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北里大学 泌尿器科学教室 岩村 正嗣 主任教授

こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授

せいそうしゅよう精巣腫瘍

概要

精巣は、男性の陰のう部分に左右1つずつある、卵形をした臓器。男性ホルモンと精子を作り出す役割を持っており、睾丸とも呼ばれる。精巣腫瘍は、この精巣の中にある細胞から発生する腫瘍のこと。精巣には男性ホルモンを作り出すライディヒ細胞と精子のもととなる精母細胞とがあり、精巣腫瘍は精母細胞から発生することがほとんどといわれる。また、生殖に直接関係する細胞を胚細胞と呼ぶことから、「胚細胞腫瘍」ともいう。さらに、ほとんどの症例が悪性で、組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査と腫瘍マーカー(がんによって増える血液中の物質)の数値により、セミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(非精上皮腫)に分類され、非セミノーマは、胎児性がん、卵黄のう腫、絨毛がん、奇形腫に分けられ、これらが混在しているケースもある。

原因

精巣腫瘍が発生するはっきりとした原因はわかっていないが、精巣の外傷や炎症、妊娠時のホルモン投与、停留精巣(停留睾丸)の既往歴などは、発症のリスクを高める要因であると考えられている。停留精巣とは、陰のうの中に精巣が入っておらず、脚のつけ根の付近でとどまっている状態で、男児の先天的な異常としてよく見られる。通常、母親のおなかにいる段階では精巣は腎臓の付近に位置しており、成長に伴い陰のうの中へ下がってくるが、何らかの原因により十分に下降しないことがある。そのほか、家族内に精巣腫瘍にかかったことがある人がいる、反対側の精巣に腫瘍がある、精液検査で異常が認められたといった場合は、そうでないケースに比べて発症する可能性が高いといわれている。発症率は10万人に1人ほどとされ、20~30代と若い世代の人に多く見られる。

症状

特徴的な症状としては、片側の陰のうに腫れやしこりが現れる。通常、痛みはなく、あっても軽度。強い痛みや発熱を伴う場合は急性精巣上体(副睾丸)炎を疑う。また、悪性の場合は短期間に転移する特徴があり、転移すると全身にさまざまな症状が見られる。例えば腹部のリンパ節であれば、おなかのしこりや腰の痛み、頚部リンパ節であれば首のしこり、肺であれば息苦しさや血痰など。そのほか、ホルモンバランスに異常を来し、乳房が大きくなったりすることもある。初期段階での自覚症状に乏しいことから、このような転移した先の臓器や組織で出る症状をきっかけに、精巣腫瘍が発見されることも。

検査・診断

まずは陰のうの触診や超音波検査を行い、腫れやしこりの有無、腫瘍の詳しい性質を調べる。そこで陰のう水腫や精液瘤といった精巣腫瘍と似た症状が現れる別の疾患ではないか確認し、その上で精巣腫瘍が疑われる場合には血液検査で腫瘍マーカーであるhCG、AFP、LDHという物質を調べる。腫瘍マーカー検査は、腫瘍の種類や量のおおよその見当をつけるのに優れているとされる。そして、これらの検査を行った上で、全身への転移があるかどうかを確かめるためにCT検査や腹部超音波(エコー)検査を実施。必要に応じて、MRI検査や骨シンチグラフィーという骨に対する腫瘍の広がりを調べる検査を行うこともある。

治療

精巣腫瘍は、転移があってもなくてもひとまず、腫瘍のある側の精巣を手術で摘出する。これは進行が速く悪性の場合は転移しやすいためで、まず手術を優先して実施し、病理検査とCT検査などの画像検査によって腫瘍の種類(セミノーマ、非セミノーマのどちらであるか)と病期(ステージ)を確定する。そして、症例ごとの病期に合わせて、経過観察、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療、転移が見られるリンパ節の切除などから適切な方法を選択する。ステージⅠでは経過観察もしくは再発予防のための化学療法が行われることが多く、ステージⅡ以上では、化学療法を行った上でリンパ節や他の臓器に転移した腫瘍を切除することが多い。なお転移する場所については、最初は腹部大動脈周辺のリンパ節であることが多く、続いて肺や横隔膜より上部にあるリンパ節、肝臓、脳などに転移する傾向がある。

予防/治療後の注意

精巣腫瘍は、初期の段階で治療を受けても再発する可能性があるといわれ、定期的な経過観察が欠かせない。しばらくの間は、1年以内は毎月、2年目は2ヵ月置きといったようにスケジュールを組んで通院し、腫瘍マーカーの測定や胸部エックス線検査、CT検査などにより再発が見られないかどうかの確認を続けていく。また再発は2年以内に起こることが多いとされるが、5年以上の長い期間を経て起こることも。そのため、長期間のフォローアップが重要となる。

北里大学 泌尿器科学教室 岩村 正嗣 主任教授

こちらの記事の監修医師

北里大学 泌尿器科学教室

岩村 正嗣 主任教授

1983年北里大学医学部卒業後、北里大学病院泌尿器科で研修を受け、大学病院のほか神奈川県内を中心に総合病院で診療。米国ロチェスター大学留学。 1995年北里大学病院泌尿器科主任に就任。同科長、副院長を経て2018年7月から2021年6月まで病院長を務めた。現在は北里大学医学部泌尿器科学教室主任教授。 専門は副腎・腎・腹腔鏡・ロボット支援手術。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。