井料 宰 院長の独自取材記事
井料クリニック
(霧島市/国分駅)
最終更新日:2025/02/13

霧島市国府にある「井料クリニック」は、鹿児島のシンボル・桜島と錦江湾を望む自然豊かな場所にある。同院を率いる井料宰院長は、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医であり、大学病院などで研鑽を積んだエキスパート。1992年に脳神経外科として同院を開業し、33年以上にわたって近隣住民の健康を守ってきた。脳卒中や脳腫瘍、生活習慣病などの診療や、開業初期からMRI検査を実施。認知症治療にも精力的に取り組み、介護施設も運営することで医療と介護の両面で地域を支えている。また、妻の井料香代子副院長は皮膚科・美容皮膚科の診療を行い、漢方薬を併用するなど幅広い対応を行っている。親しみやすく温厚な井料院長の人柄も、長く信頼される理由だろう。そんな魅力あふれるクリニックの特徴について、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2024年1月8日)
開業当初は脳神経外科を浸透させる啓発活動も
まず、医師を志し脳神経外科の道に進まれた経緯を教えてください。

私はもともと建築家になるのが夢で、東京藝術大学の美術学部建築科をめざしていましたが、その壁は高く受験に失敗。そんな時に父から「医者をめざしてはどうか」と助言をもらったことが、この道に進むきっかけとなりました。実家は焼酎の造り酒屋をしており医療の仕事には無縁だったのですが、「浪人で苦労をかけるし、やってみよう」と親の言うことを聞いた感じですね(笑)。何とか1年で医学部に合格できました。当時は脳神経外科の医師が非常に少なかったので、将来必要とされるだろうと考えて大学病院の脳神経外科に入職。医師となって7年目には博士号と日本脳神経外科学会脳神経外科専門医の資格を取得しました。
開業されるまではどのようなご経歴を歩まれてきましたか?
大学病院に所属しながら半年から1年のスパンで関連病院に勤務し、開業前は宮崎県立日南病院で2年半働いていました。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といった脳卒中や脳腫瘍、事故による外傷の治療や手術に携わり、髄膜炎や脳炎、パーキンソン病、てんかんの患者さんなども診させていただいていました。日南病院で勤務していた頃に長男が生まれたことで、自分の働き方について考えるようになったんです。激務をこなす中で体を壊してしまえば、元も子もありませんので、家族のためにも開業を決意しました。ちょうどその頃に「ある程度のことはできるようになった」という自信が得られたことも、自らの背中を押す一因となりました。
この場所を選ばれたのはなぜですか?

当時この辺りには、私が知る限り脳神経外科の医師がいなかったのです。近隣病院の外科が脳神経外科も診ていたようですが、専門の医師がいないという状況だったため、この場所を選びました。30年以上前は今以上に、脳神経外科という診療科になじみがなかったので、精神科にまつわるご相談もたくさんありましたね。開業から数年は市内のあちこちで小教室を開き、「脳神経外科はどのような診療科か」ということを知ってもらおうと取り組んでいました。
どういった患者さんがいらしていますか?
脳卒中の方が大部分を占める他、くも膜下出血になる前段階の動脈瘤の治療の方も多くいらっしゃいます。それ以外は、脳腫瘍、てんかん、パーキンソン病、生活習慣病、外傷など。患者さんの層はご高齢の方が大半で、若い年代の方だと片頭痛のご相談にいらっしゃることも多いです。昨年は夏の猛暑、冬の寒さから、めまいのご相談が非常に多かった印象です。脳神経外科は、怖いイメージや受診のハードルが高く感じられることも多いため、他院の内科で脳神経外科での詳しい検査を勧められて来院されるケースも少なくありませんね。
日常に潜む危ない頭痛と問題のない頭痛の見分け方
脳神経外科はどのように活用すべきしょうか?

頭痛、めまい、痺れがある時には早期に受診しましょう。それ以前に、頭が重い、起床時に一時痺れがあるようであれば、何らかの脳の病気の前触れである可能性があります。誰しもが起こり得る頭痛の中に潜む脳腫瘍や脳動脈瘤・くも膜下出血などの「危ない頭痛」と「問題のない頭痛」を見分けるのが、私たち脳神経外科の仕事です。ご自身で「片頭痛だ」と判断したり、痛みに慣れて放置したりするのではなく、まずは検査をすることが大切ですね。
設備の特徴を教えてください。
脳の断面、脳血管、脊髄などを撮影するMRI、エックス線撮影検査の他、頸部動脈の動脈硬化や血栓の有無を調べる超音波エコー検査、てんかんなどに実施する脳波検査などに使用する機器があります。また、心房細動という心臓の不整脈から脳塞栓を引き起こす方がいるので、心電図も脳神経外科では必須の検査ですね。MRIは頭部の情報が鮮明に得られるので、脳梗塞診断の精度を上げるために役立ちます。大きな病院だと予約から実際に検査を受けるまで、さらに当日も待ち時間がかかることが多い一方、当院のようなクリニックでは空きがあればすぐに検査を受けることができますので、使いやすさを感じていただけるのではないのでしょうか。
診療においてどのようなこだわりをお持ちですか?

食生活の指導に力を注いでいます。脳卒中の危険因子となる高血圧、糖尿病、高脂血症など、生活習慣病の予防には食事療法などを併用することが重要だと考えており、具体的には塩分を控え薄味の食事を取ることと、こまめな水分摂取を欠かさないこと。脳卒中になった後にも今まで通りの食事を続け、何度も病気を繰り返すケースが多くあるため、食事の改善や適度な運動など、日常生活での心がけが大切だということをお伝えしています。また、われわれのようなクリニックは院長に何かあった時に対応できなくなるため、公的な医療機関の必要性を強く感じ、霧島市立医師会医療センターの脳神経外科設立に携わりました。入院治療が必要な場合はそちらを含め、近隣の病院を紹介しています。
皮膚科・美容皮膚科の標榜からデイサービスも運営
認知症治療も精力的に行われています。

認知症となって通院できなくなるというケースは多くあり、何とかしたいという思いから徐々に取り組むようになった分野です。認知症と診断された場合は、お薬を使って治療を行っていくこととなりますが、何よりもデイサービスを利用していただき、運動などを行い、周りの方と会話をすることが良い刺激となり、認知症の進行を遅らせることができると考えています。そこで、2003年にデイサービスと居宅介護支援事業所を開設。現在はグループホームや小規模多機能ホーム、サービス付き高齢者向け住宅なども展開し、多くの方々にご利用いただいています。
香代子副院長は皮膚科・美容皮膚科を診られていますね。
はい。妻は日本皮膚科学会皮膚科専門医であり、通常の皮膚科の治療を行ってもなかなか良くならない方がご相談にいらしている印象です。アトピー性皮膚炎やニキビなど皮膚疾患全般の他、しみのレーザー治療やケミカルピーリングなど自費診療にも幅広く対応しています。脳の病気は、皮膚に症状が出るケースもあるんです。例えば、脳卒中は初期症状として微熱が続くことがあり、体の中にさまざまな炎症が起こっている状態ですので、皮膚にも湿疹などの形で現れます。そのため、脳神経外科と皮膚科を同時に受診できる体制は患者さんにとって時間や手間が省けるメリットとなっているのではないかと思います。また、東洋医学の考えも取り入れ、漢方薬の処方も行っています。
診療の際に心がけられていることやご展望をお聞かせください。

先ずは患者さんの抱えているお悩みなどお話を聞くことです。そのお悩みに対し、どんな検査をして、その結果どのような治療を行うべきか一緒になって組み立てていきます。私も年を重ね、代替わりを考えているところです。脳神経内科として他県で勤めている息子が今年の春から鹿児島に戻ります。当院で一緒に働くようになるので、私は邪魔にならないようにしないといけませんね(笑)。クリニックを承継した後は、できる範囲で訪問診療を行いながら、引き続き地域の皆さんの健康を微力ながら支えていけるといいですね。
読者や地域の方々へメッセージをお願いします。
頭痛が続いている方は、セルフチェックで済ますのではなく、一度検査を受けましょう。若い方でもずっと頭痛に悩まれている方は多くいらっしゃいます。先ずは早期に検査をすることで原因を調べ重症化を防ぐことができます。当院はハードルの低い、地域のクリニックです。「脳神経外科はちょっと怖いな……」と敬遠せず、小さなお悩みでも気軽にご相談にいらしてください。お待ちしております。
自由診療費用の目安
自由診療とは自費診療は各処置料に加えて、初診料1870円、再診料770円をご負担いただきます。
Qスイッチアレキサンドライトレーザー:直径5mmまで5500円(税込)、直径1cmまで1万1000円(税込)、直径1cm以降1mmにつき2200円(税込)
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