太田 智子 院長の独自取材記事
太田歯科医院
(宮崎市/宮崎駅)
最終更新日:2024/11/14

宮崎駅にあるショッピングモールから広島通りを抜け、若草通りから四季通りを右折すると見えてくる「太田歯科医院」。現院長の太田智子先生の祖父が1949年に開院し、太田院長で3代目という地域に根づく歯科医院だ。太田院長は県内でも早くから予防歯科に取り組んできた。治療とメンテナンスが十分でもトラブルが出るケースがあることに着目し、一般診療に加え、歯にかかる力や口の使い方、食事内容にも目を向けた診療を提供。歯だけではなく体全体を診て、より良い治療につなげたいと話す太田院長に、歯科医師をめざしたきっかけや心身の健康をサポートするプログラム、診療の際に心がけていることなどの話を聞いた。
(取材日2023年9月6日)
「誰かのサポートをしたい」という想いから歯科の道へ
医院の歴史や院長就任のきっかけなどをお聞かせいただけますか?

1949年に祖父がこの場所に開院し、私で3代目になります。祖父は疎開先の野尻で歯科診療をはじめ、戦後しばらくして宮崎市に移ってきたようです。その後、父が継承し、私が2009年に院長に就任しました。もともと祖父は宮崎の出身で、東京で教師をしていたのですが、歯科大学に入って歯科の道に進んだと聞いています。私は日本大学の松戸歯学部を卒業後、医局に3年間在籍していました。とてもいい先輩に恵まれ、ありがたいことにその先輩らと一緒に研究をさせていただきました。その研究が楽しかったので続けたいという気持ちもあり、こちらに戻ってきたときは「絶対に開業医になりたい」というより、父と一緒に診療しながらこのスタイルに慣れていこうという感じでした。
歯科医師をめざしたきっかけなどありましたらお聞かせください。
一番の理由はやはり実家が歯科だったからですが、小さい頃から歯医者さんになりたいと思っていたわけではなく、薬剤師だった母と同じ道を歩もうと思っていました。どちらにしても理系だったので高校では理系に進んだのですが、そこで薬剤師を志望する女子が多かったこともあり、自分も皆と同じように本当に薬剤師になりたいのかとあらためて考えました。誰かをサポートすることが好きだったので、秘書や保育園の先生なども候補だったのですが、それらの職業はどちらかというと文系分野だったため、進路を変えることも簡単ではなかったこともあり、それだったら父も歯科医院をしていますし、人と関わりを持ちながら手助けできる仕事でもある歯科医師になろうと思いました。医師をめざすことも考えたのですが、その頃は人の命に携わる自信がありませんでした。実際に歯科医師になると人命に関わる局面もあり、いろいろ経験しながら学んできました。
大学や初期研修時代の心に残る思い出などありますか?

3年間在籍していた医局時代は、心の病を抱える患者さんを担当することが多く、歯科治療ではあるのですが、心のサポートが治療結果にもつながることを体験しました。そのような経験から、痛みやつらさを抱えて来院する患者さんが、できるだけ笑顔でいられるようにしたい、もっと自分の体を大切にして健康であることを楽しんでもらいたいと思うようになりました。ですから、こちらに戻ってきたときに、当時は今ほど浸透していなかった予防歯科に着目しながら、診療に取り入れました。患者さんが治療をして「大変だった」「頑張った」という気持ちで帰られるよりも、「気持ち良くなった」「来て良かった」という気持ちで帰ってもらえる場所にしたい。定期的に通いたくなるような場所にして患者さんの健康や日常生活、人生をサポートしていきたいという気持ちがあって、今いろいろなことをやっています。
自分を守る口づくり、体づくりをサポート
一般的な歯科診療に加え、心身の健康をサポートも取り入れていらっしゃいますね。

治療をする際に患者さんのお顔に触れていると、本当に疲れていたり、顔や体が凝っているケースが多いと感じるようになり、どうにか口や体、心の固まったものを緩めてあげたいという想いが強くなってきました。そのような想いから治療とは別に取り入れているのが「口腔筋をほぐすマッサージ」と「栄養面のアドバイス」です。虫歯も歯周病も結局は、循環が重要です。歯科は医科と別に捉えられがちですが、歯は体の一部で、最初の入り口ですので、そこをいかに整えていくかが大切になります。循環をしっかり整えることで体の病気の予防につながると実感していますので、歯科治療とは別にプラスアルファのお口周りを整えるということを取り入れています。
なぜ、そのようなお考えに至ったのですか?
治療をしている中で徐々に感じ取ってきました。虫歯と歯周病の原因の二大要素は、細菌のコントロールと力のコントロールだと考えています。「ばい菌を取りましょう」とよくいわれますが、治療とメンテナンスをしっかりしていても、何らかのトラブルが出ることがあります。細菌のコントロールだけでは十分ではないということになると、やはり力のコントロールが大事になってくるのではないかと思っています。それが凝りなどの問題に行きつき、口腔筋のマッサージに辿り着きました。お口の使い方や食事内容などにも意識を向け、自分を守ることができる体づくり、お口づくりをするサポートをしていきたいと考えています。 予防によって治療が減り、私たちの役目がサポートに変わってくれば本当の健康をつくっていけるのではないかということに着目し、今は少しずつお伝えしたり、発信している段階です。
診察の際に心がけていることはありますか?

歯だけではなく全体を診ること、生活や心のポジションを聞かせていただくことを意識し、何がお口の環境に影響しているかを考えることを心がけています。「虫歯や歯周病は歯磨きの仕方が悪いせいだ」ということにとどまりたくありません。それ以外の原因、自分では気づけない、できないことを一緒に考えて、実践する。サポーターがいるからこそできることもあり、一人じゃできないことも可能になります。保険適用が65歳以上から50歳以上に拡大された口腔機能低下症も私が実践していることにつながっています。高齢になっても、可能な限り自走できるように、できるだけ未病の救い上げをしたいと考えています。病気になってしまってから戻すのは難しいですから。
恩師からもらった禅の言葉「調身・調息・調心」
歯科医師として印象に残っているエピソードがありましたらお聞かせください。

研修医の時に受け持った患者さんが拒食症だったのですが、その方が最終的に命を落とされたことが、私にとっては大きな出来事で、今でもそのことを思うと心が苦しくなります。高校生の時に進路を決める際、命を預かる責任の重さを考えて医師の道に進めなかったのですが、歯科であっても医療に携わる以上、命につながるということを初めて経験しました。口のトラブルは心につながる部分が少なくなくありません。恩師からいただいた「調身・調息・調心」という禅の言葉があるのですが、まさにこれだと思います。「体が調うと呼吸が調い、呼吸が調うと心が調う」。科学的にいうなら、酸素が行き渡ると循環が良くなり、そして精神が調う。これを大切にしようと思いました。
休日の過ごし方や健康面で気をつけていることなど教えていただけますか?
休日はいろいろな場所においしいものを食べにいったり、温泉を巡ったりなどの小旅行でリフレッシュしています。また、自分が体験できないようなことや人の心に触れることのできる映画も好きでよく見ています。私自身、自分を後回しに生きてきたという想いがありますので、今は自分を大切にして、楽しみも持ちながら生活しています。健康面では、体や顔のストレッチの資格を取っており、自分でも実践しています。歯科医師はさまざまな体勢を取るために姿勢が悪くなります。1日分のゆがみを1日でキャンセルするような簡単なストレッチです。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

ご自分を守る体づくりの大切さに気づいていただきたいですね。自分の健康のためにできることがありますので、そのサポートを行いたいと思っています。長年の習慣を是正するのは難しく、一人で簡単にできることではありません。専門家のサポーターを持っていただくことで、ご自分の健康を守っていただきたい。一度きりの人生を謳歌するために、「自分の体を見つめたい、自分の体に向き合いたい」という方がいらっしゃるなら、私は伴走させていただきたいと思っています。