病院やクリニックなど看護の現場で働いている人、あるいは勤務経験がある人、これから働きたいと思っている人の中には、デイサービスを転職先として検討している人もいるのではないでしょうか。
高齢化が進む社会において、今後ますますニーズの高まりが予想されるデイサービス。看護師としての専門性を生かしつつ、介護分野を支える重要な人材として力を発揮できる仕事です。
この記事では、デイサービスで働く看護師について、仕事内容とは? といった疑問に答える情報から、メリットやデメリット、やりがいに至るまで詳しく紹介します。
デイサービスでの看護師の仕事に関心のある人はもちろん、デイサービスの仕事について知らなかったという人も、看護師としての選択の幅を広げるヒントにしてみてください。
<目次>
1 デイサービスとは?
デイサービスとは、高齢者が日中に通うことができる介護サービスで、主に通所型の介護施設を指します。デイサービスは、週に数回、半日または1日単位などで通うスタイルが一般的ですが、中には宿泊サービスを提供している施設もあります。多くの施設では、専用車両での送迎サービスを提供しているため、利用者にとって、基本的に通所の負担を抑えることができる点が魅力です。
デイサービスの主な目的は、自宅や施設で生活している高齢者ができるだけ自立して日常生活を続けられるよう支援すること。また、家族の介護負担を軽減することも重要な役割です。
サービス内容としては、食事や入浴、リハビリテーション、レクリエーション活動、健康管理、日常生活のサポートなどが挙げられます。利用者は、個々の状況に応じて介護士や看護師、リハビリスタッフなどによるケアを受けられ、身体的な健康の維持を図ります。加えて、レクリエーションや趣味活動などの社会的交流を通じて、孤独感の解消といった心理的な支えや生活の質の向上にもつながっているのです。
2 デイサービスで働く看護師の役割・仕事内容
中心となる役割は利用者の健康管理です。服薬管理、バイタルチェック、感染症対策などを行います。
基本的にデイサービスでは、医療補助行為を要する場面は比較的少なめですが、医師が常駐していないことが通例なので、状況次第では緊急対応を行う必要があります。医療補助行為を要する場合は、インシュリン注射や胃ろう管理などを実施します。看護師の判断力や臨機応変な対応力が試されるといえるでしょう。
その他にも、食事、入浴、レクリエーションなどで利用者が安心して日々を過ごせるように観察し、状況に応じて介護スタッフのサポートを行うなど、デイサービスで働く看護師の仕事は多岐にわたります。
3 デイサービスで働く看護師の1日の流れ
ここでは、デイサービスで働く看護師の代表的な1日の流れを例として紹介します。朝から夕方までの勤務が通例で、デイサービス利用者の1日のスケジュールに合わせて業務が進みます。多くのデイサービスでは利用者の送迎を行っていますが、看護師が送迎に付き添うかどうかは施設により異なります。
●1日のタイムスケジュール
8:30~ 出勤・ミーティング
その日の利用者、1日のスケジュール、注意事項などを確認します。
9:00~ 利用者の送迎・通所をサポート
介護職員や専属ドライバーが迎えに行く場合は、施設内で到着する利用者を待ちます。施設によっては看護師が送迎車に同乗するケースもあります。
10:00~ バイタルチェック
利用者のバイタルを測定、入浴に差し支えがないかなどを確認します。
10:30~ 入浴介助、入浴後の処置
必要に応じて入浴介助。入浴後の軟膏の塗布、湿布の貼付、褥瘡の処置など必要なケアを行います。
12:00~ 昼食の介助、服薬確認
食事介助にあたるスタッフのサポート。必要に応じて服薬の準備や補助、血糖値の測定、インシュリン注射などを行います。
13:00~ 交代で昼食休憩
14:00~ レクリエーションやリハビリのサポート
レクリエーションやリハビリを行う他のスタッフたちのサポート。
16:00~ 利用者のお見送り、送迎サポート
施設内で利用者を見送り。施設によっては看護師が送迎車に同乗するケースもあります。
17:00~ 片付け、業務記録を作成
利用者の様子や申し送り事項、1日の仕事内容などを記録します。
17:30~ 業務終了・退勤
4 デイサービスで働く看護師のメリット・デメリット
デイサービスで働くにあたってはメリットがある反面、デメリットもあります。
メリット、デメリットの両面を自分自身の価値観、現在の環境や状況、将来のことなどと照らし合わせ、転職を検討する材料にしましょう。
●デイサービスで働く看護師のメリット
・勤務時間が規則的
デイサービスは多くの場合、日勤のみで朝から夕方までという固定の勤務時間になっています。毎日、比較的決まったリズムで働くことができ、規則正しい生活が送りやすいです。
また平日のみ開所している施設が大半のため、土日祝日休みが確保でき、家族や友人などとの生活リズムや予定を合わせやすい点がメリットです。
・病棟看護師に比べて精神的な負担が少ない
デイサービスは、病状が安定しており、入院の必要がない人の利用が大前提のため、通常はオンコール対応や生死にかかわるような業務にあたる可能性が低いという特徴があります。
救急対応や外来対応などの突発的な出来事も想定し難い職場であり、比較的落ち着いた気持ちで業務にあたれます。
また毎日決まった業務が多いことから、新しいことを覚えたり想定外の事態に対応したりといったプレッシャーを感じる場面が少ない職場ともいえます。そのため、ブランクのある看護師が復帰する際の選択肢としても有効でしょう。
・利用者や家族とのコミュニケーションが取りやすい
デイサービスでは、リハビリテーションやトレーニングのほか会話やレクリエーションなどの交流を目当てに通う人も多いため、一緒に穏やかな時間を過ごしながらコミュニケーションを深めることができます。送迎に同行する場合は特に、家族と顔を合わせたり、生活環境を知ったりする機会もあるため、良好な関係を築きやすいでしょう。
●デイサービスで働く看護師のデメリット
・看護スキルの向上が望みにくい
大半のデイサービスでは医師が配置されていないことから、医療行為が必要ないことを利用者の受け入れ条件としているケースも少なくありません。そのため現場では、医療補助行為を行う機会がほとんどなく、看護師としての基本的なスキルを身につけたり、高度な看護技術を磨いたりすることは望みにくいかもしれません。
・看護以外の業務が多い
デイサービスの場合、看護師といえども介護職のスタッフと同じような仕事を求められるケースが多々あります。そのため看護師としての経験や実務的なスキルを存分に発揮したいと思っている人にとっては、実力を生かせる場面が少なく、看護師としてのやりがいを感じ難いケースがあるかもしれません。
・病棟看護師に比べると給料が低水準
病棟勤務の看護師と比べると、給料が低い傾向にあります。理由としては、夜勤がない分、手当がつかないことが考えられます。
ただデイサービスの中でも入居や宿泊を受け入れている施設の場合は、24時間体制で夜勤が発生したり、土日祝日の勤務が発生したりすることがあるため、給料額も施設により異なります。
5 デイサービスで働く看護師のやりがい
高齢者の日常に寄り添い、地域の医療・福祉に貢献できるデイサービスでの看護師の仕事。多岐にわたるやりがいを紹介します。
・利用者や家族との信頼関係が築きやすい
デイサービスでは、利用者やその家族と日常的に接する場面が多いため、信頼関係を築きやすいという側面があります。 コミュニケーションを直接取る機会が多いことから、面と向かって「ありがとう」という言葉を伝えられるなど、感謝の気持ちに直に接することができる点もやりがいにつながるでしょう。
・利用者の回復・改善を目の当たりにできる
レクリエーションやリハビリテーションの様子を常に見守り観察している利用者に、心身の状態の改善や生活の質の向上の傾向が見られたときに、大きな喜びを感じることでしょう。
・地域医療・福祉に貢献できる
高齢化が進む社会の中で、地域社会にとって重要な役割を担うデイサービス。高齢者の社会とのつながりを保ち、自立した日常生活を送るためのサポートをするデイサービスの看護師は、利用者本人や家族にとって頼りになる存在といえるでしょう。地域医療・福祉を支える一員として、高齢者の健康維持や生活の向上に貢献できるということは、看護師としての誇りや使命感にもつながるはずです。
・高齢者ケアの専門的な見識を深められる
介護スタッフらと連携し、高齢者のサポートにあたるデイサービスの看護師。看護師としてのスキルに加え、高齢者ケアに関する専門的な見識を学び、実践経験を積みたいという人にとってやりがいある絶好の環境といえます。すでに看護師としてのキャリアがある人、休職からの復職を希望している人にとって、看護師としての幅を広げるチャンスにもなるでしょう。
6 デイサービスで働く看護師に向いているタイプ
ここまで紹介してきたデイサービスの特徴を踏まえると、デイサービスでの仕事に向いている看護師の人物像は以下のとおりです。
・介護に関心がある人
介護に関する知識を得る機会が多いため、介護や福祉の分野に関心が高い人は、より積極的に仕事に向き合えるでしょう。
・高齢者とのコミュニケーションを楽しめる人
高齢者と毎日接する仕事のため、高齢者とのコミュニケーションに抵抗がない人が望ましいでしょう。利用者との会話、コミュニケーションを楽しめる人はデイサービスの現場で前向きに仕事に臨めるはずです。
・ブランク明けで負担の少ない職場からリスタートしたい人
長期間、看護の現場を離れていた人が職場復帰する際、精神的にも肉体的にも負荷の少ない職場からリスタートしたいと考える人は少なくないでしょう。身体状態が比較的安定している利用者が多いデイサービスなら、突発的な対応が起こりにくいことから、仕事の勘を徐々に取り戻したい人に向いています。
・規則的な勤務形態を望んでいる人
大半が日勤のみで規則的な勤務時間で働けるデイサービスでの仕事は、子育てや介護など家庭の事情がある人や、ワークライフバランスを重視したい人にとって働きやすい環境です。
7 デイサービスへの転職に役立つ、志望動機の書き方
デイサービスへの就職・転職を希望する人の中には、志望動機をどのように書いたら良いか迷う人もいるかもしれません。ここまで解説してきたデイサービスの特性を踏まえた上で、これまでのキャリアや考えられるケースごとに、志望動機の記入例を挙げます。応募する際に、自分自身に当てはまりそうな項目を参考にしてみてください。
●デイサービスが未経験の場合
〈志望動機例〉
介護の分野に関心を抱いたきっかけは、祖母が要介護認定を受けたことです。私はこれまで内科病棟で看護師としての経験を積んできました。しかし祖母が要介護認定を受けてデイサービスに通うようになってから、趣味の絵画を再び楽しむようになったり、デイサービスで知り合った友人の話を楽しそうにしたりと、見る見る元気を取り戻していく姿を目の当たりにして、高齢者の豊かな日常をサポートできるデイサービスの仕事に惹かれるようになりました。
病棟勤務で培った知識やスキルを生かしながら、貴施設の理念である「利用者の方々に豊かな時間を提供する」ことに貢献したいと考えています。
●デイサービスでの勤務経験がある場合
〈志望動機例〉
私は一人ひとりの利用者の方とじっくり向き合いたいという思いを貴施設なら実現できると感じ、志望いたしました。
私は以前、さまざまな介護保険サービスを展開するグループが運営する、大規模なデイサービスで勤務していました。充実した日々を過ごしていたものの、大人数の利用者の方と向き合うため、ケアがルーチンになってしまうことに違和感を持ち始めていました。
そんな時、貴施設に通う近所の方からスタッフの方がとても親身になって話を聞いてくれて、毎日通うことを楽しみにしているという話を聞き、感銘を受けました。
大規模施設で培った経験や応用力などを生かして、貴施設の一員として心の通うケアを実践したいです。
●ブランクから復帰する場合
〈志望動機例〉
結婚・出産を機に4年間休職していましたが、復職を検討する中でデイサービスでの仕事に関心が高まり、貴施設を志望しました。
休職前は総合病院の整形外科で看護師として経験を積んでいました。高齢者の患者様が大勢、通院していたのですが、もっと深く一人ひとりの方と向き合いたいと考えたとき、デイサービスで働くという選択肢が思い浮かびました。
子どもが通う保育園に隣接する貴施設では、子どもと高齢者の方の交流を積極的に行っており、その様子を目にして、世代を超えたコミュニケーションが双方にとって心の栄養剤になるのだということを実感しました。
貴施設の研修制度なども積極的に活用させていただきながら、デイサービスの現場で1日も早く戦力となれるよう力を尽くします。
8 デイサービスで働く看護師の仕事の見つけ方
今回はデイサービスで働く看護師の仕事内容やメリット、デメリットなどについて紹介しました。ワークライフバランスが保ちやすいことや、ニーズの高い高齢者ケアについて見識を高められることなどから、転職先として魅力に感じる人も多いでしょう。ライフステージの変化や高齢者ケアという分野の専門性向上など、転職を考える際の選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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◇ ◇ ◇
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デイサービスで働く看護師の主な仕事内容
【健康管理】
・バイタルチェック(体温・血圧・心拍など)
・感染症・流行性疾患の予防、対策
・服薬管理・服薬介助
・緊急時の対応
【医療補助行為など】
・褥瘡(床ずれ)の処置
・インシュリン注射
・胃ろう管理
・点眼
・軟膏塗布
・湿布の貼付
【他分野のスタッフのサポート、その他】
・食事、入浴、排泄の介助のサポート
・レクリエーションや機能訓練のサポート
・通院介助や往診医との連携