木通 敏文 院長の独自取材記事
きづしデンタルクリニック
(鹿児島市/荒田八幡駅)
最終更新日:2025/10/09
荒田八幡駅近くの「きづしデンタルクリニック」は、祖父の代から40年以上続く地域密着型の歯科医院だ。木通敏文(きづし・としふみ)院長は、2023年のリニューアルを機に、白を基調とした明るい空間作りや充実したホームケア用品の配置など、患者が気軽に通える環境整備に力を注いできた。「歯科医院に来ることがストレスという方も多いです。だから、できるだけハードルを低くしてニコニコ笑えるような歯科医院をめざしてます」と、穏やかに語る木通院長。福岡歯科大学卒業後、麻酔科や県内の歯科医院での経験を積み、口臭の勉強会にも所属して専門性を高めながらも「町の歯医者さん」としてのオールマイティーな対応を大切にしている。親しみやすい鹿児島弁を交えた診療や、一人ひとりに寄り添う姿勢など、地域に根差した診療への想いを聞いた。
(取材日2025年9月4日)
40年の歴史を持つ歯科医院を明るくリニューアル
40年以上続く歯科医院を継承されたそうですね。

父から継承したのは10年ぐらい前になりますが、しばらくは父と2人でやっておりました。父が完全に引退したのが去年の3月で、それを機に院内も改装して明るい雰囲気にしたんです。父の頃は昭和のイメージの歯科医院でした。今回私がこだわったのは、かわいらしい物を置いたり、ホームケア用品を並べたりして、「へー、こんなのがあるんだ」というアイキャッチになるような工夫です。歯科に興味を持っていただけるきっかけになれば良いなと。個室だけでなくオープンな診療室も作り、閉鎖的でない雰囲気も大切にしています。近くに小学校もあるので、若い方やお子さまなども含め、幅広い年代から愛される歯科医院になれたらと思っています。
これまでどのような経験を積まれてきましたか?
福岡歯科大学を卒業後、麻酔科で研鑽を積みました。歯学部の麻酔科でしたが手術も担当していたので、全身麻酔は人よりも勉強してきたかなと思います。その後福岡の歯科医院で1年勤務し、一度父の下で働いた後、もう一度外で勉強したいと思い鹿児島中央駅前近くの尾立歯科医院で5年ほど勉強させていただきました。麻酔に特化して勉強している歯科医師は少ないので、痛みの軽減という面では患者さんのお役に立てているのではないでしょうか。最近は口臭に関する勉強会にも参加し、なかなか相談できるところが少ない口臭の悩みに対して、エビデンスに基づいた回答ができるよう勉強を続けています。
院内の雰囲気づくりで特に意識されていることを教えてください。

歯科医院に来ることがストレスだという方が多いと思うんですね。だからこそ、受診のハードルを低くして気軽に通える歯科医院をめざしています。受付横のホームケア用品も、とにかく種類を増やして興味を持ってもらえるようにしています。歯磨き関連グッズから歯科用のキシリトールグミまで、珍しい物も置いているんです。患者さんとお話しする際は敬語をあまり使わず、特にお年を召した方には鹿児島弁を交えながら、ちょっと笑わせるような雑談もしています。
口臭相談と小児歯科の現状
口臭に関する勉強会での学びをどのように生かしていますか?

以前から口臭の相談を受けることは結構あったのですが、経験に基づく回答はできても、科学的根拠に基づいた回答ができているか不安でした。勉強会できちんと学ぶことで、患者さんに相談された時も自信を持って対応できるようになりました。相談に来られるのは20代から40代の働く女性が多いですね。男性の場合はタバコや歯周病が原因のことが多いですが、女性は不定愁訴といって、特に原因がないのに口臭が気になるという方が多い傾向にあります。口臭については、気のせいと言ったら悪いのですが、本人が気にしすぎるあまり、周りの方は気にしていないぐらいの臭いでも、本人にとってはすごくストレスになって悩んでいるという方もいらっしゃると思います。先ずは「一人で悩む前に歯科医師に相談してみませんか?」と、伝えたいですね。
どのような診療方針で患者さんと向き合っていますか?
私は「町の歯医者さん」をめざしています。親知らずの相談で歯を抜くこともできますし、入れ歯を入れてと言われれば、どんな入れ歯でも入れます。患者さんが口内のことで悩んでいることや困っていることに対して、オールマイティーにやることが大事だと思っています。ただ、1日に何人も診ているので流れ作業にならないよう、一人ひとりと向き合うようにしています。数多くの患者さんの中の一人として診るのではなく、患者さんにとって「自分のかかりつけの歯医者さん」だと感じていただけるように頑張っています。本来歯茎の治療から始めるのが望ましい場合でも、「歯が痛い」という緊急性のある主訴があればそちらを優先することもあります。患者さんお一人お一人との会話を大事にし、画一的な治療をしないように心がけているんです。
小学校の校医もされていると伺いましたが、その中で感じることはありますか?

そうですね。現在、小学生の口腔内は二極化していると感じます。虫歯が全くなくてきっちり管理されている子と、虫歯がとても多い子。真ん中がほとんどいません。親御さんの口腔内への関心度が、お子さんの口腔に非常に左右されているのが現状です。あと、最近の食生活のせいか、噛む力が弱いお子さんが多いです。新型コロナウイルスが流行していた頃はマスクをしていたので口呼吸になり、お口を開けている子が多かったんですね。口で呼吸すると乾燥して歯茎が腫れてしまうんです。生活習慣が変わって子どもの口の悩みも変わってきています。早い段階で口腔内への関心を持っていただき、治療はもちろんですが、予防の意識も高めてもらいたいと思っています。
気軽に相談できる「地域の歯医者さん」へ
スタッフとの連携はどのようにされていますか?

当院は小規模で、私を含めて4人でやっています。普段から世間話をするような感じで「ああだね、こうだね」と、コミュニケーションを取っています。患者さんが帰った後のお昼休みには、お互いがしっかり覚えている間に情報を共有するようにしています。歯科衛生士さんには、カルテとは別に自分のメモ帳を持ってもらい、気がついたことを書いてもらって、後で私に情報として上げてもらうようにしています。小さなチームだからこそできる密な連携はクリニックの強みですね。また、医療DXということで、エックス線写真もタブレットで見られるようにしたり、型採りもスキャナーでできるようにしたりと、デジタル化も進めています。昔の歯医者としてイメージの強い現像液の臭いなどがなくなったことにも、変化を感じていただければと思います。
今後の展望についてお聞かせください。
息子が歯科医師になりたいと言ってくれているので、次の代へつなげられればいいなと思っています。私は3代目でして、実は私の場合は強制的に「お前もしなさいよ」といったふうに後を継いだのですが、息子の場合は「好きにしていいよ」と言っているのに自分から選んでくれているので、ありがたいなと思っています。近い目標としては、今親子で来てくださっている方がいるので、ぜひ息子の代にもつなげていきたいですね。患者さんも親子孫3世代というふうに診ていければと。これまでは父の代から来られていたお年を召した患者さん層がメインでしたが、若い方にもぜひ当院を知っていただきたいです。お子さま方など幅広い年代から愛される町の歯医者さんになれればと思っています。
読者の方へメッセージをお願いします。

患者さんは歯科医院に来るだけでもストレスだと思うので、当院に来た時はできるだけストレスを感じないような環境を提供できるようにと考えています。治療でなくても相談だけでもいいので来てほしいなと。かかりつけの歯科医院を持っている方はそこが一番ですが、もし探している方がいれば、できるだけ受診のハードルを低くしてニコニコ笑えるような雰囲気の歯科医院をめざしていますので、ぜひ一度いらしてください。当院では、ホームケアの方法のご提案に力を入れています。手磨き、機械磨き、水磨き、超音波磨きなどいろいろな歯磨きがあって、患者さんに合わせて提案しています。歯磨きは自宅でもできる一番基本的なケアなので、そこに興味を持っていただけたらと思っています。

