精神疾患を抱える人や精神的なケアが必要な人を支える精神科の看護師。病院やクリニックなど看護の現場で働いている人、あるいは勤務経験がある人、これから看護師として働きたいと思っている人の中には、精神科を転職先として検討している人もいるのではないでしょうか。
ストレス社会の進行やSNSによるメンタル面への影響、高齢者の精神的ケアなど、年齢や性別にかかわらず、心の健康問題に不安を抱える人が増えている現代。精神科の看護師に対するニーズは今後ますます高まっていくことが予想されます。
今回は、精神科で働く看護師の仕事内容とは? 1日のスケジュールは? といった疑問に応える情報から、転職活動に役立つ志望動機の書き方に至るまで、精神科で働く看護師について紹介します。
精神科で働く看護師の仕事に関心のある人はもちろん、精神科での看護師の仕事について知らなかったという人も、看護師としての選択の幅を広げるヒントにしてみてください。
1 精神科で働く看護師の役割・仕事内容
心の病を抱える人に対して、看護の専門知識や技術を生かしながら心の健康状態の回復をサポートする精神科の看護師。単に精神が健康的な状態になるように治療のサポートや看護ケアを行うだけではなく、患者がその人らしく、自立した社会生活を送れるように導くことも重要な役割です。
そのため精神科で看護にあたる場合には、患者の尊厳維持、高い職業倫理、心を通わせるためのコミュニケーションなどが他の診療科以上に求められます。以下に、精神科で働く看護師の主な仕事内容を紹介します。
●精神科で働く看護師の主な仕事内容
【患者の観察とアセスメント】
精神状態の観察はもちろんのこと、体調なども含めた全身の観察とアセスメント(患者の健康状態に関する情報を収集・分析・評価し、最適なケアを導き出すためのプロセス)が求められます。中には自分の状況や思いをうまく言葉にすることができない人も多いため、きめ細かな気配りや看護師の観察力が回復の鍵を握ります。
【日常生活の援助】
患者の中には、精神疾患によって日常生活が思うように送れないケースがあります。そのため、患者の状況に合わせて、食事や清潔、排泄、入浴など日常生活の介助や見守りを行うことも精神科看護師の仕事です。
【心のケア】
精神科の看護師にとって、他の診療科に比べて特に重きを置かれるのが、心のケアです。日々のコミュニケーションを通して患者と心を通わせ、人間関係を構築することは、例えば治療に必要な情報をスムーズに聞き出す、投薬を拒否していた患者の気持ちを変えるなど、治療に直結するケースが少なくありません。また、看護師とのコミュニケーションが患者のストレスを緩和させることにつながる可能性もあります。
【薬の管理、与薬】
精神疾患においては薬物治療が通例です。そのため薬を吐き出す、拒否するといった患者への対応、逆に過剰投与を防ぐなど、薬の管理や投薬状況のチェックが重要な仕事になります。
【安全管理】
精神科の患者の中には、自傷行為を繰り返したり、致死観念を抱いたりする人が少なくありません。患者自身の安全を守ることはもちろん、他者に危害を加えないようにすることが重要です。刃物や鋭利な物、ひも状の物、火器類などの管理のほか、例えば病棟では、施設の施錠の徹底など、危険行為につながる要素を排除し、予防することが不可欠です。
2 精神科で働く看護師の1日のスケジュール
精神科の看護師として働く場合、勤務先は精神科病院や一般病院の精神科病棟、精神科クリニックなどさまざまですが、ここでは日勤帯・夜勤帯のある精神科病棟で働く看護師の1日の代表的なスケジュールに注目。それぞれの代表的な勤務の流れを例として紹介します。

3 精神科で働く看護師のやりがい
精神科看護師のやりがいは、患者一人ひとりと深く関わりを持てることです。
精神科では、他の診療科と比べて、看護師の関わり方が患者の回復に影響を与える場面が多いと言われています。これは、患者との信頼関係やコミュニケーションが治療の一部となることや、長期的な心理的支援が求められるためです。
また、精神科病棟の場合は入院期間が長くなることが多く、患者との関係は時間をかけて築いていきます。心の病を抱える人の中には、暴言や暴力を繰り返す患者、心を閉ざしてコミュニケーションが取れない患者も多く、看護師自身が消耗してしまうというケースが少なくありません。
しかしだからこそ、患者とじっくりと向き合い、コミュニケーションを繰り返すことで心が通じたときや、症状に改善が見られたとき、患者やその家族に笑顔が戻ったときなどは、大きなやりがいを感じることができるでしょう。
4 精神科で働く看護師の給料
看護師の年収・給料基準は、他の診療科と大きな差はありません。厚生労働省が発表している「令和6年賃金構造基本統計調査」内、看護師の平均的な収入から概算すると、精神科で働く看護師の月収は30万円前後、年収は400~500万円が目安となります。
ただし、急患は少なく残業が発生しにくい傾向にあるため、時間外手当があまり付かず、他の診療科に比べて全体的な年収の額が低水準に抑えられる可能性があります。日勤のみを希望する場合も、夜勤手当などが付かないため、同様に低水準になると考えておくのが妥当でしょう。
なお、施設によっては、患者からの暴力や精神的負担などを考慮し、特別手当や危険手当として月5,000円~1万円程度が支給される場合があります。
5 精神科で働く看護師に向いているタイプ
精神科では、心の病の影響により、他人に攻撃的になる患者も少なくありません。そのため暴言や暴力など、他の診療科とは異なる苦労も多いのが精神科の看護師です。しかし前述したとおり、やりがいを感じられる仕事でもあります。精神科での仕事に向いている看護師としては以下のような特徴、傾向が考えられます。
●患者とじっくり向き合いたい人
精神科の看護では、症状だけでなく、その背景にある生活環境や人間関係、過去の経験などが密接に関係していることが多いため、患者一人ひとりのこれまでの人生や今後の暮らし、将来のことなどを踏まえた多角的なケアが必要となります。
また、入院期間が長い患者が多いため、時間をかけて丁寧に関わることができる点も特徴です。信頼関係を築きながら、症状の経過を見守るスキルを身に付けたい人に向いているでしょう。
●精神的にタフな人
精神科では、ネガティブな発言を繰り返したり、心ない言葉を投げかけたりする患者もいます。そういった言動に一喜一憂することなく、病気による影響だと割り切って仕事と向き合える精神的なタフさが求められます。
必要以上に感情移入しすぎず、プライベートの時間をうまく活用してリフレッシュできるなど、オンとオフの切り替えが上手にできる人は負担感を軽減できるでしょう。
●観察力に自信がある人、観察力を身に付けたい人
精神的な疾患を抱える患者の中には、自分自身の症状や思いを言葉で表現できない人もいます。そのため看護師には、わずかな変化も見逃さない観察力が求められます。
最初は自信がなくても、経験を重ねることで些細な変化に気づくことが増えてくるので、観察力を身に付けたい、鍛えたいという人に適しています。
●人とコミュニケーションを取ることが好きな人
精神科の場合、ケアの肝となるのがコミュニケーションです。人の話に耳を傾けることが得意な人、相手の気持ちに思いを馳せながら根気強く対話を続けられる人に向いています。
6 精神科への転職に役立つ志望動機
身体的な疾病を対象とした他の診療科に比べ、看護師としての知識や技術に加えて、観察力・傾聴力・忍耐力などがよりいっそう求められる精神科の看護師。志望動機を考える際には、そうした精神科看護の特殊性と照らし合わせ、自分の性格やこれまでの経験がどのように生かせるかをアピールすることが重要です。
患者や家族との信頼関係構築に対する重要性をしっかりと理解していることを盛り込みつつ、志望先の理念や方針を踏まえて自分自身がどのような看護をめざしているか、新しい環境でどのような役割を担えるかなど意欲を示すようにしましょう。
以下に、履歴書作成に役立つ志望動機の例文を挙げています。自分自身の経歴や思いに置き換えて、熱意や意欲が伝わる自分らしい志望動機を作るための参考にしてください。
●他の診療科病棟から転職する場合
〈志望動機例〉
急性期病棟で5年間勤務し、観察力や迅速な判断力を培ってまいりました。
そこでは次々と重症患者が運び込まれ、患者さま一人ひとりとゆっくり会話する時間も取れないほど、目まぐるしい日々が続いていました。そうした環境の中で、疾患だけでなく、退院後の生活に不安を抱える患者さまが多いことに気づき、一人ひとりと向き合う看護の大切さを実感するようになりました。
もっと対話を重ねながら、精神的な支えとなる関わりをしたいという思いを強くし、精神科看護に関心を持ちました。心に寄り添う看護を理念とする貴院で、患者さまの社会復帰を支える看護師として力を発揮できるよう努めてまいります。
●訪問看護や在宅医療から転職する場合
〈志望動機例〉
これまで内科のクリニックで8年間勤務し、退職前の3年間ほどは主に訪問看護に従事してきました。訪問看護で高齢の方と接する経験を通じて感じたことは、身体的なケアと同じくらい精神的なサポートが重要であるということです。
医療的なケアはもちろんですが、これまで声に出せなかった思いやご自身でも気づいていなかった不安感などに耳を傾けることで、精神的にも症状的にも安定されていく姿を目の当たりにしてきました。
そういった経験を重ねることで、もっと精神面でのケアについて自信を持って患者さまと向き合いたいという思いが強くなっていきました。
これまで培った傾聴力や対話力を生かしながら、研修制度が充実している貴院で、精神面でのケアについて専門的な学びを深め、患者さまの自立と安心につながる看護ケアを実現したいと考えています。
●ブランクがある場合
〈志望動機例〉
看護師として総合病院で勤務した後、結婚・出産を機に看護の現場を離れていました。子育てが一段落し、再び看護の道に戻ることを決意いたしました。
復職を検討する中で、入院患者さまからいただいた「話を聞いてもらえて前向きになれました」という言葉が心に残っていて、神的な支えとなる看護の重要性を改めて実感しました。
この経験から精神科での看護に関心を持つようになり、社会復帰を支援する貴院の方針に深く共感しております。前職で培った経験を生かして、患者さまやご家族の心に寄り添い、安心して社会へ踏み出せるような看護をめざしてまいります。
7 精神科で働く看護師の仕事の見つけ方
今回は精神科で働く看護師の仕事内容ややりがいなどについて紹介しました。 認知症に象徴される高齢者の精神的ケアはもとより、ストレス社会の進行など、さまざまな社会変化を背景に、精神面のサポートを必要とする人は世代を問わず増えています。だからこそ、精神疾患を抱える人を看護する人材へのニーズも高まっているのです。
心の病を抱える人と向き合い、個々の患者に応じたケアを行うことで、患者の不安感を取り除き、治療への意欲や前向きに人生を歩む勇気を与える精神科看護は、きっと看護師としてのやりがいにつながるはずです。
ぜひ、転職を考える際の選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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