中川 孝久 院長の独自取材記事
中川歯科医院
(宮崎市/南宮崎駅)
最終更新日:2021/10/18
宮崎市内西部にある大塚町は、50年ほど前から、田園地帯から住宅地へと大きく変貌してきた町。この地に1981年に開業した「中川歯科医院」は緑に囲まれ、広々とした院内は明るく心地良い印象だ。中川孝久院長は、祖父の代から父・兄と続く歯科医師の家に生まれ、「職業を選んだという記憶がないんです」と話すほど、自然な流れで歯科医師の仕事に就いた。クリニックを構えた大塚町について、開業当時は、田んぼが広がりホタルが飛ぶようなのどかな環境だったという。40年たつうちに人口が増えてベッドタウンとなり、地域の保育園や中学校で校医も務めながら、地域に根差して同院での診療を続けてきた中川院長に、得意な分野である顎関節症の話をはじめ、診療で心がけていることなどさまざまな話を聞いた。
(取材日2021年8月20日)
虫歯のほか、顎関節症など口腔外科の疾患も対応
長年幅広く治療にあたってこられた中で、先生が得意とされる治療は何でしょうか。

顎関節症の治療ですね。顎関節症とは、口を開けたり閉じたりがしにくくなったり、顎が痛くなったりする疾患です。最初の症状は、顎を動かす時にカックン、カックンと音がしたり、顎を動かす時に違和感があったり、口を開ける時に痛みを感じたりするくらいですね。そこから症状が進むと、顎を動かす時の音が大きくなったり、顎の痛みで口が開けづらくなっていくことも。そうすると、食べ物が食べづらくなったりしていきます。顎関節症は、日常生活の中での強い食いしばりや寝ている間の歯ぎしりが原因となっていることがあり、歯ぎしりに対しては、寝ている間に装着するマウスピースだけでは歯への衝撃を和らげるだけにとどまるため、治していくことは難しいかもしれません。治療には、専用の装置を使っていくことが必要になります。
顎関節症が歯科医院で診てもらう疾患だということは、皆さんご存じなんでしょうか。
そうですね。歯科の専門の大学がある地域などでは、比較的ご存じの方は多いように思います。しかし、ここ宮崎もそうですが、歯科専門の大学が近くにないような地域では、顎関節症やそれ以外の口腔内の病気、例えば、舌や頬の内側、下顎にがんが疑われる場合などに、どこに相談に行ったらいいのか迷われる方もいらっしゃるようです。ちなみに昔は、口の中全般を診る「口中医」と、入れ歯を専門に作る「入れ歯師」という2つの職業があったそうですよ。今でいえば、口中医が歯科医師、入れ歯師が歯科技工士といった感じでしょうか。それが江戸時代になって、口中医と入れ歯師の仕事、両方を1人で行うようになり、これを歯医者と呼ぶようになったらしいです。その呼び名が今に続いているんですね。
こちらには、入れ歯を製作する歯科技工士がいらっしゃると聞きました。

当院には、歯科技工士が常駐していて入れ歯などの技工を担当してくれています。特に、当院では入れ歯治療の際、噛み合わせについて注意を払っています。その時に歯科技工士が活躍するんですよ。入れ歯を作る際、噛み合わせの高さを低くすることで患者さんの感じる違和感を減らしていくことは可能なのですが、実は正しい高さになるように整えていくことのほうが大切。食べ物をきちんと噛めるように高さを整えていくんです。つまり噛み合わせを整えていくということですね。患者さんの勝手がいいように低めに作るのではなく、「勝手は悪いですけど、正しい高さにするほうがよく噛めますよ」とお伝えしています。違和感を減らして高さも保ってという、そこの細かな調整を、院内にいる歯科技工士が行っていますので、常駐していると患者さんとのやりとりがしやすく、非常に助かっています。
地域の保育園や中学校の校医も務め、地元に貢献
こちらの場所に開業なさったきっかけは何だったのですか?

関東の大学で歯科の勉強をした後、地元の宮崎に戻ってきました。生まれ育ったのは小林市野尻町です。祖父や父、兄も歯科医師なんですけれども、父が「家族は一緒の歯科医院で仕事をしない」という方針だったので、みんな別々の町で開業しています。父が野尻町で開業していたので、私はほかの場所でと思い、不動産会社の方の紹介で大塚町にやってきました。
開業されて40年ということですが、当時と今とで、どのような変化がありましたか?
開業した当時は、田んぼが広がっていて夜は真っ暗でした。ホタルもいましたね。本当に田園風景だったんですが、今では人口が増えすっかり町になって。患者さんについては、口腔内の疾患は昔も今もそう変わりはないです。子どもさんたちの虫歯は少なくなりました。幼稚園と中学校に歯科検診に行っていますが、みんなきれいに磨いてくれています。特に、0歳から6歳までの就学前の子どもたちは、保護者の意識が高まり歯磨きをきちんとさせてくれているようで、虫歯がほとんどない子が多いですね。
感染症対策としてはどんなことに気をつけていらっしゃいますか?

口の中に入れる器具については、超音波洗浄器で洗浄し、薬剤消毒を行った後、高温・高圧の蒸気で滅菌をしています。こうした衛生管理はもともと行っていたのですが、新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからは、今まで以上に滅菌消毒に力を入れています。このほか、待合室は患者さんが密な状態になるのを避けるためにスペースを広く確保し、換気も定期的に行っています。空気清浄機や消毒液を設置し、スタッフをはじめ患者さんにもマスクと消毒を徹底してもらっています。
患者に寄り添い、口腔内の悩みを解決していく
治療の際に、心がけていることは何ですか?

患者さんにリラックスしてもらうことで、恐怖心や痛みをできるだけ少なくしていくように努めています。麻酔を打つ前に脈を測るんですけれども、高い場合はリラックスできていないなと判断し、患者さんと雑談して緊張をほぐすようにしています。麻酔時の注射の際には、痛みを軽くするための工夫をしています。表面麻酔を塗った後、外径約0.2ミリの細い注射針を使って、注入するスピードにも細心の注意を払っています。患者さんに「痛いですか」とその都度聞きながら、痛みの状況を確認するようにしています。
最近増えてきたと思われる症状などありますか?
歯周病の方は増えていますね。原因の一つに、食べ物がどんどんやわらかくなっていることが関係しているのではと思っています。やわらかい食べ物ばかり食べていると、噛む回数が減り、顎や骨が鍛えられなくなっていきます。また、歯周病を防いでいくためには歯磨きが大事だとよくいわれますが、免疫力を高く保つことも大切だと思います。免疫力によって細菌の繁殖を抑えることで、口腔内の状態を良好に保っていただけるようになるといいですね。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

校医をしながらたくさんの子どもたちを診てきて気づいたことなんですが、健康な歯を維持するためには、歯の質の良さや歯磨きだけでない、歯を細菌から守る免疫力が必要なんだと感じています。口腔内の場合は特に唾液の性状を良くすることですね。そのために重要なのが、バランスの良い食事、質の良い睡眠、適切な運動で、体を健康な状態を保つことで免疫力アップにつながります。また、そういったお口の状態をチェックする定期検診も大切です。当院では歯周病の患者さんには3ヵ月に1度、歯の汚れや口腔内粘膜の確認を行っていくようにお勧めしています。いつでも、皆さんの口腔内のお悩みに応えられるような、患者さんに寄り添える歯科医院でありたいと思っています。

