竹内 尚士 院長の独自取材記事
竹内歯科
(鹿児島市/加治屋町駅)
最終更新日:2025/04/01

JR九州バスの郡山麓停留所から徒歩約5分。オレンジ色の屋根が特徴的な建物が「竹内歯科」だ。院内は天井が高く開放的な雰囲気で、パーティションで区切られた6台の診察台が並ぶ。日本歯周病学会歯周病専門医である竹内尚士院長は、父の代から続くこの歯科医院を2代目として継承し、自身の診療方針に基づいた治療を提供している。学生時代から剣道に励み、五段の腕前を持つ竹内院長に、専門とする歯周病治療や地域の歯科医院としての展望について話を聞いた。
(取材日2025年3月13日)
自分のめざす診療を提供するために家業を継承
院長に就任された経緯を教えてください。

大学時代から初期研修まで東京で過ごした後、鹿児島の大学院に進学し、歯周病の研究をしながら当院で非常勤として勤務していました。大学院修了後は常勤となり、前院長である父とともに患者さんの診察にあたっていました。10年ほど診療を続ける中で、父との診療方針の違いを感じることが増え、自分のやり方で治療を進めたいという思いが強まってきたのです。そこで、父に自分の気持ちを伝えて話し合い、院長を引き継ぐことになりました。現在は私が中心となって外来診療にあたっていますが、父も訪問診療を担当する常勤歯科医師として在籍しています。
診療方針や、力を入れている治療についてお聞かせください。
基本的な診療方針は父のやり方をベースにしつつ、私の専門である歯周病治療に力を入れています。当院では、以前から歯周病の患者さんに対して歯石を取るなどの基本的な処置は行っていましたが、治療の中心は抜歯や入れ歯、ブリッジなどの補綴治療でした。しかし、例えば歯周病が原因でぐらついている歯でも、歯周組織の再生を図ることで抜かずに残せる場合もあります。そういった治療を通じて、できる限り患者さんの歯を抜かず、今ある歯を最大限残したいというのが私のめざす診療の方向性です。また、患者さん自身にも歯周病や口腔ケアの大切さを理解し、意識を高めてもらいたいと考えています。最近では定期的なメンテナンスに通う患者さんが増え、お口の健康維持の重要性が少しずつ浸透してきたと感じています。
歯科医師をめざした理由や、歯周病を専門とされたきっかけを教えてください。

歯科医師である父の背中を見て育ったこともあり、子どもの頃から自然に、将来は歯科医師になりたいと考えていたような気がします。多くの患者さんを治療するのは大変そうだと思う一方で、「ありがとう」と声をかけられたり、感謝して帰られる患者さんを見て、地域医療に貢献するやりがいのある仕事だと子どもなりに感じていました。そうした経験が、歯科医師を志すきっかけになったのだと思います。歯周病を専門にしようと考えたのは、大学卒業後のことです。「今後は歯周病治療の重要性が高まる」という父からの助言もあり、専門的に研究してみようと考えました。もともとインプラント治療にも興味があったため、歯周病治療とインプラント治療の両方を学べる鹿児島の大学院への進学を決めました。
歯科衛生士と連携し、歯周病治療をチームで支える
歯周病治療では、どのようなことを行っているのでしょうか。

歯周病の原因はプラークです。口の中に残った食べかすの中で細菌が増殖してプラークになり、放っておくと歯を支えている骨を徐々に溶かし、最終的には歯がぐらついてしまう。これが歯周病です。当院ではまず、歯茎の炎症を抑えるために歯茎の見えている部分についている歯石や、その奥のさらに深いところにある歯石の除去をしていきます。その上で、骨の再生が期待できると判断した場合は、歯周ポケット内に抗生物質を直接投入する局所薬物配送療法(LDDS)や、歯周外科治療などを行います。私は大学院時代から歯周外科手術に多数関わり、再生治療の研究にも取り組んできました。その経験を生かし、専門的な歯周外科治療や歯周組織再生療法を提供できることが、当院の強みです。
歯科衛生士と連携したチーム医療による治療に取り組んでいるそうですね。
はい。歯科衛生士は、歯周病治療において欠かせない存在です。現在、当院には常勤・パート合わせて6人の歯科衛生士が在籍しており、チームとして連携しながら歯周病治療を支えてくれています。治療方針の決定や歯周外科治療は歯科医師が行いますが、歯茎に炎症が残っている状態では歯周組織再生療法を行うことができません。歯周外科治療を行うための前段階として、炎症を抑えるためのケアを担うのが歯科衛生士です。歯科衛生士の協力なしでは、スムーズに治療を進められないといっても過言ではないでしょう。歯科衛生士も、勉強を続ければ治療に関する専門的な知識を身につけることは可能です。そこで当院では、週に1度、歯科衛生士の知識を深めるための院内研修を実施し、チームとして協力しながら、より良い治療を提供できるよう努めています。
患者さんに接する際に意識されていることはありますか?

自分の家族のような気持ちで患者さんに接し、自分自身が受けたいと思う適切な治療を提供することを大切にしています。また、治療の前には丁寧な問診を心がけています。歯周病の治療や抜歯などの外科処置を行う際は、患者さんの既往歴や服用している薬について正しく把握することが重要だからです。例えば、特定の薬を服用している場合は外科処置に制限がかかることがありますし、ペースメーカーを入れている方の治療では特別な配慮が必要です。さらに、歯周病は全身の健康とも深く関わっているとされており、現在では医科と歯科の連携が当たり前になってきています。当院では、歯科医師だけでなく歯科衛生士にも問診の重要性を周知し、治療に取り組んでいます。
幅広い診療を提供しながら、地域の健康意識を高めたい
現在、クリニックには何人の歯科医師がいらっしゃるのでしょうか。

私を含め、常勤・非常勤合わせて6人の歯科医師が在籍しています。常勤は3人で、一般歯科を担当する私・訪問診療を担当する父・小児歯科を専門とする妹がそれぞれの分野を受け持っています。非常勤歯科医師3人のうち、2人は鹿児島大学病院から週に2日勤務し、根管治療や歯周病治療を担当。もう1人は矯正歯科が専門の先生です。専門分野を持つ歯科医師がそろっていることで、小さなお子さんから高齢の方まで、お一人お一人のライフサイクルに合った治療を提供できるのが当院の強みです。例えば、高齢で寝たきりになると自分で歯磨きするのが難しくなり、口腔内の汚れが原因で、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。そうした方々に対しては、訪問診療で口腔内のケアと口腔機能の訓練を行い、病気予防や健康維持のサポートをしています。
今後、地域の歯科医院としてめざすことや展望をお聞かせください。
今後も変わらず、患者さんに治療を提供することはもちろんですが、地域全体の健康意識を底上げしたいと考えています。行政や企業、医師会、歯科医師会とも連携し、検診制度の見直しなどによって、地域の方々が自分の健康を意識できる環境を整えていきたいですね。また、予防歯科の考え方は広まりつつありますが、まだ十分ではないため、子どものうちから予防の大切さを知ってもらえるよう働きかけていきたいと思います。個人的には、専門的な歯周病治療ができる歯科医師を増やしていきたいですね。歯科衛生士の中にも専門的な知識や技術を身につけたい人がいるので、そうした人のサポートをしながら、より多くの患者さんに適切な治療を提供できる体制を整えていきたいです。自院の発展だけでなく、地域の医療環境の向上や後進の教育にも貢献できるよう、今後も取り組んでいきたいと思います。
最後に、地域の方へのメッセージをお願いします。

お口の中の健康が損なわれると、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病などを引き起こす可能性があります。口腔内のトラブルは全身の健康と深く関わっていることを意識し、定期的に検診を受けていただきたいですね。定期的な検診は、歯や歯茎の健康を守るだけでなく、口腔がんや粘膜の異常の早期発見にもつながります。また、歯周病の予防には毎日の歯磨きが欠かせませんが、どんなに丁寧に磨いても100%きれいにすることは困難です。汚れが残っていると細菌層が悪玉菌に変化して歯周病が進行する可能性があります。悪玉菌を放置しないためにも、定期的な検診でお口の中をきれいにリセットし、健康な状態を維持することが大切です。痛くなる前に受診し、ご自身の健康を守っていただきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはワイヤー矯正/25万円~
インプラント治療/35万~