秋田 洋季 院長の独自取材記事
秋田歯科
(南丹市/八木駅)
最終更新日:2021/11/15
大堰川や美山など、豊かな自然に恵まれた南丹市。嵯峨野線八木駅からすぐののどかな住宅街の一角にあるのが、80年にわたり地域に根差した診療を続ける「秋田歯科」だ。地域密着・バリアフリー・訪問診療・医療設備・スタッフ指導の5つを柱に、質の高さにこだわりながら高齢者の多い八木エリアの歯科医療を支えている。3代目院長を務める秋田洋季先生は、顎運動計測装置を導入して噛み合わせ治療に注力。「正常な噛み合わせによる健康づくり」を同院のポリシーに掲げ、予防を重視した診療に取り組んでいる。今回は、患者一人ひとりの生活背景や悩みに丁寧に寄り添う秋田院長に、診療に関する話をたっぷりと聞いた。
(取材日2021年8月10日)
研鑽を重ねてクオリティーの高い歯科医療を提供
初めに、歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。
私の家族は祖父も父も歯科医師でしたので、子どもの頃からずっと「自分も歯科医師になる」と思っていました。小さな頃から自宅とクリニックを行き来していて、技工室で祖父と一緒にプラモデルを作ったのも懐かしい思い出ですね。兄も歯科医師の道に進みましたし、私自身も自然な流れで志したという感じです。ここは私が生まれ育った場所で、中学校からは兵庫県にある私立の中高一貫校に進み、中学から6年間寮に入っていました。その後、大阪歯科大学に進学し、地元の京都から2時間かけて通学しておりました。
どのような経緯で院長に就任したのですか?
大学を卒業してから1年間は、東大阪市にある開業医のもとで、咬合・咀嚼といった機能について勉強させていただいていました。ちょうどその頃に、父が体調を崩してしまったため、そのまま当院でも患者さんを診ていくようになりました。とはいえ、他の先生たちのように勤務医としての十分な経験がないままクリニックを継いだので、最初はなかなか大変でした。父が診療をしていた頃は、たくさんの患者さんがいらしていたんですが、経験のない私が継いだところ、たちまち患者さんが離れていってしまったのです。このままではいけないと思い、歯科医師が集まる勉強会に症例写真を持って行き、先輩の先生方にアドバイスをいただきながら必死に対応する日々でした。患者さんのニーズに合った治療が提供できるよう、現在も定期的に勉強会などに参加しています。
歯科医師としてのターニングポイントはありましたか?
歯科医師になった最初の年に、東京の先生が主催する勉強会に参加したのですが、そこで目にした補綴治療が衝撃的だったんです。補綴装置なのに天然歯のような美しさで、本当にすごいなと感じました。ところがこちらに戻ってくると、当時は保険診療がメインのクリニックということもあり、審美的機能を重視したニーズは少なかったのです。父とも「審美的な機能は必要だが、需要が少ない」と話したのを覚えています。それでも、説明するための資料を作るなどして、患者さんへのプレゼンを続けたところ、少しずつ信頼と関心を得ることができ、審美的機能を希望される患者さんが増えてきました。実際に手応えを感じられるようになったのは、40代に入ってからですね。その経験がきっかけとなり、自分が理想と思う治療をやっていこうと思うようになりました。
一人ひとりの想いを大事に、口腔内の健康を支え続ける
患者層についてはいかがですか?
高齢の方が圧倒的に多く、全体の7〜8割といったところでしょうか。この地域は歯科医院も人口も少ないので、昔ながらの患者さんが継続して通ってくださっています。「口の中が不自由になっても、噛めるところが残っていれば大丈夫」と考える方も多いですが、いつまでもおいしいものを食べたいという想いは皆さんお持ちなので、この地域の方々のお口の中に対する意識を高めていく取り組みを継続することが大切だと考えています。治療は大変ですが、「治したい」という想いが強い患者さんには、こちらも全力を注いで向き合っていきたいと思っています。
院内の設備についても詳しくお聞かせいただけますか?
当院では質の高い歯科治療を提供するために、マイクロスコープや歯科用CT、レーザー機器といった設備を導入しています。マイクロスコープは精密な詰め物やかぶせ物を製作する上でとても大切で、治療においては細部まで確認しながら進められるので、体への負担を軽減しつつ再発防止をめざすことができます。歯科用CTに関しては、エックス線検査と違って3次元画像を構築でき、隠れている疾患や問題の発見に役立ちます。また、レーザー機器についても歯周治療・外科治療・カリエス治療と幅広く、治療内容に合わせて活用しています。こうした機器を使うことで、クオリティーの高い治療と、患者さんに満足していただけるような歯科医療の提供に努めています。
診療において大切にしていることは何ですか?
「目の前の患者さんにとって何が最善かを考えて治療を提供する」ということですね。例えば、歯を失ってしまった人の場合は、入れ歯かインプラント治療という選択肢が一般的ですが、私はそこに「治療しない」という選択肢も加えています。例えば、食感を大切に感じながら旬の物を好んで召し上がっているような方の場合、インプラントにすることで食感が感じづらくなり、「おいしくない」と感じてしまうこともあるようです。食感を楽しむためには天然歯のほうが良いのですが、その歯が決して強くないという場合もあります。その時は1ヵ月、2ヵ月、半年、1年……と少しずつ目標を立てて、できるだけ長く歯を維持していけるように見守っていきます。定期的に様子を見ていくことで、患者さんは健康を見守ってもらっているという安心感も得られるのではと思います。
年齢やライフステージに合わせて「噛めること」を重視
噛み合わせ治療に注力されていると伺いました。
噛み合わせが悪いと、体のさまざまな部分に問題が生じます。一般的な噛み合わせ治療では、顎関節のCT写真を撮って骨の形態などを調べ、顎関節のポジションを計測していくのですが、私は顎の動きを見ながら判断していく必要があると思っています。そこで当院では、顎運動計測装置というものを導入し、顎がどのように動いているかに注目した上で、正常なポイントを探る方法でアプローチしていきます。整った歯並びや噛み合わせはきれいな輪郭を形づくるのはもちろんのこと、歯周病をはじめとする口腔内のトラブルの予防にもつながりますし、しっかりと噛めることで脳が活性化され、老化を防ぐ効果も期待されているんですよ。
お忙しい毎日だと思いますが、休日はどのように過ごしていますか?
最近は山登りを楽しんでいて、この近くにある愛宕山にも登りました。勉強会のメンバーと一緒に六甲山にも登りましたし、昼から勉強会がある日は朝のうちに美山へ行き、子どもと一緒に川遊びを満喫することもあります。夏はロードバイクや釣りをしたり、冬はスキーをしたりと、とにかくアウトドアが好きですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
年齢を重ねると食べる物も変化していきます。だからこそ、「自分は噛めているから大丈夫」と判断してしまうのではなく、噛む機能をいかに長続きさせるかが大切です。年齢やライフステージの変化などによっても口腔内の機能は変わってくるため、仕事が忙しくて自分のことが後回しになってしまったり、病気などで一気に口腔内の状態が悪くなってしまったりする方もいます。そうした一人ひとりの変化に寄り添いながら、これからもお口の健康を支えていくお手伝いができればと思っています。
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。