稲田 裕仁 院長の独自取材記事
稲田歯科医院
(宮崎市/南宮崎駅)
最終更新日:2022/01/07
宮崎市中心部を流れる大淀川南部に広がる昔ながらの住宅街に立つ「稲田歯科医院」。稲田裕仁院長の父で副院長を務める稲田義仁先生が1972年に開業し、来年で50年を数える長い歴史を持つ歯科医院だ。「歯を健康に保つためには何よりも予防が大切」と予防歯科に力を入れながら、虫歯、歯周病、入れ歯など地域の人々の悩み事、困り事に広く対応。稲田院長は歯科麻酔、障害者歯科治療の分野を中心に研鑽を積み、その経験を生かした治療も行っている。プライベートではトライアスロン、マラソン、テニスなどを趣味とし、体を動かすことが大好きというスポーツマン。上手にリフレッシュしながら診療にも全力投球する稲田院長に、同院の歩み、これまでの経験、歯の健康に対する思いなどについて話を聞いた。
(取材日2021年11月17日)
歯科麻酔、障害者歯科の経験を生かし、治療にあたる
こちらのクリニックはお父さまが開業されたのですね。
もともとは別の場所で開業したのですが、その後、こちらに移転しました。父は仕事が大好きでまるで職人のような人。今も現役で、当院で一緒に診療しています。患者さんのために全力で治療にあたる姿は昔も今も変わらず、子どもの頃からずっと素晴らしいと思っていますね。僕が歯科医師になろうと決めたのは高校2年生の時。小学校の先生や弁護士に憧れた時期もありましたが、父の背中を見ているうちに自然に歯科医師の道をめざすようになりました。
院長就任までの経緯を教えていただけますか?
高校卒業後は東京医科歯科大学に進み、卒業後は同大学院の麻酔・生体管理学分野で5年間経験を積んで、その後さらに東京都立東大和療育センターに4年間勤めました。上京した時点でいずれは宮崎に戻って実家を継ごうと決めていたので、一般のクリニックでは経験することが難しい、東京の病院でしかできない経験をしようと考えたのです。およそ10年間東京で過ごした後、宮崎に戻って当院に勤務し、2011年に父から継承し院長になりました。
麻酔・生体管理学分野ではどのようなことを学び、それは今どのように生かされているのでしょうか。
主に口腔外科手術の時や障害のある方の歯科治療における全身麻酔、静脈麻酔などについて勉強しました。現在は全身麻酔をすることはほとんどありませんが、患者さんの中には、嘔吐反射といってお口に何か物が入ると吐き気を催して歯磨きや歯科治療を受けることができない方がおられるので、そういった方のために静脈麻酔を使った治療を行うことがあります。この方法だと、痛みや緊張をほとんど感じることなく、リラックスした状態で治療を受けていただくことができます。血圧や心拍数もしっかり管理しながら行いますので、「歯科治療が怖い」「もっと楽に受けたい」という方はご相談いただければと思います。
父と2人体制で診療。往診にも対応
東京都立東大和療育センターではどのようなことを学ばれたのでしょうか。
東京都立東大和療育センターは、重症心身障害児・者のための施設です。基礎疾患がたくさんあり、ご自分では行動を抑制できない方が多く、診療ユニットに座ることすら困難な方、顎の骨が折れているのになぜそうなったのかわからない、説明できないというような方もおられました。そんな中でお一人お一人の状況や症状を理解し、配慮しながら治療を進めていました。当時は目の前の患者さんを治すことで必死でしたが、宮崎に戻ってきて自分がどれだけ重症の患者さんに対応して貴重な経験をしていたかということに気づきました。障害のある方の治療は現在も行っていますけれども、あの頃ほど重症の方は少ないので、当院に歩いて来られるならば治療できない患者さんはいないと言えるくらいに、当時の経験が今では自信になっていますね。
こちらのクリニックではどのような患者さんが多いですか?
ほとんどがご近所の方で、患者さんからのご紹介やクチコミが多く、あとはホームページを見て来られる方ですね。主訴としては、虫歯、歯周病の治療、入れ歯のご相談など。平均年齢は65歳ぐらいとやや高めです。父の代から来てくださって父と一緒に年を重ねてこられた方が多いんですよね。開業当初からの患者さんは僕の小さい頃もご存じで、「大きくなったね」とか、「これで歯に関しては生涯診てもらえる。安心だ」などと言ってくださる方もおられます。うれしいという気持ちの一方、僕がずっと診なければいけないと気が引き締まる思いがしますね。さらに最近は往診も増えていて、在宅だけでなく介護施設やほかの医療機関などに出向き、虫歯や歯周病の治療、抜歯、入れ歯の調整などをしています。
治療するときに心がけていることを教えてください。
患者さんお一人お一人のそれまでの歯の歴史をしっかりお聞きし、予防につなげることを心がけています。例えば虫歯の治療では、まずどうして虫歯になったのかをお聞きします。でも、患者さんの多くは、いつどこでどんな歯科治療を受けたのか、今どのような状態なのか、そして虫歯になった理由もよくわかってはおられないんですよね。しかも、口腔内をチェックしてみると、前に虫歯になった形跡が見つかることが少なくありません。東京での臨床研修で師事した先生が原因まできちんと知ろうとする方で、その考え方に強く影響を受けました。歯の治療は受けたら終わりではなく、自分のお口の中がどういう状態なのかを知り、常に興味を持って予防し続けることが大切だと思いますね。
理想はメンテナンスだけの歯科医院。予防に力を注ぐ
歯周病の方も多いようですね。
予防が十分でなかったために、気づいたら歯周病で歯を抜かなければならなくなってしまったということがよくありますね。口腔内にはたくさんの細菌が生息していて、実はとても汚い状態です。当院では、まずそういったお口の状況を理解していただき、悪い部分やこれから悪くなると予想される部分を治した上で予防を進めていきます。僕は宮崎市郡歯科医師会の公衆衛生担当理事として、地域で歯科検診を行ったり高校で講演をしたりするなど虫歯や歯周病予防の啓発活動にも力を入れているんです。宮崎市郡の歯科検診受診率はまだまだ低く、これを引き上げるべく頑張っているところでもあります。
お休みの日はどのように過ごしていますか?
もともと体を動かすことが好きで、東京にいた時に病院のスタッフに誘われて始めたトライアスロンをずっと続けています。レースが終わるとふがいない結果に「どうしてもっと練習しなかったんだろう」と後悔するのですが、だからこそ「次もまた頑張るぞ」という気持ちになるんですよね。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響でトライアスロンの大会は開催が難しい状況になっていますので、最近はマラソンやテニスをしています。マラソンは宮崎や大分などの大会に参加することもあります。休日も何かしら体を動かしているので、健康増進に役立っている気がしますね。
今後の展望をお聞かせください。
先ほどもお話ししたように、僕は何よりも予防が大切だと思っています。ですから、予防の考え方が広まって口腔内のきれいな方ばかりになり、歯科医院では治療は行わず、メンテナンスだけになるというのが理想です。現状ではなかなか難しいですが、その理想をめざして、来院された患者さんには口腔内の状態を知っていただき、適切な治療を提供し、その後の予防についてもしっかりお話しするようにしています。診療を通して健康な歯やお口について皆さんと一緒に考えていけたらうれしいですね。