歯が揺れる、出血を放置しない
歯周病は外科的治療も含めた改善を
ハラダ歯科医院
(北九州市小倉北区/旦過駅)
最終更新日:2024/12/13


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日本人の歯を失う原因のトップである歯周病。歯と歯肉の溝から細菌が侵入し、歯茎や歯槽骨などの組織破壊を起こす病気だ。歯周病は中高年からの病気だと思われがちだが、初期の段階ではほぼ症状がなく、10代から30代までの半数が歯周病予備軍ともいわれている。「ハラダ歯科医院」の原田依美院長は、「違和感を覚えたら、決してそのままにせず受診してください」と、大学院で取り組んだ細菌の研究も生かし、歯周組織再生療法などをはじめとする多様な歯周病治療に力を注ぐ。歯が揺れる、歯茎から出血するなどの症状は、かなり進行しているサイン。最終的には歯を失い、健康へのリスクも高まるため、早期治療の重要性を呼びかける。これまで数多くの歯周病治療を手がけてきた原田院長に、歯周病のリスクや同院の診療の流れを聞いた。
(取材日2024年11月7日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q歯周病を放置するとどうなってしまうのでしょうか?
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A
歯周病は歯と歯肉の隙間に侵入した細菌が炎症を起こし、歯を支える骨が溶けて組織が崩壊してしまう病気です。そのため、そのまま放置しておくと炎症が進行し、最終的には歯を失うことになります。また、抜け落ちる歯は1本とは限りません。数本失ってしまうと噛み合わせにトラブルが生じ、残存歯にも悪影響を与える可能性が高まります。そうなると、口腔内が正常に機能しなくなってきますので、硬い物が食べられなくなるなど、食べられる物が限られてきますし、健康面でのリスクも上昇。また、あまり知られていないかもしれませんが、特に高齢者の方は歯を失うことで体のバランスを崩し、転倒などを引き起こすこともあります。
- Q抜歯となった場合のリスクについても教えてください。
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A
先ほどの話とも関連しますが、歯を失うと咀嚼機能が低下し、よく噛んで食べることができなくなります。噛む力が弱いと、脳への刺激が少なくなり、認知症のリスクが高まるといわれています。また、やわらかい物しか食べられないことで栄養が偏り、高血圧症や糖尿病、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも上昇。今、オーラルフレイルといって加齢による口腔機能の衰えが注目されていますが、これは歯周病や虫歯による残存歯数の減少によって段階的に引き起こるもの。高齢になると唾液分泌量が低下するため口腔内のトラブルが起こりやすくなります。歯周病は初期症状がほとんどなく、気づいた時には抜歯が必要であることも少なくありません。
- Q歯を失ってしまうと、どのような治療を行うのでしょう。
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A
歯の残本数にもよりますが、大きく分けてブリッジ、入れ歯、インプラントの3つの選択肢があります。まず保険治療となるブリッジ。これは欠損歯の両隣の歯を削り、それを土台としたかぶせ物を取りつける治療法です。欠損歯の数が多い場合は同じく保険治療の入れ歯も選択肢になります。そして自由診療のインプラント治療は、土台となる顎の骨に人工歯根のインプラント体を埋め込み、それに上部構造(かぶせ物)を固定する手術を伴う治療です。土台となる骨が溶けてインプラント体を埋入できる値に満たない場合は、骨造成などを実施。ただ、いずれにしても歯を失う原因となった歯周病の治療を先に行い、口腔内の状態を整えた上で治療に入ります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1違和感や症状が出る
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歯磨きやうがいの際、またはフロスや歯間ブラシを使用した時の歯茎からの出血、歯茎の腫れ、虫歯の痛みではない鈍痛、歯茎がむずがゆい、口臭、口腔内の粘つき、歯の揺れといった症状があれば、歯肉炎や歯周病がすでに進行しているサイン。初期段階では症状を感じることはほとんどないため、何らかの症状があれば迷わず受診を。受診した時の状態がその後の治療期間にも大きく影響するため、早期受診と早期治療が重要だ。
- 2問診・検査
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歯科医師による問診ではどのような症状があるのかを詳しくヒアリング。その内容に応じて、エックス線の撮影、歯周組織検査などを実施し、状況を把握する。検査は2回に分けて実施。まず初診時にエックス線による口腔内撮影、2回目の来院時に歯周ポケットに細い器具を挿入して溝の深さや出血の有無もチェックし、歯周病の進行度を確認する。初診時と2回目来院時の検査資料をもとに診断を行う。
- 3治療開始
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検査の結果、治療が必要と判断された場合は、歯科衛生士が個々の患者に適した磨き残しを防ぐためのブラッシング指導を実施。歯の隙間に合ったサイズの歯間ブラシなど、補助器具の使い方やアドバイスも行う。歯石除去などを行った後は、汚染された歯根の表面を器具を使って削り取り滑らかにしていくためのSRPという工程に入る。その際、痛みに恐怖心のある患者や痛みを感じる場合には麻酔を使用することもあるそう。
- 4再評価
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再検査して、前回の状態と比べて症状の変化を確認する。改善が見られる場合はメンテナンスを実施。十分な治癒が得られなかった場合は再度SRPを実施するか、もしくは歯茎を切開して歯石を取り除く歯周外科手術や歯の組織の再生を促す歯周組織再生療法をすべきか、歯科医師と相談しながら決定。その判断はブラッシングの上達具合や生活習慣も含めた上で行うため、同じような状態であっても患者によって選択肢が異なる。
- 5定期的なメンテナンス
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各患者にあったスパンで定期的なメンテナンスを実施。基本的には2~3ヵ月に1度の間隔が目安だが、ブラッシングで汚れが十分落とせていない場合は、2週間~1ヵ月に1度のメンテナンスを勧めることもあるそう。メンテナンスの役割は、歯石や歯の汚れを落とすことだけでなく、異常を早期に発見するためでもあるので、口腔内の状態に適した間隔で受診することが大切だ。歯科医師と二人三脚で歯の温存に努める。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント(手術)/30万円、インプラント(上部構造)/5万5000円~、歯周組織再生療法/5万5000円~、骨造成/5万5000円~