徳重 健一 院長の独自取材記事
徳重クリニック
(姶良市/加治木駅)
最終更新日:2024/10/29

姶良市加治木町で約60年前に開業した「徳重クリニック」。以前は耳鼻咽喉科を掲げていたが、1995年に先代の父から継承した徳重健一院長が内科として新たにスタート。徳重院長は鹿児島大学病院で胃腸疾患の診療に携わってきた内科の専門家。ただ病気を治すだけでなく、患者の生活背景やメンタルヘルスも考慮した治療を大切にしているという。訪問診療にも力を注ぎ、地域の健康を支える存在となった徳重院長は、体だけでなく心の悩みも相談できる「医療の相談窓口でありたい」と語る。クリニックの特徴や診療への思いをたっぷりと聞かせてもらった。
(取材日2024年9月25日)
病気の原因にもなり得るメンタルの問題にも向き合う
開業は1960年代。歴史の長いクリニックですね。

父が耳鼻咽喉科として1960年代に開業しました。私はそんな父の姿を見て自然と医師の道を志すようになり、昭和大学医学部を卒業後、鹿児島大学病院第二内科の医局に在籍していました。第二内科は現在、消化器疾患・生活習慣病学となっています。私は胃腸疾患をメインに診療を行っており、その中でも生活背景を考えながら行う治療が医療に役立つのではないかと考え、力を注いできました。当時は大学病院に勤め続けることを考えていましたが、父から声をかけてもらったことを機に継承し、1995年から内科としてスタート。現在、患者さんの年齢層は先代から長く通ってくださっている80代以降の方々のほか、40代から50代の方が最も多くなりました。感染症では小学生から高校生まで学生さんも多くいらしていますよ。
こちらで行われている診療内容を教えてください。
内科に幅広く対応しておりますが、私の専門である胃腸の疾患については特に詳しく診させていただくことが可能です。エックス線、心電図、超音波検査を行い、必要に応じて内視鏡検査ができる病院をご紹介します。異常が発見された場合や重篤な状態の場合は、姶良市の青雲会病院や鹿児島市の鹿児島医療センターで詳しく診てもらうよう手配する体制を整えており、その後はこちらで定期的にフォローしていきます。がんが見つかった場合は鹿児島県内の病院のほか福岡県の九州がんセンターをご紹介することもあります。
ストレス性胃炎を抱える方も多く来院されるとか。

そうですね。ストレス性胃炎は睡眠不足などの生活習慣や、仕事や家族、人間関係のストレス、疲労などが原因で起こる胃炎です。これを抱える方は極端にいえばうつ病に近い状態にある人や心配性な人など、生まれ育った環境で培った性格も大きく関係しているように感じます。病気を引き起こす原因はメンタル的な部分が大きいことから、診療時や処方時には心療内科の領域からアプローチすることが必要だと考えおり、以前市内の大勝病院で一時的に精神科の知識を現場で学びました。全員がメンタルを原因としているわけではないので、血液検査を行い基礎疾患がないか、また甲状腺機能低下によるものではないかなどを確認し、異常がなければ生活環境、精神面を鑑みていくようにしています。
訪問診療にも取り組み、地域の医療ニーズに応える
心療内科の視点からも診てくださるのですね。

心療内科専門のクリニックを受診することに対してハードルを高く感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。現在、当院ではお子さまからお年寄りまでさまざまな年代の方のご相談にも乗っています。なので、私と話をするくらいの感覚でご相談いただければと思っていますし、その上で「やっぱり心療内科で診てもらいたい」と思えばご紹介もします。患者さんの最初の「相談窓口」として気軽に来ていただける場所でありたいですね。
外来診療を行いながら、訪問診療にも取り組まれています。
お昼休みの時間や夕方以降に、周辺にお住まいの患者さんのご自宅や介護施設に伺っています。その際は服薬や食事面、排せつなどの状況を確認し、生活指導も含めてご自宅で暮らし続けられるようサポートします。最期は病院でなく慣れ親しんだ場所で迎えたいとご希望される方には、在宅で看取れるよう終末期医療にも対応しています。在宅医療は患者さんの家族の協力が欠かせませんので、皆さんと信頼関係を築くことが大切です。そして丁寧な説明を行い、納得してもらった上で治療を行える状況をつくることも、訪問診療を行う医師としての重要な仕事の一つだと考えています。訪問診療をお考えの際は、患者さんやご家族から直接の相談はもちろん、病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャーさんなどからご連絡いただければと思います。治療計画やスケジュールをご提案しますので、一緒にやり方を決めていきましょう。
患者さんと接する際は、どのようなことを大切にされていますか?

まず診察室に入ってくる時の歩行の仕方、顔色、顔つきから患者さんの様子を見ています。そして、患者さんの話をよく聞くことです。何か心のお悩みがあるようであれば、お仕事や夫婦関係または、家庭や学校でのお子さまに関する心配事など、どこに原因があるのか、やんわりと聞き出すようにしています。極端な投薬はせず少ないお薬から治療を始めたり、生活へのアドバイスをしたりと、それぞれの患者さんに合った治療法を探しながら快方に向かうよう努めています。
ハートトゥハートで患者に寄り添った診療を
診療のモットーについて教えてください。

診療の際、患者さんだけでなく、ご家族と一緒にいらしてもらうことが理想的だと考えています。ご家族も病態を理解し、「みんなで一緒に治していこう」という気持ちを持っていただくことが、病気を治す一番の早道だと考えています。医師として患者さんが病気になった経緯を知ることも大切ですが、ご家族が一緒に来てくださることで患者さん本人だけでは知り得なかった生活背景などの情報が把握できるので、より的確なアドバイスにつながると考えているのです。ただお薬で病気を治すのではなく、生活習慣を少しずつ変えていくことで、元の健康な状態に戻していくことを重視しています。
今後のご展望について伺います。
時間をつくり、訪問診療にもっと深く携わっていきたいと考えています。また、内科だけでなく整形外科の領域など、さまざまな疾患を抱える方が大勢いますので、可能な範囲で患者さんの医療のニーズに応えていきたいです。しかし多くのことに手を出しすぎて、自分の本分を見失うと医療事故につながってしまいます。一つ一つの診療を確実に行うことを私の変わらぬポリシーとして、これからも患者さんと誠実に向き合っていきたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

健康に関するお悩みはもちろん、心配事があるけれど「心療内科は敷居が高いな」と思われたときは、ぜひ気軽にご相談ください。私が大切にしているのは、「Heart to Heart(ハートトゥハート)」という気持ちです。心の中を包み隠さずにお話ししていただくことによって、患者さんとの信頼関係を築くところから治療を始めていきます。皆さんに寄り添いながら、一緒に心身の健康を守っていきたいと思います。