全国のドクター13,609人の想いを取材
クリニック・病院 157,059件の情報を掲載(2025年4月27日現在)

ドクターズ・ファイル会員でできること

予約情報をマイページ上で管理できます!

過去の予約を一覧化

予約内容の確認

予約の変更・キャンセル※

※一部対象外の医療機関もありますので、あらかじめご了承ください

会員登録がお済みでない方は

すでに会員の方は

  1. TOP
  2. 症状から探す
  3. 高熱がでるの原因と考えられる病気一覧
  4. マールブルグ病
  1. TOP
  2. 頭の病気一覧
  3. マールブルグ病
荏原病院 感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

こちらの記事の監修医師
荏原病院
感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

まーるぶるぐびょうマールブルグ病

概要

マールブルグウイルスによる重症感染症で、ウイルス性出血熱の一種。ドイツのマールブルグなどにアフリカから実験用としてアフリカミドリザルが輸入された際、関係者に急性熱性疾患が発生したことをきっかけにこの名称がついた。自然界での宿主、人間への感染経路は不明だが、アフリカに生息するコウモリが宿主ではないかと疑われている。人間から人間への感染は感染者の血液や体液、分泌物、排泄物などの、ウイルス汚染物との濃厚接触が原因とされる。なお、空気感染による拡大はないとされている。熱や皮膚からの出血や吐血、血便などが特徴で、死亡率は高い。

原因

マールブルグウイルスの感染による。1967年にドイツのマールブルグなどで起こった、アフリカから輸入したアフリカミドリザルの解剖に関わった人間への感染事例からこの感染症の歴史が始まるが、発生にサルが関与したのはこの事例のみで、それ以降のアフリカでの発生ではサルとの接触で感染したと結論づけられるような事例は見つかっていない。アフリカに住むコウモリが疑わしいとする論もあるが、現在のところエボラ出血熱と同様に、自然界の宿主は不明で、どのような経路で宿主から最初の人間に病原体が伝播したかについても謎のままだ。なおドイツ以外では、1975年のジンバブエ、1980年のケニア、1987年のケニア、1999年のコンゴ民主共和国などでの感染事例がある。このうち、1980年ケニアでの感染例では、感染者であるフランス人技師が発症2週間前に、大量のコウモリが生息する「Elgon洞窟」に入っているところと、近くの森で動物にエサをやっているところなどが目撃されており、この点に感染の糸口があるのではないかという意見も出たが、証明することはできなかった。

症状

潜伏期間は3~10日で、突発的に高熱、頭痛、だるさ、筋肉痛が生じる。発症から5~7日頃には吐血や下血、紫斑(皮下出血することで生まれる紫の斑点)などの出血症状が見られるようになる。その後、吐き気、嘔吐、胸の痛み、腹痛、のどの痛み、下痢などが現れる。経過とともに症状は悪化し、黄疸、膵炎、重度の体重減少、ショック症状、肝機能障害、出血、多臓器不全などの症状を呈する。さらに、症状は精神面にも現れる。頭がぼんやりするなどの意識障害や、行動のつじつまが合わない錯乱状態になるといったケースも認められることがある。出血や血圧低下により、発症から1週間前後で死亡する例もある。致死率は23~25%で、回復した例でも長期間にわたり、肝炎や精巣炎、ぶどう膜炎、横断性脊髄炎などの疾患が認められることもある。

検査・診断

第一種感染症指定医療機関にて検査・診断をうけることが望ましい。血液検査によって、血液からウイルスを検出する。そのほか、血液中にウイルスの遺伝子が存在するか、抗原があるかなどを調べる方法もある。血液以外の検体には、咽頭ぬぐい液、胸水、体液、その他の組織がある。なお、この感染症の検査は、「最高度安全実験施設(P4)」で行わなければならない。また、問診によって「洞窟などコウモリの生息地に行っていないか」、「同じような熱性疾患の人と接触したかどうか」などの情報を聞き取ることも重要だ。併せて、発疹チフス、マラリア、コレラといった他の病原体による熱性疾患との違いを見極める必要もある。感染の疑いがある場合は必ず検疫所や保健所に相談し指示に従うこと。

治療

マールブルグ病に有効な治療法や薬は存在しない。安静にし、輸血や輸液(水分や電解質などを点滴や静脈注射で投与すること)を行う対症療法が治療の中心となる。患者や検体に接触した医療関係者や患者家族については、その接触のレベルに応じて「通常の接触(ホテルで同宿、飛行機や車で同乗など)」、「リスクのある接触(患者と同居、介護・看護にあたった人、握手や抱擁を行った人、患者の検体を取り扱った人など)」、「ハイリスクの接触(キスや性行為で、患者と粘膜の接触があった人、患者の排せつ物、分泌物、組織、体液を扱う際に針刺し事故や自らの傷口に直接触れる機会があった人)」の3段階に分け、一定期間の監視が必要な場合はそれを実施する。特に「ハイリスクの接触」を行った接触者の中で、38.3℃以上の発熱を示したり、ウイルス性出血熱の症状を示したりした場合は、直ちに患者としての取り扱いがなされる。

予防/治療後の注意

流行地域を訪れる際は鉱山や洞窟などの感染のリスクとなる場所を避け、コウモリやラットなど野生動物との接触を行わないことが重要だ。また感染者の血液や体液に触れないようにするため、医師や看護師など医療従事者は、ガウンやマスク、ゴーグル、手袋、長靴着用などにより接触感染防止策を講じなければならない。

荏原病院 感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

こちらの記事の監修医師

荏原病院

感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

1996年、宮崎医科大学卒業。宮崎医科大学寄生虫学教室、墨東病院感染症科、奈良県立医科大学病原体・感染防御医学/感染症センターにて基礎医学・臨床の両面から感染症に携わる。2016年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会感染症専門医の資格を持つ。