治療・ケア・機能訓練
通院と同等の診察が受けられる訪問歯科診療
山下歯科
(鹿児島市/高見橋駅)
最終更新日:2025/01/08


- 保険診療
食べることは栄養を取るだけでなく人生の楽しみの一つである。だからこそ、誰もが生涯好きな物を自分の口で食べ続けたいと願っていることだろう。そのためには、歯科医院で定期的に口腔のケアをすることが重要であるが、病気や高齢で歯科医院へ通院するのが難しく、口腔のケアが行き届かない人たちもいる。「山下歯科」の山下裕輔院長は、通院が困難な人たちが、自宅で歯科医院と同等の歯科診療やケアが受けられるようにと、大学では老年歯科を専門に学び、口腔機能低下症や摂食嚥下障害の予防のための訓練にも尽力する。外来診療と訪問歯科診療の両輪で、地域の患者のオーラルフレイルを予防し、口の中から飲み込みの不具合まで総合的にサポートする山下院長に、訪問歯科診療の依頼の方法から実際の診療の様子まで詳しく話を聞いた。
(取材日2024年10月2日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q訪問歯科診療は、どのような方が対象になりますか?
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A
今まで通院されていた患者さんが、高齢になられ歯科医院へ通院するのが難しくなり「通院はできないけれど、口の中の不具合が気になっているのでケアや治療をしてほしい」という相談を受けることが多くあります。また、医療的ケア児のお子さんで、通院が難しい方もいらっしゃいます。ですから、訪問歯科診療には年齢制限はなく、基本的には通院が困難な状態であれば受けることができます。現在当院では、8歳から102歳までの患者さんの訪問歯科診療を行っています。食べることは栄養を取るだけでなく生きる上での楽しみの一つだと思うので、皆さんが自分のお口でしっかり食事ができるようにサポートを行っています。
- Q訪問歯科診療で行える診療や費用、かかる時間を教えてください。
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A
訪問歯科診療では、口腔のケアの他、虫歯の治療、歯周病の治療、義歯の調整や作製など皆さんが歯科医院の外来で受ける診療とほぼ変わらない診療を受けることができます。費用は、ご自宅を訪問するということで交通費がかかりますが、診療においては、ケアの場合介護保険を、治療の場合は医療保険を使うことができるので、安心して相談してください。診療時間は患者さんの状態や様子を見ながら負担がないように進めますが、目安としてお口のケアで30分、治療が加わる場合は1時間くらいと考えてください。訪問頻度は患者さんの状態に合わせて、1週間に1、2回の方から状態が良い方であれば3ヵ月に1回の方もいらっしゃいます。
- Qこちらの歯科医院の訪問歯科診療の特徴を教えてください。
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A
当院では口腔機能低下症や摂食嚥下障害の予防にも注力しています。口の機能と聞いてもピンとこないかもしれませんが、口腔機能が低下し摂食嚥下障害になると自分の口で食べることが困難になります。当院では、口腔内の乾燥(ドライマウス)、舌・唇の動き、飲み込む力などの口腔機能低下症の7つの検査、水飲み検査など嚥下障害の4つのスクリーニング検査に加え、体組成計で全身の筋力もチェックします。それらを総合しサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)かどうかを判断し、筋力低下がある場合は舌を動かす運動や喉の筋肉を鍛える運動を行います。これらは継続して行うことが大切なので、家庭でも楽しみながら行えるように工夫しています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1訪問歯科診療を依頼する
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患者本人や家族から電話などで直接歯科医院に依頼できる。訪問歯科診療を行っている歯科医院に心当たりがなく、どこへ依頼して良いかわからない場合は、ケアマネジャーに相談し歯科医院を探してもらうことも可能。またかかりつけ医院に相談して、歯科医院と連絡を取ってもらう方法も。通院履歴がない患者でも依頼可能。訪問診療の対応範囲はクリニックから半径16キロメートル以内で介護保険・医療保険を使うことができる。
- 2自宅へ訪問する
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歯科医師・歯科衛生士らチームで訪問。タービン、バキューム、エックス線検査、型採りなどほとんどの機器がポータブル仕様になっていて、歯科医院で診療を受ける時と同じような診療が受けられる。初診時は、口の中の汚れや虫歯、歯周病、口内炎の有無、義歯の状態など口腔の全体をチェック。患者や家族からの要望や質問は、この時に相談すると良い。
- 3治療をスタート
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初診の際、患者の口腔の状態を確認した後、今後どのような治療やケアを希望するのかを患者や家族に確認。患者の状態によって訪問頻度は異なるが、同院の場合、1週間に2回から3ヵ月に1回までさまざま。患者側は特別な準備は必要ないが、普段使っている歯ブラシを用意しておくと良い。寝たきりの場合もベッド上で診療を受けることができる。
- 4治療計画の相談
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継続的に口腔のケアを希望した場合、歯茎の検査、エックス線検査、口腔のチェックが行われ、今後の訪問頻度などの説明を受ける。その際、かかりつけ医の確認があり、かかりつけ医院があれば、病状、治療方針、服用薬などを医師と共有するため、歯科医師がかかりつけ医に診療情報提供書を依頼。患者の状況説明は歯科衛生士から毎月文書でケアマネジャーに報告。医師・歯科医師・介護従事者との多職種連携を取りながら行われる。
- 5継続的な診察と家庭での口腔のケア
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口腔のケアは家庭でも行ったほうが良いが、口の中を触られるのが苦手な患者もいるため、歯科医師や歯科衛生士と相談しながら無理のない範囲で行うようにする。口腔機能低下症や摂食嚥下障害の兆候があれば、訓練を継続的に行うことで症状の進行予防に努めるようにする。日常会話・口数が減ってきている、以前は食べていた物が食べられない、口周りを気にする仕草を見せるなど普段の様子と違うと感じた場合は歯科医院に相談しよう。