東 史子 院長の独自取材記事
ことといクリニック
(鹿児島市/武之橋駅)
最終更新日:2022/12/14

甲突川沿いにある「ことといクリニック」。開業からおよそ70年にわたり、地域医療に携わってきた「福島内科医院」を前院長から引き継ぎ、10年という節目で2022年4月「ことといクリニック」として再スタートした。院長の東史子先生は佐賀医科大学医学部を卒業後、千鳥橋病院の総合内科に8年間勤務。透析や多くの病気の治療に携わってきた。その後、2013年に「福島内科医院」を前院長から引き継ぎ診療を開始。一般的な内科診療をはじめ、生活習慣病や更年期障害の治療、予防接種、健康診断、禁煙治療など幅広く対応している。また、通院が困難な人をサポートしたいという思いから訪問診療にも注力。地域の人に必要な医療や、安心して相談できる環境の提供に余念がない。そんな東院長にクリニックの特徴や今後の展望について語ってもらった。
(取材日2021年3月13日/情報更新日2022年11月28日)
開院70年以上、地域住民に愛されるクリニック
まずはクリニックの特徴や診療内容について教えてください。

当院では一般内科をはじめ、プラセンタ注射や漢方薬による更年期障害の治療、どこの診療科目にかかっていいかわからない症状の診察、健康診断の再検査等幅広く対応しております。また、デイサービス「ふく島」やグループホーム「なごみ」が併設されており、医療だけではなく介護福祉の提供にも取り組んでいることが特徴です。どちらも敷地内にあるのでカンファレンスにも参加しやすく、医療と介護の連携が取りやすい環境になっています。また訪問診療にも力を入れており、「なごみ」に入居されている方の診療だけでなく、他の介護施設に入所されている人や近隣住人を対象に訪問診療を行っています。月曜日から木曜日の午後1時30分~4時30分の間で往診をしているのですが、他病院からの紹介等で訪問診療を希望する人が増えてきました。クリニック名“こととい”の意味通り、患者さんが問い尋ねやすく、ともに語り合うような診療スタイルをめざしています。
スタッフについてもお聞かせいただけますか?
看護師は4人、他に事務員が2人います。ドクターは、金曜日の午前中には大学の血液内科専門の先生に来てもらっています。血液内科の先生は前院長の甥で、鹿児島大学病院腫瘍センターで副センター長をしている人です。今は少人数体制で診療にあたっていますが、この先訪問診療がもっと増えたら、従業員数も増やしていかなければと考えています。また、第2、4水曜日の午前中のみ漢方内科の先生が来てくださっています。漢方内科は、完全予約制です。
どのような患者さんが来院されますか?

新規の患者さんが7割と多いですが、前院長から引き継いだ後も「女性の医師で話しやすいから」と受け入れてくださり、今でも来てくださる方も多くいます。その他にも、これまで通院していた人が通院困難になってしまい、訪問診療に切り替えた人もいらっしゃいます。中には、看取らせていただいた患者さんもいます。また、私が診療にあたるようになってから若い女性の患者さんも増え、幅広い年齢層の患者さんがたくさん訪れます。高血圧や糖尿病など生活習慣病を患っている患者さんも多いですね。投薬だけでなく運動や食事、禁煙などの生活習慣に関するアドバイスも行うのですが、「先生に言われたから頑張って、改善していこう!」と思ってもらえる、そんな診療が提供できるように日々摸索しています。症状や生活習慣は人それぞれ違うので、一人ひとりに合った治療や改善法を提案できればいいなと考えています。
生活背景に配慮した「全人的医療」をめざす
「全人的医療」をモットーにされていると伺いました。

そうですね。薬を出して終わりという診療ではなく、患者さんから家族背景や生活習慣などを聞いて総合的にサポートやアドバイスができるように心がけています。もしも介護が必要になった場合は介護につなげるサポートも行いますし、当クリニックで行えない治療や検査については、その都度適切な医療機関につなげるようにしています。以前勤めていた千鳥橋病院のソーシャルワーカーから、患者さんに寄り添う気持ちの大切さを学んだんですが、その影響もあって当クリニックでは「全人的医療」をモットーにしています。
診療の際に心がけていることはありますか?

患者さんが安心して受診できるようにするだけではなく、職員にも気持ち良く働いてもらえるように心がけています。気軽に相談できるように努めたり、職員が大変な時は積極的に手伝ったりしています。診療以外でも患者さんに癒やしを与えることができればと思い、クリニックやグループホーム内に趣味で撮影した季節の花の写真を飾ったり、大好きな花を花壇に植えたりしているんですよ。写真を見て「癒やされたよ」とか「すごくすてきな写真だね」などと声をかけてもらった時は、治療の他にも患者さんの役に立てたなとうれしくなります。こうやって趣味を生かせるのは、院長の特権ですね(笑)。
印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
以前からこの地域に住んでいる人で、「なごみ」の厨房で働いていたこともある人が認知症を患ってしまい、最終的には一人暮らしが難しくなって「なごみ」に入居したのですが、入居中に卵巣がんになってしまって。このまま「なごみ」で生活を続けていくのは難しいかと思っていたのですが、さまざまな方のご協力もあり、「なごみ」で最期を迎えられました。長年この地域に住んでいる人の最期に携われて、地域の中で役に立てたことが本当にありがたいなと感じました。
病気の治療はもちろん、メンタル面もサポート
先生が内科を選んだ理由を教えてください。

最初の研修先が総合内科だったんです。もともと産婦人科に憧れていたのですが、ちょうどその頃は子育て中でして。子育てをしながら24時間お産に対応する産婦人科での研修は家庭の状況的に無理があり、総合内科でお世話になりました。内科のほうが産婦人科よりも医師の数が多いこともあり、先輩や後輩医師に助けられながら、研修をさせてもらいました。女医として、女性の患者さんに寄り添いたい気持ちは変わらずあるので、更年期障害の治療など、これからも、内科という切り口から女性をサポートしていきたいです。
休日はどのように過ごされていますか?

在宅診療の患者さんを受け持っているので遠出はなかなかできないですが、近所の公園などに行って花の写真を撮ることが楽しみの一つです。苗を買ってきてクリニックの花壇に花を植えたり、水やりをしたりすることもリフレッシュになっています。あと、最近はあまり行けていないですが、以前はドラムのレッスンにも通っていました。ドラムをやっている友人に誘われたことがきっかけで始めたんですが、最近はサボり気味ですね(笑)。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
漢方内科の漢方薬による未病の治療にもっと力を入れていきたいですね。特に働き盛りの女性や、子育て中のお母さんの健康をサポートできればと考えています。在宅医療へのサポートももっと増やしていきたいですね。住みなれた家で治療をしたいと願う人のお役に立てればと思います。投薬だけの治療ではなく、メンタル面なども含めて多角的に患者さんをサポートしていくことが目標です。すべての患者さんがその人らしく治療に励めるよう、患者さんに寄り添った治療ができればと考えています。あとは、クリニックや施設を建て直して、来るだけで癒やされる空間にしていきたいですね。患者さんに伝えたいことは、何か困ったことや悩んでいることがあったら、気軽に相談してほしいということですね。お役に立てる方法を一緒に考えていきたいと思います。診療時間外の問い合わせも私につながるようになっているので、緊急の場合も安心してお電話をいただけたら。