尾田 悠 院長の独自取材記事
尾田内科胃腸科
(姶良市/重富駅)
最終更新日:2025/04/09

重富駅より車で約5分の住宅街にある「尾田内科胃腸科」。同院は1992年に先代の理事長が開業した有床のクリニックで、2022年4月よりその息子である尾田悠先生が引き継ぎ、院長を務めている。外来では内科と消化器内科の他に、悠院長の妻である尾田佑美先生が腎臓内科を、母である尾田恵子先生が人工透析内科を担当するなど、幅広い診療を展開している。地域医療の課題に対し「父が築いてきた道を守っていくことが、地域の患者のためになる」と力強く語る悠院長に、同院の特徴や強み、患者への思いを聞いた。
(取材日2024年2月14日)
父の遺志を継ぎ、地域の患者の期待に応えたい
地域の様子やクリニックについて教えてください。

私が小学1年生の時にこの地に当院が建ったのですが、昔は見渡す限り田んぼが広がる農村でした。その後、鹿児島市のベッドタウンとして住宅が建てられ、それに伴い医療機関も増えてきました。当院の患者さんは65歳以上の高齢の方がほとんどで、その他には働き世代の方が健康診断で来られたり、近隣の工場で働いている方が胃の不調で来られたりもします。現在は、私・妻・母を合わせて医師が3人、スタッフが総勢40人の体制で日々診療にあたっています。また、患者さんが安心してご自宅での生活が続けられるように専門スタッフによるデイケアも実施しています。
先生のご経歴を教えてください。
幼少期は、両親が当院を切り盛りしている姿を見ながら育ってきました。2人ともとても楽しそうに仕事をしていたため、私も自然と医師をめざしたといえます。鹿児島大学医学部を卒業後は、2009年に鹿児島市医師会病院に入職し、消化器内科の領域で研鑽を重ね、主に内視鏡検査の経験を豊富に積むことができました。並行して父の勧めにより鹿児島大学大学院に進み、医歯学総合研究科の血管代謝病態解析学講座にて、主にどのような人に血栓や動脈硬化が起こりやすいのか、という研究テーマで学びを深めました。一方で、父が病気を患ったことで、次第に当院の外来診療をサポートするようになりました。大学院で博士号を取得した後、本格的に当院に従事することになり、2022年4月より院長を、2024年4月より亡き父に代わり理事長を務めております。
医院をどのようにしていきたいですか。

父が一生懸命に地域のニーズを捉えた病院づくりをしてきたことで、当院をかかりつけ医として頼りにしてくださる方も多く、深い信頼関係を築いてこられたと思っています。そういった方々のご期待には、今後もしっかりとお応えしていきたいと身を引き締めています。また、当院で働くスタッフは長きにわたり献身的に診療を支えてくれています。一方で、現在鹿児島県内は深刻な人手不足にあります。地域の方々に変わらずに信頼をしていただき、なおかつスタッフにとってやりがいのある働きやすい職場であるためには、変えなくてはならないところも多々出てくると思っています。そこに対しては、引き継いだ私がしっかりと向き合い努力していく所存です。
有床の医院として患者の不測の事態にも対応する
有床の医院としての役割をどうお考えですか。

繰り返しますが、この姶良市はそもそも医師が少なく、この地で診療している先生方のほとんどは鹿児島市内から通われています。大きな総合病院でも夜の当直医が1人しかいないなど、夜間は無医村に近い現状にあります。また、病院の事情により早期退院を勧められたり入院を断られたりする方や、家族に認知症の方がいて入院ができない方など、行き場のない患者さんもいらっしゃいます。そんな状況を鑑み、当院では有床の医院として入院医療を提供することにこだわってきました。また、夜間や休日など診療時間外にも、できる限りお問い合わせの対応を行ってきました。一方で、特に2000年以降は診療報酬や人材確保の面などから、どこの有床診療所でも経営が非常に厳しいという現実があります。しかしながら父の信念に従い、入院ができずにお困りの方を受け入れるために、今後も小回りが利く体制をできる限り維持していきたいと考えています。
こちらの内視鏡検査の特徴を教えてください。
例えば、胃が今痛いのに検査日は2週間後、というのでは患者さんもたいへんお困りでしょう。当院では、日によって待ち時間もありますが毎日予約なしに胃の内視鏡検査を受けていただけます。痛みが取れたからとご自身の判断で精密な検査を受けず、小さな病変を放置してしまう方も多いように思えます。また、在職中は定期検診を受けていた会社員の方はリタイア後に検査を受けなくなり、病状が進んでしまう傾向も。過去にピロリ菌の除菌治療を受けた方でも、胃がんのリスクは依然として続くため、注意してほしいです。一方で大腸の内視鏡検査にも力を入れています。大腸がんは、がんの中でも罹患者数が多いのですが、微小な病変などは発見が難しいこともあります。当院ではAIを活用した先進の大腸内視鏡システムを導入し、精密な診断を心がけています。何より人為的操作により苦痛が生じないよう、とにかく丁寧に処置をするよう努めています。
生活習慣病の治療も多いと伺っています。

特定健康診査などで生活習慣病を指摘された方に対し、重症化を予防するための診療を行うのも当院の重要な役割だと捉えています。ちまたでは厳しい目標を課す治療法もあるものの、私としては、基本的には好きな食事をおいしく食べて過ごしていただきたいと思っています。ですので多少おいしいものを食べた分、他で調整したりきちんと運動したりすることでバランスを取るようなアドバイスをすることが多いですね。しかし、重症化する可能性が非常に高かったり、治療に前向きに取り組めなかったりする場合は話が変わってきます。その方の症状に応じて、こちらも強弱をつけて助言するよう心がけています。いずれにしても、地域の皆さんが少しでも健やかな老後を送っていただけるよう、サポートしていきたいと思っています。
専門家による、慢性腎臓病や透析の治療を提供
生活習慣病は腎臓病との関連が深いそうですね。

高血圧や糖尿病、脂質異常症などは、慢性腎臓病の発症リスクを高めることがわかっています。この姶良地域では、人工透析患者数の減少をめざして、かかりつけ医と腎臓の専門家が連携して診療する「鹿児島市慢性腎臓病(CKD)予防ネットワーク」が構築されています。当院は母が日本透析医学会透析専門医、妻が透析専門医と日本腎臓学会腎臓専門医であることから、他のクリニックから腎臓病に進行しそうな方の紹介を受け対応しています。姶良市の中でも腎臓内科を標榜しているクリニックは少ないため、腎臓関係でご不安がある方はご相談いただけますと幸いです。今後も他の医療機関と連携をしながら慢性腎臓病の重症化予防に貢献していきたいと考えています。一方で、当院の透析施設では小規模ながら夜間透析を行うなど、患者さんのニーズに合わせてきめ細かに対応するよう努めています。
診療で心がけていることは何でしょう。
治療に同意していただくために、きちんと時間を割いて説明を行っています。なぜこの検査や治療をするのか、なぜこの薬を飲むのか、あるいは治療の予後など、できるだけ丁寧に説明してご納得していただけるよう努めています。また、当院をかかりつけ医にしている患者さんが、緊急で診療・入院が必要になった際には可能な限り対応したいと思っています。一方で、ご要望に応えたいあまりに言われるがままに薬の処方や治療を行うのでは、結局は患者さんのためにならないとも考えています。その意味では、患者さんとは対等な意識で仕事をさせていただきたいと思っています。いずれにしても、信頼してくださっている患者さんに不安を与えず、何かあったときにはここに行きたい、ずっと通いたいと思っていただけることが私たちの願いです。
地域の方へメッセージをお願いします。

地域に密着しながら患者さんが困った時にすぐに対応できる医院を続けることが、私にとって大きな目標です。しかしながら、お伝えしたように未曽有の人手不足など、地域医療は楽観視ができない状況です。そんな中でも当院が築いてきたことを決して無駄にせず、父が志した医療をしっかり引き継いでいきたいと心より願っています。また、一度診た患者さんとは末永くお付き合いできる医院でありたいため、将来的にはリハビリテーションも担っていけたらと考えています。今後も地域の皆さんのお役に立てる医院をめざして、医師・スタッフ一同全力を尽くしたいと思います。お困りのことがあればぜひご相談ください。