吉永 光裕 理事長の独自取材記事
よしながウイメンズクリニック
(鹿児島市/中洲通駅)
最終更新日:2022/03/11

中洲通り、電停の目の前にある「よしながウイメンズクリニック」。院内は明るく清潔感があり、モダンな印象だ。同院は、30年にわたり大学病院で先端的な医療に携わってきた吉永光裕理事長が、「地域の患者さんにもっと良質な医療を」との思いで、2014年に開業した。婦人科疾患全般やがん検診、がん治療後のフォローアップに加えて、これまでの診療経験を生かし、セカンドオピニオンにも積極的に対応する。吉永先生は気さくで、サービス精神旺盛な人物。笑いの絶えない取材となったが、患者からもらった手紙を大切にファイリングし、涙ながらに思い出話をしてくれる人情派でもある。その言葉の端々から、「多くの女性の力になりたい」という優しさが感じられた。
(取材日2021年11月22日)
大学病院での30年の経験をもとに、良質な地域医療を
先生は長年、大学病院で診療を続けてこられたそうですね。

鹿児島大学病院で30年間、婦人科悪性疾患の手術・治療などを主に行ってきました。これまでの経験を生かし、当院ではがん診療連携クリティカルパスの連携医療機関として、がん患者さんの術後のケアなどに応じています。大学病院時代に診ていた患者さんで、引き続き当院にお越しくださる方も多くいらっしゃいます。一方で、当院の患者さんの約半数は、更年期障害で悩む方。不眠やイライラ、動悸、肩凝りなど症状は非常に多岐にわたり、それぞれに合わせた薬を処方するほか、ホルモン補充療法などを行っています。また、不妊、月経トラブルから、妊婦健診、骨粗しょう症、脇とVIOの医療用脱毛まで、女性のさまざまなニーズに幅広く対応しています。
こちらのクリニックの特徴を教えてください。
当院の特徴の一つは、子宮頸部異形成に対する蒸散術、中絶や流産手術などの日帰り手術を行っていることです。ほかにも、痛みを伴うことが多い子宮体がん検診は、希望があれば麻酔を使い、確実な検査を行えるよう努めています。また、力を入れているのがセカンドオピニオン。ご自分の症状や薬のことがよくわからない、という患者さんは多いのではないでしょうか。例えば、生理痛があるからと低用量ピルを処方されたけれど説明を受けていない、といった場合には、ピルを使うことのメリット・デメリットから丁寧にお伝えすることも。患者さんの不安感を少しでも取り除くことができればうれしいですし、医師としてのやりがいにもなっています。
開業までの歩みについて、お聞かせいただけますか?

医学部を卒業した後、最初は麻酔科に行ったんです。当時はまだ麻酔科という診療科ができて間もない頃で、どの科に進むべきか迷っていた時、ある先輩に言われました。麻酔というのは生体の基本的なことを知っていなければできないもの。麻酔科できちんと学べば、どの科に行っても役に立つよと。なるほどと思って麻酔科を選んだら、とても興味深く、4年間所属しました。その後ちょうど産婦人科の教授として、後の鹿児島大学学長となる永田行博先生が九州大学から来られたんです。僕はぜひ永田先生のもとで学びたい、と早くから弟子となり、臨床を一手に引き受けてきました。助教授として10年がたった頃、今当院のある場所にもともとあった婦人科「うのきクリニック」の先生からお声がけをいただき、地域の方々に満足できる医療を提供したいと思ったのが開業のきっかけです。
「納得のいくよう丁寧に説明すること」を大切に
先生の診療におけるモットーは何ですか?

患者さんが主治医に対して不信感を持っていると、医療は成立しません。医師が患者さんに対してわかりやすく、正直に話すことで、結果的に信頼関係が築けると思っています。40年前になりますが「これからは何でもオープンにする時代。きちんと納得のいく説明が大事になる」という、永田先生の教えでもありました。ですから患者さんに合わせて、納得していただけるよう丁寧に説明することを一番大事にしていますね。開業して、地域の患者さんが不満や不信を感じることのない、もっと良質な診療をしなければいけないと痛切に感じますし、それに自分が少しでも貢献できたらいいなと思います。
更年期障害で悩む患者さんにはどのような治療をしていますか?
当院に来られる患者さんは更年期障害で悩んでいる方々が多いとお話ししましたが、更年期障害は心と体のさまざまな部位に症状が現れます。中でも一番怖いのが骨。自覚症状がないまま骨粗しょう症が進行し、骨折しやすくなります。更年期障害はエストロゲンという女性ホルモンの急激な減少によって起こるのですが、それを補うホルモン補充療法(HRT)が主流。服薬だけでなく、塗り薬やパッチタイプの貼り薬もあります。70歳まで保険が適用されることもあり、治療を希望される方が増えています。ホルモン補充療法はとても有用な治療ですが、まずはがん検診を受け、ご自分の体の状態を把握した上で選ぶことが大切です。他にも漢方薬も用いるなど、さまざまな治療法があるので、症状がつらいときには我慢せずに相談してください。
これまで多くの患者さんと出会ってこられたと思いますが、印象的なエピソードはありますか?

大学病院時代、ある患者さんが妊娠中にがんが見つかり、治療のため1500gほどでお子さんを出産したことがありました。結果的に1年後、亡くなられてしまいました。その方には当時10歳のお子さんもいて、母親が亡くなった後、おじいちゃんおばあちゃんに引き取られたのですが、後日、新聞にその子が「ぼくはなかない」という自分の状況を綴った私書が載っていました。今でも大切に保管してあります。ほかにも、患者さんからのお礼状やお手紙を見ると涙が出ますね。
先生の、患者さんへの思いが伝わってきます。
当時はがんを告知する時代ではなく、その患者さんにも最期まで「助かるよ。頑張れ」と励ましていました。でも後に、ある看護師に「私だったら言ってほしかった。告知を受けていたら、日々の子どもへの接し方も変わったのではないか」と言われたんです。確かにそのとおりだなと思いました。以来、何でも正直に患者さんに説明することを何より大事にしてきました。例えばがんの告知の場合、その後のフォローも大切と考えています。患者さんはいつか必ず告知を受け入れるもの。それが3日後の人もいれば、数ヵ月後という人もいるけれど、「一緒に闘っていきましょうね」というフォローを欠かしません。
しっかり向き合い、女性のさまざまなニーズに対応
先生が医師をめざしたきっかけは何ですか?

実は医学部に行くつもりはまったくなくて、高校を卒業したら、東京でエンジニアになる夢がありました。僕は東京の大学に行くため入学式に出席したものの、後日、父の勧めであった鹿児島大学医学部に合格していたことがわかり、「帰ってこい」と連絡が。夜行列車で鹿児島へ帰ると、「よく帰ってきたな」と父が心底うれしそうな顔をして待っていましたね。その顔を見て鹿大に行こうと決意し、医学部へと進むことになりました。自分としては東京に出て、そこから世界に羽ばたきたかったんだけれども(笑)。人生には転換期があって、その大学受験は大きな転換期だったと思いますね。医学部を卒業して麻酔科に行ったのも、そして開業したのも大きな転換期。その時々でキーパーソンとの出会いがありました。これも運命なのかなあと感じます。
今後の展望をお聞かせください。
地域に根差したクリニックをめざし、女性のさまざまな悩みに対する相談相手として、心身の健康をサポートしていきたいですね。これまでの教え子たちが県内各地におり、今でも相談を受けて患者さんを診るのですが、早めに相談することの重要性を常々感じています。早くに判断できることで、症状や希望に合わせ、適切な医療機関へとつなげることができます。今後も良質な医療を提供していけるよう、さらに研鑽を深めていきたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

「しっかり向き合う医療」を心がけ、目の前の患者さん一人ひとりを大切にしています。何か気になることがあればお気軽にお越しください。セカンドオピニオンも大歓迎。正しい知識を持って治療すれば、その後の人生のQOL(生活の質)が変わります。患者さん自身に納得するものを選んでいただけるよう、説明はしっかり行います。また、皆さんに特に伝えたいのは、婦人科のがんは早く発見できれば、治癒が見込めるということ。年1回は必ず婦人科検診を受けていただきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは医療用脱毛(脇)/1回3000円~、医療用脱毛(VIO)/1回7000円~