塩田 康祥 院長の独自取材記事
塩田歯科医院
(仲多度郡琴平町/琴平駅)
最終更新日:2024/08/05

JR土讃線・琴平駅と琴平町役場のちょうど中央に位置するのは、豊かな緑とガラスに囲まれた外観が、まるで美術館のような印象を与える「塩田歯科医院」。親子4代にわたって診療を続けてきた、歴史ある歯科医院だ。前院長時代に治療から予防へと診療の軸を移し、予防管理型の歯科医療に適した環境をと、同町内で新築移転した。それからおよそ15年。現在は2022年に同院を継承した塩田康祥(しおた・やすよし)院長が、専門分野である歯周病の予防・治療のほか、子どもの歯並びや噛み合わせの矯正にも精力的に取り組んでいる。「好きなようにやっていい」と背中を押してくれた父の言葉を励みに、さらに次元の高い予防歯科医療を追求する塩田院長に、同院の歴史や診療内容などを聞いた。
(取材日2024年7月2日)
琴平町の歯科医療を長年支えてきた歯科医院
洗練された建物が目を引きますが、歯科医院の歴史はとても長いそうですね。

私で4代目になります。開業した曽祖父に会ったことはありませんが、祖父や父の働く姿を見て育ちましたので、自分も物心ついた時には歯科医師になるのだろうと思っていました。同じ町内のこの場所に移転したのは、今から15年ほど前です。当時院長だった父が、治療よりも予防を重視した診療体制へと移行する中で新築移転を決意し、今に至ります。ガラス張りの壁で囲まれた院内には明るい自然光が入り、周囲の植栽も彩りを添えています。建物正面から右手に治療エリア、左手に予防エリア、その中央にスタッフの作業スペースを配置することで、患者さまと動線を分けているところが特徴です。床は全面、床暖房つき。土足で入れるバリアフリー設計ですので、車いすの患者さまも来院しやすいと思います。
先生のご経歴を教えてください。
歯学部としては最も新しく設置された、岡山大学の歯学部に進学しました。いずれは琴平に戻ると決めていましたので、それまでに知見を広めようと大学院に進学し、専門分野は多くの人々が悩む歯周病に。大学院修了後は四国がんセンターで、がん患者さまのお口のお悩みやトラブルに対応していました。さらに歯周病治療に力を入れている歯科医院での勤務を経て、2022年に35歳で当院の院長に就任。同時に父は歯科医師の仕事から手を引き、「好きなようにやりなさい」とバトンを託されました。スムーズな継承を実現するため、二診体制にしないことは当初から伝えられていましたが、父の柔軟な考えと配慮には、今でも深く感謝しています。
勤務医時代の印象的なエピソードはありますか?

歯科医師になってすぐに担当した患者さまのことは、強く印象に残っています。虫歯の進行がかなり進んでおり、今ならすぐに抜歯を考える厳しい状態でしたが、まだ歯科医師としての経験が浅かった私はどうにか歯を残そうと、歯の根の処置だけを行ったのです。その後も何年かご縁がありましたが、結局、残した歯の状態は悪くなり、患者さまのほうから「先生、もう抜いていいですよ」と言われました。患者さまのお役に立てたかどうかはわかりませんが、担当でなくなる時には、その方から「ほのぼの、安らぎ、ありがとう」と書かれた筆立てをいただきました。治療内容には反省点が残ったものの、未熟者なりに患者さまと時間を取って向き合い、しっかりとお話を聞くことで、ある種の安心感を与えることができたのだろうと考えています。大勢の患者さまを相手に忙しく診療を続ける中でも、当時の自分を、初心を忘れないようにしたいと思っています。
歯周病治療は、患者と歯科医師の二人三脚
そもそも歯周病とは、どんな病気なのでしょうか?

歯周病は基本的には歯を支える骨が失われていく、つまりは骨の病気です。歯周病の進行度を測るためには、歯周ポケットの深さを測る検査を実施し、エックス線画像によって骨の状態を確認します。健康な歯茎と病的な歯茎は見た目にも差がありますから、それらの情報、データを総合して歯周病かどうかを判断し、歯周病であればどの程度進行しているのかを、患者さまにお伝えします。程度の差はありますが、日本ではほとんどの成人が歯周病に罹患しているといわれています。重症化するまではなかなか自覚ができませんので、歯を失うリスクを避けるためにも、定期的に歯科医院に通う習慣を持っていただきたいです。
歯周病の治療は難しいと聞きます。
私は大学院で歯周病について学びましたが、この病気の難しさは常々実感しています。患者さまのお口の中だけを診るのではなく、その方の持つ持病や生活習慣、好きな食べ物など、患者さまの背景にも目を向ける必要があるからです。例えば、香川県は糖尿病患者さまが非常に多い地域ですが、糖尿病は歯周病を悪化させ、歯周病もまた、糖尿病の治療に影響を及ぼすことが指摘されています。歯周病に罹患された患者さまは、ご自分の病気について理解をして、ご自身の生活を改善していただかなくてはなりません。そのためにはこちらの技量と熱意も必要ですし、お互いに根気のいる治療だと思います。
先生の診療のモットーを伺いたいです。

ご説明をしっかりと行うことでしょうか。時には患者さまの体力やご年齢を鑑みて現状を維持し、治療による負担を回避するほうが良い場合もあります。しかし、それを理解していただけるようにご説明しなければ、「症状を放置している」という誤解を与えかねません。抜歯後の治療法についても、インプラント、入れ歯、ブリッジのどれがいいのかとよくご質問を受けますが、そんな時は模型やパンフレットを使用して、患者さまが納得されるまでご説明します。機能しない歯や清掃できない歯などは残していても利益が少ないため、正直に抜いたほうが良いとお伝えしています。患者さまにとって何がメリットになるのかを、冷静に考えて選択肢を提示し、ご自分で選んでいただくことが大切だと思います。
子どものうちから歯並びや噛み合わせを整えて
患者さんの主訴を教えてください。

若い患者さまで気になるのは、「よくわからないけれど歯が痛い」というお悩みです。虫歯を疑って受診されるのですが、実際は日々の習慣になっている癖や、噛み合わせの不具合によって特定の歯に負担をかけ、痛みを感じられているケースが少なくありません。こうした方には、頬づえをつく、悪い姿勢でスマホを見続ける、歯を食いしばるといった癖に気をつけるようお伝えし、噛み合わせに問題がある場合は、根本的な解決策として矯正治療をご提案することもあります。当院では先進の医療機器を導入し、非金属製の白い詰め物やかぶせ物を院内で製作していることから、「銀歯を白くしたい」というご希望も多いです。保険治療が可能な場合もありますので、気になる方はご相談ください。
子どもの予防歯科にも力を入れているそうですね。
小学生以下のお子さまを対象とした、虫歯の予防クラブを開いています。最近では小学校低学年の段階からパノラマレントゲンを撮影し、過剰歯や先天性の欠損歯がないか、今後、永久歯への生え替わりがスムーズに進むかどうかをご説明しています。まだ永久歯が生える前だったとしても、早くから状況を知って対策を立てておくことは重要です。月に1度、矯正の先生が来られる日は予約の希望者さまが増えたため、今はお子さまのみを対象として、顎の正常な発達を促すこと、良好な噛み合わせをつくることに注力しています。噛みにくく、磨きにくい歯では虫歯や歯周病になるリスクが確実に上昇しますので、お子さまのうちから歯並びや噛み合わせを整えておくことが、予防歯科の始まりだと考えています。
今後の展望についてお聞かせください。

予防管理型の歯科医療を展開するようになってから、「メンテナンスをお願いしたい」という熱心な若い患者さまやお子さまが明らかに増えました。ですが、患者さまの予防意識はもっと高められると感じています。例えば3ヵ月ごとのメンテナンスで毎回同じ磨き残しがある方は、歯科医院に行くだけで満足されているかもしれません。そういう方に対しては、「おうちでのケアも大切ですよ」と、私たちが行動変容を促す必要があります。患者さまのご年齢によっても注意すべき点は変わりますので、小児矯正を含めて、次元の高い予防歯科医療を提供できるよう努めていきたいです。昨今の技術では、審美的にも機能的にも優れた詰め物やかぶせ物が作れるようになっていますが、まっさらな天然の歯には絶対にかないません。地域の皆さまの大切な歯を残すため、日々精進を続けながら、皆様とともに成長する歯科医院をめざしてまいります。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/38万円(※矯正相談料や装置調整などは別途必要)、ジルコニアインレー(1本)/3万3000円〜、ジルコニアクラウン(臼歯部・前歯部1本)/5万5000円〜、インプラント(臼歯)/33万円〜(※CT代は別途必要)