東 泰志 院長の独自取材記事
東内科
(鹿児島市/純心学園前駅)
最終更新日:2024/10/18

鹿児島市唐湊の地で、50年以上にわたり地域住民の健康を支えてきた「東内科」を訪ねた。身近なかかりつけ医でありながら、19床の病床を備える有床診療所で、専門的治療を行い幅広いニーズに対応している。2023年1月、前院長の父から継承した東泰志院長は、消化器外科を専門に大学病院で手術や化学療法など多くのがん治療に携わってきた経験豊富なドクター。「なんでも診られる診療所」「総合的ながん治療を行う拠点」になるというビジョンの実現をめざしている。相手を最も身近な人に当てはめ、思いやりを持って診療にあたるという東院長に、同院の取り組みや診療への思いを語ってもらった。
(取材日2024年9月13日)
外科の経験を生かし、なんでも診られる診療所をめざす
開業から50年以上と歴史の長いクリニックですね。継承のきっかけを教えてください。

当院は父が1971年に開業し、内科・小児科として地域に根差した診療を行ってきました。私は久留米大学医学部を卒業した後外科の道に進み、鹿児島大学病院の第一外科に入局。消化器外科を専門とし、中でも胃と大腸の疾患を中心に、手術などのがん治療を行ってきました。鹿児島には医師が豊富にいるわけではないので、私たち第一外科の医師は胃・大腸内視鏡検査、おなかのエコーなど、消化器に関する検査もすべて自ら行うほか、救命救急の現場にも携わってきました。慢性疾患と違ってがんは命に関わる病気であるため、患者さんはより真剣に治療へと向き合っています。私もなんとかその思いに応えたいという思いで日々の診療にやりがいを感じ、外科医師が天職だと思えるようになりました。父も高齢となってきたため2023年1月に当院を継承し、院長に就任してから1年半ほどたったところです。
外科での印象深いご経験などありますか?
ドイツに2年ほど留学し、日本と海外での治療の違いや、がんに対する考え方の違いを学んだことでしょうか。ドイツにはがん検診というシステムがなく、何らかの症状が出てから病院に行くため、どうしてもがんが進行してしまった患者さんが多いのです。そういった面で、早期発見・早期治療のためにがん検診を受けていただく重要性をあらためて痛感しました。また、日本ほどきめ細かな治療に長けている国はほかにないこともわかりましたね。
継承にあたりどのような診療所をめざされたのですか?

外科の強みを生かした「なんでも診られる」診療所であることです。患者さんは体の不調を感じたとき、どの病院、または何科に行ったらいいのだろうかと迷われることがあるのではないでしょうか。当院は、そんな時に最初に相談してもらえる「窓口」でありたいと思っています。一般的な内科の症状から、粉瘤切除やお尻のお悩みなどの外科の症状も見ることができます。手術が必要な場合は、連携する近隣の病院で私が手術を行い、退院後は再び当院で経過観察をしていくという、最初から最後まで私が診させていただく体制を整えておりますので、患者さんには安心して治療を受けていただけるのではないでしょうか。
検査機器などの設備面についてはいかがでしょう。
以前はエックス線撮影装置しかありませんでしたが、継承を機に胃内視鏡、大腸内視鏡、エコーといった検査は当院で行えるようにしました。現在は「東内科」という院名ですが、総合的になんでも診られる場所という意味を込めて、今後は「唐湊(とそ)総合クリニック」と改称する予定です。また、当院は院内処方を採用していますので、同じお薬でも院外処方と比べて窓口負担が少なくなります。外にある調剤薬局に足を運び処方を待つ必要もありませんので、患者さんの手間と時間を省くこともでき、利便性や経済的な負担軽減にもお役に立てると思います。
外来化学療法からターミナルケアまで一貫して提供
クリニックの特徴を伺います。

入院のための病床を19床備えています。ポリープの切除、高齢者の肺炎、術後の経過観察など急性期の患者さんのほか、当院ではがん治療を行っておりますので、抗がん剤治療を行う際に入院される方が多いですね。全国的に有床診療所の数は年々減少の一途をたどっており、今年4月の時点では約5500施設まで減ってしまいました。しかし、専門医療や緊急時の対応ができる有床診療所は、地域医療にとって必要不可欠な存在です。入院施設を活用し大きい病院からの依頼にも迅速に対応できるような体制を整え、地域にとってなくてはならない場所でありたいと思っています。
がん治療も行われているのですね。
はい。外来での抗がん剤治療はじめ終末期まで診ております。患者さんにとって途中で医師が変わることは一つの不安要素となりますが、がんの発見から最期まで私が診てまいりますので、ご安心ください。また、現在大きな病院では外来での抗がん剤治療を受けにくる人が増え、患者さんを抱えてきれていないという現状があります。ところが抗がん剤治療を受けられる診療所はまだ少なく、鹿児島県では当院を含めてほんのわずかしかありません。そのような現状にある地域医療を支えていくためにも、近隣病院との連携をさらに強化し、積極的にがん治療に取り組んでいきたいです。
院長はどのようなスタンスで診療を行われているのですか?

患者さんを自分の最も身近な人に当てはめて診療を行っています。例えば50代の女性であれば自分の妻、80代の方が来れば自分の親と思うことです。そうすると、これまで診療を行ってきた場所から、多くの患者さんは次に私が勤める病院にもついてきてくれるようになったのです。信頼関係を築けた証になりますし、私を信じて頼ってくれることを誇りに思います。当院では腰を据えてがん治療を行っていけるので、これまで以上に患者さんとしっかり向き合うことができることも大きなやりがいとなっています。退院する時、患者さんやそのご家族から「この病院に来て良かった」「先生や看護師さんと出会えて良かった」と思ってもらえるように、そして、患者さんが最期まで人間らしく生きて、人間らしいお付き合いができるようなお手伝いがしたいです。そこに私自身も喜びを感じますし、外科が好きで、医療が好きだと感じる理由となっています。
「総合的ながん治療の拠点」をめざして
患者さんとのコミュニケーションで心がけられていることは?

患者さんと目線をそろえることです。高齢の患者さんは特に、診察時にパソコン画面の電子カルテを見るばかりでなく、相手の目をしっかりと見ること。そして診察後には「また1ヵ月後に待っていますからね」と、手を握って伝えること。入院している方には「今日の調子はどうですか?」と、スキンシップを取りながら会話をするよう心がけています。新型コロナウイルスの流行時には難しい場合もありましたが、相手に直接触れて、血の通うコミュニケーションを取ってこそ、思いやりや人の温かさを伝えることができると思うのです。そうすることで、患者さんに「またここに来ようかな」「また1ヵ月頑張ろうかな」と思ってもらえたらいいなという気持ちで診療にあたっています。
お忙しいかと思いますが、ご趣味はございますか?
最近は年に数回しか行けていませんが、サーフィンが好きです。また、温泉も大好きですね。この地域は源泉掛け流しの温泉がたくさんあるんですよ。仕事終わりはお風呂に入って癒やされてから帰ることがほとんどです(笑)。
今後のご展望をお聞かせください。

「総合的ながん治療の拠点」となることをめざしています。大きな病院ではどうしても画一的な治療を行うことになり、新たな治療法を取り入れることも簡単ではありません。一方当院は診療所として、フットワーク軽く動くことができるので、食事や漢方をはじめとする東洋医学など、さまざまなアプローチ法を取り入れ、総合的ながん治療を行う場所となっていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
何か困ったことがあれば、いつでもお気軽にご相談できるクリニックでありたいと思っています。例えばどのクリニックを受診すればいいのかなどわからないことがあれば、ご相談にも乗らせていただけますし、症状に合わせたクリニックをご紹介をすることもできます。また病気に関することに限らず、ご自身の生活に関わることでも構いません。お話しを伺い、お悩みの原因は何にあるのかを一緒に考えていければと思います。地域の方々に信頼していただき、皆さんの健康を支えていけるよう努めてまいります。お待ちしております。