内薗 明裕 院長の独自取材記事
せんだい耳鼻咽喉科
(薩摩川内市/上川内駅)
最終更新日:2025/09/03

薩摩川内市の高城川沿いに立つ「せんだい耳鼻咽喉科」。内薗明裕院長は、父の「人の役に立つ仕事に就きなさい」という教えを胸に、1994年の開業から30年以上、地域の耳鼻咽喉科医療を支え続けてきた。西洋医学の診断を基盤に、30年以上扱ってきた漢方と栄養学の視点を組み合わせた診療を展開。「お子さんを持つ親御さんがあちこちの医療機関を回ることがあると聞くので、ここでしっかり診察したい」と語る。開業当初から続ける携帯電話での急患対応など、まさに耳鼻咽喉科の“職人”として地域医療に貢献する存在だ。穏やかで謙虚な人柄ながら、論文作成や補聴器助成制度の行政への働きかけなど、常に医療の発展に尽力する内薗院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2025年8月7日)
父の教えを胸に耳鼻咽喉科の医師として歩む
医師を志したきっかけと耳鼻咽喉科を選んだ理由を教えてください。

父は農業をしながら有線放送事業という、当時まだラジオも満足に聞けなかったような頃に電線を町中に引いて放送を流す事業に携わった人でした。その父がいつも「何になるにしても人のために役立つような仕事に就きなさい」と言っていたんです。動物が大好きで最初は獣医師をめざしていました。でも高校の担任から「どうせ医者になるなら人間の医者になれよ」と言われて。人のために役立つなら医師のほうが良いかなと思い、医学部をめざしました。耳鼻咽喉科を選んだのは、学生時代お世話になった鹿児島大学の先々代の教授がきっかけです。非常に尊敬できる方で「こういう医者になりたい」と憧れたんですね。その先生の医局に入り、勉強させていただきました。
開業前はどのような診療をされていたのでしょうか?
国立病院や鹿児島県の県立病院など公立病院の耳鼻咽喉科に勤め、最終的には医長も務めました。大きな病院では主に手術を扱っており、喉頭がんや下咽頭がんなど耳鼻咽喉科特有のがんの放射線治療を含めた診療や、他院からの紹介患者さんの手術が中心でした。研究テーマは感染症とアレルギー性鼻炎で、通常外来で見るような疾患でした。県立病院勤務時、薬局の方から「先生は開業向きだから開業しませんか」と勧められました。最初は開業するつもりはなかったのですが、自分の研究テーマを伸ばすには開業も良いのかなと。実際開業してみると、大学病院では見られない幅広い患者さんがいらして、毎日がモチベーションにつながっています。
薩摩川内市での開業を選んだ理由はありますか?

先述の薬局の方が「ここならニーズもあるよ」とあちこち探してくださったんです。一緒に見て回って決めました。薩摩川内市には一級河川の川内川が流れています。私が大学院を終えて最初に勤めた病院も、最後に勤めた県立病院も、この川の上流にあったんです。上流から下流までずっとこの川を流れてきたような状況で、一番下流の薩摩川内市で開業することになりました。何か縁があったんでしょうね。今では生まれたての赤ちゃんから超高齢者まで全年齢の患者さんが来院しています。この地区は高齢化が進んでいますが、他の地区に比べれば出生数も多く、子どもたちの数も極端に減っていません。県を越えて来られる方もいらっしゃいます。
漢方と栄養学の視点を取り入れた独自の診療
診療の特徴である漢方と栄養学について教えてください。

最初は大学で習ったとおりの診療をしていました。でも、それだけでは対応が難しい患者さんが多かったんです。卒業後最初に勤めた病院に漢方専門の先生がいて教えていただいていたので、昔から漢方薬は扱っています。さらに2014年頃から栄養学に着目しました。症状のベースには栄養の問題が隠れていることが多いと気づいたんです。患者さんから多くのことを学ばせていただきながら、試行錯誤を繰り返してきました。患者さんが教えてくださることばかりで、本当に感謝しています。
具体的にはどのような診療、アプローチを行っているのですか?
花粉症、めまい、耳鳴り、風邪、急性中耳炎、鼻血、慢性副鼻腔炎などさまざまな耳鼻咽喉科疾患を診ています。アレルギー性鼻炎の舌下免疫療法、慢性上咽頭炎のBスポット療法、補聴器相談にも対応しています。私が着目している栄養面については、看護師がエキスパートとして詳しいインタビューで食事内容を聞き取ってくれます。朝何を食べているか、間食は何かなど細かく聞いて、必要なら血液検査も行います。「人間の体は食べたものでできている」という考えは、東洋でも西洋でも世界中の伝統医学の基本です。食べているものを詳しく聞いて、どうしたら状況が良くなるか一緒に考えていくのが、当院の特徴かもしれません。
開業当初から急患対応もされているとお聞きしました。

開業時「コンビニ耳鼻咽喉科」という24時間対応できる理想を掲げていました。一人では無理ですが、可能な限り対応したいと。当時はまだ無線呼び出しの時代でしたが、携帯電話を導入して転送されるようにしました。今も携帯にかかってきます。子どもの夜中の耳痛が一番多いですね。親御さんとしてはどうしたら良いかわからないから電話をくださる。もしも重症なら診療します。冬は高齢者の止まらない鼻血も多い。耳鼻咽喉科の三大急患は痛み、異物、鼻血です。消防隊から「鼻血が止まらない」と電話がかかることも。スタッフが本当に快く、夜中でもすぐ飛んできてくれるので対応できています。私一人では何もできませんが、スタッフのおかげです。
家族のように患者と向き合い続ける
診療で大切にされているモットーを教えてください。

先輩から「患者を自分の親とかきょうだいとか子どもだと思って接したら良いよ」と教えていただきました。また「絶対に患者を断るな」とも。この姿勢は変えずにやっています。私の診療は一般的な耳鼻咽喉科と少し違って、一人ひとりの説明に時間を費やします。生活スタイルもお聞きしながら、急性の病気はきっちり診察し、慢性の病気も少しでも症状を和らげたい。人間には自然治癒力がもともと備わっています。子どもの頃になかった病気が40代50代で出るのは、それまでの生活に原因がある可能性もあると考えているのです。そこを見極めて、10年後20年後の健康維持に貢献できればと考えています。
今後の展望についてお聞かせください。
開業して31年がたちますので、これまでやってきたことが正しかったのか総ざらいして、さらに患者さんの目線に立った診療ができればと思っています。外来で学んだことを勉強会で年に数回は発表し、論文も書くことを自分に課しています。最近は中等度難聴の方への補聴器助成金について、鹿児島大学の教授方とワーキンググループをつくって行政に働きかけています。身体障害者レベルでない中等度難聴の方が、お金の問題で補聴器購入に踏み出せない。難聴は認知症のリスクにもつながりますから、早めに補聴器をつけて脳に刺激を入れることが大切なんです。これからも患者さんとよく対話しながら、コミュニケーションを大切にしていきたいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

私のやっている診療は一人ひとりのカウンセリングを丁寧に行い、その人なりの生活スタイルをお聞きしながら進めていきます。長くかかっている慢性の病気も、少しでも症状を和らげられれば良いかなと。このスタイルを崩さずにこれからもやっていきます。何かお役に立てることがあるかもしれませんので、お困りのことがありましたらぜひご相談いただければ。メールでもちょこちょこご相談くださる方がいらっしゃって、遠くの方にはメールでアドバイスもしています。ホームページのコラムや症例別相談室も、患者さんが見てすぐわかるように毎日更新を心がけています。診察では話せない詳しい内容も書いていますので、どうぞ参考になさってください。