稲田英三郎院長の独自取材記事

稲田歯科医院

(都城市／都城駅)

最終更新日：2022/07/06

JR日豊本線都城駅より車で約5分、都城市中心部の住宅街に「稲田歯科医院」はある。老若男女幅広い年齢層の地域住民が通う、アットホームな歯科医院だ。父と兄2人が歯科医師という一家で当然のように歯科医師になったため、「この職業に特段の思い入れもなく60歳で定年退職する予定だった」と、冗談半分で語る稲田英三郎院長。1人の先輩歯科医師との出会いからこの仕事の魅力に気づき、今では確固たるポリシーを持って日々診療に臨む。予防を重視し、「医療機関を受診するようなかしこまった感じではなく、ヘアサロンやネイルサロンのように気軽に通ってもらうのが理想」と言う院長に、開院までの経緯や特徴、予防歯科の展望などを話してもらった。

（取材日2022年3月30日）

手仕事で患者の悩みを解消する仕事に面白みを感じて
患者一人ひとりを深く診て、適切な予防・治療を進める
予防のためだけに通院する歯科医院をめざして

手仕事で患者の悩みを解消する仕事に面白みを感じて

歯科医師一家とのことですが、こちらはお父さまから引き継がれたのでしょうか？

うちは父、兄2人も歯科医師で、「他にすることはないの？」といった一族です（笑）。実家は兄が継ぎました。この歯科医院は私が1988年に開業しました。すぐ前の道路先に橋が貫通する予定があり、人通りが多くなることを見越してこの場所に決めたんです。結局その話がなくなり当初の想定よりは人通りが少なく閑静な場所になっています。私が患者さん一人ひとりをじっくり診るにはちょうどいい具合で、結果的に良かったと思っています。この辺りも歯科医院が増えてきていますが、開業当初から通い続けてくださる患者さんも少なくなく、非常にありがたく感じています。

歯科医師になったのはやはりお父さまの影響ですか？

幼少の頃から身近な職業だったので、ごく自然に、ですね。正直なところ絶対になりたいという強い想いがあったわけではなく、歯科医師になったばかりの頃は60歳で退職し、作家とか料理人になりたいなと思ってたんですよ。でも、丸茂義二先生という人間的に尊敬できる素晴らしい先生に出会って、歯科医師の仕事を面白いと思うようになったんです。丸茂義二先生は東洋医学も治療に取り入れて多角的な治療を展開されています。大学病院で大勢の患者さんを診ておられるにもかかわらず、一人ひとりを丁寧にさまざまな角度から深く診るところに感銘を受けたんです。東京におられる丸茂義二先生のセミナーに何度も参加しているうちに感銘が深まり、ずっと歯科医師を続けようと思うようになりました。

先生にとって、歯科医師の仕事の面白さはどういったところにあるのでしょうか？

例えば内科の先生って、患者さんの診察をしてお薬を処方して診療が完了するイメージかと思います。その点、歯科医師は義歯や詰め物、かぶせ物など、実体のある「物」を入れて治療する。そういったところに面白さを感じるんです。自分で手を動かして、患者さんの痛みを何とかしてあげる。患者さんの症状を聞いて、入れ歯だったらこういった理由からここが痛いのかと考え、できるだけ患者さんの負担のない方向で治療の回数を抑えて調整していくというか。こうだと予測して行った治療で、患者さんに「ほぼ痛みがない」と言ってもらえたとしたら、非常に達成感を覚えます。

こちらの治療の特徴は？患者層やよくある主訴も教えてください。

特に何かに特化しているわけではなく、ごく一般的な歯科医院です。開業当初から30年通い続けてくださる中高年層の患者さんも多くおられます。お互い気心が知れているので、「小さい頃ここでごそごそしていた息子さんはどうしてる？」「歯科医師になっています」なんて、患者さんとのたわいもない会話を日々楽しんでいます。お子さんも多く、小児歯科にも対応しています。来られる患者さんの年齢層が広く、総義歯治療もあるし小さなお子さんの乳歯の治療もあります。また、当院の近くに国立病院機構都城医療センターがあるのですが、必要に応じて紹介もするようにしています。そこに親知らずの抜歯の上手な先生がおられるため、こちらではしなくなりました。何かあった場合外科も内科の先生もおられるし、患者さんの安全を考えると病院で抜歯するべきだと私は思っています。

患者一人ひとりを深く診て、適切な予防・治療を進める

特に得意な分野についてお聞かせください。

丸茂義二先生のところで学んだ「総義歯」です。もともと総義歯の治療が苦手だったので、先生のところで長期間学んできました。総義歯では痛いところを削るのが一般的で、削るとその部位の痛みは治まることが期待できるものの、別の部位が痛くなったりします。丸茂義二先生の治療はそういったものとは異なります。患者さん一人ひとりにフィットする義歯を歯科技工士に発注し、それを私のほうで調整していくという患者さんごとのフルオーダーメイドになります。

診療に際して気をつけておられることはありますか？

患者さん一人ひとりを深く診て、患者さんに合わせていくことです。「合わせる」のは、骨格などお口の状態にしっかり合わせるという技術的な面だけでなく、お人柄もです。といっても、大したことをしているわけではありません。怒りっぽいとか穏やかだとか、不安が強い、心配性など患者さんもいろいろおられますよね。「病は気から」と言いますが、心の状態が症状に影響しやすいことは日々の診療でも実感しています。だから患者さんのお話を聞いて、お人柄を見て、大丈夫ですよと伝える。簡単なことですが、そういったことが大切だと思っています。

予防に注力されているとのことですが、患者さんには予防の重要性をどのように啓発されているのでしょうか？

虫歯になって途中歯が痛くなって、最後は歯がなくなってしまうって大変なことですよね。正しく歯磨きをすれば大丈夫なのに、とそのままシンプルに伝えます。また唾液検査で「菌」の特定をすることも、適切な予防を考える上で有用なので、お勧めしています。唾液には面白い性質があって、口腔内に細菌がたくさんいる場合、食事をすると細菌によりお口の中が酸性になるんです。酸性の環境下では歯が溶けていく。また、唾液は口腔内を中性にする力もあり、しっかり噛んでいるときに出てくる刺激唾液がまさにその力を持ちます。口腔内環境に大きく影響する唾液の状態を知るのに、唾液検査が必要なんです。私の理想は、治療をしない歯科医院です。予防で全部抑えていきたい。予防の重要性を理解される方も増えて、現在では予防のために通院される方も複数おられます。

予防のためだけに通院する歯科医院をめざして

できるだけ削らない治療をされているそうですね。

そうですね。治療をする際はできるだけ削りたくなく、実際そうしているのですが、それでも削る必要がある場合もあります。繰り返しになりますが、そのため、理想としては治療をしたくない。キュアではなくケアだけをしたいんです。全患者さんが予防だけになれば、患者さんも私たちスタッフもお互い楽ですよ。患者さんにとっても歯科医院にとってもそれが一番いいんです。散髪屋さんに通うような感じで、「そろそろお口をきれいにしたいから」と、うちに来てほしい。それには子どものときから歯科医院への通院に慣らせていく必要があるんです。虫歯じゃないけどクリーニングのために定期的に通院することを習慣化し、気楽に、当たり前に通える場所にしていきたいと思っています。今、小学校の校医をしているんですが、歯のきれいな子どもとひどい状態の子どもとが二極化しています。保護者の方々の意識の違いもあるとも感じています。

日々お忙しそうですが、ご自身の健康のためにされていることはありますか？

歯の健康のために、特にしていることはありません。体の健康のためには、なわとびとラジオ体操をしています。ラジオ体操は、私と同年代のタレントが習慣にしていると聞いて始めました。目に見える効果はありませんが、少なくとも太ってはきていないので、それなりに良い影響があるのかなと思っています。

貴院の今後の展望を教えてください。

これまでもそうですが、やはり、予防を浸透させていきたいですね。患者さんの予防意識を高めるため、唾液検査も徹底していきたいと思っています。予防処置なので自費診療にはなるのですが、当院では「1ヵ月集中トリートメントプログラム」というものも提案しているんです。毎日のホームケアと週1回の当院でのPMTCで、白く美しい歯をめざすためのプログラムです。虫歯や歯周病の予防としても期待できます。今後、こちらのプログラムも患者さんに積極的にご案内したいなと思っています。