歯科衛生士の転職では、「志望動機」が採用担当者に熱意や歯科医院との相性を伝える重要な要素です。資格や経験だけでは伝わらない「なぜこの歯科医院を選んだのか」、「どんな価値を提供できるのか」を言葉で明確に伝えることが採用の決め手になります。
そのため、志望動機を作成する際は、次の3ステップで考えるのが効果的です。
本記事では、上記①・②・➂の手順をもとに、採用担当者に響く志望動機の書き方と例文をわかりやすく解説します。
|この記事の監修者
檜山 寛雅
株式会社ギミック キャリアアドバイザー
「医療業界の転職市場は売り手市場ですが、自己分析や企業研究をせず転職をしてしまうと、入職後のミスマッチにつながってしまいます。転職成功を掴むためには、事前の準備が何より重要です。そして転職は情報戦。収集を欠かすことなく、積極的に情報をキャッチしていきましょう!」
【経歴】
株式会社ギミックの転職エージェントサービス「ドクターズ・ファイルエージェント」のキャリアアドバイザーとして、医療従事者の転職・採用支援を担当。これまで500名以上の求職者と接点を持ち数多くの転職支援を実現。 ※詳しいプロフィールはページ下部にあります。
<目次>
1 歯科衛生士の志望動機の書き方(考え方)
志望動機は、単なる「働きたい理由」ではなく、採用担当者に「この人と一緒に働きたい」と思わせるための重要なメッセージです。特に歯科衛生士の転職では、資格や経験だけでは伝えきれない「人柄」や「歯科医院との相性」が重視されます。これは、歯科衛生士が患者と直接関わる機会が多く、少人数のチームで働くことが多い職種であるためです。
そのため、志望動機では「なぜその医院で働きたいのか」「どんな貢献ができるか」を具体的に伝えることが大切です。
また、履歴書や面接対策を進める中で、特に時間がかかるのが志望動機の作成です。希望を伝えるだけでなく、自分の強みや歯科医院との接点を明確にするには、戦略的な準備が欠かせません。
ここでは、志望動機を効果的に構成するための3つのステップを紹介します。
①自身の経験・スキル・価値観を棚卸しする
まずは、これまでの職務経験や得意な業務、仕事に対する価値観を整理しましょう。
例えば、「予防歯科に力を入れてきた」、「患者さまとのコミュニケーションを大切にしている」など、自分がどんな場面で力を発揮してきたかを振り返り、自身の強みやこだわりを言語化することが大切です。
また、印象に残っている患者とのエピソードや、職場での成功体験・課題克服の経験などは、自身の人柄や働き方を伝える手がかりになります。
こうした棚卸しを通じて、自分がどんな価値を提供できるのかを明確にすることで、志望動機に厚みを持たせることができるでしょう。
②応募先の歯科医院の特徴や方針をリサーチする
次に、応募先の歯科医院がどんな診療方針を持ち、どんな患者層が多いかなどを調べましょう。志望動機に説得力を持たせるには、応募先の特徴を理解しておくことが欠かせません。以下の方法を活用しながら、情報収集を進めて歯科医院への理解を深めてください。
<応募先の情報収集方法>
-
ホームページや求人情報のチェック
診療内容や歯科医院の方針、スタッフ構成などを確認できます。 -
資料請求
ウェブサイトに載っていない詳細情報が得られることもあります。 -
職場見学・インターンシップへの参加
実際の雰囲気や業務の流れを体感でき、志望動機にリアリティが加わります。 -
転職合同説明会への参加
採用担当者や現場スタッフから直接話を聞ける貴重な機会です。
<事前にチェックしておきたいポイント>
- 施設の基本情報(診療内容、患者数、ユニット設備をはじめとした医療機器の特徴など)
- 院長の理念、診療方針 ・第三者評価の状況(国際標準化機構(ISO)や日本医療機能評価機構の評価、プライバシーマークの取得など)
- 入職後の教育制度 ・スキルおよびキャリアアップ支援体制
など
これらの情報をもとに、「歯科医院のどこに共感したか」、「自分の強みがどう生かせるか」を明確にすると、志望動機に説得力が生まれます。
➂自分と応募先の接点を見つけ、マッチする形で志望動機を構成する
最後に、自分の強みと歯科医院の特徴がどうつながるかを考えます。
「予防歯科に力を入れている歯科医院で、自分の経験を活かしたい」、「地域密着型の歯科医院で、患者さまとの関係づくりを大切にしたい」など、具体的な接点を示すことで、歯科医院との相性の良さを伝えることができます。
例えば、
- 予防歯科に力を入れている歯科医院で、これまで培ってきた知識と経験を生かしたい
- 地域密着型の歯科医院で、患者さまとの信頼関係を築きながら長く働きたい
など、歯科医院の方針と自身の価値観が一致していることを伝えると、採用担当者に好印象を与えられます。
また、「歯科医院の理念に共感した」、「スタッフの雰囲気が自分に合っていると感じた」など、応募先への理解と共感を示すことで、歯科医院との相性の良さをアピールできます。
<書き方のコツ>
-
文字数は200〜300字が目安
履歴書に収まりやすく、面接でも伝えやすい分量です。長すぎると要点がぼやけ、短すぎると熱意が伝わりにくくなるため、簡潔にまとめるのがお勧めです。 -
起承転結を意識して構成する
文章は「起:応募のきっかけ」「承:仕事への思い」「転:応募先への共感」「結:入職後の意気込み」と言う流れで構成すると、自然な文章になります。
記事の後半で紹介する例文を読むと起承転結のイメージがつかみやすいので、ぜひ参考にしてみてください。 -
下書きはスマホやノートで効率的に
文面を完成させるまでに何度も修正が発生します。履歴書を手書きする場合、ノートやスマホのメモ機能を使って下書きし、完成した文面を履歴書に書き写すと効率的です。
2 診療科・診療内容別 志望動機の例文
ここからは応募先にフィットした内容にまとめるのに役立つ例文を紹介します。まずは応募施設別の例文です。
基本の型のどの部分に該当しているのかわかるように、文章には前項で挙げた「志望動機で伝えたいポイント」の各項目を示す丸数字をつけています。
志望動機で伝えたいポイント
①志望した一番の理由
②歯科衛生士の仕事に対する熱意やモットー、具体的な臨床経験
③応募先の特色について共感・感銘した点
④入職後の意気込み、将来の展望
また、好印象を得られやすいポイントも〈ここがポイント〉として解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
●一般歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
口腔ケアを通じて、患者さまの健康維持に貢献できる歯科衛生士をめざしたく、貴院を志望しました。①
前職のクリニックには5年間在籍し、口腔内チェックやクリーニング、歯科診療の補助など歯科診療全般に携わってきました。患者さまの年齢層は幅広く病態もさまざまで、年代に応じたセルフケアの指導など、多く経験を積むことができました。一方で患者数の多さから診療がせわしなくなる場面も少なくありませんでした。②
口腔ケアは患者さまと二人三脚で行うものであり、信頼関係を築くことがとても重要と考えます。担当制による口腔ケアを実践する貴院で、患者さま一人ひとりの歯の健康に責任感を持って取り組んでいきたいです。③&④
〈ここがポイント〉
これまで経験してきたことに言及するのに加えて、応募する歯科医院の診療体制の特徴を踏まえて志望理由を述べています。口腔ケアに対する自身の考えを盛り込むのも大事なポイント。一緒に働くイメージを深めてもらえます。
●病院の歯科の場合
〈志望動機 例文〉
地域包括ケアシステムの一端を担っている貴院で地域全体の患者さまを支えたく、応募いたしました。①
これまで総合病院の歯科口腔外科病棟に勤務し、入院患者さまの口腔ケアをはじめ、診療・手術補助など歯科業務全般を担当していました。内科など他診療科との連携もあり、チーム医療に携われることに大きなやりがいを感じてきました。②
貴院を志望したのは、院内だけでなく他の医療機関とも協力し合う体制で、歯科衛生士として貢献したいとの思いが大きくなったためです。③
患者さまの退院後のスムーズな社会復帰をめざすべく、地域の医療・介護施設と密に連携する貴院で経験を積み、将来的には地域包括ケアシステムにおける歯科診療のマネジメントにも従事したいと考えております。④
〈ここがポイント〉
「患者さまの退院後のスムーズな社会復帰をめざす」など、応募のモットーにふれながら、自身がめざす将来像を述べているため、志望理由に具体性が感じられます。入職後に取り組みたいことを挙げると、意欲の強さがより鮮明になります。
●小児歯科に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
貴院の「お子さまの人生を第一に考え、心に寄り添う歯科診療」という理念に感銘を受け、応募しました。③&①
幼い頃、歯科医院に苦手意識を抱いていた私にとって、自分と同じように「歯医者さんが苦手」と感じる患者さまの心に寄り添える歯科衛生士になることが目標です。8年間勤めた前職の一般歯科クリニックでもこの目標を胸に、さまざまな年代の患者さまの口腔ケアに従事しました。②
歯科全般を経験したことを基盤に、小児歯科診療の専門スキルを磨いていくのが今後の目標です。お子さま本人との対話を重視する診療を行う貴院で、かつての自分と同じような歯科に対する恐怖心をお子さまから払拭し、健康的な口腔環境づくりに貢献できる歯科衛生士をめざしたいと考えております。④
〈ここがポイント〉
応募する歯科医院のどんな点に共感したのかを示していて、理解度の高さがうかがえます。共感したポイントを踏まえて、自身がどんな歯科衛生士をめざしていきたいかを述べているので、ミスマッチが少ないこともアピールできています。
●矯正歯科に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
一般歯科医院で8年間、診療補助と口腔ケアに従事しておりました。患者さまから矯正中の日常生活や口腔ケアに関する相談を受けることもあり、専門知識を身につけるべく矯正歯科に関するセミナーなどに自主的に参加するようになりました。②
本格的に矯正歯科の専門性を磨き、生かしたいと考えるようになっていた中、「事前カウンセリングに力を入れている」という貴院の理念にふれ、患者さまの矯正に関する悩みに応えたいという私の矯正歯科の原点と重なり、強く共感したことが志望の理由です。③&①
これまで経験を積んできた口腔ケアに加え、事前カウンセリングで患者さまの不安や悩みに応えていき、矯正歯科における口腔管理のエキスパートとなるのが目標です。④
〈ここがポイント〉
経験を通じて得られた気づきなど、心の動きや矯正歯科に対する関心の高まりが順序立てて述べられています。また、自らセミナーに参加するなど、関心事に対する行動力の高さが感じられます。
●歯科口腔外科に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
一般歯科医院に10年間勤務し、親知らずの抜歯やインプラント治療といった歯科口腔外科の診療補助にも従事しておりました。経験を通じて外科処置のカバースキルを高める上で、術前術後のメンテナンスが非常に重要であることや、患者さまの治療に対する理解度がメンテナンスのモチベーションを左右することを実感しました。外科処置を受けた患者さまの早期回復において、歯科衛生士が担う役割は非常に大きいと感じております。②
インプラント手術はもとよりインプラント周囲炎の予防にも力を注ぐ貴院で、これまでの経験を生かしながらカウンセリングや口腔ケアのスキルを磨いて貴院の診療に貢献したいと考え、応募いたしました。①&③&④
〈ここがポイント〉
歯科口腔外科における歯科衛生士の役割について、自身の体験を交えた考えが述べられています。応募する歯科医院が注力する診療内容など、事前のリサーチで得た情報が盛り込まれているのもポイントです。
●インプラント治療に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
前職での経験から、最近のインプラント治療の需要の高まりを感じ、インプラント治療を積極的に行っていらっしゃる貴院で、患者さまのサポートをしたいと思い志望しました。①&②
私は患者さまの疑問や不安に応えられる歯科衛生士をめざしています。これまでも患者さまの相談会やカウンセリングに同席して院長をサポートしてきました。貴院はインプラント治療についての無料カウンセリングや独自のガイドブックを作製するなど、「患者さまに寄り添う」ことを大切にされており、私にとって理想の職場だと感じました。➂
前職で培った「丁寧な説明とケア」の心を忘れず、技術と接遇両面から患者さまが安心してインプラント治療が受けられるようサポートしたいと考えております。④
〈ここがポイント〉
応募先のインプラント治療の取り組みについて丁寧に下調べがされています。また、新しい職場で自身が丁寧なケアとインプラント治療にどのように関わっていきたいのかという今後のビジョンをしっかりとアピールすることで、採用担当者にもやる気を伝えられ、好印象につながるでしょう。
●予防歯科に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
貴院が掲げる「病気を治すではなく、病気を防ぐ歯科診療」という理念に共感し、応募しました。①&③
一般歯科医院で歯科衛生士として7年間勤務し、さまざまな症例の診療に携わってきました。診療を通じて幅広い年代の患者さまとコミュニケーションを取り、信頼関係を築く難しさ、奥深さを経験できたことは、歯科衛生士である私にとって大きな財産です。②
将来的には、予防歯科の大切さをより多くの人に知ってもらうため、目の前のケアだけでなく、例えば「親子向けのブラッシング指導講座」を企画するなど、私自身も啓発にも力を入れていくことで「病気を防ぐ歯科診療」の実現に貢献したいと考えております。④
〈ここがポイント〉
応募先の理念や力を入れる診療と、自身の強みや将来の展望を上手に絡めて述べています。診療だけでなく、講座を企画するなど「予防歯科を啓発するために何ができるか」を具体的に考えている点も、意欲の高さを示すのに効果的な印象です。
●審美歯科に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
口元の印象は、その人の印象を大きく左右すると考えます。歯科衛生士として、患者さまの気持ちを前向きにする審美歯科の診療経験を積みたく、貴院を志望しました。①
口腔内クリーニングや口周辺のマッサージなど、貴院では虫歯や歯周病の予防、嚥下機能の維持にもつながる取り組みも重視されているとお見受けします。貴院のコンセプトである「機能的にも、審美的にも『きれいな口元』をめざす」を体現する診療スタイルに感動しました。③
ホワイトニングやデンタルエステの知識を身につけるだけでなく、前職の一般歯科医院で培ったコミュニケーションスキルを生かし、患者さまのニーズを引き出せる歯科衛生士をめざしたいと考えております。②&④
〈ここがポイント〉
応募する歯科医院の特徴を捉えつつ、自身が感じたことや強みが端的にまとまっています。この歯科医院が掲げるコンセプト、審美歯科の特性についてもしっかり理解している印象があるので、ミスマッチも起こりにくそうです。
●訪問歯科診療に力を入れている歯科医院の場合
〈志望動機 例文〉
総合病院の歯科で歯科衛生士として5年間勤務しています。結婚を機に仕事のスタイルを見直し、以前から興味のあった訪問歯科診療の道に進みたいと思い、患者さまの生活に寄り添った診療をされている貴院に応募しました。①&③
これまで、入院患者さまの口腔ケアを中心に経験を重ねてきました。患者さまの中にはご自身で歯磨きができず、合併症により口腔トラブルを繰り返すケースも多く、また退院後の介助にお困りのご家族の姿も目にしてきました。病院勤務での経験を生かし、訪問歯科診療を通じて患者さまやご家族を支えていきたいです。②
現在は介護職員初任者研修の資格習得をめざして勉強中で、介護の知識を業務に役立てたいと考えております。④
〈ここがポイント〉
これまでの経験や培ったノウハウを、訪問歯科診療でどのように生かしていきたいかがまとまっています。資格取得に対する前向きな姿勢を示すことで、スキルアップに対する意欲の高さもアピールできるでしょう。
3 ケース別 志望動機の例文
続いて、「転職回数が多い」「ブランクがある」といったケース別の志望動機の例文を紹介します。自身のケースと照らし合わせ、応募先にフィットしたポジティブな内容にまとめる際の参考にしてみてください。
●転職回数が多い場合
〈志望動機 例文〉
これまで6つの歯科医院に勤務し、歯科診療全般の経験を積んできました。さまざまな歯科医院を経験したことで多くの知識や技術を習得できたのに加え、歯科衛生士として求められる姿勢、診療方針の在り方、スタッフのチーム形成の考え方は一様ではないと学びました。②
これまでの経験を基盤に、多様な診療に対応できる歯科衛生士をめざす上で、一般歯科をはじめ幅広い診療に対応されている貴院はたいへん魅力的な職場だと感じ、志望しました。①&③
矯正治療、補綴治療、歯内療法をはじめとした専門性の高い治療の知識など、培ってきたノウハウをもとに歯科医師と歯科衛生士、歯科助手の橋渡し役を担い、診療の質の向上に貢献したいと考えております。④
〈ここがポイント〉
ただ転職歴が多いだけだと「辞め癖があるのでは?」と思われる可能性がありますが、上記のように「複数の歯科医院を勤務してきたからこそ学べたこと」などを挙げることで、転職回数の多さを強みに変換することもできます。
また、経験から得た気づきと応募先の特徴を絡めることで、志望動機の魅力アップにもつなげられます。
●前職の在職期間が短い場合
〈志望動機 例文〉
総合病院の歯科に1年間勤務し、歯科病棟の入院患者さまはもちろん、内科など他の診療科の入院患者さまの口腔ケアに従事しました。合併症の知識も数多く得られ、歯科衛生士として日々成長できる喜びとともに、口腔状態と、糖尿病や循環器疾患などの関係性の強さを目の当たりにしたことで、合併症への関心が高まりました。②
地域の内科クリニックとも連携し、糖尿病患者さまの口腔ケアに力を注がれる貴院の取り組みに惹かれまして、私も歯科衛生士の立場で患者さまの持病の悪化予防や合併症の予防に尽力したいと思い、応募しました。①&③
採用がかないましたら、口腔ケアの大切さを啓発する取り組みにも積極的に携わっていきたいと考えております。④
〈ここがポイント〉
たとえ在職期間が短かったとしても、そこで得た経験や気づきがあるはずです。それらを分析し「めざす歯科衛生士像」としてまとめましょう。そうすることで「経験から得た気づきにしっかりと向き合い、行動に移せる人物」といった印象を与えやすくなります。応募先の診療の特徴にも絡めれば、さらに魅力的な志望動機になります。
●新卒の場合
〈志望動機 例文〉
私は子どもの頃、歯科医院が怖くて苦手でしたが、優しくサポートしてくれた歯科衛生士さんのおかげで離脱することなく通院できた経験があります。そのため、貴院が掲げる「怖さや痛みを極力減らし、患者さまが安心して受けられる治療を提供する」という診療理念に深く共感しました。①&②
私は、学生時代に子ども向けの読み聞かせボランティアを行っており、お子さまとのコミュニケーションに自信があります。貴院で注力されている地域での歯磨き講習会などお子さまの予防歯科で自身の経験を生かしたいです。そしてお子さまの気持ちに寄り添うことができる歯科衛生士となるよう研鑽に努め、スタッフの一員として貢献したいと考えています。②&➂&④
〈ここがポイント〉
新卒の場合は業務経験がないので、前職での経験を元に志望理由を作成することはできません。だからこそ志望先のホームページなどを読み込み、特徴をわかった上で、どこに魅力を感じ、どのように貢献できるのかを伝えましょう。また、学生時代の経験で生かせるものがあれば志望動機に取り入れると良いでしょう。
●パートの場合
〈志望動機 例文〉
一般歯科で歯科衛生士として7年経験を積みました。子どもが高学年になったのを機に復職を考えていたところ、多様な働き方を推奨されている貴院の「患者・スタッフともに笑顔あふれる歯科医院」という理念に共感し、志望しました。スタッフが笑顔でいることが、患者さまの安心感や信頼感、ひいては満足度を高めることに繋がると考えています。①
前職では特にメンテナンス業務に注力しており、症状を訴えて来院した患者さまが予防を目的に定期通院してくださるようになったことがうれしく自身の励みになっていました。その中で、ホワイトニング需要の高まりを感じ、ホワイトニングコーディネーターの資格を取得しました。貴院で注力されているホワイトニング業務にも貢献できればと考えています。今後も患者さまのニーズに応えられるよう尽力してまいります。②&➂&④
〈ここがポイント〉
しばらく休職していた場合は、ブランクの理由を述べ、現在は復帰できる環境が整っていることを伝えるようにしましょう。志望理由に働きやすさだけを挙げると、仕事への意欲が少ないと思われてしまうので、採用された場合に、取り組みたい業務についても具体的な事例を示すと良いです。
●ブランクがある場合
〈志望動機 例文〉
一般歯科医院で7年間勤務していました。出産を機に現場を離れておりますが、育児をきっかけに子どもの予防歯科に関わりたいという思いを強くしました。②
長子が小学校に入学したのを機に、長く働ける環境で再スタートしたいと考え、小児歯科に力を入れられている貴院に応募しました。①
先日の貴院での見学にて、子育てや介護などから復帰、活躍されている歯科衛生士の先輩方のお話を聞き、たいへん励みになりました。私も皆さまのように、仕事と家庭を両立しながら貴院に貢献したい思いです。③
自身の子育て経験を生かし、歯科を怖がるお子さまの心理的ケアだけでなく、仕上げ磨きや食育などに悩む親御さまのサポートにも取り組んでいきたいと考えております。④
〈ここがポイント〉
育児や介護でいったん現場を離れ、一段落したタイミングで復帰する人は少なくありません。ブランクがある場合、復帰を決意した理由や「今後も長く働きたい」という意欲が採用担当者にはチェックされやすいので、しっかりと盛り込むと良いでしょう。
また、ブランク期間の経験を業務へ生かしたいという前向きな姿勢を伝えることも大切。例文のように、具体的な取り組みにまで踏み込めれば、強い意気込みとして受け止めてもらいやすいです。
●スキルアップ・キャリアアップをめざす応募の場合
〈志望動機 例文〉
摂食・嚥下リハビリテーションの専門性を伸ばしたいと考え、貴院に応募しました。①
専門学校卒業後、外来診療・訪問歯科診療を行う一般歯科医院に10年間勤務しました。年齢も症例もさまざまな患者さまの診療に携わる中で、特に印象に残っているのが高齢の患者さまの診療です。加齢や病気によって口腔機能や摂食嚥下機能が低下した高齢の患者さまのケアを通じて、「食べる・喋る」ことが幸福に直結するのだと強く実感しました。②
幅広い経験を積めたと自信を持って言える今なら、めざす将来像に向けて全力で突き進むことができると考えます。摂食嚥下障害の診療に力を注ぐ貴院で、患者さまの生涯にわたる「幸せ」に貢献できる歯科衛生士をめざしたいと考えております。③&④
〈ここがポイント〉
なぜキャリアアップしたいと考えたのか、自身の体験談をもとに語られているので、「この人だから語れる志望理由」と印象づける魅力があります。熱意を伝えようとする意思が強く感じられる文章構成で、読み手を引き込んでいく力強さが感じられます。
●歯科助手から歯科衛生士をめざす応募の場合
〈志望動機 例文〉
歯科助手として働く中で、患者さまとの関わりや口腔ケアの重要性を実感し、より専門的にサポートできる歯科衛生士を志すようになりました。①その思いから歯科衛生士専門学校に進学し、歯科衛生士の資格を取得。これまでの診療補助や受付業務で培ったコミュニケーション力を生かしながら、予防処置や保健指導のスキルを磨き、患者さまの健康維持に貢献したいと考えています。②
特に、予防歯科に力を入れている貴院の診療方針に強く共感しており、患者さまのライフステージに寄り添ったケアを提供できる環境で、歯科衛生士としての専門性をさらに高めていきたいです。これまでの経験を土台に、チームの一員として力を尽くしてまいります。➂&④
〈ここがポイント〉
歯科助手としての経験と、歯科衛生士資格取得までの流れが自然に語られており、職種変更の背景に納得感があります。応募先の方針との接点を明確に示すことで、志望理由に一貫性と熱意が感じられる構成になっています。
●未経験分野への応募の場合
〈志望動機 例文〉
前職の一般歯科医院では、子ども好きを見込まれ、主にお子さまの口腔ケアを担当してきました。大きなやりがいを感じる一方、子どもたちの歯並びについて相談されることも少なくなく、より専門的なアドバイスをできるようになりたいという思いが大きくなりました。これが小児矯正歯科分野に挑戦する決意を固めたきっかけです。②
その中でも貴院に応募をした理由は、「子ども達の歯並びの悩みを減らし、満面の笑顔を増やしたい」というホームページでの院長のお言葉に強い共感を抱いたためです。①&③
小児矯正歯科は未経験ではあるものの、自主的に勉強も進めております。前職での子どもたちへの口腔ケア経験も生かし、多くのお子さまを矯正で笑顔にしていけるよう精進してまいります。④
〈ここがポイント〉
応募に至った背景を順序立てて示すことで、「未経験であっても意欲が高く成長が期待できる」という印象を与える内容になっています。また、ただ「未経験」で終わらせずに、自分なりにその分野の知識を深める取り組みをしていることを伝えられると、採用担当者からの印象も良いものになりやすいでしょう。
4 志望動機のNG回答例とNGポイント
●自分の利益ばかりを求めている内容
〈NG例〉
貴院に応募したのは、残業がなく定時退社を推奨されているからです。前職では残業が多くプライベートな時間を削られてしまい、肉体的にもつらく転職を考えました。
また、休日も少なかったため心身に無理がなく長く続けられる職場を希望しており、貴院でなら仕事とプライベートの両方の充実を実現できると考えました。
「給与が高い」「休日が多い」「残業が少ない」といった条件は、新しい職場を決める上での重要な要素の一つです。しかし、志望動機に自己の利益ばかりを書いてしまうと、「この人は条件だけを見て当院を志望しているのでは」、「もっと良い条件があれば違う職場に移ってしまうのでは」と思われてしまう可能性も。
例えば、「ホワイトニングコーディネーターといった専門的な資格取得のための勉強時間を確保したいので、できるだけ定時に退社できる職場を希望している」というように、自分の利益(残業が少ないこと)が志望先の歯科医院にどのように還元ができるのかを、志望動機に織り交ぜるようにすると良いでしょう。
●前職の批判や悪口に偏った内容
〈NG例〉
前職の歯科医院は指導が厳しかったため、精神的に疲れることが多かったです。スタッフは年上の人ばかりで、身近に相談できる人がいなく孤独を感じていました。
私は「仕事もプライベートも楽しく」を実践したいと考えています。貴院は、同年代のスタッフが多いので、話しやすくコミュニケーションも取りやすいと思います。スタッフの皆さんと仲良く楽しく仕事をしたいと考え応募しました。
転職を考えているということは、前職とは合わず、退職時に多少の不平や不満はあるかもしれません。
しかし、志望動機に前職に対するネガティブな内容を書いてしまうと、「この人は新しい職場でも不満をみつけて辞めてしまうのでは」と考えられ、採用担当者に不快感や不安定な印象を与えかねません。
ネガティブな内容はできるだけポジティブに言い換えるようにし、志望先に「この人は前向きに転職しようとしている」と良い印象を持ってもらえるように心がけましょう。
●どこの歯科医院でも通用する内容
〈NG例〉
前職ではメンテナンス業務に従事していました。メンテナンス後の患者さまに「歯がきれいになって気持ちがいい」と言ってもらえるのがうれしく、歯科衛生士としてやりがいを感じていました。
貴院でも、患者さまが笑顔になれるように、丁寧なメンテナンスを行っていきたいと思います。
「メンテナンスを通じて患者さまの歯を守りたい」といった志望理由は、歯科衛生士を志す理由ではありますが「この歯科医院」を志望する動機としては弱く、どこの歯科医院でも使えてしまいます。
志望先ならではの理由を見つけるためには、歯科医院の特徴や院長の診療方針などを研究することが大切です。その中で、自身が共感したことや興味を持ったことを書き添えるようにし、志望先への熱意が伝わる内容にすると良いでしょう。
5 面接での志望動機の伝え方
履歴書に書いた志望動機は、面接でも必ず聞かれる項目です。その場でしっかりと伝えるためには、話し方の工夫や準備が欠かせません。ここでは、歯科衛生士の面接で志望動機を効果的に伝えるためのポイントを紹介します。
●話し方のコツ
-
結論から話す
「貴院を志望した理由は〇〇です」と最初に要点を伝えると、聞き手に伝わりやすくなります。 -
履歴書と内容を揃える
書いた内容と話す内容が一致していると、信頼感が高まり、面接官の印象も良くなります。 -
ゆっくり・はっきり話す
緊張して早口になると伝わりづらくなるため、落ち着いて話すことを意識しましょう。笑顔やアイコンタクトも忘れずに。
●質問への対応方法
面接では、志望動機に関連して「なぜこの歯科医院を選んだのか」、「前職での業務内容」、「今後身につけたいスキル」などが問われることがあります。こうした質問には、応募先の特徴と自身の経験・希望を結びつけて答えるのがポイントです。
例えば、「予防歯科に力を入れている貴院で、これまでの経験を活かしながらさらに知識を深めたいと考えています」といった回答は、応募先への理解と自分の強みをセットで伝えられ、説得力が高まります。
●熱意を伝える技術
志望動機を面接で伝える際は、歯科医院への共感と入職後の意欲を具体的に話すことが大切です。
以下のような表現を参考にしてみましょう。
<歯科医院の理念や方針に共感した点を伝える例>
- 「院長の“患者さま第一”という考え方に共感しました」
- 「貴院が地域密着型で、患者さまとの信頼関係を大切にしている点に魅力を感じました」
- 「予防歯科に力を入れている方針が、自分の目指すケアスタイルと一致しています」
など
<入職後の意欲を伝える例>
- 「インプラント治療後のメンテナンス経験を活かし、貴院でも患者さまの長期的な口腔ケアに貢献したいです」
- 「訪問歯科診療に対応している貴院で、地域の患者さまに寄り添いながら幅広い経験を積みたいです」
- 「小児歯科に力を入れている貴院で、子どもへの対応経験を活かし、成長に寄り添えるケアを提供したいです」
など
熱意は、言葉だけでなく表情・姿勢・声のトーンでも伝わります。面接では、誠実さと前向きな姿勢を意識して臨みましょう。
また、面接での志望動機の伝え方に加えて、よくある質問や自己PRの作り方も事前にチェックしておくと安心です。面接対策をさらに強化したい人は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
6 歯科衛生士のよくある質問と注意点(FAQ)
履歴書や志望動機を書く際、「経験が浅い」「ブランクがある」など、迷いや不安を感じる人は少なくありません。ここでは、歯科衛生士の転職活動でよく寄せられる質問と、その対処法をQ&A形式でまとめました。応募書類を作成する際のヒントとして、ぜひ参考にしてください。
Q.歯科衛生士としての経験が浅い場合、どう書けば良いですか?
A .経験が浅くても、学びたい姿勢や意欲を伝えることが大切です。
「予防歯科に興味があり、知識を深めながら貢献したい」「患者さまとのコミュニケーションを大切にしたい」など、今後の成長意欲や歯科医院の方針への共感を中心に書くと好印象につながります。
Q.ブランクがある場合、志望動機をどう伝えるのがベストですか?
A .ブランクの理由よりも、復職への意欲を前向きに伝えましょう。
「子育てを経て、改めて歯科衛生士として働きたいと思った」「最新の知識を学び直しながら、現場で活かしたいと考えている」など、再スタートへの前向きな姿勢を示すことがポイントです。
Q.歯科衛生士の志望動機が「家から近い」はNGですか?
A.「家から近い」は個人的な理由に聞こえやすく、志望動機としては説得力に欠けるため、基本的には避けたほうが良いでしょう。
ただし、「地域に根ざした医療に貢献したい」、「地元の患者さまの健康を支えたい」といった地域密着の視点に言い換えれば、前向きな動機として伝えることができます。応募先が地域医療に力を入れている場合は、特に好印象に繋がる可能性があります。それ以外の場合は、通勤のしやすさは補足程度に留めるのが無難です。
Q.志望動機に「患者さんとの関係性」を書いても良いですか?
A .むしろ積極的に書くべきです。
歯科衛生士は患者との距離が近い職種です。「患者さまの不安を和らげる対応を心がけている」「長期的な口腔ケアを通じて信頼関係を築きたい」など、人との関わりを大切にする姿勢は、歯科医院との相性を伝えるうえでも有効です。
Q. スキルアップを志望理由にしても問題ないですか?
A .問題ないですが、歯科医院との接点をセットで伝えるのがポイントです。
「予防歯科の知識を深めたい」だけでなく、「貴院が予防歯科に力を入れている点に魅力を感じ、自分もその一員として成長したい」など、応募先の特徴と自分の目標が一致していることを示しましょう。
7.まとめ
今回紹介した例文を参考に、これまで経験してきたことや仕事を通じて磨き上げた強み、応募先に感じた魅力、思い描く「理想の働き方」についてまとめましょう。
また、作成後には、必ず誤字脱字がないかチェックを忘れずに。自分で音読してみたり、家族や友人に読んでもらったりすると万全ですね。自分らしく働ける職場に転職するために、志望動機にしっかり向き合ってみてください。
●監修者からのアドバイス
檜山 寛雅
株式会社ギミック キャリアアドバイザー
「志望動機の作成は、これまでの経験や患者さんとの関わり方を振り返る良い機会になります。『どんな歯科衛生士として働きたいか』を、自分の言葉で少しずつまとめてみてください。
例えば、これまで印象に残った患者さんとのエピソードや、やりがいを感じた瞬間を思い出してみると、自然と気持ちが整理されていきます。あくまで、入職はなりたい姿に近づくためのきっかけ。今までのキャリアを思い出しながら、自分の言葉で書いてみると、採用担当者の印象は変わるはずです」
◇ ◇ ◇
当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」では、ドクターが自院の理念や患者・治療への思いなどを語ってくれたり、先輩スタッフが職場や自身の働き方を紹介してくれたりするインタビュー記事つきの求人も豊富です。職場の特色をつかみやすいのでぜひチェックしてみましょう。



① 自身の経験・スキル・価値観を棚卸しする
② 応募先の歯科医院の特徴や方針をリサーチする
③ 自分と応募先の接点を見つけ、マッチする形で志望動機を構成する