口腔機能低下の兆候を見逃さない
歯科で取り組む予防的アプローチ
三木歯科医院
(宇都宮市/鶴田駅)
最終更新日:2025/06/12


- 保険診療
年齢を重ねても好きな物を食べ、笑顔あふれる人生を送るためには、口腔の健康を維持・管理することが重要。そのためには、咀嚼機能を阻害する虫歯や歯周病の治療はもちろんのこと、口周りの筋肉や舌、唾液の分泌などの口腔機能が衰える「口腔機能低下症」の予防も大事な取り組みの一つ。「長生きの秘訣はお口からさまざまな栄養を摂取して、体の機能を維持することにあります」と話す「三木歯科医院」の三木学院長は、高齢者を中心とした口腔機能低下症の予防と口腔機能の管理に積極的に取り組んでいる。「口腔機能」とはどのような機能なのか、口腔機能低下症の症状や受診の目安、口腔機能を低下させないための予防と具体的な実践方法について、三木院長に詳しく聞いた。
(取材日2025年5月22日)
目次
咀嚼や発音など口腔機能の低下が気になり始めたら、早めに取り組みたい検査や予防のためのトレーニング
- Q「口腔機能」とは、どのような機能を指しますか?
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A
▲健康な生活を維持するために口腔機能の低下を予防することが大切
口腔機能と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「食べる」「話す」だと思います。「食べる」、「話す」ための機能は、歯と歯周組織、口周りの筋肉、唾液を産生する唾液腺などの機能が大きく影響しています。それらの機能が低下することで、舌がうまく動かせなかったり、お口の中に汚れがたまりやすくなったりして、食べ物を誤嚥しやすくなる、虫歯や歯周病が悪化するなどのトラブルを引き起こします。昔から歯科医師が対応している領域は、それらの一部であるうまく噛めない、虫歯や歯周病によって歯が失われるなどの変化を食い止めるための治療やアプローチですが、当院では、それ以外の口腔機能も低下させない予防的な取り組みにも注力しています。
- Q口腔機能が衰える原因は?
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A
▲患者の希望に寄り添って治療法を提案する
舌がうまく動かせなくなるのは、筋力の衰えが原因です。日常生活で、舌を意識して見ることはあまりないのでわかりにくいと思いますが、若い人の舌は比較的小さく引き締まっています。それが年齢を重ねると筋肉が弛緩して大きくなり、うまく動かせなくなります。それは、体のほかの部位の筋肉、例えば足や腕の筋力が低下するのと同じと思って良いです。また、唾液分泌が低下する原因は、加齢による唾液腺の萎縮です。若い時は100%出ていた唾液が、80%、70%と低下する単純な生理的萎縮のほかに、お薬の影響もあります。例えば、血圧の薬は種類によっては体内の水分バランスを変化させてしまうため、唾液の分泌量を減少させてしまいます。
- Q口腔機能の低下を放置するリスクと受診の目安を教えてください。
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A
▲患者の希望や不安について丁寧にカウンセリングを行っている
口腔機能が衰え、低下した状態をオーラルフレイルといいます。多くの場合、昔は食べられた物が硬く感じられて食べにくくなった、食事に時間がかかるようになったなど、わかりやすい変化から衰えに気づきます。このような変化に気がついたら受診をお勧めします。このオーラルフレイルの状態が悪化したものが口腔機能低下症といい、それが悪化すると食べることが不自由になってしまいます。十分な栄養を摂取することができなくなった結果、例えばカルシウム摂取量が減少すると骨密度が下がり、転んだ拍子に大腿骨を折って寝たきりになるなど、オーラルフレイルが全身のフレイルに発展するリスクもあります。
- Q口腔機能低下症に対する検査や予防に注力されているそうですね。
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A
▲口腔機能低下症の予防には適切な治療とトレーニングが重要
口腔機能低下症を診断するための検査は7項目あり、口腔内の衛生状態、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、舌圧低下、咀嚼機能低下、嚥下機能低下について検査やアンケートを行い、3項目以上該当していれば口腔機能低下症と診断されます。当院では、そうなる前の段階からアプローチすることを心がけています。舌の力や噛む力に低下の兆しがあれば、口腔機能低下症にまで発展させないためにも歯科医院でトレーニングやお手入れをすることが大事です。
- Q予防の具体的な実践方法について教えてください。
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A
▲口の機能を高めるためのトレーニング方法を優しく教えてくれる
噛む力は、かぶせ物や入れ歯などの補綴物の装着と、その後の調整などで回復が期待できます。また、食事の際には舌をいろいろと駆使するので、舌の力が弱まるとうまく物を食べることができなくなります。舌の力を鍛える方法の一つに、シリコン製の器具をお口に入れ、舌で上顎に押しつけるトレーニングがあります。筋力アップには強く早く5回3セットを1日3回、持久力アップにはゆっくり10回3セットを1日3回行います。また、お口を大きく動かして「あ・い・う・べ」と発音し、最後の「べ」で思いきり舌を出す「あいうべ体操」もお勧めです。唾液の分泌の改善には、耳の少し手前やえらの下辺りにある唾液腺をマッサージする方法も有用です。