺伝子がもやもや病の感受性遺伝子であり、この遺伝子の保有者はもやもや病の発症率が高いことが分かった。ただしこの遺伝子は発症に直結する「原因遺伝子」ではないため、何か他の要因が加わることで初めて発症するものだと考えられている。
症状
小児の場合は一過性脳虚血発作や脳梗塞などの虚血症状がほとんどなのに対し、成人の場合は約半数が脳出血で発症する。一過性脳虚血発作の典型的な症状は、手足のまひや言語障害(言葉が話せない、ろれつがまわらない)で、頭痛やけいれん、てんかん発作などを伴うこともある。小児の場合は熱い食べ物を「フーフー」と吹き冷まそうとする行為や、リコーダーや鍵盤ハーモニカといった楽器演奏などによる過呼吸が引き金となって症状が出ることが多い。こういった一過性脳虚血発作は短時間で治まることも多いため、医療機関への受診が遅れることもあるので注意したい。脳虚血が進み脳梗塞や脳出血を起こすと、運動障害、意識障害、感覚障害といった症状が現れる。脳虚血または脳出血を発症するケースが大部分を占めるが、無症状のまま偶然発見されることもある。
検査・診断
もやもや病の検査では、MRI(磁気共鳴画像診断)で脳梗塞や脳出血の有無を調べ、MRA(磁気共鳴血管造影)で脳血管の大まかな状態をチェックする。さらに脳血管造影検査(カテーテル検査)を行ない、脳血管の詰まりや側副血管の状態を詳しく調べる。他に脳血流検査といって、脳血管の詰まり具合によって脳の血流がどれくらい減っているかを調べる検査も行う。脳血流検査にはシングルフォトン・エミッション断層撮影装置(SPECT)やポジトロン・エミッション断層撮影装置(PET)を用いる方法があり、いずれも微量の放射性薬剤を体内に投与することで脳血流の状態を確認する。
治療
虚血型のもやもや病で血流不全の程度が軽い場合は、薬物療法として一過性虚血発作を抑え脳梗塞を予防するための抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)や、頭痛やてんかん発作を抑える薬などが用いられる。血流不全の程度が重く脳虚血発作がみられるときは、閉塞した血管の代わりに血液を供給するバイパス経路を作成する手術を行う。手術の方法には、頭皮の血管をはがして脳血管に直接つなぎ合わせる「直接血行再建術(直接バイパス)」と、頭皮の血管や血流豊富な組織を脳表に置いて自然に血管が生えるのを待つ「間接血行再建術(間接バイパス)」という2種類と、その両方を併用した「複合血行再建術」がある。通常は左右の血管の両方にバイパスを作るため、片側を手術した後1か月程度の間を置いて反対側を手術する。出血型のもやもや病に対しては、血圧コントロールを中心とする内科的治療を行う。
予防/治療後の注意
もやもや病が疑われた場合および診断された場合は、長期間にわたって様子をみることになるため、定期的に脳神経外科を受診し検査を行うことが望ましい。小児の場合は脳虚血発作を防ぐため、激しい運動など過呼吸を起こしやすい行動は控え、早めの手術治療を主治医と相談したい。適切な外科治療が行われた場合の予後は良好だが、ラグビーやボクシングのようなスポーツは避けたい。脳梗塞、脳出血によって発症した場合は、その部位と程度によって後遺症が残ることが多い。
こちらの記事の監修医師
院長 森本 将史 先生
1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。
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