藤崎 順一 院長の独自取材記事
藤崎歯科医院
(鹿児島市/谷山駅)
最終更新日:2021/10/12

JR谷山駅から徒歩7分の「藤崎歯科医院」。1952年の開業以来、3代にわたって地域に根差した医療を提供している。先代や先々代の頃から通う高齢者はもちろん、谷山エリアでは近年、区画整理などが進み、子育て世代の来院も増えている。そうした中、2017年には院内を改装し、ベビーカーや車いすなどでも入れるようにスロープなどを設け、バリアフリーの環境を整えた。3代目の藤崎順一院長は、虫歯治療や歯周病治療などの一般的な歯科治療に加え、難しい親知らずの抜歯や粘膜の疾患などの治療にも力を入れている。入れ歯の治療を担当するのは、父親の藤崎松一先生。スタッフ体制は歯科助手2人に歯科衛生士1人の、アットホームな雰囲気の歯科医院だ。藤崎院長に、診療にかける思いを聞いた。
(取材日2020年7月22日)
谷山地区で3代にわたって地域に根差した医療を提供
院長で3代目、おじいさまが開業された歯科医院と聞きました。

祖父がこの歯科医院を開業したのは1952年、今から68年前のことになります。1985年に父が引き継ぎ、今の場所でリニューアルしました。子どもの頃から2人の働く姿を見てきましたし、親戚からも「将来は歯医者になるんだよ」と言われ続けてきたので、「いずれは、自分がここを継ぐんだ」と思っていましたね。今思い返すと、中学生の時には「将来設計図」に「歯医者」と書いていたので、すっかり刷り込まれていたみたいです(笑)。大学を卒業し、大学病院や県外の歯科医院などで9年間働いた後、鹿児島に戻って当院を継いだのが2017年のこと。最近この辺りは区画整理なども進み、新しい家やマンションなども次々に建てられています。祖父や父の代から長く通ってくださる患者さんはもちろん、子育て世代のファミリーも増えている印象ですね。
院内は新しいですが、最近改装されたのですか?
2017年、私が院長になったのを機に全面改装しました。段差をなくしてフラットにすることでバリアフリーの環境を整えました。以前は入り口が階段でしたが、スロープをつけたことで、「車いすやベビーカーでも入りやすくなった」といった声も聞かれるようになりましたね。また、待合室にキッズスペースを設けたことで、親御さんからも「子どもが退屈せずに待っていられる」と、こちらも好評です。入り口には、手作りの「スタッフ紹介ボード」も掲示。アットホームで親しみやすい歯科医院をめざし、みんなの趣味のことや患者さんへのメッセージも紹介しています。お年寄りをはじめ、子育て世代のファミリーなど、患者さんにとって通いやすい場所であってほしいですから。
院内の飾り付けをしているのは院長だと伺いました。こだわりなどを教えてください。

子ども連れの患者さんにも喜んでもらえるよう、明るい空間づくりをめざしています。受付に置いてある犬の置物も、実は私が飾り付けしているんです。7月は七夕の彦星さま、8月が麦わら帽子と虫かご、10月はハロウィンのカボチャといったように、季節ごとに着せ替えをしています。衣装などは、テーマに合わせて手作りすることも。「あれ、変わってる」「かわいい」と気づいてもらえるとうれしいですね。子どもの頃から特撮ヒーローが好きで、プラモデルや模型作りなどが趣味なので、細かい作業は苦になりません。お子さんたちにも、歯科医院を「身近な場所」「怖くない場所」と感じてほしいですね。
患者の病歴や内服薬なども確認しながら診療
大学卒業後はへき地医療も経験したと伺いました。院長先生の経歴を教えてください。

父の勧めもあって、大学は父の母校である「神奈川歯科大学」へ。卒業後は、鹿児島に帰ってきて、鹿児島大学病院で研修医として1年、それから大学院の口腔外科に入局し、臨床や研究などにも取り組んできました。その後、鹿児島大学の口腔外科つながりで、熊本の「人吉医療センター」へ。そこでは、熊本の山奥にある「五木村診療所」で診療をしていました。決められた曜日に診療所へ向かうのですが、やはりご高齢の患者さんが多かったですね。基礎疾患のある方もいらっしゃるので、医科の先生と連携しながら治療を進めていました。高齢の患者さんを診ていて感じたのが、「自分の歯がしっかり残っている人は元気」だということ。やはり、「自分の歯で噛んで食べられる」ということが長生きの秘訣なのだと思いました。
患者さんを診るときに、気をつけていることなどはありますか?
当院は高齢の患者さんも多いので、歯に関する悩みはもちろんですが、患者さんの病歴や服用している薬なども確認しながら、その人に合った治療を提案できるよう心がけています。基礎疾患のある場合には、かかりつけのお医者さんとも連携を取りながら治療を進めていきます。例えば、「糖尿病」や「高血圧」などの疾患がある患者さんに治療を行う際は、血圧や脈拍、心電図などを常に観察しなければならない場合もあり、全身管理が大切になります。「血糖値の管理が困難」「感染症のリスクが高い」といったときには、大学病院の口腔外科とも連携しながら治療を進めています。
治療の際に心がけていることを教えてください。

患者さんへのわかりやすい説明を心がけています。治療の前には、「この部分が虫歯になっていますよ」と、口の中の状態をしっかり説明し、治療法についても話し合いながら進めていきます。その際は、専門用語などは使わず、わかりやすい言葉で伝えることも大切。時には画像をお見せしながら、確認することもあります。何より、患者さんの希望に沿えることが一番だと考えています。治療に不安を持っていらっしゃる方も多いので、緊張を和らげることができるようスタッフ一同笑顔でお迎えしています。
定期的なメンテナンスで、いつまでも自分の歯を
歯周病の患者さんが増えているとのこと。どんなことに注意が必要ですか?
当院でも、歯周病の患者さんは増えています。鹿児島市では、40、50、60、70歳になる方に「いきいき受診券」を送付し、「歯周病検診」を行っているのですが、最近は若い方も増えているので、30代からは注意が必要です。歯周病は、歯と歯茎の間に繁殖する細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患です。「歯がグラグラする」「ブラッシングの時に血が出る」といった症状から歯周病を疑うケースも多いですね。働き盛りの世代は、気になってもついつい放置してしまう人も多いので、悪化させないためにも早めに治療に取り組むことが大切です。治療では、歯周病の原因であるプラーク(歯垢)や歯石の除去を図り、しっかりと汚れが落とせるよう日頃のブラッシングについてもアドバイスしています。お口の中の衛生状態を改善して、良い状態を保てるよう進めていきます。
入れ歯治療はお父さまの松一先生が担当、昔からの患者さんも多いそうですね。

診療は主に私が担当しているのですが、入れ歯治療を希望する患者さんの場合は父につないでいます。入れ歯の治療では、顎の形や歯茎の状態を見ながら進める「型採り」から、しっかりと噛むことができるか確認する「噛み合わせのチェック」、仮の歯を並べて調整する「試適」、そして最後の「仕上げ」まで何度も調整が必要になります。通常は、そのたびに技工所に出す必要があり、時間がかかります。しかし、父は技工の技術があるので、早い場合には1週間で仕上げることも可能です。長く通ってくださる患者さんも多く、「やっぱり松一先生の入れ歯でないと」というお声もいただくんですよ。診療室には、父専用のユニットがあり、改装後もこれだけは昔のままなんです。だいぶ年季が入っていますが、「仕事道具は、使い慣れたものが一番」という父のこだわりです。
これから力を入れていきたいことを教えてください。

今後は「予防歯科」にも力を入れていきたいと考えています。お子さんのフッ素塗布もその一つ。フッ素を塗ることで、虫歯になりにくくなります。また、生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすく、生え変わりの時期の予防の目的もあります。昔は「痛くなったら歯医者へ」という親御さんがほとんどでしたが、最近は小さい頃からしっかりケアできている方が多く、その意識の高さには驚いています。また、働き世代にも3ヵ月〜半年に一度のメンテナンスをお勧めしています。歯石取りのほか、磨き残しのチェックなどを定期的に行うことで、歯の異常にも気づきやすくなります。早期発見・早期治療で「健康な歯」を一緒に守っていきましょう。