江藤 優貴 院長の独自取材記事
江藤歯科医院
(児湯郡高鍋町/高鍋駅)
最終更新日:2025/04/30

宮崎県中央部の小丸川下流域平野部に位置し、文教の町として知られる高鍋町。スーパーなどの商業施設などが立ち並ぶ県道313号沿いに「江藤歯科医院」はある。開院から40年続く同院は父の江藤仁昭前院長が初代院長を務め、2024年10月に息子の江藤優貴院長が2代目を継承。新築移転したクリニックは、外観に歯のモチーフが施され、誰が見ても歯科医院とわかるよう工夫を凝らしたという。江藤院長は長野県の松本歯科大学を卒業後、千葉県の日本大学松戸歯学部付属病院にて勤務。その後、東京都と茨城県のクリニックで経験を積んだ後2年半ほど前に帰郷、同院に勤務した。「患者さんが話しやすい雰囲気を大切にし、思いに沿った治療を提供したい」と言う江藤院長に診療への思いを詳しく聞いた。
(取材日2025年2月15日)
丁寧に調整し、使いやすい入れ歯で食べる喜びを
継承までの経緯をお聞かせください。

父方の祖父が医師で、母方の祖父と父が歯科医師であったこともあり、将来は漠然と歯科医師をめざそうと思うようになりました。大学入学後は、歯科医師としてレベルアップしたい気持ちが高まり、より患者さんのニーズに応じた治療の実際を学ぶために研修先は千葉県の日本大学松戸歯学部を選択しました。ここを選んだのは、緊張感がありながらも治療にもしっかりと関われる点に魅力を感じたためです。あの時の経験があって今は良かったと思っています。研修後の就職先もそこからのご縁でつながりました。その後は、東京と茨城のクリニックで技術を磨き、経験を積んできました。東京のクリニックでは、治療計画の立て方や治療方針の決め方などを学び、私の診療スタイルの土台はここで培ったものと言えます。経験を積めば積むほど、だんだんと地元・高鍋に還元したい思いに駆られ、父の後を継ごうと決めました。
得意としている診療は何ですか。
歯科医療全般について対応させていただいていますが、経験上の得意な分野が入れ歯製作です。当院ではしっかりと「使っていただける入れ歯」となるよう、製作後の調整を特に丁寧に行っています。入れ歯ができあがれば、すぐに使えると思う方が多いと思うのですが、入れ歯はできあがってからが始まりです。使い始めるとどうしても痛みが出てくる可能性がありますので、1~2ヵ月ほどかけて患者さん一人ひとりに合うようじっくり調整していきます。「使ってみたら痛くなったから使わない」となると残念ですので、「必ず痛みが出てくるし調整もしたいので、早めに予約を取って必ず来てくださいね」とお伝えしています。例えば、新しい靴を履くと靴ずれをしてしまうように、最初はぴったりと合わないのは当然なのです。痛かったところを調整するというのを繰り返して、患者さんの口にぴったり合うように調整を進めていきます。
そのためにも患者さんとの会話を大切にされているのですね。

口腔内の細かい気になることや悩みなど、遠慮して言えない患者さんや、あまり話さない患者さんだとしても、伝えたいことはたくさんあると思うんです。当院ではなるべく雑談も交え、患者さんが話しやすい雰囲気を大切にしています。患者さんの思いを聞き、なるべくその思いに沿うように治療方針を立てています。
話しやすい雰囲気を大切にし、患者の思いをくむ
会話重視の診療となったきっかけはありますか。

最初に勤務していた東京のクリニックでは、患者さんが多かったため夜遅くまで診療をしていました。技術はとても磨くことができたのですが、患者さんとじっくり会話をする時間がなかったんです。その後、勤務した茨城のクリニックで患者さんと向き合うことを心がけたところ、患者さんからの紹介が増えましたね。ご家族で来てくださるようになるなど会話の大切さをより実感しました。振り返ってみると、患者さんも含めいろんな方と関わったおかげで今の私があるのだと感じています。治療を行うだけではなく、「この後どこに出かけるんですか」などたわいもない会話から打ち解けることができ、信頼関係も深まります。和気あいあいとしたアットホームな雰囲気の中、患者さんがリラックスしてくれることで結果的に治療に役立つこともありました。
訪問歯科診療について教えてください。
何らかの疾患や疾病により通院が困難な方や、口腔内の衛生面で悩まれている患者さんやそのご家族がいらっしゃいます。当院では通院が困難な方へのサポートとして訪問歯科診療を行っています。持ち運び可能なポータブルタイプの機器をそろえており、訪問歯科診療でも歯を削ったり、抜歯や入れ歯の型採りも行うなど通院同様の診療に対応しています。
通院が難しい方や施設への対応もしていらっしゃるんですね。

はい、寝たきりだったり、足腰が弱くなって思うように歩けないなど、通院が難しい患者さんは少なくないです。そんな通院が困難な患者さんで入れ歯が合わずに困っていたり、新しく入れ歯を作ってほしいという方がいらっしゃるので、私で力になることができればと思っています。施設にいらっしゃる利用者さんの場合、担当のケアマネジャーさんから入れ歯のことや口腔ケアなどについて相談されることもあります。地域包括支援センターや介護事業所などからは診療の依頼を受け、患者さんの自宅だけでなく有料老人ホームやグループホームをはじめ、特別養護老人ホームや障害者者支援施設などの施設にも訪問させていただいています。
実際に訪問歯科診療を行ってみていかがですか?
現在、この地域では訪問歯科診療をしている歯科医院はまだまだ少ない状況のため、自宅に伺って診療を行うと感激して喜んでくれる患者さんが多数いらっしゃいます。食事面や口腔内の衛生面などで困っている方が一人でもいるのであれば、お役に立ちたいと思っています。患者さんの中には年齢を重ねて「歯科医院に来ることができなくなったらどうしよう」と不安を抱えている方もいます。当院は患者さんの一生涯にわたって寄り添う気持ちで診療を行っています。来られなくなる時期など事情を話してくれる患者さんもいますので、その時は「訪問で行けるので心配しないで」とお伝えしていますね。
快適に過ごせるバリアフリー設計で患者の負担を軽減
スタッフとの連携はどのように取られていますか。

日々、外来と訪問歯科診療の予定が組み込まれているため、朝のミーティングではスタッフみんなで誰がいつどのような動きをするのか確認するようにしています。訪問歯科診療では、施設か在宅かで一緒に行くスタッフの人数も違います。スケジュールが密になってしまう場合には、私が外来の治療を対応している間に、スタッフがすぐに出発できるように車で待機していることもあります。訪問歯科診療後に外来の予約があるときには、スムーズに治療に入ることができるように、スタッフが患者さんの対応をしてくれている場合もあります。スタッフとは携帯電話やインカムを使ってリアルタイムで伝達・共有ができるようにチームプレーで取り組んでいます。
リニューアルでこだわった点を教えてください。
まず初めての方でも入りやすい雰囲気になるよう外から院内が見える大きな窓を配しており、明るくオープンな造りになっています。玄関前には、車寄せを設置し、車いすの患者さんでもスムーズに移動ができるよう、駐車場から院内まで段差のないバリアフリー設計を施しています。また、車いすの患者さんはユニットに移乗せず座ったまま治療することができ、車いすのままで過ごしていただけます。院内は患者さんとスタッフの動線の最適化と効率化にこだわり、スムーズに動けるよう工夫しました。
今後の展望とメッセージをお願いします。

ありがたいことに多くの患者さんが来院してくださっている状況で、忙しい毎日をスタッフたちも頑張ってくれています。看護師でもある妻は今までの経験やキャリアを発揮してもらっていていろいろな面で頼りにしています。今後もう少しスタッフ数を増やし、働きやすさにも配慮したクリニックにしていきたいです。人員的にゆとりが生まれることで、結果的に患者さんにも還元していけると考えています。患者さん一人ひとりに寄り添う治療を大切にしていきたい思いはこれからも変わりません。口腔内の悩みや治療に関する希望、年齢を重ねることによる心配事など、気軽にお話ししていただけるとうれしいです。