病院やクリニックなど看護の現場で働いている人、あるいは勤務経験がある人、これから看護師として働きたいと思っている人の中には、保育園を転職先として検討している人もいるのではないでしょうか。
核家族化や共働き世帯の増加など社会的背景による保育園へのニーズの高まりに伴い、保育園看護師に対する需要と、質の高い保育を実現するための看護師の役割に期待が高まっています。
この記事では、保育園で働く看護師の仕事内容とは? 特別なスキルや小児科経験は必要? といった疑問や不安に応える情報から、メリットやデメリット、やりがいに至るまで保育園で働く看護師について紹介します。
保育園で働く看護師の仕事に関心のある人はもちろん、保育園看護師について知らなかったという人も、看護師としての選択の幅を広げるヒントにしてみてください。
<目次>
1 保育園で働く看護師の役割・仕事内容
保育園で働く看護師は、外来や病棟で働く看護師のような医療補助行為はほとんどなく、子どもたちの体調管理、ケガや病気の応急処置が中心となります。ここでは、保育園看護師の主な仕事内容を紹介します。
●保育園で働く看護師の主な役割
保育園で働く看護師の主な役割は、園児の健康管理や保健指導です。子どもたちが元気に安全に過ごせるよう、予防医療の観点から健康管理や発育支援などを行います。また、園内での対応に加え、園外保育や遠足などの行事に付き添うこともあります。
●保育園で働く看護師の主な仕事内容
2 保育園で働く看護師の1日のスケジュール
保育園で働く看護師の代表的な1日の流れを例として紹介します。
1日のタイムスケジュール
8:00~ 出勤・朝のミーティング
まずは保育士らと朝のミーティング。その日の病気による欠席者や、体調面で注意が必要な園児の情報を共有します。
8:30~ 園内の安全確認・消毒
遊具や園内の施設の中で、ケガや事故につながる危険な場所がないかをチェック。園内を回りながら、保育室や遊具、園児が頻繁に触れる場所を中心に消毒を行います。
9:00~ 園児の健康チェック
検温や観察によって園児の健康状態を確認。また各クラスをラウンドし、体調面での保護者からの連絡事項や服薬に関する伝達事項などを保育士からヒアリングします。
10:30~ 保育業務の補助
おむつ交換やトイレの付き添い、散歩や外遊びへの立ち合いなどを行います。0歳児、1歳児などの乳児クラスで常勤する場合もあります。
11:15~ 昼食前にうがい、手洗い指導
11:30~ 昼食の介助、与薬・服薬確認
園児の昼食に付き添い、必要に応じて介助を行います。また食べ具合などを確認して健康状態に支障、異変がないかを観察します。園によっては、園児とともに給食を食べることもあります。内服の必要な園児には与薬もしくは服薬指導を行います。
12:30~ 園児の昼寝時間に休憩
園児が昼寝をしている間に休憩をとります。昼食が済んでいない場合は、ここで昼食をとります。
13:30~ 衛生管理や体調不良・ケガへの対応
お昼寝中の園児の様子を観察し、発汗状態や呼吸などに異変がないかをチェック。また、体調が悪い園児やケガをした園児がいれば手当てします。状況次第では、保護者へ連絡をして状況説明をしたり、病院へ連れて行ったりすることもあります。
14:00~ 書類やお便りの作成
園児の観察記録をまとめます。また、保健に関する情報、感染症など季節ごとの疾病に関する知識をまとめた保護者向けのプリントなどを作成します。
15:00~ おやつタイム・レクリエーションの見守り、物品補充など
園児のおやつタイムのサポートをしたり、レクリエーションに立ち会ったりします。
また救急物品や薬箱の中身を確認し、不足している場合には補充を行います。
16:30~ 園児の見送り
園児を見送ります。また1日の中で気になることがある場合は、迎えに来た保護者に伝え、必要に応じて指導を行います。
17:30~ 業務終了・退勤
保育士に必要事項を申し送りしたら、片付けや翌日の準備を整えて業務終了です。
3 保育園で働く看護師に必要なスキル・経験
保育園で働く看護師の場合、看護師の資格以外に特別な資格は必要ありません。ただし、備えていると役に立つスキルや知識、転職に有利な経験があるので、以下に紹介します。
・小児科での勤務経験
小児医療に精通していることへの期待感などから、小児科での勤務経験があると、即戦力としての評価につながります。
小児科での勤務経験がない場合でも、育児経験があるなど子どもの扱いに慣れていると重宝されるでしょう。
・アレルギーや感染症に関する知識
ウイルスや感染症、アレルギーなど子ども特有の疾病が多いことから、アレルギー、感染症に関する知識やスキルがあることはアドバンテージになるでしょう。アレルギーや感染症に関する情報を常に意識して最新情報をキャッチしているなど、小児医療への関心度や意識の高さがアピールポイントになります。
・保育に関する特技や趣味
保育業務のサポートに入る場面が多いため、絵本の読み聞かせやお絵描き、ピアノや工作など保育につながる特技や趣味があると役に立つでしょう。
4 保育園で働く看護師のメリット・デメリット
保育園で働くにはメリットもデメリットもあります。
メリット、デメリットの両面を自分自身の価値観、現在の環境や状況、将来のことなどと照らし合わせ、転職を検討する材料にしましょう。
●保育園で働く看護師のメリット
・規則正しい生活が叶う
保育園は基本的に日勤のみで、土日祝日は休みのケースが大半なため、規則正しい生活が叶いやすいです。しかし中には、夜間預かりや土日の週末保育を行っている保育園もあるため、勤務先として検討する際にはしっかり確認しましょう。
・高度な医療行為を求められる場面が少ない
保育園看護師は日々の健康管理が中心となるため、病棟看護師のように採血や点滴などの医療処置を行う場面はないでしょう。ケガや体調不良時にも簡単なケアや応急処置が中心となるため、緊張感のある場面に遭遇するケースは比較的少ないといえます。救急対応や外来対応などのような突発的な出来事もなく、毎日決まった業務が多いことから、新しいことを覚えたり想定外の事態に対応したりといったプレッシャーを感じる場面が少ない職場ともいえます。
精神的な負担が少ない職場のため、ブランクのある看護師が復帰する際の選択肢としても有効でしょう。
・子どもと関わることができる
園児と過ごす時間が長いため、子どもが好き、保育に興味があるという人にとって毎日楽しみながら仕事に臨めるでしょう。また、日々気にかけている園児たちが成長していく姿を間近で見守ることができる点もやりがいにつながります。
●保育園で働く看護師のデメリット
・1人での判断、対応を求められることにプレッシャーを感じる
看護師という立場のスタッフが園に1人という環境が一般的なため、緊急事態が起きたときに判断を迷うケースも。迷いや判断の遅れが、園児の将来の成長や健康に影響を及ぼすことにプレッシャーを感じる人もいます。
また、看護師が1人という人員配置から休みを取りづらいケースもあり、責任を重荷に感じることもあるようです。
・看護スキルの向上が望みにくい
保育園では子どもたちの健康管理がメインになるので、医療補助行為などを行う機会がほとんどありません。一方で、保育業務を求められる場面が多々あり、看護師としての基本的なスキルを身につけたり、高度な看護技術を磨いたりすることは望みにくいかもしれません。看護師としてスキルアップをめざしている場合にデメリットと感じる可能性があります。
・病棟看護師に比べると給料が低水準
病棟勤務の看護師と比べると、給料が低い傾向にあると考えられます。理由としては、夜勤はなく、残業もそれほどない分、手当がつかないことが挙げられます。ただし私立と公立の違い、地域差、園によっては賞与があるなど多種多様な条件が設定されているので、関心のある園については確認してみましょう。
5 保育園で働く看護師の平均給与額
子ども家庭庁『令和6年度経営実態調査の集計結果<速報>』によると保育園で働く看護師の賞与を含む平均給与額は、私立保育園38.14万円、公立保育園41.93万円です。この数値をもとに平均年収(月額×12)を算出すると、私立保育園457.78万円、公立保育園503.21万円となり、私立に比べて公立の保育園の給与が高いことがわかります。
また、厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』によると、大規模病院などを含むと推測される1000人以上の施設の看護師の平均給料額は月収38.77万円。こちらに賞与や手当が付与されます。そして平均年収は564.84万円。基本的に日勤である保育園看護士は、夜勤や残業の手当がある病院勤務の看護師と比べると、給与が低い傾向にあるといえるでしょう。
6 保育園で働く看護師に向いているタイプ
ここまで紹介してきた保育園で働く看護師の仕事内容やメリット・デメリットを踏まえると、保育園での仕事に向いている看護師の人物像は以下のとおりです。
・子どもが好きな人、子育て経験がある人
一日中子どもと接する保育園看護師の場合、子どもが好きなことは必須条件といえるでしょう。育児経験がある場合は、大きなアドバンテージになります。
・コミュニケーション能力が高い人
子どもとのコミュニケーションはもちろん、保護者とのやりとりや保育士など園のスタッフとの情報共有・連携も重要に。コミュニケーション能力の高さが大いに役立つでしょう。
・ワークライフバランスを重視し、規則的な勤務形態を求めている人
大半が日勤のみで規則的な勤務時間で働ける保育園看護師の仕事は、ワークライフバランスを重視したい人にとって働きやすい環境です。
・ブランク明けで負担の少ない職場からリスタートしたい人
子育てや介護、病気などによって長期間離職していた人が職場復帰する際、精神的にも肉体的にも負荷の少ない職場からリスタートしたいと考える人は少なくないでしょう。健康な園児を相手にする保育園看護師は、突発的な対応が必要な状況が起こりにくいことから、仕事の勘を徐々に取り戻したい人に向いています。
・看護師としての業務や看護スキル向上に強くこだわらない人
保育園では子どもたちの健康管理が中心になるので、高度な看護技術を求められる場面はありません。医療職としての仕事内容や看護スキル向上への強いこだわりがない人にとって、モチベーションを落とすことなく従事できるでしょう。
7 保育園看護師への転職に役立つ志望動機
転職時の志望動機では、採用担当者に熱意や意欲を伝えること、園にとってどのようなメリットをもたらすことができるかという点をアピールすることが必要です。
自身の採用によって保育の質の向上や現場の良好な環境づくりにつながるなど、「必要な存在である」「採用したい」と採用担当者に思わせる志望動機を考えて選考に臨みましょう。
以下に、志望動機の例文を挙げています。自分自身の経歴や思いに置き換えて、熱意や意欲が伝わる自分らしい志望動機を作るための参考にしてください。
●保育園での勤務が未経験の場合
〈志望動機例〉
看護師になって1年、総合病院の皮膚科で勤務していました。そこで看護師としての基本的なスキルや患者さまとのコミュニケーションの取り方などを身につけることができました。
皮膚科にはお子さんの患者様も多くいらっしゃいます。その中で感じたことは、子ども一人ひとりの体質や性格に合わせたケアや声かけの大切さです。通院時という限られた時間だけでなく、看護師という立場から日常的に子どもたちを見守り、ケアできる仕事に就きたいという思いが強くなり、貴園を志望しました。
これまでも通勤時に、貴園へ笑顔で登園する子どもたちや、保育士の方と保護者の方の穏やかなやりとりなどをしばしば目にしていたこともあり、私自身も園の一員として子どもたちの笑顔を守る立場になりたいという思いが強くなりました。幼少期、私自身がお世話になった園でもあるため、看護師としてのスキルや経験を役立てて恩返ししたいと考えています。
●ブランクがある場合
〈志望動機例〉
看護師として市立病院で勤務した後、妊娠・出産を機に5年間休職していました。看護師としての復職を考えた際、育児経験を生かして母となった自分だからこそできるサポートをしたいと考えるようになりました。
自分自身が子育てをする中で、子どもの発熱やケガの時の不安な気持ちを経験したことにより、子どもたちの言葉にならないつらさや苦しさをくみ取ることの難しさと大切さを痛感。さらに、保育園看護師として、お子さんを育てる保護者の方の悩みや喜びに共感できることも強みになると感じました。
母として看護師として、子どもたちにも保護者の方にとっても気持ちのよりどころになりたいと考えています。
●キャリアを生かす場合
〈志望動機例〉
総合病院の小児病棟で8年にわたって経験を積んできました。その中で感じたことは小児保育にとって、日々の観察がいかに重要かということです。
私自身、子どもを保育園に通わせる中で、大きな病気になる前に対応すること、大ケガにつながるリスクを軽減すること、感染症の伝染を防ぐことに対して常に心を砕いてくださる保育園看護師の存在に何度も救われました。
子どもの健全な環境を確保し、なるべく苦しむことがないように導くのは保護者や保育士など周囲の大人の役割です。子どもたちを支える周囲の大人へ向けて、正しい情報提供や啓発活動に力を入れていきたいと考えています。
私自身も子育てに励む母の一人として保護者の方たちを支え、また保育の質向上を担う保育園の一員として、地域の子どもたちの成長を支えられるよう力を尽くします。
8 保育園看護師の仕事の見つけ方
今回は保育園で働く看護師の仕事内容やメリット、デメリットなどについてご紹介しました。ワークライフバランスが保ちやすいことや、子どもと接することができる点、育児経験が生かせることなどから、転職先として魅力に感じる人も多いでしょう。
看護師としてのスキルや経験を生かしつつ、地域保育の質の向上に携わることができるというやりがいのある保育園看護師の仕事。転職を考える際の選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」では、保育園で働く看護師の求人を多数掲載しており、エリアや駅、雇用形態はもちろん、「ブランクOK」「子育てママ在籍中」「退職金あり」などのこだわり条件でも絞り込めます。優先順位に合わせて、さまざまな条件で求人を探しやすいので、ぜひ活用してみてください。
◇ ◇ ◇
本サイトで紹介している幅広い求人の選択肢を参考に、自分自身が求める環境や働き方、仕事に対する理想などと照らし合わせながら、最適な職場やタイミング、条件を検討することで、ぜひ転職成功を引き寄せてください。
【体調管理】
園内を見回るなどし、子どもたちの健康状態をチェック。子どもは突発的に発熱したりケガをしたりすることがあります。自分で症状を伝えられない乳幼児も多いため、わずかな変化にも気を配ったり検温を徹底したりと、日頃から子どもの様子をこまやかに観察することが重要です。
【応急処置・緊急対応】
発熱や嘔吐、ケガなどが発生した場合には、応急処置を行います。あわせて保護者への連絡、病院を受診するための付き添いなども看護師の仕事です。また園外保育や遠足、運動会などのイベントに帯同し、万が一の応急処置、緊急対応に備えます。
【服薬や塗り薬の管理・サポート】
薬の内服や塗布が必要な園児については、保護者から預かった薬を正確に管理し、対応が必要なタイミングをチェック。服薬のサポートや与薬、塗り薬の場合は塗布をすることも看護師の仕事です。
【衛生管理・安全管理・感染症対策】
教室や水道、トイレといった衛生管理や室温のチェックなどにより、園児が健康的に過ごせる環境を維持します。また、ケガや事故が起きる可能性がないか、保育室や階段、遊具やおもちゃの状態、管理状態などにも目を配ります。さらに食中毒や感染症のリスクにも目を光らせ、園内の消毒や換気、手洗い・うがいの指導などを徹底する必要があるでしょう。
【衛生指導・保護者への保健指導】
子どもたちへ向けて、手洗いやうがいなどの衛生指導を実施。また保健に関するプリント類などの配布物を通じて、保護者に対する予防接種の啓発、健康・発達面に関するアドバイスや情報提供を行います。
【保育業務のサポート】
保育園で働く看護師は、常に保育士らと連携しながら保育業務のサポートにあたる場面が多く、子どもの着替え、食事や歯磨きのサポート、おむつ交換やトイレ、お昼寝の付き添いなどを行います。
特に体調の変化が大きい0歳児や1歳児などのクラスでは、副担任として子どもたちの保育に従事するケースも少なくありません。保育補助業務を求められることが、病棟や外来で働く看護師との最大の違いといえるでしょう。
【職員の健康管理・保育指導】
保育の質の維持・向上のため、職員の健康管理も看護師の役割になります。
また、アレルギー診断を受けた園児や、健康状態に不安を抱える園児への対応などについて、看護の知識を踏まえた上での保育指導を職員向けに実施することもあります。保育中の注意点や、万が一の時の応急処置・適切な処置方法などを職員に周知します。