青山 智美 理事長の独自取材記事
青山歯科医院
(ふじみ野市/上福岡駅)
最終更新日:2025/06/09

「医療法人社団泰青会青山歯科医院」は、1971年に開業した歴史ある歯科クリニックだ。2025年3月には患者の通院しやすい環境を整えるため、東武東上線・上福岡駅から徒歩1分の地に移転した。理事長を務める青山智美先生は、歯科口腔外科を専門とし、その豊富な診療経験から、乳児から高齢者まで幅広い世代の患者に対応している。子育てをしながら歯科の診療にあたる多忙な日々の中、さまざまな場で精力的に社会貢献を行ってきた努力家でもある。そんな青山理事長が歯科医院を受け継ぐ中で大切に育んできた思いについて、じっくりとインタビューした。
(取材日2025年5月15日)
時代に合わせて進化を続ける歯科医院
2025年3月に移転し、歯科医院をリニューアルされたそうですね。

私の父が開業してから、今回で4回目の移転になります。ここは最初に当院があった場所から1ブロックしか離れていないこともあり、原点に戻ってきた思いです。当院は時代のニーズに合わせて変化を続けてきましたが、一貫してあるのは「患者さんの利便性を考えたクリニックづくり」です。昭和の高度経済成長期には子育て世代の方が多かったので、いち早く診療中の託児サービスを導入。平成になって高齢化が進み、歯科に通院することが困難になった方に向けて訪問歯科診療を開始しました。そして、令和は「通いやすいかかりつけ医」が求められている時代になったので、駅の近くに移転したという経緯があります。当院のコンセプトを一言で表すと「ともに歩む歯科医院」ということになるでしょうか。
先生はお父さまの姿を見て歯科医師をめざされたのですか?
曾祖父、祖母、父が歯科医師という家系なので、私も後を継がなければという思いは自然にありましたね。というのも、父が開業した50年以上前は、かかりつけ医という言葉が一般的ではありませんでしたが、その頃から地域の方々が「青山先生の所に行けば何とかなるんじゃない?」と言われているのを聞いて育ってきましたから。それに、私の弟も整形外科の医師ですし、親族が医療系の仕事に就いている人ばかりの境遇だったからこそ、地域に貢献しなければならないという意識が強かったのかもしれません。私はかつて歯科口腔外科の研鑽を積むために大学病院に勤務していたのですが「いずれは地元に戻らないといけないな」という思いは常に頭の片隅にありました。
幅広い分野がある中で、どんなきっかけで歯科口腔外科へ?

歯科大学の6年生の時に、補綴のスペシャリストの先生から「一番遠回りで大変なのは歯科口腔外科。それを学んでから歯科治療を考えても遅くないよ」とアドバイスされたのがきっかけですね。私は大学時代の成績が全体的に良かったので、逆に得意分野というものがなかったのです。だからこそ、その言葉が衝撃的でした。忙しいのを承知の上で大学院の門をたたきましたが、当時の歯科口腔外科はまさに男性社会。私が紅一点という場面が多々ありましたし、女性が社会に出るのは本当に大変なことなのだと思ったこともありました。歯科の主訴は圧倒的に腫れや痛みに関する割合が高いので、歯科口腔外科は痛みを取り除くための技術のバリエーションが豊富という点は、今の私の強みになっていると考えています。
治療の始まりは、肯定するところから
歯科口腔外科の観点から、診療で意識していることを教えてください。

歯科口腔外科は歯科の領域でありながら、医科との距離が近いのも特徴的です。歯科口腔外科では麻酔の専門的な技術も必要ですし、全身に疾患がある患者さんを診るケースが非常に多いこともあり、全身管理が重要な課題となります。例えば糖尿病は歯科と医科の両方に関わってくる病気なので、患者さんが現在服用している薬をチェックしながら医科との連携を取るように意識しています。それに、診療の際は口の中だけではなく総合的に判断していくことは長年の習慣になっていますね。口の状態や体の動きには、その人のこれまでの生き方や生活スタイルが表れますから、診療台に来るまでの様子や、診療の合間に座っている姿勢についても気にかけるようにしています。
先生は子育ての経験がおありのようですが、診療ではどのように生かしていますか?
子どもは駄々をこねたり泣いてしまったり、大人が思うように動いてくれないものです。育児をする中で、広い心で受け止めることを心がけるようになりました。子どもは大人の真似をして学習しますし、われわれの想像以上に大人のことをよく見ています。お子さんが歯磨きを前向きな気持ちで取り組めるように、親御さんには「まずはご自身が楽しそうに歯磨きをしてください」とお伝えするようにしています。また、診療の際は親御さんに「よく頑張っていますね。できている自分を褒めてあげましょうよ」といった肯定的な言葉を使っています。そのことで親御さんの気持ちに余裕ができて、お子さんに優しく接することができるようになると考えているからです。
確かに、自分のやってきたことを褒められると大人でもうれしいですね。

お子さんの成長に大きく関わっているのは親御さんです。「お子さんの歯磨きが上手にできていませんね」と注意すると、親御さん自身が否定されたような気持ちになって傷ついてしまうこともあります。また、成人の患者さんで歯科に恐怖心を持っている方は、過去に頭ごなしに怒られて一方的に治療をされてしまった経験があるケースが少なくありません。患者さんが安心できるように、困り事を丁寧に聴いて「このように治療をしていきませんか?」などと伝えるようにしています。患者さんの背景を根掘り葉掘り聞きだすようなことはしませんが、自然と患者さんの方から話をしてくれるように、何げない会話の中から「このようなつらい経験があったのかな」と推理力を働かせています。
「ともに歩む歯科医院」として地域への貢献を
スタッフや通院している患者さんについても教えていただけますか?

父の代から勤務しているスタッフが多いので、当院は私が一方的に指示するトップダウンの組織ではないのです。歯のメンテナンスにはスタッフの存在が欠かせませんし、私に相談しそびれたことをスタッフに相談する患者さんもいらっしゃいます。このようにチーム全体で患者さんに気を配りながら情報を共有し合っています。「頑張り合いながら、ともに歩む」という思いはスタッフの中にも浸透していますよ。長年診療を続ける中で、20年以上通院している患者さんや4世代が当院のかかりつけというご家庭も多いです。当院では訪問歯科診療を行っていますし、小児歯科や地域の乳幼児歯科検診で赤ちゃんの歯も診ていますから、患者さんの年齢層は0歳の乳児から100歳を超える高齢者まで本当に幅広いです。
歯科医師という枠組みにとらわれず、さまざまな活動をしているそうですね。
そうですね。地域の歯科医師会の仕事では要保護児童や介護認定に関わるケース会議にも参加しているので、行政の方と接する機会も度々あります。また、女性医師・女性歯科医師が主体となったボランティア活動をする中で、産婦人科や乳腺外科など医科の友人が増えました。そこで得た知識や情報を還元して、妊娠中の患者さんにアドバイスをするようにしています。また、私は歯学部の大学院を修了した後にMBA(経営情報学修士)を取得しているのですが、その過程で異業種の方とともに勉強していました。歯科医師の世界の常識にはない新しい視点を学んだことは、さまざまな職業やバックグラウンドを持った患者さんが通院する歯科の診療で大いに生かされていると感じます。
最後に、今後の展望も含めて、読者へのメッセージをお願いいたします。

今は盛んに「かかりつけ医を持ちましょう」と言われる時代になってきました。かかりつけ医は、気兼ねなく相談できる存在でなくてはなりませんから、当院は「何回通院しても良いなと思える歯科医院」をめざしています。私だけでなくスタッフも患者さんと丁寧にコミュニケーションを取り、ともに悩みながら、患者さんのより良い未来のために最善を尽くしています。駅の近くに移転したことにより、クリニックの規模を以前より縮小せざるを得なくなってしまったのが非常に心苦しいのですが、それでも「ここに通院したい」と患者さんに言っていただけるクリニックにしていくことが目標です。何年も通院が途絶えていても、行ってみようと思った時に気軽に足を運べるような歯科医院になれたらうれしいですね。